第40話
新しいキャラが出てきます
「それではギン様方、こちらですので付いてきてください」
やっとブルーノから開放された僕たちは騎士団の面々に連れられてパシリアへと向かってゆくのだった。
「それにしても騎士多すぎないですか?」
僕たちの周り、つまりは護衛だろう。
それだけなのに騎士が20人近くもついて来ているんだ。これで疑問に思わない奴はいないだろう。
「い、いえっ、もしも万が一の事があれば大変なのでっ! それに我々には敬語は不要なのですよっ、ギン様っ!」
そう元気よく返事したのは僕の隣にいた女騎士さんだった。彼女は水色の瞳と髪をしており、その髪は短く切りそろえている。パッと見白夜みたいな髪型だ。身長は恐らく155cm程だろうか? ただ、限りなく白夜と似た匂いがする。
うん、きっとこの娘はアホの娘だ。
ただ、まぁ、なぜこんな描写をしたか、と言うと。
「あれ、君ってなんで剣持ってないの?」
彼女は騎士なのにも関わらず剣を持っていなかったのだ。
その代わり、何故だか手甲がかなり厚い。
......聞かなきゃ良かったかも。
そんなことを思うが、もう既に遅く。
「はいっ! 私は剣が使えないので拳で闘うのですのですよっ! あ、そうだっ! ギン様っ! 私めと1度お手合わせをっ!」
彼女は満面の笑みでそう言った。
あぁ、やっぱりこの娘はアホの娘だった。
剣が使えないから拳で闘う?
確かに僕も拳で闘うのは嫌いじゃないがそういう理論には到れなさそうだ。
「聞いているのですかっ!? ギン様っ!」
うん? そう言えば、ゴブリン相手に格闘戦をやった事があるが、あれも結構楽しかったな......。街に着いたら、体術を鍛えるのも悪くないんじゃないだろうか? たまには素手でのガチンコバトルってのも面白そうだし......うん、街に着いたら白夜にでも付き合ってもらおう!
「うぅ...酷いのですよぉ......」
あ、完全に忘れてた。
「ん? あぁ、すまんすまん。僕はまだ体術はからっきしだからね。しばらく特訓してからでいいなら相手になるよ?」
そういった途端、
「ほ、本当ですかっ!? あ、ありがとうなのですよぉ!」
彼女は目を輝かせてそうお礼を言ってきた。
あ、そう言えば彼女のステータスも見ておこうかな?
あまりこういう行為は良くないのかもしれないが、それでもそのうち戦うかもしれない相手の強さを調べるのも大切だろう。
そう思い、僕は鑑定を使ったのだったが......
名前 オリビア・フォン・エルメス (17)
種族 人族 (王族)
Lv. 89
HP 620
MP 290
STR 450
VIT 720
DEX 210
INT 620
MND 360
AGI 580
LUK 120
ユニーク
王の系譜
召喚魔法Lv.1
アクティブ
水魔法Lv.2
身体強化Lv.2
鑑定Lv.2
パッシブ
剣術Lv.1
格闘術Lv.3
体術Lv.3
馬術Lv.3
礼儀作法Lv.4
気配察知Lv.3
危険察知Lv.2
魔力察知Lv.1
混乱耐性Lv.3
称号
エルメス王国第2王女 天賦の才 召喚士
......また面倒事に巻き込まれそうだ。
☆☆☆
あの後しばらくしてパシリアへと到着した。
「うはぁぁぁ! す、すごい! 中世感すごい!」
門をくぐり抜けたその先にはファンタジーがあった。
道行く人族、獣人族、エルフにドワーフ。
建物は完全に石造りで、二階建ての建物が全然見当たらない。
門から入ってすぐの所に並ぶ屋台。
何の肉かは分からないが、肉串が売ってある。
うん、絶対後で買おう!
日本にいた頃ずっと夢見てきたこの景色!
これこそ異世界ッ! あぁ、僕は今幸せだ......。
『すごい異世界への憧れですね』
いや、ライトノベル読んで異世界行きたくなくなる奴なんて存在しないだろ? オタクは全員異世界に憧れてるのさ。
『自分でオタクと認めましたね......』
おっと失言。
僕はただの読書家です。
結局あの後、改めてオリビアと自己紹介をした。
どうやらこの国では、基本的は苗字は貴族のみが有するものらしく、オリビア本人も、『オリビアなのです!』としか言ってこなかった。何か隠したい事でもあるのだろうか?『おや? 第二王女と同じ名前ですねっ?』とか言ってあげても良かったが、なんだか『そうなのですっ!』で終わりそうな気がしたし、ちょっと洒落にならなさそうだから止めておいた。
「それでは、我ら騎士団はここまでと致します。近く、国からの返答もありますでしょうし、しばらくはこのパシリアへと滞在して頂きたいのですが、よろしいですか?」
街の中へ入ると、どうやら騎士団は帰るようだった。
「うん、しばらくは冒険者にでもなって日金を稼ぐとするよ」
いや、日金どころか大金を稼いでくるんじゃ......
そんなことを思った恭香、白夜に騎士団だったが、それについては追及しなかった。
「わ、分かりました。それではブルーノ団長にはそう伝えておきます。あ、ブルーノ団長から、『冒険者になるならこれを受付に出せ』と、この封筒をお預かりしております」
「ん? よく分からないけど、ありがとな。国から返答あったら教えてね?」
そうして僕は騎士団が帰ってゆくのを見送ったのだった....
って、普通逆じゃね?
とまぁ、そんなこんなで僕たちは騎士団と別れたのだった。
が。
「の、のう? 主様っ? わ、妾は上手く出来ておったじゃろうか? で、できればのぅ? その、ご、ご褒美を...」
「黙れよ雌豚が」
「おふうぅぅぅっ!」
「宿にでも入ったら精一杯蔑んでやるから今はその汚らしい口を閉じてその雑音を聞かせるなよ、分かったか雌豚? あ、雌豚にはそんなことを言っても通じないかっ! はっはー!」
「ぐっ、はぁ、はぁ.....」
『別れた途端にこれかぁ......』
完全にいつも通りの僕たちだった。
「それで、恭香? まずは憧れの冒険者ギルドに行ってみたいんだが、どう思う?」
『うん、いいと思うよ? この世界は荒くれ者のいる方のギルドだから、"もしかしたら"があるかもよ?』
──ッッ!?
も、"もしかしたら" だって!?
それってよく小説で描かれている......
『ゲハハハハハハッ! おいおい! 冒険者ギルドに子供が紛れ込んでるぜぇ!? 坊やはとっとと家に帰ってママのおっぱいでも飲んでたらどうでちゅかぁ!? ゲハハハハハハッ!!!』
『あぁん? おまぇらっ!聞いたかよっ!? このガキ冒険者になるんだってよぉ!?』
『へっへっへぇ、先輩が手ほどきしてやんよ、とっとと授業料を寄越しなっ!』
『もう怒ったぞっ! お前らっ、ぶっ殺しちまえっ!』
『な、なんだっ!何なんだテメエはよぉ!』
『油断したなっ!死ねクソガキ.........ぐべらっ!!』
っていう展開にっ!?
『妙にリアルだね......』
「なんだか嫌な予感がするのじゃ」
「僕にはいい予感しかしないけどねッ!」
なんだか珍しくいい予感しかしない僕は、意気揚々と冒険者ギルドに向かって......
「あれ、そう言えば街の門って、お金払ってないけど良かったの?」
「『あ』」
☆☆☆
一応確認してみたら、先程の騎士さんたちが払ってくれていたようだ。何から何まで助かります。
「さっ! 今度は冒険者ギルドに出発だーっ!」
何だろう、この世界に来て一番テンションが高いぞ?
いや、それも仕方ないだろう。何せ、異世界に来て絶対に起こる事件には、貴族と知り合いなる/冒険者ギルドで絡まれる/護衛中に盗賊に出会う/亜人に出会う、等々沢山あるが、その中でもこれは1位2位を争うビックイベントなのだっ!
「フッフッフッ、未だお約束は『貴族と出会う』しか果たせていないがっ! しかしッ!」
何故だろう。
絶対に絡まれる気がする。
そんな予感を感じながらも、僕は冒険者ギルドに......
「なぁ、冒険者ギルドってどっちだ?」
『もうちょっと落ち着いたら?』
オリビアちゃんでした。
なんだか知らない方向に物語が...




