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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
和の国編
401/671

影―044 勝つさ

祝!400話突破ぁ!

さて、次回からとうとう三ページ目突入です。

 その数分後。


「……あ、ははは……」


 僕は、そんな乾いた笑みを浮かべていた。

 目の前には気まずそうに目を逸らしている久瀬くんと、ニタニタしながらこちらを見つめている僕の偽物。

 そして――


「ぐぬぉぉぉぉぉぉ!死んでしまいたい!今すぐここから消えてしまいたい!輪廻の渦に沈みたい!」

「まぁまぁ、落ち着きなよ」


 そんなことを言って悶えている輝夜と、面白そうにソレに話しかけている恭香の姿があった。

 ……アレだな。本当は再会したらぶん殴ろうとでも思ってたけど、この感じだとお仕置きいらなさそうだな。

 ――だが。


「うぉぉぉぉぉぉ!ギン様ではありませぬか!本物ではありませぬか!これはっ、これは来たかいがあった……と言うかなぜ私に何の断りもなく学校をやめたのですかギン様!」


 一番面倒くさそうな奴が一人。

 僕はそれらを眺めて後頭部をかくと、とりあえず胡散臭い笑みを浮かべてこう言った。


「と、とりあえず、久しぶりだなお前達」


 ――何故こうなった。そんなことを思いながら。




 ☆☆☆




 僕の自慢の義妹――凛ちゃん。

 本名というか、名字は不明。

 僕の名字でもある上の名前は未だに思い出せないが。それでも下の名前が『凛』だったことは覚えてる。

 それに、彼女が僕に依存していることも、嫌という程にわかってる。

 だからこそ――


「こら凛ちゃん。せっかくいい男見つけたのにこんな所来ちゃダメだろ?ちゃんと久瀬くんから考えられる限りの金ふんだくってから慰謝料請求して離婚するんだ」

「なるほど、そのあと兄さんに貰ってもらえば、万事おっけー」


 自分で言っててわかる――多分この世界に僕らよりも最悪な兄妹っていないんじゃないか、と。

 いやね、別に久瀬くんのことが嫌いなわけじゃないんだよ? ただ僕の周りにはこんなイロモノしか集まってこないのに、なんか向こうは男女比取れたマトモなパーティ作ってていいなーとか。そんなことはふと思ったけど別に関係ないんだからな?

 僕は「貰わないけどなー」と言いながらも彼女の頭を久しぶりに撫でた。

 ハサハサと白い髪が手にかかり、凛は嬉しそうに頬を緩めた。


 ――その瞬間だった。


「おーい、凛ちゃんどこ行ったのー?」


 ふと、そんな声が聞こえてきた。

 このほんわかした声からして、久瀬くんのメインヒロインたる古里さんだろうか?

 まぁ、とりあえず分かることは――


「まずいっ、逃げるぞ恭香、ネイル!見つかったら久瀬くんの前まで引き摺られてしまう!」


 そう、僕は知っている――久瀬くんのパーティで一番ヤバイのが彼女なのだと。

 いつもはホンワカしてる女性ほど、怒れば怖い。

 例えをあげるとオリビアだろうか。彼女が怒ったら酷いぞ? もう魔闘気を纏った腕で殴ってくるからな。


 閑話休題。


 とりあえず、古里さんに見つかるのはまずい。

 あのメインヒロインの皮をかぶった憤怒の化身、数年前ならばいざ知らず、現在の彼女はかなり厄介だろう。

 そんなことを考えながらも踵を返して――


 ガシッ!


「……へ?」


 そんな音が鳴ってそちらへと視線を向ければ、ぼくの右足にへばりついている凛ちゃんの姿が。


「ちょ、な、何やってるの凛ちゃん!」

「もう逃がない。とりあえず久瀬竜馬にあげるのやだから、純潔貰ってもらう」


 この野郎!この状況で何言ってやがる!


「ば、馬鹿言うな!僕達は兄妹だぞ!」


 僕がそう言って彼女を引き剥がそうとした次の瞬間。


「……あれ?銀くん?」

「……あ」


 そんな声が聞こえてきて、僕は光の消えた瞳を前方へと向けた。

 するとそこには、三つ編み眼鏡のロリ巨乳という見覚えのありすぎる女性が立っており、僕は――


「……見逃して、くれませんかね?」

「久瀬くーーんっ!本物の銀くん見つけたよぉぉ!!」




 ☆☆☆




 そうして時は現在へと遡る。

 場所は先ほどのガールズバーの店内。

 僕は席に座りながらも、再度その円卓を囲んでいる面々へと視線を向ける。

 相も変わらず気まずそうにしている久瀬と、相も変わらず自信満々な馬鹿。そして相も変わらず生き生きしているスメラギさん。

 それらを見て、僕は――


「……あれ、これ僕いらなくない?」


 とりあえずそんなことを言ってみた。

 すると案の定、眉を吊り上げ始めるスメラギさん。


「な、何を馬鹿なことを言っているのですか!ギン様の偽物ですよ、ここはもうやっつけるしか……」

「いや、偽物って言ってもさ……」


 僕はそう言ってその偽物へと視線を向ける。

 そこにはニタニタとしている偽物が頬杖をかいており、その姿を見て僕はため息を吐いた。

 ――さて、ちょっと探りを入れてみるか。

 僕はニコッと頬を緩めると。


「初めまして、執行者さんとやら。今日はお噂に聞いているイロモノハーレムも連れずにお独りですか?」


 瞬間、恭香たちから突き刺さる敵意にまみれた視線。

 いやだって仕方ないじゃん。ほんとにお前らイロモノなんだからさ。

 すると執行者さんは、笑みを深くしてこういった。

 だが――


「おう、三年前に俺んところのハーレムはみんな逃げちまってなぁ。今はお前さんのところに集まって。俺を偽物に仕立てあげようとして――」

「おやおや……、皆さんが一斉にハーレムを抜けるとは、きっととんでもないことをしたんでしょうねぇ?……もしかして男の人でも襲ったんですかぁ?」


 だがしかし。

 確かに面倒くさい手口を使ってはいるものの、所詮は見た目も強さも、何より賢さも偽物。僕以下でしかない。


「今こっそり『見た目』って言ったよこの人……」


 …………僕は顔を真っ赤にして憤慨した彼を傍目にフッと笑みを浮かべると、今度は久瀬へと視線を向けた。


「いやはや、この人が執行者さんだとすると、久瀬くん。張合いがなくて良かったですねぇ。人気ランキング首位独占は確実ですよ」

「……あぁ。この阿呆面が執行者だったなら、な」


 そう言って彼は口元に笑みを浮かべた。

 僕はその自称執行者とやらへと視線を向けると、胡散臭い程の笑みを浮かべた。


「いや、正直いえば、僕って執行者って肩書きに、あんまり興味無いんですよね〜」


 瞬間、驚いたように目を見開くその男。

 けれども彼はすぐに笑みを浮かべる。

 きっと『興味無いってことは自分が名乗っててもなんの文句もないだろう?』と言った感じだろうか。

 だが、そんな拙い思考じゃ執行者なんて務まらないぞ偽者君。

 僕は瞬間的に能力を解放すると、机の上にしゃがみ込んで彼の胸ぐらを掴みあげ、その額に自らの額をガッとぶつけた。

 瞬間、奴の額から鮮血が弾けるが――そんなことは知ったこっちゃない。

 僕は彼の瞳を覗き込むと、自分でさえ底冷えするような冷たい声でこう言った。



「つまりは、だ。その名ごと貴様を殺処分する準備はいつでも出来てる、ってことだ。名誉や人気なんざくれてやる。真似っ子だって好きにやればいい。……だが、僕の仲間に手ぇ出そうとしたら……、分かってんだろうな?」



 なーにが抱かれに来たか、だ。

 なーにがハーレムに戻りに来たか、だ。

 スメラギさんはともかく、輝夜は僕の大切な仲間だ。

 そんな彼女を本人の意思なく僕から奪おうなどと……よく言えたものだな糞野郎。

 気がつけば男の瞳からはボロボロと涙が零れており、喉の奥から引き攣った小さな悲鳴がこぼれ出ている。

 僕は「ふん」とその男の身体を突き放すと、それと同時に数メートル転がって行くその男。

 だがしかし――


「こ、この野郎!俺に手ぇ出しやがったな!」


 未だにそんな口を叩くその男。

 僕はその男に対して――


「いやはや、流石にお強いですね執行者さん。まるで大悪魔と同クラスの強さだー」


 瞬間、身体をビクリと震わせるその男。

 まるで大悪魔。どこかで聞いたフレーズだ。

 僕の言葉にその相手と実際に戦ったことのあるらしい久瀬はスッと目を細め、スメラギさんは腰の刀に手を添えている。

 そんな中。


「ですが、メンバーを相手に勝てるほどには、強くない。せいぜいがそこのスメラギさんに勝てるかどうか、ってレベルでしょう」


 ――だからこそ疑問に思う。


「なのに、何故そこまで大口を叩いていられるか」


 その言葉に男はとうとう冷や汗を流し始め、僕はその様子を見てその机に座り込んだ。

 そして、その真実を男へと突きつけた。


「答え――僕よりも強い奴が、背後についているから」


 瞬間、男は焦ったように視線を漂わせ、さらに吹き出してくる汗を袖で拭っている。

 これはもう僕でなくても分かるだろう――ビンゴだ、と。


「大方奴からの命令は、執行者という存在の人気を落とせ。あるいは執行者本人を偽物に陥れろ――いや、お前の偽物っぷりを見るに前者だろうな」


 でなけりゃもうちょいマシな人材を寄越してくるはずだ。

 僕はそう言って笑みを浮かべると、ふざけたふうにこう言った。


「ねぇねぇ久瀬くん?僕よりも強いヤツって誰だと思う?」

「さぁな?大方悪魔側のトップの連中何じゃねぇの?」


 その言葉を聞いた途端、大きくざわめき出す周囲の観衆。

 今は僕が言うよりも、人気第一位たる彼が言った方がよほど効率的だろう。

 僕は「よいしょ」っと机から下り立つと、その男の前まで歩いていった。


「お前の上司といいお前らの頭といい、ちと僕を舐めすぎじゃあないか?」


 思い出すは、あの言葉。


 ――一つ忠告をしておこう。もしも万が一、サタンにばったり会うようなことがあれば逃げるが吉だ。でなければ、仲間諸共皆殺しになるだろう。


 その言葉を思い出して――僕は嘲笑した。

 仲間諸共皆殺し?

 おいおい、僕らを舐めすぎじゃあ無いですか?

 僕は悪魔よりも悪魔のような顔を浮かべてその男を見下すと。


「サタンに伝えろクソ悪魔。こんな下らないことしてないでとっととかかってこいってな。それとも何か、サタンは僕みたいな吸血鬼が怖くてブルっちゃう弱虫くんなのか?」


 その言葉に、男は悔しげに歯をきしませながらもこう吐き捨てる。


「貴様……、サタン様に勝てるとでも思っているのか!?」


 もはや隠そうともしないその本性に、僕は――



「勝つさ――――久瀬くんがな」



 直後、僕は久瀬くんにひっぱたかれた。

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