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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
竜国編Ⅰ
452/671

記録―10 王の素質

新章開幕!

そして450話突破してました!

詳しくは分かりませんが、とりあえず550話までは続くと思いますのであと100話ちょい、宜しくお願いします!

 これは、三年前の出来事だ。


「絶対に、開闢(ジ・オリジン)は使っちゃダメだ」


 そう言われた僕は、思わず父さん(ウラノス)へと問い掛ける。


「何故?」


 正直、僕には父さんの言っている意味がわからなかった。

 今現在、僕は開闢のレベルが『三』――つまりは最大にまで上がっている。使う機会もなく、Lv.2以降の力は使っていないが、それでも開闢のLv.1の能力は魔力共有。危険性など微塵も感じられない。

 それに、これほどまでに強力な能力、使わないわけには行かないだろう。


「この能力は、多分この先戦っていく上で絶対必要になる。使い方次第じゃ混沌にも――」


 ――多分混沌にも、勝てるだろうと思う。

 とは、言えなかった。

 視線の先には悲しそうに、心の底から後悔するように顔を歪める父さんの姿があったから。


「……その能力は、諸刃の剣だ」


 その言葉に、僕は全てを察してしまった。

 諸刃の剣――強大な力を得られるが、その代わりこちらにも大打撃を与えるということのたとえだ。

 僕としたことが、あれだけの能力、なんの代償もなしに使えると思っていただなんて……。少し考えればわかることだろう。

 ――強い力は、それ相応の対価を支払わなければ使えない、ってことは。

 けれど。


「僕は吸血鬼だ、体を一片も残さずに消滅させられたんならまだしも、少しでも残っていれば簡単に――」

「確かに、君は外傷(・・)で死ぬことは滅多にないだろう」


 ――外傷で。

 その言葉が、何故か僕の頭に確かな痕跡を残していった。


「一つ目は問題ないけど、二つ目以降の能力を使えば強大な力を得られるだろうけど、その代わり、君を間違いなく【死】へと誘う。一般人なら使ったその瞬間に死に絶えるほどの副作用――そこまでの不死力を持った君だからこそ、辛うじて使える能力だ」


 二つ目――生への渇望。

 その能力は単純に、自分が死地へと追い込まれれば追い込まれるだけ力を増すというもの。

 この能力は使いどころが難しく、瀕死の状態で使用すれば数倍、数十倍――いや、数百倍の力が得られるかもしれない。けれど通常時に使用したところで別に何か変わるとも思えない。そんな能力だ。

 だが、父さんは言った。死へと誘う、と。


 外傷で死ぬことは滅多にない。

 死へと誘う。


 その二つの言葉から導き出される答えは――


「命を対価に、使う能力」


 父さんは答えなかった。

 けれどその沈黙こそが、何よりの答えだった。

 ……つまりは何か。

 瀕死の状態で使えばとてつもない力を得られるが、その代わりに命を対価としているため、瀕死の状態ならば一瞬で命を刈り取られかねないと。そういう事だろうか?

 なんという……なんという使いにくい能力。これほどまでに使う場所を選ぶ能力も珍しいだろう。

 しかし、それならば――


「……なら、『生命の燈』って、……何なんだ?」


 そんな疑問が、嫌でも頭をよぎるのだ。

 Lv.2である生への渇望でさえ、これほどまでに使いにくい能力なのだ。

 なれば、Lv.3たる『生命の燈』は、果たしてどれほどに使いにくく、どれほどまでに危険な能力なのか。


「……人間は、基本的に『体力』と『魔力』を消費して行動しているわけだけど――この能力は、その消費する概念を一時的に変更する」


 ――あぁ、そういう事か。

 その説明で、全てを察する僕がいた。

 生への渇望は、命の炎が小さく、弱くなればなるほどに強くなる能力で、そして、生命の燈がそういう能力だとすれば……。

 思わず、歯の隙間から乾いた笑い声が漏れる。

 一体誰だ、こんなにも効率的で、最悪で、何よりも使用者を殺すつもりしかないようなスキルを作り上げた馬鹿は。

 ……って、そんな奴は一人しか存在しないか。

 僕の目の前に立っているその『馬鹿(ウラノス)』は、何かを後悔するように顔を歪めてこう言った。


「……君が絶対に曲がれない時にだけ、その能力を使ってほしい。そしてあわよくば――」



 ――最後の能力だけは、使わないで欲しい。



 言われるまでもなく、使いたくない能力だった。




 ☆☆☆




 その後、父さんから『壁』について聞かされた。

 ――壁。

 僕らを創り出した創造神が、生物という存在に固定概念として作り上げた成長限界。それが『壁』だ。

 正直今の僕からすれば認知もできない場所にその壁はあるらしく、全く実感の湧かない説明であったが。

 それでもいくつか、頭に残ったフレーズがある。


『壁を乗り越える。あるいは壊すのには、強さとか賢さとか、そういうのとは全くベクトルの異なる【才能】が必要となる。僕はこれでも神々の元頂点だったからね。様々な神々のことを見てきたけれど……多分、その中にその才能を持っている者は一人としていなかった』


 父さんは、昔から勘だけは良かった。

 だからこそ、自動車との事故で死んだ、と聞かされた時は何故その危険を事前に察知できなかったのだろうかと、そう何度も思ってしまったほどだ。

 そんな、超直感Lv.10の僕でさえドン引くような直感の持ち主たる父さんが断言したのだ。なれば、それはつまりそれが正解だということ。


『……ゼウスでも、そうなのか? 他にも獄神タルタロスとか、エロースだって――』

『皆無――とは、言わないよ。けれど、かつて壁を壊した僕からすれば、ゼウスやエロースの才能はその半分以下。もう数十年、いや百年以上、壁を超えるためだけの研鑽を続けて、やっと超えられるかどうか、というレベルだ。その面、タルタロスは僕ほどではなくともかなりの才能を持っているんだけど……、彼女、引きこもりのニートだから』


 おうっふ……。

 思わずそんな言葉が出た。

 一体何からツッコメばいいのか。

 ……とりあえず。


『……え、父さん。壁壊したの?』

『そりゃもちろん。僕も元々は後衛だからね。魔法や魔力を操るための才能をほぼ喰われ、今はこんなに雑魚雑魚しいけど、かつては今の混沌よりも強かったんだよ?』


 おうっっふ……。

 罪悪感から、そんな言葉が出た。

 この人のことだ、例え力があったとしても、僕がこの世界に来てさえいなければずっと日本で平和な暮らしをしていたことだろう。だがしかし、もしもあの時、僕を助けていなかったとしたら、父さんが魔法の才能を喰われていなかったとしたら……。もしかしたら、この硬直した現状も変わっていたのかもしれない。

 そうして肩を落としていると、



『その分、君には壁を破る才能がある』



『……へっ?』


 思わず、間抜けた声が出た。

 たしかに、今なぜこの話をするのだろうかと、そうは思っていたのだ。もしかしたら自分にはその才能があって、だからこそ説明してくれているのではないかと、そう脳裏を過ぎりもした。

 ――だが。


『そ、そんな都合のいいことが――』

『あるんだよ、実際』


 被せるように、彼は肯定した。


『壁を壊せる才能を持つ者。僕や……あれは抜け道みたいなものだけれど、かつてのクロノス、今の混沌だね。僕ら才能を持つものは決まっていくつかの特徴がある』


 そうして彼が挙げたのは、三つの特徴だった。


『一つ、どんな危機に陥ろうとも、誰かに殺されるということがなく、その危機を成長とともに乗り越える』

『二つ、初めは弱くとも、必ず、他者を一瞬で追い抜いていくような爆発的な成長を見せる。また、最終的に【最強】へと到れるほどの才能を持つ』

『三つ、必ず――歴史に残ることを成す』


 その三つの言葉には、説得力があった。

 時空神クロノスは神器・雷霆(ケラウノス)を発明したゼウスの手によって危機へと陥ったが、他者(ゼウス)に殺されることはなく自ら混沌へと転生し、更なる成長を見せた。

 そして現在、彼女は最強へと至り、神々の歴史に大罪人として名を残している。

 そして、父さんは。


『僕は現に生き残っているし、かつて最強へと至ったこともある。そして、歴史に名を残すことだけれど』


 そう言って父さんは真っ直ぐに僕を見据えて、確信しているとばかりに笑みを浮かべてこう言った。



『ギン=クラッシュベルという存在を、救い、育てたこと』



 愕然とせずには、いられなかった。

 仮にも神王ウラノスが、その人生において最も歴史に名を残したことと聞かれて、即答することが――ソレなのか?

 様々な意味で、信じるのが難しいことだった。


『まぁ、君の性格上認めないのは確かだけれど。それでも僕がその才能を持ち、僕の人生で、歴史に名を刻むとしたらその点以外には思い浮かばないってことは、僕が一番よくわかっている』


 ――そして、君がその才能を持っていることも、また確かなことだ。

 そう言って父さんは顎に手を当てて『ふむ』と唸ると、何か思い出したように手を打った。


『あぁそうだ! 君にもちょうどわかりやすい表現があったよ。この表現なら君も納得するだろう』


 そう言って彼が言ったのは、妙に頭に残っていたフレーズで。



「『王の素質』」



 そう呟いて、夜空を見上げた。

 満天の星空。

 白銀色の光を放つ大きな満月が真っ黒な夜空に浮かんでおり、その光は森の中に佇む僕を優しく照らしてくれた。

 かつて、エルメス王国にて。

 国王エルグリッドが妻、エミリー様が僕へと言った言葉。

 決して死なず、急激な成長を見せて仲間を先導し、いずれ最強へと至り、歴史に名を残すこと。

 それを総じて、『王の素質』というのなら。


「……納得、しない訳にはいかないわな」


 ため息混じりに、そう呟いた。



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