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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
箸休め編 ~無神世界~
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幕間 勇者コメディの大冒険 ②

シリアスしか書いてこなかったせいか、ものすごく執筆速度が遅い……。

 刀身が半ばから折れている剣。

 目の前にはゴブリン。

 能力もなければステータスもかなり低い。

 つまりは……まぁ、そういうことだ。


「くそったれえええええッッ!」


 ただ今現在、ゴブリンから逃走中。

 まさか、まさかである。

 ここまで成長しておいてゴブリンに追いかけ回されるとは思ってもいなかった。神にまで至っておいてゴブリンにすら勝てないとは思ってもいなかったのだ。


『グギャッ! ゲギャギャッ!』


 すぐ後ろから気色の悪い嘲笑が聞こえて来て、咄嗟に真横へと緊急回避を行うと、つい先程まで僕がいたところを通り過ぎる凶刃。まさか初期装備よりもゴブリン装備の方が何倍もいいとは思わなかったぞおい……。


「っていうかなんで初期装備の時点でぶっ壊れてんだよ!? なに、僕って剣折れてても使えるような七つの大罪じゃないんですけど! サタンにでも渡して出直してこうおあぁっ!?」


 叫んでる途中にも襲いかかってくるゴブリン。

 やばい。

 やばいやばいやばい。

 これ本当にやばい。

 いきなりカッコつけたはいいけど、よりにもよって最初の(ゴブリン)相手にゲームオーバーとかちょっとシャレにならない。


「くうっ……!」


 体が鉛のように重い。

 なんとか、今まで培ってきた経験、そして全細胞の直感までフル動員してなんとか躱せているのだが……それも、長くは続かないだろう。

 思わず内心で舌打ちし、歯を食いしばる。

 いい加減焦ってきた様子のゴブリンが大振りの剣を振り下ろし――その直後、一閃を躱したと同時にゴブリンの腕を掴み、背負い投げの要領でぶん投げた!


「うおらぁぁぁぁっっ!!」

『グギャァッ!?』


 吹き飛ばされてゆくゴブリン。

 そして僕の足元には、奴がその際に手放したロングソードが転がっており、思わず口元を緩めながらその剣を手に取った。


「よしっ! これで――」


 言って、きちんとした方の剣を構えたその時だった。

 バンッ!

 突如として視界が暗転し、少し向こうの方でうずくまっているゴブリンにスポットライトが当たった。


「……へ? え。な、なにこれ……?」


 虚空からスポットライトが当てられているという超常現象に思わず困惑した声を漏らす。

 しかし、そんなことは知ったことかと、更なる超常現象が起き始める。


『――これは、数年前の出来事』

「おい! なんかナレーション入り始めたぞ!?」


 何なんだこの世界は。

 なんでいきなり戦闘中にナレーションが入ってんだよ。

 思わずツッコミかけた僕に対して、そのナレーションは淡々と語り始めた。




 ☆☆☆




 これは、数年前の出来事。

 ゴブゴブの森の南西部に位置する、緑ゴブリンの集落。そのはずれに、小さな家が建っていた。


『ゴブッ、ゴブゴブッ?』


 当時、森の南部に居を構えるオークの集落と、彼らゴブリンたちとの戦争が勃発していた。

 故に、集落の働き手の男ゴブリンは皆戦争へと駆り出され、それはこの一家の父親とて例外ではなかった。


『グキャッ。グギョガキャッ、ゴゴブッ……』

『ゴゴギャッ……』


 言って、少しだけ大きくなってきたお腹をさする妻。

 その姿を見て、目を見開くその夫ゴブリン。


『グゴギャッ!?』

『グゥ……。ゴゴグギャ、ガガギャゴグギャギャ……』

『グ、グガ……』


 言葉少なくその事実を伝えた妻に、夫は咄嗟に言葉が出てこなかった。


『グギャゴクッ、ゴギャギャ、グギャッ。ギャギャ……ゴッギャグギャ、グゴギャッガ……?』

『……ゴブッッ!!』


 涙ながらの懇願に、拳を握ってそう答える。

 絶対に、絶対に帰ってくるのだ。

 彼女に――そして、我が子に、もう一度元気な姿で相見えるために。

 夫はコクリと小さく頷き、覚悟をその瞳に宿して踵を返した。

 それが、絶望的だと知っていた。

 けれど妻はそれを信じて、その背中が見えなくなるまで手を振り続けた。


 ――しかし、夫が帰ってくることはなかった。


 戦争が終わり、事後処理も終わって、ゴブリンの集落には平和が戻ってきた。

 そして夫の代わりに――夫が愛用していた、剣が戻って来た。


『コプッ? コプコプッ?』

『ゴブブッ……、ゴブッ……ゴブ――ッ!』


 その剣を抱く母親に、息子はそう尋ねた。

 けれど母は涙して、ただひたすらに彼へと謝るばかり。

 ゴブッ、ゴブッ。

 その言葉を繰り返した。

 涙を流しながら、ずっと、日が暮れるまで。

 剣と息子を抱きしめながら、涙し続けた――




 ☆☆☆




「――うん、何言ってるか分からない」


 とりあえず、ゴブリンを切り伏せながらそう呟いた。

 いやね、ストーリーはまぁまぁ感動的だったよ? ただ……その、ゴブリン何喋ってるか分からないんですもん。

 何だかこの剣、あの母親が持ってたやつにすんごい似てるな、とか。

 今切り伏せたゴブリン、もしかして息子さんだったのかな、とか。

 そんな気持ちはあるけれど、同情して油断すればこっちがやられてた。だから、斬った。


「……魔王シリアスか。なかなかに厄介な敵だな」


 並の勇者なら『き、斬れない……。僕にはこのゴブリンは斬れないよ……ッ!』とか『う、嘘だ……、ご、ゴブリンがこんなふうに生きてるだなんて……!』だとか。

 そんな「おいおい、もうちょっと非情になれよ勇者」とでも言いたくなる、ちょっとイラッとくる感じの流れになるのだろうが、生憎と知性の化物を卒業したって言っても、そこら辺は基本的に変わらない。


 ――殺そうとしてくる奴は、殺されても文句は言えない。


 それだけは不変のルールだ。

 言って半ばから折れた方の剣を鞘へと収め、ゴブリンから奪った――そうだな、夫ソードってのは不謹慎すぎるし、とりあえず普通の剣、としておくか。普通の剣を振って血を払った。


「レベルアップ……とかは、無さそうだな」


 それどころかステータスがあるかも危うい。さっきからステータスって念じてるのになんにも出てきやしないし。

 小さくため息を吐いて、周囲を見渡す。

 もしも他に敵がいたら、レベルアップがないと知った今、戦う必要は皆無に近い。だからこそ、もしもそんな場合は逃げ出そうと考えていたのだが――


『グギャガアアアアアア!?!?』


 ……なんだか見覚えのあるゴブリンが、こっち目掛けて駆け出してきた。正確には倒れてる方のゴブリンめがけて。


『ゴブッ! ゴブバッァッ!』

『ご、ゴブッ……』

『ゴブバァッ!?』


 駆け寄ってなんか「か、母さん……」みたいなことを言い出したゴブリンに寄り添って、すぐにそのゴブリンは僕の方を睨み付けた。


「お、おおぅ……」


 なんだろう、物凄く斬りにくい。

 今にも死にそうなゴブリン(息子)っぽい方は、『母さんだけは、見逃してあげて……』みたい瞳で見つめてくるし、ゴブリン(母)っぽい方は涙を滲ませてこちらを睨みつけてきている。

 ……どうしよう、めっちゃ斬りにくい。


「……」


 スッと、剣を振りかざす。

 母ゴブリンはぎゅっと瞼を閉ざし、息子ゴブリンは『ゴブゥウウウウッ!!』と叫び声をあげる。

 そして、僕は――!


「……クソッ」


 ――剣を下ろして、踵を返した。

 予想していなかったのか、ゴブリンたちは目を見開いて無事な現状に驚いており、それをチラリと後ろ目で見た後、スッと視線を逸らした。

 甘いって言われてもこれはしょうがないだろう。

 殺そうとしてきた相手を生かすとか、何を言われてもしょうがないと思う……けれど。


「あそこで殺してたら、いろいろと嫌われそうだからなあま……」


 主にオリビアとか、ネイルとかに。

 言って苦笑すると、普通の方の剣の刀身へと視線を向けて歩き出す。

 その刀身は、まるで(・・・)新品のように(・・・・・・)光り輝いており、刀身には僕の顔がしっかりと映り込んでいた。



 ――そして、背後から襲い来る、母ゴブリンの姿も。



「なぁっ!?」


 咄嗟に振り返る。

 そこには先ほどの『涙』など嘘だったかのように、嘲笑を顔に貼り付けた母ゴブリン。そして、ニタニタと笑みを浮かべている息子ゴブリンの姿が視界の端に映り込む。

 母ゴブリンの握る短剣が目の前に迫る。


 新品のような、父が愛用していた剣。

 戦場へと行って、剣だけが返ってきた。

 先ほどの様子から一転した現状。

 そして――嘲笑。


 全てのピースが一致し、その答えを叩き出した。


「ま、まさか――ッ!」


 ――騙された。

 見せられた映像は全て――嘘だった。

 その至った答えに思わず歯噛みし、目の前の短剣が僕の体へと突き刺さる――!



「やはり貴様は甘い。執行者」



 ――その、刹那。

 聞き覚えのある、それでいて本来、こんな場所には居ちゃいけない男の声が響き渡り、目の前の母ゴブリンの姿が掻き消えた。

 ――否、横合いから殴り飛ばされた。


「な……、なな……っ!」


 目の前には、煙をあげる大きな腕が。

 その腕をたどれば、そこには見覚えのありすぎる巨体に、風に揺れる白色の髪。そして、こめかみから生えている山羊のような大きな角。


「お、おおお、おまっ! お前は――っ!」


 有り得ない。

 有り得ちゃいけない。

 なのに、そこには、奴がいたのだ。



「久しいな、執行者。和の国で戦った以来か?」



 そこに居たのは、大悪魔序列一位。


 憤怒の罪を司る大悪魔――サタンだった。

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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