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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
森国編Ⅱ
509/671

焔―001 灰の世界

新章開幕!

『影編』のお次は『焔編』です。

多分ですが、3~4章くらいの構成になるかと思います。


【久瀬パーティ】


〇久瀬 竜馬

黒髪のフツメン。the主人公。

オタクでありながらもフラグを乗りこなし、お約束を守る。

転移時に創造神の手により、青龍を封印されている。

ギンから貰った神器・黒刀べヒルガルを所持。

未だ開ききっていない巨大な『扉』の持ち主。


〇御厨 友樹

黒髪七三分けの黒縁眼鏡。

頭がいい。何故か銀を尊敬してる。

久瀬パーティ副リーダー


〇古里 愛紗

久瀬パーティにおける恭香ポジション。

兼幼馴染みという久瀬のヒロイン。

黒髪のお下げのロリ巨乳。

久瀬の影響からか少々オタク気味。


〇小鳥遊 優香

古里の幼馴染み②、黒髪ポニーテール。

剣道三段の刀使い。

脳筋で魔法が使えないが、接近戦だけならば勇者最強。


〇猫又 紗

黒髪ベリーショート。

語尾に、にゃぁ、と付くあざといヤツ。

だが恐るべきことに天然である。


〇町田 京子

黒髪セミロング。隠しきれぬ巨乳。

常にクールで、いつも頼れる後衛。


〇花田京介

黒髪ノッポ、ギンと同じくらい身長が高い。

大盾と長剣を持つ聖騎士。

守ることに関しては天才的。


〇凛ちゃん

言わずもがな凛ちゃん。

ギンの血の繋がらない義妹。

神王ウラノスと時の歯車のリーダーたるリーシャの間に出来た子であり、ギンの背中を見て育ったせいか、あのイラッとくる感じが非常に良く似ている。


 世界が灰に包まれてから数日。

 彼女は、その顔ぶれを眺めて口を開く。


「やっと全員、元通りになったようだな」


 円卓を囲むように座っていたのは、皆が皆、髪を白く染め上げた大悪魔達だった。

 サタンは不機嫌そうなオーラを醸し出し、混沌を除いて唯一黒い髪をしたメフィストが楽しげに笑う。


「いやはや、観戦していましたが凄かったですねぇ〜。まさかあのサタンが死に、混沌ともあろうお方が【敗北】するとは。ある程度の未来は知っていましたが、ここまでとは思っていませんでしたよ」


 メフィストは思い出す。

 サタン以外、ほとんど跡形もなく消し飛んだ大悪魔達の体。それを混沌に呼ばれて駆けつけたメフィストがなんとか修復し、そして混沌の力を使用して蘇らせた。

 ただ、アルファは体そのものが塵となって消えてしまったために修復することは出来ず、不幸中の幸い、混沌に利用される未来から逃れることが出来た。

 しかしながら、軽く放たれたメフィストの言葉に、その他の面々はそれぞれに体を震わせた。


「……敗北、だと?」

「おやサタン、もしやこれだけの被害を受け、敗北を認めないつもりですか?」


 サタンが呟いた言葉にメフィストは笑みを深める。


「たった一人を陥れるために作戦を練り、途中までは完璧に上手くいっていた。しかし、油断したかベルゼブブが彼にステータスを奪われ、更には援軍まで許してしまう。その後、その援軍一名に大悪魔は全滅。そして――あと一秒でも多く彼が生きていれば、混沌、死んでいたのは貴女も同じこと」

「き、貴様……ッ!」


 その言葉に憤慨し、立ち上がったサタンへ。

 混沌は、黙って手で制した。


「よせ、サタン。メフィストの言う通りだ。それに今の私は疲れている。早く話をさせてくれ」

「も、申し訳ありません……」


 サタンは心の底から疲れているような混沌の言葉に席へと座り直すと、それを見て混沌は改めて話し出す。


「今回は――我々の勝利であり、敗北だ」


 結果だけを見れば勝利。

 向こうはギン=クラッシュベル、並びにアルファという、とてつもなく大きな戦力を二つ失ったのに対し、こちらは大悪魔全員が混沌の力により復活することで更なる進化を遂げている。

 そして何より――混沌も。


「私はあの男を殺したことで大きくレベルが上昇している。今の私は、あの時の奴すらも上回る力を持っているだろう」


 混沌は、レベルが低かった。

 それは混沌という存在へと転生してから、強くなれるだけの経験を得られたことが少なかったという、一つの理由に収束する。そのため、レベルにして彼女は十~百といった、かなりの低さを誇っていた。


 ――それが、ギンを倒したことで大きくレベルアップし、タダでさえ勝機の見えなかった強さに磨きがかかった。


 それこそ、あの時の彼の強さにすら匹敵するほどに。


「しかし、私はあの男と戦った際に多くの力を失った。お前達を復活させられるだけの力は残っていたが、それでも私は、しばしの間休まねばならない」


 混沌は、自己回復した右腕へと視線を下ろす。

 そこには指先が透けて見える自らの腕が存在しており、混沌がかなり無茶をして『ここに在る』ことを証明している。


「故に、私はしばらく休むこととする。しかし、私というこちらの最高戦力が居ないとなると、向こうの残存勢力――特に、全能神ゼウスと獄神タルタロスが行動を起こす可能性も出てくる」


 確かに、一対一ならば混沌でなくとも、今のサタンでも十分に勝てるだけの力は持っている。

 だが、その二人に加えて更に多くの戦力まで投入されれば、休息をとるべく長期睡眠に入る混沌の首は容易く討ち取られてしまうだろう。


 だからこそ――混沌は、その男へと視線を向けた。



「だからこそ、しばらくは貴様に全てを一任しようと思う」



 ――赤いローブに仮面を被った、白髪の男。

 彼は部屋の隅で柱に背中を預けて腕を組んでいたが、自分に視線が集まっているのを感じて腕を解く。


「おい混沌よ。俺に一任するのは別にいいが、これでも俺は新入りだぞ。こんな俺に任せて、他の大悪魔は問題ないのか?」


 聞き覚えのない声が響く。

 その言葉にメフィストは口元に笑みを浮かべ、サタンを含め、他の大悪魔達は眉を顰めた。

 この男は――一体何者なのだと。

 自分たちが蘇った時には、既にメフィストと共に混沌の隣に立っていた、正体不明の謎の男。


 その名も――ギル。


 執行者ギン=クラッシュベルが混沌の力によって蘇ったのかとも思った。

 けれど、その男は――明らかに。

 あの男とは、全てが違っていた。


「……あぁ、俺達は問題ない。貴様の正体も分からなければ、全くと言っていいほどに信用もしていないが」


 ――それでも。

 サタンはそう続けると、見定めるようにギルという、かつて執行者に『知っているか?』と尋ねられた男を睨み据える。



「貴様が我らよりも遥かに強く、そして、世界を心の底から破壊したいと願っていることだけは、確信している」



 そう、この男はあの男とは違う。

 あの男は身を賭して、命を賭して、最後までこの世界を守ろうと戦い続けた。

 対して、この男は――


 サタンの言葉にククッと肩を震わせたギルは。



「任せておけ。俺は全てを――破壊する」



 それは、新たな物語の幕開け。

 影が死に絶え。

 世界が灰に包まれ。

 新たな【怪物】が表舞台に姿を現し。


 そして、もう一人の【素質】が動き出す。


 新たな、焔の物語の、幕開けである。




 ☆☆☆




 世界が灰に包まれて、数日が経った。

 空も、木も、大地も。

 色鮮やかに世界を彩っていた全てが――灰色に、塗り潰された。

 灰に、包まれたんだ。


 まぁ、それでも世界が変わっただけ。

 人々は困惑しながらも今まで通りに暮らしているし、表舞台は、いつもと変わらず平然としている。

 けれど――裏は、きっと違うんだろ。


「なぁ、ギン」


 俺は、目の前の墓を見上げてその名を呟く。

 エルメス王国の首都から最寄りの街の近くにあるここは、かつてギンがクランを構えていた場所にある。

 世界が灰に包まれて、太陽も、影もなくなって。

 足元を見て、影のないそこを見た俺は――居てもたってもいられなくなって、ここに来た。


 そして、山奥の小さな丘にひっそりと建てられたこの墓を、見つけ出したんだ。


 ――ギン=クラッシュベル、此処に眠る。


 そう、十字架をモチーフとして作られた墓には、しっかりと刻み込まれていた。

 この墓を見つけた時は、どう思ったんだったか。

 ただ、凛ちゃんが泣き崩れて、仲間達が愕然としながら涙する中――


「お前は……本当に死んだのか?」


 ただ、それだけを思っていた。

 お前は、本当に死んだのか?

 お前が死ぬなんて考えられない。

 考えたくない。

 だって、俺は――


「なぁ、ギン……。俺、まだお前に……、なんにも、返してねぇんだよ……」


 俯いて、そう絞り出す。

 ――恩があった。

 返しきれない、恩があった。

 けれどコイツは、その恩を尽く拒絶して行っちまった。

 俺の前から、笑って去っていった。


『もしもの時は、殺していいから』


 未だにあの言葉の意味はわからない。

 もしもの時。

 それが、もしも自分を殺してくれって意味だったんなら……。


「なんで、お前が死んでんだよ……ッ!」


 拳を地面へと叩きつける。

 弱々しい拳に――力の入らない拳に、砂煙が舞う。

 そして、背後から、足音が聞こえてきた。


「おいおい、久瀬竜馬。しんみりしてんじゃねぇよ」

「……エルグリッド、さん」


 彼に――エルメス王国の元国王、エルグリッドさんは、座り込む俺の横を通り過ぎてその墓の前まで歩いてゆく。

 そして無造作に、花束を投げつけた。


「コイツには、こんぐらいが丁度いい」


 投げつけられた花束は見事に空中分解し、墓を多くの花で彩って見せた。

 その光景に少し目を見開いていると、彼は疲れたようにこちらを振り向く。


「一体どれだけそうしているつもりだ。こいつは死んだ。他でもねぇ、足元を見れば一発でわかるし……なにより、あの相棒――理の教本が、この墓の存在を知らないわけがねぇ」


 そうだ、理の教本……恭香さん。

 彼女が、この墓の存在を知らないわけがない。

 そして、もしもこの墓が偽物だったならば……それを彼女は、この墓を間違いなく壊しに来るだろう。

 それが無い、ってことは――


「やっぱり……」

「はぁ……、だからしんみりするんじゃねぇっての」


 軽く、拳骨が脳天に突き刺さる。

 痛くはなかった……けれど、その拳はとても、痛そうに見えた。

 ――否、エルグリッドさんが、とても痛そうに見えたんだ。

 物理的にじゃなく、精神的に。

 ギンと知り合いだった彼だからこそ、少なくない時を一緒に過ごした仲だからこそ――辛いんだと思う。


「奴は死んだ。この墓があって、今も壊されてねぇって時点で、この墓はあいつの死を知っている何者かが作ったもの、ってことだ」


 言って彼はその墓に手を触れる。


「――ブラッドメタル。黒かったからもしかして、と思ってたが、やっぱりそういう事か」


 元国王――エルグリッドさん。

 彼は紛うことなき天才。

 俺なんかよりもよっぽど頭がいい。

 そんな天才である彼は墓から視線を切って俺へと視線を向ける。


「おい久瀬竜馬、俺からお前に一つ依頼がある。次期EXランク冒険者筆頭としての、お前にだ」


 ――依頼。

 今、このタイミングで告げられた言葉に思わず眉根を寄せ。



「少なくとも、アイツの仲間は生きている。だからこその依頼だ。アイツの仲間を――恭香ちゃんを探し出し、どうやってあの馬鹿を生き返らせるつもりか聞いてこい。報酬は俺の全財産で構わねぇ」



 思わず、目を見開いた。


「そ、それは――」

「考えても見ろ。あんな『主様大好きー』って体現してるような、港国の連中以上の狂信者共だぞ。死んだ、はいそうですか、なんてなってるわけねぇだろうが」


 ――確かに、そうかもしれない。

 誰よりも彼のそばに居て、誰よりも彼のことを愛したあの人たちだからこそ、きっと泣く暇もなく動き始めている。

 こんなところでクヨクヨしている俺とは違って。


「だ、だけど、その居場所が――」

「あぁ、分かんねぇな。俺らにはなんでも知ってる相棒ってのはいねぇから」


 ――だが。

 そう続けた彼は片目を閉ざして。



「確定させることは出来ねぇが、それでも俺たちにだって、考えることは出来る」



 ――考えること。

 ギンが死んで、彼女らは今何をしているのか。

 俺たちに何も伝えず、彼女達だけで何をしているのか。


 ……やっぱり、わからない。

 俺はギンみたいな天才的な頭脳はない。

 だから考えても、皆目検討がつかない。

 思わず頭を掻きむしり、それを見ていたエルグリッドさんは小さくため息をついた。


「もしかして、アイツらが今何してるか、とか考えてねぇか? 先に言っとくけどそんなこと考えても分かりっこねぇからな」

「はっ?」


 思わず間抜けた声が漏れる。

 分かりっこない?

 なら、一体何を――

 思わず目を見開いた俺へと。



「考えるのは内容じゃない――場所だ」



 彼は、人差し指を立ててそう言った。

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