誰かの独白
とりあえず新章開幕!
初っ端ですが、いつに無く短いです。
全てを守れると、そう思っていた。
そう思って、傲慢にも進み続けた。
ただひたすらに、走り続けた。
――結果、その場所へとたどり着いた。
何がいけなかったのだろうか。
一体、自分の何がいけなかったのか。
そう聞かれれば、きっと自分自身が悪かった。
そう答えるんじゃないかと思う。
自分自身が悪かった。
自分の傲慢さが。
自分の強欲さが。
全てを守りたいと。
全てを手に入れたいと願い続け、その未来を掴むべく足掻き続けた。
――その意志こそが、何よりの醜悪そのもの。
醜く、浅ましく、なによりも馬鹿馬鹿しい。
鼻で笑うのも躊躇われるような、醜悪を体現するようなその意志が――その全てが、この上なく気味が悪く、愚かしい。
自分が正しいだなんて思っていた。
努力は必ず報われると思っていた。
誰よりも努力すれば、その先には幸せな未来が待っているのだと思っていた。
だからこそ、今自分はここにいる。
きっと、これから自分は一人きりで生き続けるだろう。
それは、かつて味わった地獄。
誰にも頼れず、全てに疎まれ、全てを憎む。
孤独という絶望に彩られた、終わることのない生き地獄。
まぁ、それでもいい。
そう思う自分がいた。
もう十分に、幸せは貰ってきた。
きっと一般人が一生かかっても手に入れられないほどの幸せを、楽しい時間を、自分は受けて、貰ってきた。
だから、もういいんだ。
例えかつての仲間達に、心の底から怨まれたって。
かつての仲間達が泣き喚き、やめてくれと叫んだって。
この決意を――この意思を、貫き通すことが出来る。
――愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。
そんな言葉がある。
歴史に学ぶ。それが賢者というならば、きっと自分もまた、愚者ということになるのだろう。
自分は歴史になんて学ばない。
歴史に学んでも、何も得ることなどありはしないのだから。
だから俺は、過去から学ぶ。
自分が失敗した、全てから学ぶ。
愚かしくも走り続けてきたその足跡を振り返って――全てを学ぶ。
もう、何も信じやしない。
もう、全てを守るだなんて嘯かない。
救えるもの、救えないもの。
このちっぽけな手で拾えるもの。
この小さな手じゃ拾い尽くせないもの。
それら二つがある残酷な事実を受け止める。
忘れていたんだ。
何かを得るためには、何かを犠牲にしなければならない。
それは子供でもわかる常識で、普遍的な真理。
だから、自分もそれに習おうと思う。
何かを得るために、何かを犠牲にする。
小さな【一】を得るために。
俺は他の全てを――斬り捨てる。
そしてもう二度と。理想論だなんて、語りはしない。
これより語るのは、近い将来に起こり得る、確かな未来のみ。
俺は近い未来に、自らの手で滅ぼすであろう。
この灰の世界を――たった一人で語り続ける。




