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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
竜国編Ⅱ
507/671

影―至りし末路―

「く、ぁっ……」


 思わず瞼を瞑る。

 ――死。

 そして――敗北。

 目の前へと迫るその白銀色の刀身に、私はついに、現実を見ることを放棄した。


 ――済まない、サタン、皆……。私はどうやら……、ここで、お前達諸共死ぬようだ。


 頬を涙が伝う。

 そして――




「……?」



 いつまで経っても『死』が訪れないことに困惑した。


「な、何故……って、うおぁっ!?」


 言いながらも目を見開き――直後、目の前へと突きつけられていたその剣に思わず悲鳴を漏らす。

 気がつけば尻餅をついてしまっており、我ながら恥ずかしい姿に咄嗟に執行者を睨み据える。


「き、貴様……ッ! この期に及んで私を殺さぬ気か!」


 見上げる先には、剣を私の目の前で止めていた体勢のまま動かない弟の姿がある。

 しかしこれは、侮辱行為だ。

 私は必死に戦った。

 命を賭けて、仲間を見殺しにしてまで戦った。


 その末に――敗北した。


 なのに、何故――


「私を殺せ執行者! 私を侮辱、する……気、か?」


 けれど、その言葉は徐々に小さくなってゆく。

 理由はその姿に――弟の姿に、違和感を覚えたから。

 その理由の最たるものが。



「……何故、返事をしない(・・・・・・)?」



 背中に、怖気にも似た何かが走り抜ける。

 ――まさか。

 有り得ない、有り得るはずがない。

 ……だが。


「お前、もしかして――」


 目を見開き、咄嗟に立ち上がる。

 そしてその直後――ボロボロと、先程まで光り輝いていた奴の銀腕が崩れ落ちた(・・・・・)


 カランッ……。


 銀腕が握りしめていた『神剣シルズオーバー』が地面へと転がり落ち、足元に転がったソレを恐る恐る掴み上げる。

 白銀色の刀身に、黒色の柄。

 曰く、持ち主の精神力が――魂が、折れぬ限りは絶対に折れることがない、使い手によって最強にも最弱にも至れる神剣。


 それが今では――黒く、色褪せていた。



「お前――死んでいるのか?」



 弟の体が地面に崩れ落ちたのは、丁度そう、呟いた時だった。




 ☆☆☆




 その時。

 私の中で、何かが消えてゆく感じがした。


 そしてそれと同時に。


『うわっ!?』


 突如として『本』の状態へと強制変換されたせいか、思わず悲鳴が漏れてしまう。

 それには一緒に来ていた白夜と全能神様も驚いたように目を見開く。


「ど、どうしたのじゃ恭香! こ、こんな一大事にそんなふざけたことを――」

「ま、まさか――」


 二人共、多分この現象を一番望んでなかったんだと思う。

 本へと戻ったのは、私の意志ではない。

 他に私を本へと戻せるのはギンだけ。

 けれど、普段の彼にそんな力なんてない。

 この現象が――強制的な力が働くのは、唯一。



『ギンが……死んだ?』



 呟いた言葉に、白夜が結界を殴りつけた。


「そんな訳なかろうが! ギン様は……、主様はッ! そんな、こんな事で死んでしまうほどの人ではないッ! そんな冗談、二度と言うな!」

『わ、私だって! 信じたくないよ!』


 信じたいわけがない。

 信じたいなんて……思えるわけがない。

 だって、ギンは――



『はっはっは、大丈夫。僕は誰にも負けたりしない』



 かつて彼が言っていた言葉を思い出して、思わず涙が溢れそうになる。けれど本の状態じゃそんなことは出来ない。

 だからこそ、涙も流せない私が、ギンが辛い時にそばにいてあげられなかった私が……、何よりも、嫌いになりそうだ。


「――ッッ!?」


 全能神様が驚いたように目を見開き、周囲を見渡す。

 そして――世界に異変が起きたのは、その直後の出来事。



「せ、世界が――」



 その時世界から――影と、太陽が消えた。

 世界を占める闇と光。

 その両方が消失し――世界は、灰色に染まった。


『な、何が……』

「や、やっぱり……」


 驚愕する私を他所に、全能神様は泣きそうに顔を歪めてそう呟き――直後、破壊音が鳴り響く。

 目を見開いてそちらへと視線を向ければ、そこには結界を拳で――たしかに『壊した』白夜の姿があり。



「――だから、言うなと言っておるじゃろうが。それ以上言うとお主でも容赦せんぞ」



 怒りに、無力感に。

 ただ困惑し、涙を浮かべる彼女は。



 その左眼(・・)を、銀色に輝かせて(・・・・・・・)そう言った。



 ――彼女の手の甲から、あの紋章は消えていた。




 ☆☆☆




 その日、その時。


 影の物語は、静かに幕を閉じた。


 ――王の素質。


 誰かに殺されることのない、絶対の資質。


 歴史上類を見ない『素質』を持った者同士の激突は――内片方の、自滅という結果に幕を閉じた。


 影の中に取り込まれていた『太陽』もまた消滅し、世界からは影と太陽が消失し、灰色に包まれた。


 しかしその――通称『灰化』は混沌たちの住まう『悪魔界』を中心として、その世界に隣接する世界から進んでいるようで、時空間的にかなりの距離の存在する世界に被害が出るのはかなり先のことになるのだとか。


 また、これは余談となるが、『影』の魂の確保、及び最悪の場合は転生まで視野に入れた死神は、灰化の直後にすぐ行動を起こすも、アルファの魂こそ見つかったものの、辛うじて器の残っている者達――大悪魔全員と、そして『影』の魂だけは、見つからなかったのだそうだ。


 ――影。

 執行者、ギン=クラッシュベルの死。

 どこからか漏れだしたその情報は瞬く間に大陸中へと拡散され、彼のクランがかつて存在していた場所からほど近い森の中に。


 ――ひっそりと、墓が作られたのだそうだ。




 ☆☆☆




 パタンと、本を閉じる音がする。


「クハハッ、やはり死にましたか。あらかじめ未来を見ていたとはいえ、彼に肩入れしていた分、少しショックでもありますね」


 木に背中を預けたメフィストは、近場の街で購入した『変わった世界と伝説の死』という本の表紙へと視線を落とす。


「にしても、一体どこからこんなにも詳しい情報が出回ったのでしょうかね。あれから一年も経っていないのに」

「さぁな。俺に聞かれても」


 メフィストの遠まわしな表現に、感情の酷く欠けた、冷たい声が返ってくる。

 その言葉にメフィストは口元に笑みを浮かべると。


「あぁ、貴方は彼ほど頭が良くないんでしたね。ならばストレートに聞きましょうか」


 メフィストは本を放り投げる。

 彼の視線は真っ直ぐ、その墓の前に立つ一人の人物へと向かっていた。


 ――赤いローブに、仮面を被った白髪の男。


 メフィストは、十字架をモチーフとされた質素な墓を前に佇むその男の名を、口元の笑みを隠すことなく呟いた。



「さぁ、ギン=クラッシュベルは死にましたよ。そろそろ動き始めてはどうですか? ギル(・・)



 男は――ギルは、仮面の下で笑って見せた。


【最終ステータス】

名前 ギン=クラッシュベル (23)

種族 到達せし吸血鬼

Lv. 999

HP ―――

MP ―――

STR ―――

VIT ―――

DEX ―――

INT ―――

MND ―――

AGI ―――

LUK ―――


ユニーク

影神Lv.5 ★

太陽神Lv.5 ★

開闢Lv.3 ★

炎天下Lv.5 ★

原始魔法Lv.5 ★

超越神祖

絶歩Lv.5 ★

戦の神髄Lv.5 ★


アクティブ

テイムLv.10 ★


パッシブ

並列思考Lv.10 ★

魔力操作Lv.10 ★

超直感Lv.10 ★

存在耐性Lv.10 ★


称号

愚かなる到達者 陰陽を司りし者 伝説の男 迷い人 SSランク冒険者『執行者』『冥王』神々の加護 世界竜の友 宗狂の主神 女たらし トリックスター 救世主 悪魔の天敵 竜殺し 原初の理 月の眼


従魔

ノーライフキング

レオルギア

フェンリル ・ロード

世界竜バハムート

ペガサス・ロード

ヴァルトネイア


眷属

オリビア・フォン・エルメス

マックス

アイギス

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
― 新着の感想 ―
[一言] ギンが死んだのになぜ、ギルは生きているの?!ギンの未来人じゃなかったの?
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