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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
竜国編Ⅱ
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影―106 規格外

床屋行ったら、一番最初、モヒカンの部分にバリカン入れられました。

悪意を感じる……。

 少し時は遡る。

 ギンとアポロンの戦闘が始まった頃、アルファは大悪魔達の前に堂々と立ちはだかっていた。


「さて、向こうも始まったみたいだし、こっちも始めるとするか」


 言って拳を鳴らすアルファ。

 その姿を見てサタンは大きく息を吐くと、瞼を閉ざした。


「貴様らは……一体何なのだろうな。我らが何千、何億年と時を経て身につけた力をたった数年で身につけてしまう。その中でも執行者は頭一つ飛び抜けているわけだが――」


 瞼を開く。

 真紅の双眸がアルファの姿を睨み据え、サタンの体から膨大な威圧感が迸る。


「貴様もまた、油断できる相手ではなさそうだ」


 サタンは、内心で今の執行者と自分が戦えば敗北は確実だと考えていた。それは混沌もわかっていたからこそ、こうしてもう一人の敵対者の元へと送られたわけだが――けれど、アルファもた、油断できる相手とは程遠い。

 ――ギン以上の、得体の知れなさ。

 化け物、怪物。

 ギンよりも余程そんな呼び方が似合う佇まい。

 アルファの体からはほとんど魔力は感じられない。十中八九サタンと同じく純粋な近接戦闘タイプ。

 だからこそ。

 たった十数年しか生きていない男からここまでの威圧感が吹き出していることが――何よりも不気味なのだ。


「ねぇサタン、コイツ確かに、さっきまでの執行者って奴よりは強そうだけど、それでも僕ちゃんたちからすれば余裕なんじゃないの? レヴィに人間にのみ効く毒を散布してもらえばいい話じゃーん」


 ベルフェゴールがふわふわと宙に浮きながら呟いた。

 油断しか窺えない彼ではあったが、その言葉にはレヴィアタンも小さく頷いていた。


「執行者の奴は、規格外ってやつだった。まさか神でもわずか一秒で殺せる毒を十数秒間吸い続けて、それでやっと効いてきたのに毒を吸わなくなった途端に回復された。しかも自然回復。アレは私たちじゃ勝てない――けど」


 レヴィアタンの視線の先には、回復力を持たず、位置変換のような特殊な能力も持たず、そして魔力すら極わずかしか持たないアルファの姿がある。


「あの男は別。規格外でも何でもない、ただの人間。そこらの神々よりは厄介だろうけど、それでも私の毒の前では無力」


 確かに、その考えにはサタンも同意したいところだった。

 だが、彼の直感が痛いほどにこう告げているのだ。

 この男もまた――規格外なのだと。


「……レヴィ、今すぐに人間にのみ効く最上位の毒の拡散を。ベル、貴様は奴の服を操り動きを制限せよ。バアル、ルシファー、貴様らは直接攻撃しろ。容赦はいらん」



 ――貴様らに、『根源化』を許可する。



 瞬間、バアルとルシファーのからだから膨大な魔力が吹き荒れた。

 バアルの身体はかつて久瀬竜馬と戦った際よりも一回り大きい、二メートル超の巨体へと変化し、ルシファーの体もまた、かつてギンと戦った際よりもはるかに強大になっており――


「さて、少年よ。この二体は混沌様の魔力を帯びた存在だ。魔力に触れれば即喰われる。さぁ、どうする?」


 バアル、ルシファーの体からは、混沌と同じどす黒い魔力が迸っていた。

 もちろん混沌と比較すれば総魔力の百分の一にすら及ばない木っ端の魔力だが、それでも耐性を持たない存在にとっては致命的すぎる。


『ヴオアアアアアアアアアアア!!』

『グオアアアアアアアアアアア!!』


 咆哮が轟き、両体が同時に駆け出した。

 それは、常人ならば視認することすらもできない超速。

 ベルフェゴール、レヴィアタンは共に能力を発動するべく両手をかざし、サタンは腕を組んだまま――目を見開いた。



「『十倍速(テンスギア)』」



 直後、大地が砕かれ、陥没した。

 そこには頭蓋を割られ体を痙攣させているバアルと、まだ辛うじて息があるルシファーの姿が。

 思わず、その光景に寒気が走る。


「……おいおい、俺は大悪魔ってのと戦いてぇんだよ。こんなどこにでもいるような雑魚、寄越してんじゃねぇ」


 呆れたようにそう言うアルファ。彼はあれだけの速度を出したにも関わらず先ほどと全く変わらない様子で、そこに佇んでいた。

 ――大悪魔二体を、片手間で瞬殺。

 ルシファーはまだ辛うじて生きているが、それも瀕死の重傷、まともに戦えるほどの力は残っていない。

 ベルフェゴールは頬を引き攣らせ、レヴィアタンは見開いていたその瞼を薄く細める。

 そしてサタンは――笑っていた。


「すまない、バアル、ルシファー。貴様らのことをこの男の力量を測る道具として使ったことは謝ろう」


 ――だが。

 サタンはそう続けて、組んでいた腕を解いた。



「お陰で確信した――この男もまた、規格外」



 どうやって詰ませるかの詰め将棋ではなく。

 どうやって勝つかの、殺し合いなのだと。

 サタンは改めて実感し、笑った。

 あの三人以外に、自分にここまで危機感を抱かせることの出来る『敵』がまだいた事に。

 全能神ゼウス。

 獄神タルタロス。

 執行者ギン=クラッシュベル。

 そして――この男。


「名を聞こうか、規格外の戦士よ」


 言ってサタンは、その体から炎を吹き上げた。

 ギンとの戦闘時でさえ最初から使用することがなかった憤怒の炎。根源化に近くなればなるほどに使用できるその炎は、現時点でさえ、アポロンの『始焔』にすら迫る熱量を誇る。


「我が名はサタン。大悪魔序列一位『憤怒の罪』を司る最強の大悪魔だ。そして俺は――貴様よりも遥かに強い」


 その言葉を受け、アルファもまた獰猛な笑みを浮かべる。


「俺の名はアルファ。お前さんみたいなカッケェ肩書きなんざ特にはねぇが……」


 ――それでも。

 ぎゅっと両の拳を握りしめたアルファは、爛々と紫色の双眸を煌めかせて。


「会いたかったぜ、執行者をぶちのめしたって噂の大悪魔。悪いが今日がお前の――命日だ」


 笑いながら、アルファはサタンめがけて駆け出した。




 ☆☆☆




 迫り来るアルファを見て、サタンは二人めがけて声を上げる。


「レヴィ、ベル! 今すぐに根源化して参戦しろ! 今の貴様らでは根源化しなければ相手にならん!」


 その言葉に一瞬驚いたように目を見開いた二人ではあったが、すぐにきっと口を切り結ぶと、一気に魔力を解放させる。


「「『根源化』ッッ!!」」


 周囲へと緑色と青色のオーラが吹き荒れ、その中から二体の怪物が姿を現す。


『ヴオオオオオオオオオオオオ!!』


 青いオーラの中から現れたのは、巨大な体を誇る蒼龍だった。

 体中からは青い瘴気が吹き出しており、双眸は怪しげな光を放っている。

 大悪魔序列四位――『嫉妬の罪』レヴィアタン。

 あらゆる毒を司る、最強の毒龍。

 そして――


『ギチチチチチチチ……ッ!』


 緑色のオーラの中から現れたのは――巨大な蠍だった。

 体の周囲には計十本の巨大槍が浮いており、蠍の体とそれらの槍には緑色のオーラが纏われていた。

 大悪魔序列六位――『怠惰の罪』ベルフェゴール。

 万物を操り、支配下に置く最強の蠍。

 対してそれを見たアルファは口元の笑みを濃くする。


「さぁ! 根性見せろよ、この天才共が!」


 ――十倍速(テンスギア)ッ!


 一瞬にしてアルファの姿が加速し、全てを置き去りにして走り出す。速度は既に亜音速の域。

 しかし、対してサタンは――素でその速度に対応する。


「フンッ!」


 アルファの拳を弾き流すと、アルファの胴体めがけて掌底を繰り出した――が、直撃の直前にアルファの速度がさらに加速する。


「ハッハッハ!『十五倍速(フィフティーンス)』!」


 通常時の十五倍。

 先程よりもさらに早い速度にサタンの掌底は空を切る。

 アルファは得意げな笑みを浮かべてサタンの横顔を窺い見て――自らの姿を捉える真紅の双眸に、背筋に悪寒が走った。


「――ッッ!!」


 咄嗟にその場を飛び退るアルファ。

 それにはサタンも目を見開いて驚きを顕にする。


「……なるほど、気配察知と危険察知は執行者をも超えるか。これはなかなかに厄介だが、それも――」



 ――総合的な実力では、執行者には遠く及ばないな。



 その言葉を、サタンは最後まで言い切ることは出来なかった。

 突如として、目の前に現れた拳のせいで。


「――ッ」


 咄嗟に身を捻って躱す。

 しかし、躱し切ることが出来ず、サタンの頬には一筋の赤い傷跡が刻まれる。


「おい、言っていいことと悪いことがあるって、父ちゃん母ちゃんに習わなかったのか?」


 いつの間にか目の前にまで移動していたアルファは怒りを滲ませてそう呟き、サタンの方へと拳を下ろして視線を向けた。


「き、貴様……ッ!」


 手を抜かれていた(・・・・・・・・)事実。それはサタンの煮えたぎる憤怒の蓋を――微かに開いた。

 アルファはサタンへ向けて手招きすると。



「いいぜ、来いよサタン。俺はアイツが燻ってる間もずっと修行してたんだ。お前やアイツごとき負けちゃいねぇってこと、思い知らせてやる」



 サタンは青筋を浮かべて、獰猛に笑った。




こっちも激アツで行きます。

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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