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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
竜国編Ⅱ
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影―113 万喰の陽影

「クロエッ!」


 叫ぶと同時、バチチッと体中を稲妻が駆け抜ける。

 ――銀滅雷牙。

 炎十字の第三段階の能力にして、圧倒的な雷の力。


「『導電回路(レヴィアンダール)』」


 周囲へと無数の雷が走り抜け、一瞬にして雷の道が出来あがる。


「『電流体(エレクトロマイン)』ッ!」


 次いで体へと流れる雷の量が増大する。

 ――電流体。

 この力は体へと電流を流して身体能力を高める能力。

 だが、この力は導電回路と合わさると――化学変化を起こす。


「――ッ!」


 ギィンッと、火花が散った。

 見れば混沌の腕には何処からか取り出した黒色の剣が握られており、その顔には苦渋の表情が浮かんでいる。


「なるほど……、自らの体を雷の属性に寄せ、伝導回路の中を通っての高速移動……。たしかに厄介だ」

「……まさか、初見で見破られるとは思ってなかったんだがな」


 なにか、先程までとは違う。

 その動きはもう、戦いを忘れた者のものではない。

 その動きは、もう――


「……ふっ」


 小さく、浅く、息を吐き出す。

 何を考えてる。こんなこと分かっていたことだろう。

 一筋縄じゃ行かないって、分かってたことだろう。


「――『暗殺(アサシネイト)』」


 言った――直後。

 僕の姿が一瞬にして掻き消え、周囲の導電回路が輝き出す。

 ――超高速の連続移動。

 先程は躱されてしまったが、今度は流石に混沌といえども見切ることはできないだろう。

 雷の中、ギュッと神剣の柄を握りしめ――



「喰らい尽くせ『終焉(ジ・オーラス)』」



 ――一瞬にして、導電回路が消失した。


「なっ――」

「……そこか」


 突如として地上へと弾き出されたことに愕然としていると、ギロリと体中へと痛いほどの視線が突き抜ける。

 焦って混沌の方へと視線を向けて――目の前に、剣の切っ先が迫っていることに気がつく。


「うぐっ……」


 咄嗟に位置変換をし、その一閃を躱す。

 ――否、躱しきれてはいないか。


「……惜しいな。あと数センチ」


 混沌の声が耳朶を打つ。

 頬に暖かいものが伝って頬に手を当てると、そこには一筋の赤い傷が刻まれている。


「……いきなりどうしやがった、この野郎」


 もう気のせいで済ませられるレベルじゃない。

 間違いなく混沌は――かつての感覚を取り戻してきている。

 それもスロースターターなどと言える速度ではなく――それこそ、瞬きする一瞬すら見逃せないほどに。

 袖で血を拭うと、もうそこには傷は存在していない。

 回復能力は健在――だが、あの剣、間違いなく混沌の力を纏っている。喰らい続ければこちらが弱体化し、逆に向こうが強化されてゆくのは目に見えている。


 ならば――もう、やることは限られてくるというもの。



「――次で、全てを決める」



 影と陽と。

 二つの魔力を汲み上げながら、呟き、大きく息を吐き出す。


「……ほう、来るか、弟よ」


 あぁ、行くよ混沌。

 そろそろ、姉弟喧嘩も十分だろう。

 左手を前に突き出し、手を大きく開く。



「『(よろず)を喰らい、全てを無に帰す暗き影。万を照らし、全てを有に還す太陽よ』」



 体中から魔力が吹き荒れる。

 未だかつて扱ったことが無いほどに膨大な魔力に体中が悲鳴をあげる。体の中で影と陽が激突し、体中へと激痛が突き抜ける。

 筋肉が音を立てて千切れ、腕の筋肉から血が吹き出した。


「させるとでも、思ったか!」


 混沌が腕を薙ぎ払うと同時、彼女の上空へと生み出された巨大な異形の腕が、僕目掛けて同じようにして腕を薙ぎ払う。


「グッ……ゥッ!」


 とっさに右腕を伸ばし、常闇の甲羅を召喚する。

 ――部位具現化。

炎天下(ヴァーミリオン)』の力を得て復活した常闇は、もちろん僕の『開闢』の力も纏っている。ずっと、というわけには行かないが数秒程度ならば稼ぐことが出来る。

 そして――それだけあれば十分だ。



「『我の前に敵はいらず。照らすな喰らえ、万物平等に喰らい尽くせ。影をもって闇と化し、太陽を持って塵と化せ』」



 詰め込むは『太陽の一撃(コロナ・ブラスト)』と『月喰の影(ルナー・イクリプス)』。

 陽の奥義と影の奥義。

 絶対に共にあることは無い、相反する二つの最強。

 それらを共に――混ぜ合わせる。


「グッ……」


 体が断末魔をあげるのが分かる。

 もうこれ以上はよせ、死んでしまうぞ。

 そう、体中の細胞が痛いほどに告げている。

 だが――これが出来なくて、何が最強の座だ。

 こんなのが出来なくって――どうやって最強に到れるんだ。


「チィッ……!」


 痺れを切らした混沌が駆け出す。

 両手に剣を持ち、真っ直ぐにこちらへと駆けてくる。

 その顔には焦燥が浮かんでおり、その瞳は真っ直ぐ、僕の手の中を注意深く見つめている。


「流石に、これを喰らったら拙いってか?」


 それもそうだろう。余波でさえ混沌を傷つけたあの爆発。あの爆心地となった二つの魔法が、共に自らを殺し得る魔力によって重なり、合わさろうとしているのだ。

 混沌さえ危険視するこの一撃。

 なれば――喰らわさなければ損だろう。


「『具現化』」


 呟き、更なる魔力が溢れ出す。

 その数――四つ(・・)


「さて、頼むぞ、僕の仲間達」

「ええ、任せておいてください」


 答えたのは、ダークレッドの髪と、闇のように漆黒色をしたローブを風になびかせる人型のウル。

 その背後には常闇、クロエの姿もあり――そして、ウルの隣には、懐かしい顔が立っていた。


「さーて、クロノス? 私を殺してくれちゃった恨み、ここで存分に晴らさせてもらうわよ! 妨害行為としてねッ!」


 その言葉に、その風になびくオレンジ色の髪に。

 僕は思わず苦笑し、対して混沌は厄介そうに顔を歪める。

 そこに居たのは紛うことなき――太陽神アポロンだったから。


「チッ……、貴様もか、アポロンッ!」

「ええそうよ! 体も魔力も魂も、全てギンの体に取り込まれたのだから具現化出来ない道理はないでしょう!」


 瞬間、彼女の体から金色の炎が吹き荒れる。

 それは、かつて我が身を焼いた神の炎。

 けれど今は――どこか、心地よくて暖かい、懐かしい炎。


「この炎は仲間を絶対に傷つけない! だから全力で行くわよ! ウロボロス、白虎、玄武! 喰われないように気をつけなさいな!」

「分かってます、よッ!」


 ウルの手に巨大な十字杖が召喚され、背後に多くの渦動魔法陣が浮かび上がる。

 そして――クロエの咆哮が轟いた。


『行くぜ! 魔力残量気にせずフルパワーだ!』


 それら全ての渦動魔法陣がギュルルルル……と音を立てて回転し出し、その奥から無数の銀色の槍が放たれる。

 だが、それだけでは終わらないのがこの技だ。それらの槍は魔法陣を通り抜ける際に血色に染まり、絶対破壊の能力をさらに付与される。

 正しく――防御不可の超弾幕。


「クソッ……がッ!」


 歯を食いしばった混沌はさらに体中から魔力を放出すると、先程までは腕しかなかった異形が彼女の背後に召喚される。

 それは――異形の巨人。

 眼窩には両の瞳はなく、その代わりに体中に眼球がギョロギョロと蠢いている、見るだけで吐き気を催すような化け物。


『LUOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』


 声にならない咆哮が轟き、奴はそれらの槍に対して巨大な腕を薙ぎ払う。

 暴風が吹き荒れ、咄嗟に地面を踏みしめる。

 ここで引いてたまるものか。

 コイツらが、頑張ってくれてるんだ。僕の無茶に、嫌な顔一つせずに付き合ってくれてるんだ。

 ここで進まなきゃ――僕じゃない!


「行けッ! 後ろは振り返るな!」


 一斉に駆け出す。

 彼女らは後ろは振り向かない。

 それは大きくて揺るがない――絶対の信頼の表れ、

 我ながら、僕は今まで誰にも頼ってこなかった。

 だからこそ、こうして仲間達に頼るというのはとても新鮮で――それ以上に、どこかその信頼が重く、心地よかった。


『主よ、我が力お使い下さい』


 久しく聞いていなかった常闇の声が響く。

 彼は立ち止まり、大きく口を開くと、その中に巨大なエネルギーが溜まってゆく。更には尻尾の蛇も大きく口を開け、それと同規模のエネルギーを口の中へと貯め始める。


『いいじゃねぇか玄武! 私の魔力も貸してやる! 盛大にぶっぱなしちまえ!』

『言われなくとも――ッ!』


 ――瞬間、二筋の光線が迸る。

 それらは音速を超え、光速にも迫り、二本の光線が重なり、一本となりながら真っ直ぐに混沌へと向かってゆく。


「――ッ」


 轟音が鳴り響き、砂煙が舞い上がる。

 けれど足を止めることは無い。

 ただ――常闇を除いて。


『申し訳ありません……、少し、力を使いすぎました』


 彼の隣を通り過ぎる刹那。

 響いた彼の声に、思わず苦笑してしまう。

 あぁ、それでいい。

 下手に長引かせて消耗戦やるよりも、すごいの一発喰らわせたほうがよっぽどいい。

 たとえそれで力を使い果たしても――


「――助かった、ありがとう」


 振り返らずに、更に加速する。


「さて、次は私が行きましょうかッ!」


 先頭を駆け抜けていたウルが真っ直ぐ砂煙の中へと突っ込んでゆき――直後、剣戟の音が鳴り響く。

 そして、それに追随してクロエの咆哮が轟く。


『なーに馬鹿言ってんだ! テメェだけじゃ力不足にもほどがあんだろ! 私が手伝ってやるよ!』


 銀炎を身に纏ったクロエが砂煙の中の混沌めがけて真っ直ぐに突撃してゆく。

 砂煙で視界を奪われる中、ウルからの奇襲で両手を使わざるを得なかった混沌は小さく舌打ちすると、頭上の巨人めがけて命令を下す。


「この女は私が殺る! その聖獣は任せたぞ巨人!」

『LUOOOOOOOOOOOOOOO!!』


 返事代わりに咆哮が轟いたが――けれど、すぐにその咆哮は絶叫へと変化する。



「終焔――『太陽の一撃(コロナ・ブラスト)』」



 直後、太陽の矢が巨人を貫き、断末魔が響き渡る。

 流石は本家、まさか終焔での奥義をあんなにも容易くこなすとは――流石は腐っても太陽神。

 これは……僕も負けてはいられないな。


「チッ……!」

「ふっ、ステータスはかなりのものですが、技量では私の方が二回りほど上のようですね。これも創造神と肩を並べるだけ生きてるお陰でしょうか」


 ウルの見事すぎる杖さばき、更には断続的に襲い来るクロエの突撃に決定打を決めかねている。

 それに加え――アポロンの『終焔』が襲いかかる。


「『焔柱』!」


 混沌を中心として巨大な炎柱が立ち上る。

 その中心地にした混沌は思わず呻き声を漏らしたが。


「く、喰らえッ!」


 直後、炎柱はまるで喰らい尽くされたかのごとく闇に侵食され、一瞬にして消失する。

 ――終焉(ジ・オーラス)

 さすがの一言に尽きる。ここまでのチートスキル、そうそう類を見ないだろう。

 だが――だがな、混沌。


「二発目行くわよ!『太陽の一撃(コロナ・ブラスト)』!」


 ――僕の魔力で強化された太陽神、予想よりもはるかに強いから、あまり舐めてると怪我するぞ。


「はっ!?」


 まさかの奥義二発目。

 それには思わず混沌もアポロンを振り返り――



「――一瞬、僕から意識を外したな?」



 その背後、砂煙の中から姿を現した僕に、目を見開いた。

 掌の上には、紅蓮と金色、二色によって構成され、凝縮された球体の魔力が。

 一見、ただの球にも見えるこの技。

 しかし、その刹那に振り返った混沌の瞳には驚愕と恐怖がありありと浮かんでおり。

 僕は、情け容赦なく。

 その腹へと、この一撃を叩き込む――!



「全てを喰らえ!『万喰の陽影(サンズ・ダークネス)』ッッ!!」



 ――閃光が迸り、視界が光に包まれた。


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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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