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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
竜国編Ⅱ
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影―098 最悪の一手

 もしも、出会いが今と違っていたら。

 最近になって、よくそんな『もしも』を考える。

 敵としてではなく、味方として出会っていたなら。

 きっとそれは良い未来だ。

 幸せな未来だ。

 きっと、自分もアイツも笑っていられる、不幸なことなんてありはしない幸せな未来。

 昔馴染みの知人を殺す必要もなければ、こうして弟を殺す算段を考えずにも済んでいた。


「……混沌様、本当に宜しいのですね?」


 配下の男がそう問いた。

 短く刈られた白髪に真紅の瞳。

 黒いコートに見を包むその姿は威風堂々としており、私よりもずっと覚悟が決まっているようにも思えた。


「無礼を承知で申し上げます。この作戦、これほどまでに完璧なものは無いと断言できますが、それでも下手をすれば我ら大悪魔全員が死ぬでしょう。あの男を敵に回すというのはそういう事です」

「……ほう、随分と買っているのだな」


 その言葉に、奴は答えはしなかった。


「……その結果、あの男は間違いなく――死ぬでしょう」


 紛うことなく、一部一厘の狂いなく、その結果世界が滅びようとも、絶対に――生命を落とす。

 そういう男の言葉は、恐らく近い未来、本当になるだろう。

 ――王の素質。

 誰にも殺されないという才能を持った者同士が戦えばどうなるか。今の今まで誰も試そうともしなかった――否、試すことすらできなかった。

 だからこそどうなるのか分からない。

 けれど、予想することは出来るというもので。


「素質の小さい者が、死に絶える……か」


 片や現在の最強にして、絶対不滅の力を持った存在自体が反則級といって差し支えない――現時点における万物の頂点。

 片や未だ壁すら超えることの出来ない吸血鬼。ステータスではこちらの足元にも及ばず、数多の能力を持ってこそいるが、それも反則級と言えるようなものは無い。

 ――さて、どちらの素質が小さいか。

 そう聞かれれば……答える必要は無いだろう。


「……再度問います。本当に宜しいですか? 我ら大悪魔全員の命を犠牲にし、その上で弟君をその手にかける覚悟――」



 ――最終決戦に臨む覚悟は、出来ておりますか?



 その言葉に、私は答えはしなかった。

 ただ、口の端を凄惨に吊り上げて。




 ☆☆☆




 改めて、動かなくなった分体を見つめていた。

 強くはなかった。

 けれどその分、厄介だった。


「……この世界じゃなきゃ、どうなってたか」


 僕の幻想の紅月(ルーアン・イルゾニア)でも、輝夜やソフィアの世界でも、きっとコイツは封じ込めておくことなんて出来なかっただろう。

 この世界で戦うことが出来たのは、あくまでも僕ら三人が集まった結果であり。


 ――僕一人じゃ、勝てたとしても被害を最小限にすることなんて出来やしなかった。


「……なるほど、久瀬の言い分も一理あるか」


 あんまり良く覚えてないけれど、皆で強い方が強い、と言ったようなニュアンスだったか。

 確かに、僕一人で戦うよりもメリットはある。

 しかし、今の僕と彼女らじゃ実力差が離れすぎている。その問題点についてどうにか出来れば……あるいは。


「混沌にも、勝てるかもしれない……か」


 呟いて背後を振り返る。

 そこにはわいわいと楽しげに笑って騒いでいる彼女らの姿があり、それだけ見ているとなんだか僕っていらないんじゃないかとも思えてくるけれど。今更そんなひねくれた事を言う僕でもない。


 ――僕にはあいつらが必要で……、あいつらがどう思ってるかは知らないけど、でも、必要とされていてほしい。されていたら、嬉しいと思う。


 改めて、知性をやめてから少し正直になりすぎてるなと苦笑しながら、踵を返して彼女らの方へと歩き出した――




 ――直後、体を衝撃が襲った。




「……が、……ッ!?」


 咄嗟に、声が出なかった。

 ポタリ、ポタリと、純白の砂浜に真っ赤なシミが広がってゆく。

 体から力が……ステータスが(・・・・・・)抜けてゆくような感覚を覚え、驚愕に目を見張りながら視線を下ろして――


「……ッッ!?」


 腹部から生えている異形の腕に、目を限界まで見開いた。


「ま、まさか……ッ」

「そう、そのまさかだよ、執行者」


 背後から、小さく声が漏れた。

 聞き覚えのある中性的な声が。


「全く、貴様には驚かされるばかりだぞ、執行者。国ごと消滅させるつもりで分体を送り込んだつもりが……、まさかこうも容易く倒されてしまうとは。中に入っていた(・・・・・・・)私の気持ちにもなってほしいな」

「中に……ッ!?」


 よく考えれば、きっと簡単に推測できただろう。

 分体とはいえ、今の僕からすれば厄介なだけで弱々しい存在。そんな存在に、たとえトラウマがあるとしても――恐怖するはずがない。

 なのに恐怖した。それは何故か?

 ――答え、分体以上の何者かの存在に恐怖していたから。


「ぅぐっ……がァ……ッ!」


 何とか腹部から腕を抜いて解放される。

 鎧には一切傷はついていない。

 ただ――


「ぐっ……、『ステータス』!」



 名前 ギン=クラッシュベル (23)

 種族 堕ちた吸血鬼

 Lv. 999

 HP 160,000,000

 MP error

 STR 180,000,000

 VIT 140,000,000

 DEX 240,000,000

 INT error

 MND error

 AGI 220,000,000

 LUK 350


 ユニーク

 影神Lv.5 ★

 開闢Lv.3 ★

 月光眼Lv.5 ★

 原始魔法Lv.5 ★

 超越神祖

 絶歩Lv.5 ★

 戦の神髄Lv.5 ★


 アクティブ

 ブレスLv.10 (共有) ★

 テイムLv.10 ★


 パッシブ

 並列思考Lv.10 ★

 魔力操作Lv.10 ★

 超直感Lv.10 ★

 存在耐性Lv.10 ★


 称号

 愚か者 生ける伝説 迷い人 SSランク冒険者『執行者』『冥王』神々の加護 世界竜の友 宗狂の主神 女たらし トリックスター 救世主 悪魔の天敵 竜殺し 原初の理 月の眼


 従魔

 ノーライフキング

 レオルギア

 フェンリル ・ロード

 世界竜バハムート

 ペガサス・ロード

 ヴァルトネイア


 眷属

 オリビア・フォン・エルメス

 マックス

 アイギス



「な――」

「ステータス、スキル共に喰わせて貰ったぞ」


 そのステータスに思わず愕然とした。

 僕の魔力量は、常時少なく見積もっても二十~三十億程度で、普段はerrorとなって閲覧不可となっているが。

 ほかのステータスもそれほどではなくとも、創造神と互角……だいたい最低でも七億前後だと測定済みだった。

 それが……一億台まで下がっている、だと……?

 他にも血液操作、眷属召喚、スキル合成なんかのスキルも消えており――


「そのステータスで、まだ私に勝とうなどと思えるか? 執行者よ」


 ――次の瞬間、僕の視界は一瞬にして移り変わっていた。

 一言で表すならば――地獄だろうか。

 木々は一本たりとも生えておらず、広がるのは地平線の彼方まで何も存在していない荒野だけ。

 大地は血が染み込んだように血色へと変色しており、紫色の空には真っ赤な月が浮かんでいる。



「――ようこそ、我らが【悪魔界】へ」



 声が聞こえてきて、勢いよく視線をあげた。

 そして――真の絶望を、目の当たりにした。


「な……あ……っ」

「ふん、流石に貴様とて、俺たちを前にしては声も出ぬか」


 腕を組み、眼科の僕を見下ろすは大悪魔序列一位、憤怒の罪を司るサタンだ。

 そして――その背後には、計五体の悪魔達が。


「あらぁん。初めまして可愛いボウヤ♡ 私の名前はベルゼブブ。大悪魔序列三位、暴食の罪を司ってるわぁん」


 ピンク色の髪に黒い瞳。バーテンダーのような服装を着た男がそう言った。


「……大悪魔、序列四位。嫉妬の罪のレヴィアタン」


 羽衣を身に纏い、三メートル近く伸ばした青い髪をした女性が呟いた。


「ぶっ殺す!! 今すぐにでもぶっ殺すッ!!」


 真っ赤だった髪を真っ白に染め上げた大悪魔序列五位――傲慢の罪ルシファーがそう叫び。


「あははー、はじめまして。僕ちゃんが序列六位、怠惰の罪を司るベルフェゴールだよ。んでー、こっちが自我を奪われた状態で復活させられた序列七位、バアルのじいちゃん。今は呻き声しか出せないから気をつけてねー」

「ヴゥ……、ウゥゥヴゥァ……」


 右目を隠すように緑色の髪を伸ばした、黒コートに指貫グローブをした少年が、隣に浮遊する見覚えのある大悪魔を紹介する。

 そして、最後に――


「……久しぶりね、ギン」

「あ、アポロンッ!」


 そこに居たのは、僕の親友――太陽神アポロン。

 太陽のようにオレンジ色だった髪は真っ白になり、いつも笑っていた顔には――無表情が貼り付けてあった。


 最悪にして最強のラスボス――混沌(カオス)

 大悪魔序列一位――憤怒の罪、サタン。

 大悪魔序列三位――暴食の罪、ベルゼブブ。

 大悪魔序列四位――嫉妬の罪、レヴィアタン。

 大悪魔序列五位――傲慢の罪、ルシファー。

 大悪魔序列六位――怠惰の罪、ベルフェゴール。

 大悪魔序列七位――原書の悪魔、バアル。


 そして――我が友、太陽神アポロン。


 対する僕はスキルを失い、ステータスを失った。

 先程から月光眼による脱出を試みているが……。


「残念だったな。貴様をここに連れてきた魔道具。そして今現在、我らを封じ込めている魔道具は共に我らの秘宝――奥の手だ。この結界魔道具に関しては貴様も身に覚えがあるだろう?」

『!? ご、ご主人様! この結界、アスモデウス戦の時に閉じ込められたものと同じ――いや、それ以上のものです!』


 ウルの声が響き、小さく舌打ちをした。

 対して、僕の苛立ちを見て凄惨な笑みを浮かべた混沌は。両手を大きく広げると――


「さぁ、待たせたな弟よ!」



 ――全てを終わらせよう、最終決戦だ!



 頬を、大粒の冷や汗が流れ落ちた。



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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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