第46話
新しい登場人物?
さらに『アレ』に変化が......?
あの後、レイシアはギルドカードを渡した後、さっさと執務室まで戻ってしまった。そのため、僕は改めて受付へと向かっていたのだった。
「主様? 一体どうしたのじゃ?」
「お前、そう言えば普通に喋ってるからご褒美無しね」
「!? わ、忘れておったのじゃぁぁぁっ!!」
『......シリアスって、何だろう?』
そんな事を呟く恭香。
ふっ! 僕たちにシリアスさを求める方が、どうにかしてると思うがねっ!
『それで、何でまた受付に向かってるの?』
愚問だな。
どっかの馬鹿の乱入で変な方向に進んでしまったけど、受付の人からまだ何も聞いていないだろ?
「実際さ、僕ってギルドのルールとか何も知らないんだよね。恭香に聞いてもいいんだけど、まぁ、郷に入っては郷に従え、とも言うだろ?」
『微妙にニュアンスが違うんだけれど......まぁ、何でもかんでも私に聞いていても憶えないと思うしね。いい心がけだと思うよ?』
「まぁ、ついでにいい仕事とか宿とか紹介してもらおうとも思ってね。良い宿なんて客観的なもの、恭香じゃわからないだろ?」
『私の主観でなら答えられるんだけどね。ほかの人の意見とか人気とかはやっぱり聞いてみた方がいいね』
まぁ、何だかんだで行くべきだ、ということだろう。
それに、どっかの馬鹿の賭け金も貰ってないしな。
どうせなら後で蠍の素材売ってしまおうか?
『さ、蠍......。そ、そう言えば隷従化してた魔物は素材一つも落とさなかったからね......キラースコルピオンの素材とSSS以外の魔石なら売ってもいいだろうね』
お、どうやら蠍のトラウマは克服したようだ。
うん、恭香も成長したんだなぁ......。
そんな事を考えて歩いていると受付に着いていたようだ。
うん、最初のお姉さんとは違う人だ──と言うか男性。
「すいません、ギルドについて聞きたいんですが?」
「はい? あぁ、迷い人の方ですね? 今専属に変わりますので、少々お待ちください......」
へぇ、僕の為にわざわざ専属......
って専属ぅぅッッ!?
き、恭香? これって普通なのかっ?
(ふ、普通じゃないよ......多分だけどマスターと白夜ちゃんの力を知ったレイシアさんが手配したんじゃないかな?)
......あの決闘で何がわかったってんだ?
『いや、魔導使ってたし、影魔法もいくつか使ってたしょ? それだけで充分過ぎるほど魔力量は伝わったと思うよ? それに体術だって初めてにしてはかなりのセンスしてたからさ』
なるほど......確かに強い事は分かるかもな......。
って言うか、魔導を知っているって、かなり歳いってんじゃないか? あのギルドマスター.......って、ううっ、な、何だか寒気が......。
......この話をするのは止めておこう、うん。
「と言うか、やっぱり僕って体術のセンスあるかな?」
「......ぐすっ、あるじゃろうな...少なくとも短剣術よりかは遥かに上じゃと思うぞ? ......ぐすっ」
「どれだけご褒美欲しかったんだよ、この変態が」
「うひぃぃぃっ! ふ、不意打ちなのじゃっ!」
『はぁ..........おや? 専属の方が来たみたいだよ?』
ん? もう来たのか?
変態って呼んだだけで悶える白夜──本当は病気なんじゃないかと疑えるレベルだよな──を放って置いて、僕はその専属の受付の人とやらの方向を見る.......
そこには受付嬢の制服を着た女の人が居た。
セミロングにした緑色の髪と、同色の瞳。
その上、眼鏡を掛けているのでスラッとして見える。
彼女はいわゆるモデル体型──またの名を絶壁──と言われる体付きだった。......普通、異世界って巨乳で溢れてるんじゃ無かったっけ? そんな事を思う僕だったが......
「......何故貴女が? 最初の受付さん?」
「あ、あははは、何だか専属になっちゃいました......」
彼女は僕が最初に話しかけた受付のお姉さんだったのだ。
☆☆☆
いやぁ、こんな事もあるんですねぇ
と、受付のお姉さん。
「いや、僕と貴女って最初にたまたま、偶然、奇遇にも話しただけですよね?」
最初にすこーしだけ無視されたのを音に持つ小さな奴だった。全く、器が小さいといけないよ、ほんとに。
(それ、自分に言ってるの?)
......くっ、僕の器が小さいことくらい分かってるよっ!
「いやぁ、何だかそれが理由みたいですよ? ギルドマスターが、『ふっ、これも運命さっ』とか言ってましたし」
...あの人、あの歳で(年齢知らなけど)中二病真っ盛りなのだろうか? だとしたらかなりの末期だぞ.....?
『実際、面倒くさかっただけだろうね』
.........そうでなかったと信じたい!
「うわっ! やっぱり凄いですねぇ、喋る本って....」
『初めまして、受付さん。よろしくお願いしますね?』
「は、はいっ、よ、よろしくお願いします!」
8歳に思いっきり敬語を使っている20歳(推定)の図だった。
そんな事を考えていると、ふと、受付さんがなにか何気づいたような顔をした。受付さんは少し考えた様子で、
「そう言えば自己紹介がまだでしたよね?」
あ、そう言えばそうかも。
確かに1回も受付さんの名前聞いてねぇや。
(さっきから『受付さん』としか呼んでないじゃん。それくらい少し考えたら分かるでしょ?)
くっ、何故8歳がここまで頼りがいがあるんだっ!
そんな馬鹿なことを考えていると、
「私はパシリアの街のギルド職員、ネイル、と申します。因みに21歳ですね。これからよろしくお願いします」
あぁ、因みに敬語は不要ですよ?
そう、彼女は付け加えた。そんなに気持ち悪いのか?
「...分かったよ。僕はギン=クラッシュベル、吸血鬼の真祖だ。そして......」
『私は本の恭香です』
「妾は白夜なのじゃっ! こっちがレオン君じゃ!」
そう、恭香に白夜にレオン君.........
......レオン君だって?
皆のの視線の先には卵があった。
「おい、白夜?」
「ん? どうしたのじゃ?」
いや、ね? 確かに勝手に名前をつけた事は、あまり褒められたことではないさ。
だけど、まだそれはいいよ、許すさ。
問題は......
「一体、僕が決闘している間に、その卵に何があった?」
僕の身長と同じ位まで大きくなった卵を指さして、僕はそう聞いたのだった。
☆☆☆
レオンの卵 品質EX
正体不明のレオン君が生まれてくる卵。
沢山の魔力を吸収して成長している。
成長率72%
「鑑定結果まで変ってるじゃないか......」
「ご、ごめんなのじゃ......」
「いや、レオンってカッコイイし、それは別にいいと思うよ?」
ただ、問題と疑問がある。
「おまえ、レオンが女の子だったらどうするつもりだ?」
「あ」
レオン。もろに男の子の名前だ。
せめてリオンあたりならセーフだったんだが......
「やっちまったな」
「!? れ、レオン君! お主は男児じゃよな!?」
『ま、まぁ、女の子に聞こえなくも無くもない名前だし.........うん、何とかなるよ、きっと』
「うわぁぁぁぁっ! やっちまったのじゃぁぁっ!!」
レオンよ、女の子だったらごめんな?
男の子が生まれるように祈りながらも、先に謝っておく僕だった。
閑話休題。
「んで? 何故そこまで大きくなった?」
これが疑問だ。僕が戦っている間───目を離している間に一体何があったのか。はぁ、あの正義マン、ほんとに邪魔ばっかりしてくるな。小説から退場しても尚影響力があるとか、骸骨より印象深いんじゃないか? 役に立ったとしても、せいぜい体術の練習相手くらいだ。......これで、全財産何にもありませんでしたーとか言い始めたら本気で息の根を止めてやろうか?
『さ、流石にそれは大丈夫だと思うよ? 仮にもBランクなんだし......』
「あ奴がBとは......ギルドも大したことないのぉ」
グサァッッ!
「うぐッ! も、申し訳ないです......」
期せずしてネイルの心臓に言葉の棘を突き刺した白夜。
「ぬっ!? い、いや、そういうわけじゃないのじゃ!」
「い、いえいえ、こちらもあんな恥のことはBランクだなんて思ってませんから大丈夫ですよ?」
とうとう呼び方が生き物でも無くなってしまった.........あれ、名前、何だっけか? あの正義マン。
......まぁいっか、もう会うこともあるまい。
「おい、話がズレてるぞ? 結局はどうしてなんだ?」
当然誰に聞いたかと言うと......
『さも当然のように私に聞いてくるだなんて......さっき感心した自分を叱ってやりたいよ......』
まぁ、そんなこと言いながらも教えてくれる恭香様。
『.....はぁ。多分だけどマスターが怒ったときに吹き出した魔力がそのままレオン君に吸収されたんだと思うよ? でないと流石にこの成長率はおかしいし......』
あぁ、なるほど、なるほど。
「つまりは僕のせい......と?」
『その通り。』
...............。
「さぁ! アーマー君の財産を貰いに行こうじゃないか!」
話を逸らす為だけに名前を思い出された彼だった。
レオン君とネイルさんでした。
レオン君の正体とは......?




