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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
和の国編
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影―055 矛と盾

「……ほう、混沌様の力を受けた大鎌か」


 サタンは、そう言って僕の持つアダマスの大鎌へと視線を向けた。

 この大鎌に宿っている力は――絶大的な時空の力。

 触れたもの全ての時を奪い、与え、そして止める。

 つまりは敵対者の時間の与奪権を持っているということ。それだけでも凶悪極まりないこの能力ではあれど――


「これは、ある赤ローブの男を参考に編み出した技なんだけどな」


 そうして思い出すは、戒神衆と瓜二つの格好をしたあの男。

 戒神衆とは異なりあの男は仮面を被っていたが、それでもあの外套――いや、あのローブと天蓋は、紛うことなき戒神衆のものであった。

 僕は少し考え込むと、サタンへとこう口を開いた。


「なぁ、戒神衆のなかに『ギル』って野郎はいるか? キザったらしい、未だに中二病引きずってそうな男なんだけど」

「……ギル? そのような名前の男はいなかったはずだが……それがどうした?」


 その言葉からは『嘘』が見当たらず、現時点ではあの男は戒神衆の仲間入りはしていないのだと分かる。

 けれどもあの服、未来のどこかで、奴は必ず戒神衆の一員として身を隠す。

 ……ま、今の僕じゃ逆立ちしても勝てないだろうけど。

 けれども――


「勝てなくても、技を盗むことは出来る」


 そう言って僕は、アダマスの大鎌の石突の部分にグレイプニルを結合させる。

 それぞれには、まるでそれを見越して作られたような結合部が存在しており、二つはいとも簡単に合体した。


「……これで、鎖鎌の完成だ」


 あの男の武器は、鎖鎌だった。

 それ以外にも特別な武器も持っている気配は無かったし、彼自身もそう言っていたため、恐らくはあの鎖鎌があの男のメインウェポンなのだろう。

 お約束で言うと、あの男は未来から来た僕――なんてのも有り得るかな、と考えたことは考えたが、僕はあんな黒塗りの鎌も鎖も持っていないし。


 何よりも――あの男からは、神器や神剣の気配は感じられなかった。


 あの男が未来の僕なのだとすれば、それはその魂に宿しているはずの炎十字も、月蝕も、そして神剣シルズオーバーさえをも失っているということになる。

 だからこそ、未来の僕が何かを体験して、悪に堕ちた的なことではない。それだけは自信を持って言える。

 僕とアイツは――別人だ。

 それに――


「誰も気づいて無いみたいだけど、薄々分かってるんだよな、アイツの正体」


 僕があらかじめ想定していたあの男の正体。

 それが、サタンが『戒神衆に居ない』と言ったことにより、更に可能性が高まった。

 もしも、もしもアイツが本当にその通りだったとしたら。


「ま、その時は久瀬君なり穂花なりが何とかするだろ。なにせ主人公と勇者だし」


 その反面――恭香たちには荷が重そうだが。

 僕はそう結論付けると、その大きな鎖鎌を回し始めた。


「……少年よ、先程から何を言っている」

「なーに、僕の人生は波瀾万丈だなって、未来予想図を立ててただけだよ」


 きっと、メフィストやロキあたりが満面の笑みを浮かべるくらいには、普通じゃない人生になるだろう。


『……私にくらいは、教えてくれてもいいんじゃないの』

「なんとなく嫌だ」


 拗ねたような恭香の声にそう返して僕は笑みを浮かべると、サタンの方へと視線を向けてこう言った。


「あの怪物がしゃしゃり出て来ないためにも、ここで死ぬわけには行かないんだよな」


 瞬間、僕はノーモーションで鎖鎌を投げつけた。

 その全く予備動作のなかった投擲にサタンも目を見開き――直後、その鎌が孕んでいる危険性を感じて緊急回避に移った。

 それはサタンが初めて見せる『逃げ』であり――その選択は、この上なく正しかった。


「『神明斬』」


 瞬間、月光斬の数十倍の威力を誇る一撃が宙を荒れ狂い、そのあまりの危険性にサタンは思わず歯を軋ませた。


「ハァァッ!」


 彼は両手を合わせて前方へと向けると、それと同時にその掌から紅蓮色の炎が迸った。

 憤怒の罪を持つサタンが使用した、炎のスキル。

 それはつまり、彼の根源化が炎を出せるものだということに他ならず、僕はその炎と斬撃の衝突を見てニヤリと笑みを浮かべる。


「アダマスよ、全ての時を――奪い尽くせ」


 瞬間、その斬撃に触れていた全ての概念が消失してゆく。

 正確には――時を奪われ、朽ちてゆく。

 それにはサタンも焦ったように顔を歪め、咄嗟に緊急回避を行った。

 けれども、完全には避けられなかったのだろう。鎖鎌を通して何かを切った感触が伝わってくる。

 それと同時にその斬撃は天へと登ってゆき、そこに残されたのは先程から一転した様子の僕と――


「……舐めて、かかれる相手ではないか」


 ピキッ!

 サタンがそういったと同時、その片方の角へと一直線の傷が走り、次の瞬間、パキリと音を立てた角の先端部が地面へと落ちてゆく。


「悪いな、ご自慢の角を折っちゃって」

「構わん、数年前、貴様の妹君に折られたとでも考えておくとしよう」


 それに――

 サタンがそう言ったと同時、彼から迸る威圧感が数倍にまで膨れ上がった。

 それには僕も思わず硬直してしまい、視線の先では、サタンの両腕がどす黒い、悪魔の腕へと変化していくのが見て取れた。


「俺が、貴様の力を測り損ねていただけの話だ」


 気がつけば――僕の眼前へと、拳が迫っていた。

 目が限界まで見開かれ、僕は――


「ウッ!?」


 その直前、上体を逸らしてその拳を避けることに成功した。

 けれども一度躱したからと言って安心できるものではない。

 僕は一気に魔力を放出すると、新たなるグレイプニルを召喚し、その腕へと巻き付けた。


「ぬっ? その鎖は――」


 グレイプニル。

 万物を縛り付けるその鎖に繋がれたものは能力を使えず、魔力を使えず、鎖を物理的に動かすことも出来ない。

 つまりは、その鎖を外すにはこの僕をどうにかしなければならないのだ。

 その上――


「これで、お互いに逃げられなくなった」


 僕とサタンは鎖で繋がれた。つまりは、もう回避などは出来ないということ。殴り合いの開始を意味する。

 サタンはその縛られた悪魔の腕を見てそう考え至ったのか、にやりと笑みを浮かべた。


「この俺と打撃戦を望むとは、いい根性だ」

「お前こそ。アダマスの大鎌は破壊力だけなら、僕の知っている武器の中でも最高クラスだぞ? この状態でそれをくらって平気できられるとでも?」

「思わんさ。かなり痛いだろうな」


 サタンは僕の言葉にそういうと――


「だからこそ、楽しいのではないか!」


 瞬間、彼の身体から発せられる威圧感がさらに膨れ上がり、徐々に大きくなるその殺気に、僕は迷うことなく鎖鎌を動かした。


「『月光斬』!」


 それは、時間与奪の効果を得た一撃。

 コンパクトに放ちたいということもあり、僕は神明斬ではなく月光斬を使用したのだが……それでもあまりあるその威力。

 それを前にサタンは――


「この鎖を、使わぬとでも思ったか?」


 ガァンッ!

 瞬間、防がれるはずのないその斬撃が弾かれ、そのままアダマスの大鎌は僕の手の中へと戻ってくる。

 驚いてみれば、そこには鎖で繋がれた腕で先ほどの一撃をガードした様子のサタン。防御し切れずにその腕にはかなりの損傷が見られるが――


「まさか……、この短時間で、この技の最も効率的な防御法を見つけるとはな」


 これはかつて、僕があの男と戦った時に考えた方法。

 腕に全てを縛り付ける、絶対に壊れない鎖があって、目の前に全てを壊す鎌が迫っているとする。

 ならばどうするか。

 答えは――


「どちらも硬いならば、それらをぶつけてしまえばいい」


 サタンは、簡潔にそう言った。

 正しくその通り。この技の一番楽な止め方は、グレイプニルでアダマスの大鎌をガードするということ。もちろんその際にダメージは通るものの、それでも普通に受けるよりはよほどマシだ。

 だからこそ、その弱点を看破したサタンに僕は驚愕し――


「なにっ!?」


 瞬間、サタンがなにかに気がついたように、焦ったような声を上げた。

 見れば、先程防御に使用したサタンの腕はダランと下がってしまっており、彼はその腕に走る感じたことのない痛みに玉の汗をかいている。

 そんなサタンを見て、僕はニヤリと嗤った。


「僕が、その対策をしてないとでも思ったか?」


 そう言って僕は、その手に握る大鎌へとダークレッドの魔力を宿して見せた。

 それにはサタンも見覚えがあったのか、眉を顰めてこう言った。


「円環龍の……全てを破壊する力、か」

「ご名答。当たる直前、アンタが気が付けないほどの一瞬、アダマスの大鎌に付与させてもらった」


 これでも魔力操作に関しては混沌様よりも優れている自信がある。それこそ、この世界で並ぶ者がいないと思える程度には。

 そんな僕が細心の注意を払った上で行ったのだ、魔法を使えないサタン如きが気がつけるはずもない。

 ……まぁ、仕掛けはこれだけじゃないんだけど。

 サタンは自らの袖を巻くってその腕へと視線を下ろす。

 その腕――正確には先ほどの斬撃を受け止めた場所よりも先からは血の気が引いており、まるで腕にゾンビの腕を移植したような、そんな『死』のイメージがそこには広がっていた。


「……これは、普通の斬撃ではないな?」


 サタンは、一発でその事実に行き着いた。

 流石は悪魔の王、頭もかなりキレるようだ。

 僕はそう笑みを浮かべると、こう言ってやった。


「さぁな。これ以上は手の内を晒すつもりは無いけれど」


 そう言って僕は――


「さて、こっからが頑張りどころ――だなっ!」


 思いっきり、鎖鎌を投擲した。


※もう既に血濡れの罪業発動済です

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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