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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
和の国編
404/671

影―047 九尾の狐

 和の国。

 はるか昔、一人の迷い人が作り上げたこの国には、とある守り神が存在していた。

 お歴々の国王たちは皆この守り神と友好的な関係を築きあげ、それは今代の国王も同じことなのだとか。

 けれども。


「実は、つい最近になってその守り神様との連絡がバッタリと途絶えしまったのです」


 彼女はそう言った。

 その言葉に僕は思わず眉を顰める。

 守り神との連絡が途絶えたのが最近。そしてあの偽物が現れたのもまた最近。……あまりにもタイミングが良すぎる。


「その守り神様、ってのは強いのか?」


 僕は彼女へとそう告げた。

 すると彼女はブンブンと頭を横に振り、その様子に強くないのだろうかと思った僕ではあったが――


「強いというレベルではありませぬ! 私も学園を卒業して以降、幾度も修行の相手をしてもらったことがありますが、その実力は正直負ける姿が浮かばないほどですぞ!」


 その言葉に、僕はスッと目を細めた。


『一応言っとくが事実だぞ。この国の守り神はDeus級の怪物だ。私達聖獣よりも遙に強ぇのは事実だ』


 頭の中にクロエの言葉が響く。

 いや、別に疑っちゃいないさ。他でもないあのスメラギさんが、僕に迷惑をかけることを分かっていて相談してきたのだ、そんな簡単に済む依頼だなんて思っていない。


「その上、今まで幾度か調査に人を送ったのですが……全員との連絡が途切れ、今も消息不明の状態です」

「……なるほど」


 その調査へと向かったヤツら――僕が考えるには、もう既に全員が死んでいる。

 Deus級の守り神との連絡が途切れ、そこに行った者達が皆消息を絶っている。

 ならば、考えられることなど限られてくる。


「Deusすら屠る怪物が待ち構えてるか、……あるいは、その守り神が操られてるか」


 その言葉に、スメラギさんは重々しく頷いた。


「本来であればギン様にはお願いしたくない依頼なのですが……、何分その依頼をこなせそうなのはこの国にはただ一人しか居な――」


 瞬間、スメラギさんの視線が僕の近くにいた久瀬へと向けられ、僕らの間に沈黙が舞い降りる。

 けれども――


「私はギン様と結婚したい! お願いです、こんな人に依頼をこなされれば私はこの人と結婚させられてしまいます!」

「こんな人ってなんだ!?」


 久瀬の咆哮が轟き、その言葉に僕は頭をかいた。


「いや、悪いけど結婚する気ないからね? そのまま勢いでこの国の王様になっちゃう気プンプン漂ってくるし」

「うぐっ……、そ、そう言われてしまうと……」


 僕の言葉が図星だったのか、苦虫を噛んだように顔をしかめるスメラギさん。

 けれども――


「ま、それはともかくとして、執行機関にご依頼と来た。断るわけには行かないわな」


 僕はそう言って椅子から立ち上がった。

 パチンと指を鳴らすと、それと同時に僕の身体を光が包み、次の瞬間には円環龍の鎧が僕の体を纏っていた。

 僕はニヤリと笑みを浮かべてこう言った。


「了承した。その依頼、執行機関が承ろう」




 ☆☆☆




 ――霊峰。

 和の国にはそう呼ばれる山がある。

 その山の麓に『王城』ならぬ『王宮』が作られ、その山に入るには必ずその王宮を通らねばならない作りになっているのだとか。

 全く面倒な仕組みだこと。


 そんな訳で、僕はその王宮を抜けた後、その鳥居の連立する階段を登っていた。

 周囲に広がるは青々とした竹林。

 見上げれば黒色の混じった格好いい赤い鳥居が遥向こうまで続いており、ちらりと横へと視線を向ければ、屋根が黒く染まった赤い灯籠が見て取れる。

 かつて修学旅行にて行ったあの神社。あそこはスメラギさん曰く『偽物』とのことだったが、なるほど本物とはこういうことか。そう思わずにはいられない光景だ。

 そんな中、僕はふと足を止めると、それと共に止まる足音が多数。

 僕は呆れたように背後へと視線を向けると――


「お前らさ、なんで来てんだよ」


 そこには、久瀬を筆頭とした久瀬パーティが列をなしていた。

 これがガチ依頼だと知ってか知らずか、武器に手をかけてかなり緊張した面持ちの彼らだが、ぶっちゃけ問題はそこではない。


「話聞いてた? これって僕が受けた依頼なんだよ? あんだけかっこよく『承った』とか言っといて何、邪魔でもしに来たのか?」

「はぁ……、そんなことするわけがないだろうが」


 僕の言葉に答えたのは久瀬くん。

 すると彼は凛ちゃんへと視線を向けた。


「凛ちゃんの能力は兄であるお前の能力を丸パクリする能力なんだがな。パクれるのは一度見た能力だけ……。あとは言わなくてもわかるだろ?」


 本当に言われなくてもわかってしまう自分が情けない。

 つまりはアレだろ?


「つまり、お前らはこれからDeusと戦おうっていう僕の観戦に来たわけか」

「ってことだ。別に俺としては助けてやってもいいんだがな?」


 先ほどのお返しとばかりにそう言った久瀬くん。

 どうせ「ふん、いるかそんなもの」といった感想をお望みなのだろうが――残念だったな久瀬竜馬よ。


「あぁそう? なら僕は後ろの方で遊んでるから、久瀬くん一人で特攻してきてよ」

「あれっ!?」


 思ってたのと違ったのだろう。そんな間抜けた声を出す久瀬くん。僕の得意分野で挑発してきたからだ、ざまぁみろ。

 そんなこんなで、本気で久瀬に押し付けようと考えながらも階段を上がっていくと、上の方にひときわ大きな鳥居が見え始めた。恐らくはあそこがゴールだろう。


「んじゃまぁ、行くとするか」


 僕がそう言った。

 その時だった――


『Gyaaaaaaaaaaaooooooo!』


 周囲へとそんな咆哮が響き渡り、僕は突如として飛んできたその暴風に、咄嗟に常闇の腕を召喚する。

 けれども、なおも押し込まれるのが現状だった。


「グッ……、一体何が――」


 そういった途端、周囲へと『リンッ』と鈴の音が響き渡り、気がついた時にはもう既に、目の前に巨大な狐が存在していた。


「んなっ!?」


 気がつけなかった。

 魔眼と空間把握を同時発動しているこの僕が。

 階段の横幅を使ってなんとかその場に立てているその巨大な狐は、その九本の尻尾をゆらゆらと揺らしながらも、僕の目の前でくぐっと腕を振りかぶった。

 ――不味いッ!

 僕はそうとっさに判断すると、体中の魔力を放出させた。


「『無壊の盾(オーバーシェル)』!」


 瞬間、僕の前方へと黒色透明な盾が召喚され、それと同時に周囲へと激突音が響き渡った。

 先程よりもはるかに強烈なその一撃。

 僕は両手を前に突き出してその盾を抑えると、背後で魔力を貯めていた久瀬の名前を叫んだ。


「久瀬!」

「わかってる!」


 僕の横をすり抜け、そのまま流れるような動きでその狐の腹の下まで潜り込む。


「ハァッ!」


 ――一閃。

 いつの間にか彼の手の中に召喚されていたのは、見覚えのある黒刀。その刀は黒い軌跡を空中へと残しながらも――空を切った。


「何っ!?」


 久瀬『も』決まったと思ったのだろう。だからこそその場から塵も残さずに消えた狐の姿に困惑し――

『リンッ』

 鈴の音がなり、気がついた時には僕達は、見覚えのない場所に立っていた。


「こ、ここは……」


 この場にいるのは僕と久瀬のみ。

 周囲には竹林に囲まれた大きな広場が存在しており、一言で言えば『神社』と、そのようなん雰囲気の空間が広がっていた。


「お、おい! みんなどこに行った!?」


 久瀬が叫ぶ。

 けれども帰ってくるのは無音ばかり。

 そして――


「おうおう……、なんとまぁ厄介そうな守り神様だ」


 そう言って僕は、その社の方向へと視線を向けた。

 その先には赤と黒の二色で作られた社が存在しており、その目の前には――先ほどの狐の姿が。


『Gurrrrrrruuu……』


 先程戦ってみた感覚からも分かる通り、間違いなくこいつはDeus級。三年前のグレイスと同格か……あるいはそれ以上だろう。

 その上、正体不明の厄介な能力を使ってくる。


「はぁ……グレイスの能力みたいに、この目で見抜ける能力ならいいんだけどな」


 そう言って僕は前へ出る。

 現時点においては、まだ久瀬よりも僕の方が強い。それに何より、この程度のやつに遅れをとるほど弱くもない。

 だからこそ僕は身体を影神のそれへと変化させ、ズザッと地面を踏みしめた。

 のだが――


「おい、まさかお前一人で戦うつもりじゃないだろうな?」


 僕の隣に並ぶ者が一人。

 見ればそこには、久瀬が刀を肩に担いだ状態で立っており、僕はその姿を見て苦笑した。

 けれども――


「まさか、お前も戦うと?」

「ったり前だ、馬鹿野郎」


 瞬間、久瀬の体に訪れた変化に、僕は思わず目を見開いた。



「『焔神(ほむらかみ)』」



 瞬間、僕のその能力と同じように、彼の体が足元から書き変わってゆく。

 数秒もしないうちにその変化はなりを潜め、その後に残ったのは――熱気を放つ久瀬の姿。

 身体中は炎をモチーフとしたような、青と黒、二色の着流しへと変化しており、その姿から感じられる威圧感は先ほどまでの比では無い


「お前だけが成長しているだなんて思うなよ? 俺がお前に追いついてないわけがねぇだろ」


 そう、久瀬は自信満々にそう言った。

 その姿からは宿屋で見た弱気な様子は窺えず、僕は思わず頬を緩めた。

 ――なるほど、これなら辛うじて頼れそうだ。

 僕は十字杖モードの『月蝕(イクリプス)』を呼び出すと、肩に担いでこう言った。


「せいぜい、足を引っ張るなよ主人公」

「うるせぇ、お前こそ足引っ張んじゃねぇぞ主人公」


 そう言って僕らは、九尾の狐へと駆け出した。

次回、焔と影と。

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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