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影―011 神蝕

よく考えたらよく350話以上毎日投稿できてますね。今ふと話数見て自分で驚きました。

ついでに宣伝!

『silver soul online~もう一つの物語~』はギン君のアナザーストーリーです!

今度は影魔法も死神のコートも、ましてや理の教本も与えられない! 何も無い状態でゲームの中へと閉じ込められたギン!

面白いと思うので是非ご一読を!

 オークデァ・トート。

 デァ・トートというのはどこかの国の言葉で『死神』を意味する言葉だったはずだ。

 なぜそんなことを知っているのか……と聞かれれば、まぁ、僕の黒歴史について語らねばなるまい。中二っぽいカッコイイ単語を調べまく……ごほん。

 まぁ、それはともかくとして、今はこのオークデァ・トートについてだ。

 この魔物に関してはオーク種の中では文字通りの頂点に位置する魔物であり、前に僕の体を叩き潰してくれた『メテオリック・オーク』のさらに上位に位置する存在だ。強さだけでいえば件の『ヤマタノオロチ』にも匹敵するほどなのだとか。

 そのため父さんやゼウス家の本棚以外からの魔物の知識がほとんどない僕でも知っているほどにコイツは有名で──


「まぁ、すこし厄介なんだろうなぁ……」

『BUAAAAAAAAAAAAA!』


 再び咆哮が響き渡る。

 それには恭香たちは耳を塞ごうとするが──


「うわぁ、うるさそう」


 瞬間、僕と仲間達の周囲に黒いオーラが立ち込め、直後に黒色透明な亀の手が僕らを包み込んだ。

 ──具現化・部位召喚。

 今回は常闇の玄武の手だ。これは『無壊の盾(オーバーシェル)』よりも展開速度が早く、その上並大抵の攻撃は受けられるほどの防御力を誇る。

 そんな僕の盾がただの豚の鳴き声程度、一秒たりとも通すわけがない。


「なぁ恭香、ハンバーガーのパティの部分? あれってこいつ一体で足りるかな?」

「え? うん。普通のオークの肉とこの豚の肉を合わせて使ったらいい感じになるんじゃないかな?」


 そうかそうか、それは良かった。

 僕は玄武の手を返還すると、それと同時に前方へと数歩進み出る。


「正直暁穂がどんなハンバーガー作ってくるか分からないからな。どれだけオークを狩ればいいのか……ちょっと面倒くさく思ってたところなんだ──だからこそ、感謝しよう」


 そう、感謝だ。

 わざわざ探す手間を省いてくれたメフィストに。

 わざわざ自分から糧になりに来たこの豚の神に。

 そして──error級という、この言葉を使うに相応しい相手が現れたことに。

 僕はニヤリと笑うと、三年ぶりにその言葉を口にした。



「これより、執行を開始する」




 ☆☆☆




『BUOOOOOOO!』


 そう叫びながら振るわれたその拳を空を駆けて躱す。

 余裕を持ってかわしたもののその風圧はかなりのもので、その馬鹿げた威力に僕は『ヒュゥ』と口笛を鳴らす。


「もしかしてこいつ、筋力値だけならテュポーンと張るんじゃないか?」


 まぁ、面倒だから鑑定は使わないけど。

 それに鑑定してもしなくてもさして結果に変わらないし、逆に鑑定を使って隙を作る方が馬鹿げてる。

 僕はトントントンっと空を駆け上がってゆくと、オークデァ・トートの視線と同じくらいの高さで立ち止まる。


「親友くーん! 手助けしよっかー?」


 そう言ってふわふわとエロースが浮いて近づいてくるが、僕はそれを聞いて首を横に振る。


「いいや、別にこんな豚程度エロースの力を借りるまでもないだろ」

「んー……、このお豚さん結構回復力あるよー? お肉必要なら原型を留めた状態で倒さなきゃだけど……大丈夫?」


 なんか『お豚さん』って言い方可愛いな。

 こんな状況にも関わらず僕はそんなことを思ってしまい──直後、襲いかかってきたその拳を、僕と彼女はひらりと躱した。


「『天羽々斬』」


 瞬間、手のひらに召喚した天羽々斬。

 僕は躱し際にその剣でオークデァ・トートの腕を切りつけると、それと同時にその緑色の腕に巨大な斬撃の痕が刻まれる。


『BOAAAAAAAAA!?』


 オークデァ・トートはその痛みに目を見開き、腕を押さえて後退る。

 それにとってドスンドスンと大地が揺れ、何本もの木々がへし折れてゆく。

 そして──その腕から上がる白い気体。

 傍から見れば水蒸気にしか見えないが、その発生源は先程僕が切りつけたあの傷痕である。


「うーん、やっぱり回復するか……」


 僕はそう呟いて天羽々斬を返還する。

 正直な話、今の僕ならばヤマタノオロチのように微塵切りにして倒すことは容易である。

 それは多大な回復力を持つ相手を倒すための定石であり、三年前はそれに従ってヤマタノオロチを討伐した。

 だが──


「微塵に切っちゃうとお肉なくなっちゃうもんねぇ〜」


 いつの間にか再び近くへと着ていたエロースがそんなことを呟いた。

 視線を下へと向ければ恭香を担いだソフィアが木の枝の上で高みの見物をしており、恭香はつまらなさそうに欠伸をしていた。

 全くとんだ大物に育ったもので、三年前の『あ、相手はerror級だよ!?』といった感じの慌てっぷりはどこへ行ったのか。


(……え、私ってそんなに慌ててた?)

「うん、僕がアルファに挑む時とか目に見えて」

(……)


 恭香から念話が来たため正直に返すと、なんと既読無視された。なんてこったい。

 僕は恭香から視線をオークデァ・トートへと移す。


「微塵切りはNG、肉塊を一片残さず消滅させるのもNGときた。不死力の高い相手の討伐方法が二つとも潰されてるんだよなぁ……」


 ──さて、どうするか。


 僕は顎に手を当てて「うーん」と唸ると、それと同時に僕の左手の甲──円環龍の紋章が鈍く輝き、それと同時に性別不詳のアイツの声が聞こえてきた。


『ふふっ、お困りのようですね? 今こそ私の新能力のお披露目に相応しいのではないですか?』

「……え、あのヒュドラに使ったのは──」

『ノーカンです』


 コイツ……アレを無かったことにしやがった。

 まぁ、別にコイツ──ウルの新能力を使わずとも傷口を切った先から銀炎でやき尽くせばいつかは倒せるのだろうが……、それだと食材に傷がついちゃうからなぁ……。

 そう考えること数瞬。

 僕はため息一つ漏らすと、四段階目を使う結論に達した。



「『月蝕(イクリプス)』」



 瞬間、ダークレッドの魔力が溢れた。

 それには至近距離にいたエロースも目を見張り、その魔力を見たオークデァ・トートは目に見えて怯え出す。

 次第にその魔力は収集してゆき、僕の手に一振りの短剣を形作る。

 それは、刀身の先から柄の先まで、全てが黒い鉄で出来たような無骨な黒い十字架の短剣。

 柄から鍔、そして刀身にかけて赤い線が走っており、十字架の中心部には赤いサークルが刻まれている。

 それを見て僕は──


「なんかさ、カッコイイんだけど『それもう見た』感が凄いよな」

『……それ、ご主人様がいきなり冒頭で使ったせいですよね?』

「……ナンノコトデショウ」


 僕は彼女の声に棒読みでそう答えると、それと同時に短剣を人差し指と中指に挟み、肘を曲げて顔の横に短剣を持ってくる。

 それは──投擲の構え。

 流石はerror級。この構えを見たオークデァ・トートは一瞬でその未来を察知し、その投擲を躱すべく動き出す。

 だが──


ヌァザの神腕(アーガトラム)、エンジンブースト」


 瞬間、構えていた左腕がヌァザの神腕へと変換し、それと同時に銀炎によってエンジンブーストがかかる。

 そして──


「フ──ッ」


 瞬間、体のバネを利用したその一投は寸分違わずオークデァ・トートの肩に直撃し、勢いそのまま奴の体を押し倒し、大地へと貼り付けにする。


『GAAAAAAAAAAAAA!?』


 そのあまりの痛みにオークは今までとは別種の悲鳴をあげ──直後、奴は何かから逃れるようにのたうち回り始める。

 見れば打ち込んだ月蝕(イクリプス)からはダークレッド色の魔力が奴の体へと滲み出ており、それを見た僕は──


「遅いな……他の部分にも打ち込むか」


 月蝕(イクリプス)を──新たに三本生み出した。

 それには近くにいたエロースは心底驚いたように目を見張り、それを横目で見た僕は、ポツリポツリとこの短剣について──否、月蝕については語り出す。


「ブラッドナイフの第四段階──月蝕(イクリプス)。それは魂に直接刻まれた万能武器。どんな形でも、どんな武器の種類でも、さらにはどれだけ数が多くても。一瞬にして使用者の意を汲み取って武器を具現化させる」


 そして何より──

 僕はさらに二本月蝕を打ち込みながら、こう呟く。


「これまたその能力が凶悪極まりない」


 瞬間、両足の付け根に突き刺さったその短剣。

 直後にその両方からも魔力が溢れ出し、オークデァ・トートは大声を──悲鳴をあげてなお一層暴れ始める。

 それを見たエロースはゴクリと息を飲む。

 ソフィアは目を疑うようにオークデァ・トートへと視線を向けており、恭香は相変わらずのチート能力にため息を漏らす。

 そう、その能力こそが──



「『神蝕』」



 その言葉と同時に僕は最後の短剣を奴のもう片方の方に投擲し、直後に四本目の杭が奴の体へと突き刺さる。


『G、GUGAAAA、BUOOOOOOOOOO!?』


 暴れる豚の神。

 僕はそれを冷めた目で見下ろしながらも、その能力について思い出す。

 ──神蝕。

 神を蝕むと書いて神蝕。

 それはありとあらゆるものを蝕み、その支配権を無理やり自らのものへと変更させるというもの。

 それは空気、水、大地、魔力……世界に存在するすべてに有効で──それは、生き物とて例外ではない。



「蝕み支配するそれは、言うなれば神の毒。一度喰らえばその毒はその身に混入し、身体中を蝕まれた生命体は──皆、死に至る」



 直後、断末魔をあげたオークデァ・トートは、あっさりとその命を散らすこととなった。


圧・巻。

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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