第48話
未だに影響するアーマー君。
彼はいつまで影響を与えてくるのか?
※僕もわかりません。
気付けば、アーマー君の全財産の回収が終わったらしい。
が、
全財産 63G
......いや、ね?
Gとかいうから金貨じゃないかと思うじゃん?
.........この世界での 1G = 1円 らしいよ?
どうやら、
鉄貸=1ゴールド
小銅貨=10ゴールド
銅貨=100ゴールド
小銀貨=1000ゴールド
銀貨=10000ゴールド
小金貨=10万ゴールド
金貨=100万ゴールド
白金貨=1000万ゴールド
王金貨=1億ゴールド
との事らしい
何故63Gしか持っていなかったのか、と聞けば、どうやら彼は、自らのお金を貧しい人たちに配り歩いていたらしい。もちろん無償で、だ。しかも、その全員が犯罪者だったらしい。きっと騙されたのだろう。
「......済まない、少しトイレに行ってくる」
スタスタと歩き出す。その歩みに迷いはなかった。
『ちょっ! トイレはそっちじゃないよっ!?』
スタスタスタスタ。歩きは止まらない。
そりゃあそうだろう。
僕は最終的に、トイレとは名ばかりの(死体)廃棄所に用があるのであって、ここのギルドの、所謂『トイレ』には用はないのだ。
「び、白夜さん! ギンさんを止めてくださいっ! あ、あの先にはアーマー君が......」
瞬間、僕は全力で走り出した。
※全力とは疾風迅雷の状態で、という事です。
あまりの踏み込みに足元の床が割れる。
後で弁償しても構わない。
しかし、今はアイツを消去させることの方が圧倒的に優先だ。
白夜に捕らえられるかと思った僕だったが、
「妾は何も見ておらん」
そんな声が聞こえてきた。
ナイスだ、白夜っ!!
後でご褒美をしようと決めた僕だった
が、
「はぁ、本当は見過ごしたいのだがな......」
そんなギルドマスターの声が耳に届き、
僕の意識は暗転していくのだった。
☆☆☆
目が覚めると、知らない天井が目に映った。
もちろん、言う事はただ一つ。
「知らない天じょ...「やっと起きたかこのバカが。」.........すいませんでした、本気で」
いや、気づいていたさ。
視界の端っこに胸が映ってたからね、うん。
「一応見張っておいて正解だったよ。何となくだが嫌な予感はしてたんだ。そうしたら案の定、この通りだよ」
全く、何をしているのだか。
そう、彼女は言った。
ずっと見張ってた......とは、彼女の言っていた眼の能力だろうか? 少なくとも僕は彼女の監視に気付けなかった───もしかしたら白夜なら気づいていたのかもしれないが。
「ずっと僕のこと見つめてたんですか? ギルドマスターってもしかして僕のストーカーだったり?」
「......」
「いや、冗談ですって、冗談! だからその射殺すような目を向けないでくださいっ!」
あ、あの目はやばい......まるでゴミを見るような目をしてこっちを見ていたのだ。特殊性癖の人ならば興奮出来たのかもしれないが、正直、僕には命の危険しか感じられなかった。
と、そんなことを考えていると、とあることに気付いた。
「あれ、恭香と白夜はどこへ行ったんだ? この部屋には居ないようだけど......っていうか、ここ何処なの?」
そう、良く考えたら僕は現状を微塵も理解していないのだ。ここがどこかも分からない......。何だか怖くなってきたな......
「ふっ、安心しろ、ここはギルドの医務室だ」
ガタッ!
「..........アイツは居ないからな?」
.............何の話か分からないですね。何故ここでアーマー君が出てくるのか全く理解に苦しみます。あぁ、そう言えば───偶然に、たまたま、ふと気になったのですが、彼は今、何処に居るのです? 彼がこの街から離れる前に、是非御挨拶をしたいのですが......
「......アイツはもうこの街を追放済だ。生憎と、この街にはLv.4の光魔法使いが居るのでな。あれほどの怪我でもすぐ治ったさ、二箇所を除いて、な?」
なっ!? もう出ていってしまったのかっ!? し、しかも、Lv.4の魔法使いってかなりの戦力なんじゃ......
そう、レイシアへと言おうとしたのだが......
「まぁ......それはいいんだ」
......へ?
突如、レイシアの顔が歪む。
彼女はすぐに顔を伏せたため、正確に言及することはできないが、それでもその瞳は怒りに燃えているように見えた───まるで何か、とてつもない憎悪を抱いているように。
「アイツはな、帰り際に、こう言ったんだ......」
そう言って、彼女は顔を上げた。
.........済まない、先程の言及について訂正しよう。
彼女の顔は嫌悪に歪んでおり、瞳は『もう、諦めたよ』と言っているかのように虚ろだった───それはまるで、何か(誰か)に尋常じゃない嫌悪感を抱いているかのようだった。
「......『くっ、あの強さっ! きっとアイツこそが悪の黒幕に違いないっ! 待っていてくれギルドマスター! 僕は他の街を回って協力者を集って来るよ!───そして強くなってまた、ここに帰ってくるよ! それまで待っていてくれ!』.........とな?」
......ポジティブっていいですね。
それにしてもアイツ、まだ懲りてないのな? あれだけやられて未だに考えを改めないとは......もっと殺って置くべきだったか?というか、レイシア自身にボロクソ言われてることに気づいていないのか?
って言うか、悪の黒幕って、何ですか?
「はぁ、アイツに仲間なんて出来たらとんでもなく厄介だろうね......」
しかも下手に強くなられたら更に面倒な事になる......はぁ、ホントに息の根を止めておくべきだったか......?
そんな事を考えていたのだが、レイシアは更に面倒な問題点を挙げてきた。
「それだけじゃないぞ? アイツは他の街で協力者を集める、と言ったんだ。つまりはお前の話をするわけだ......そして、アイツの曲解能力を考えると.........意味は分かるな?」
瞬間、僕の時が止まった。
僕に対する憎しみを抱いて次の街へ。
↓
次の街へ到着。
↓
協力者を集う。
↓
その際に僕の(あること)ないことを言いふらす。
最悪の考えが頭に浮かぶ。
ま、まさか......
「他の街々ではお前の良くない噂が流れていく、という訳だ。最悪、街にすら入れないかもな......」
僕は頭のブラックリスト(たった今作成)に新たな名を加えた。
《ブラックリスト》
○アーマー・ペンドラゴン
本当に馬鹿にしてるようにしか思えませんね。
彼は一体、なにがしたいのだろう?




