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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第六章 聖国編
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第287話

 その後、ミラージュ聖国という国は解体された。


 というのも、愚者の傀儡を解除された聖女がそれを必死に止めようとするのも聞かず、呪眼神ミラーグに騙されていた国民たちは、此度は僕の口八丁にまんまと騙され、信じ、結果として聖女からではなく国民からの白旗が上がったというわけだ。

 補足説明として、ミラージュ聖国の国民たちは皆、隣接する三国──エルメス王国、港国オーシー、砂国ロドルムの三国に移住することとなり、僕らも土地はいらなかったので、聖国だった土地はその三国にあげてしまった。お金も十分にあるしね。

 という訳で、恭香が攫われ、三人が重傷を負ったこちら側が得たものはせいぜいが経験値くらいなもので、傍から見れば、この戦争でこちらが得たものは少なかったように思える。


 ──形に残るものとしては。


 形に残るものこそ少なかった(・・・・・)が、けれども僕にとってはいくつかの因縁を一斉に解決したように思えるのだ。


 まず一つ、聖国という不安要素の消滅。

 これは僕が学園に通っている間ずっと抱いていたものであり、まず聖国が手を出してくるのは向こう──つまりクランホーム側だと思っていたため、ちょくちょく月光眼で確認したりもしていた。

 まぁ、これに関しては破滅願望マシマシの聖女が『執行者を怒らせ、自身を滅ぼさせるため』という理由で敢えて粗悪なならず者を僕の方に寄越してきたり、それでも無理そうだったので奥の手(フカシ)を使うような結果となったが。


 そして二つ、水井幸之助との決着。

 正直僕としてはあの一撃に彼本人への怒りを全て乗せたため、もっと酷い目に遭ってしまえ、とは思ったものの、あれだけ顔面スプラッタになれば生きていくのも地獄だろうと思って、内心で『ザマァ!』と完結していた。

 だがしかし、彼には最後の最後で助けられた(・・・・・)ものだ。まさか自ら率先して悪役を引き受けてくれるとはね。脱帽したよ水井くん。

 ちなみに余談だが、聖国からの帰り道、顔面が陥没した見覚えある金髪が衣服を剥がれ、手足を縛られた状態で広場に転がされており、子供たちが笑いながら石をぶつけていた。一体アレは誰だったのだろうか?


 そして三つ、呪眼神ミラーグの死去。

 呪眼神ミラーグに関しては実際問題僕の人生にかなりの勢いで介入してきた黒幕だ。

 僕の叔父さんの人生を操り、その結果として叔父さんは叔母さんを殺害し、あの義理の親達を殺害(仮)し、終いには僕と鮫島さんを監禁した。

 僕には叔父さんがどんな人生を送り、結果としてあそこまで壊れてしまったのかは分からないが、兎にも角にもその元凶たるミラーグが死に絶えたのは朗報だったろう。

 まぁ、恭香から聞いた話によるとゼウスにハデス、エウラスにオーディン、アポロンにその上ロキまで出張ってきたとの話だったから、もしも立場が逆だったら⋯⋯と考えると背筋が凍りつきそうになる。死神ちゃんも良くもまぁそこまでの面々を揃えてくれたものだ。


 そして四つ、僕の人気がさらに向上したこと。

 これに関してはメリットよりもデメリットの方がはるかに多いのだが、あの放送──主にバハムートとの会話にフカシ戦、その後の聖女との対談を見た人たちが、思った以上に強かった僕に畏怖し、恐怖し、それ以上に憧れた結果、僕を目標に頑張ろう! という冒険者見習いが増加したのだとか。

 その結果というか副次効果というか、ファンクラブがさらに膨れ上がったのは自明の理であろう。教祖のゼウスはきっとホクホク顔だろうな。

 まぁ、これに対しての対応は、せいぜいが近いうちに完全な黒髪の染料でも開発し、その特許でもエルグリットに売り込めばいい。そうすれば『黒髪→赤目→隻腕→あれ、コイツって⋯⋯』という展開は少なくなるだろう。もうテンプレはお腹いっぱいだ。目立たず生きていこう。


 そして五つ、これは上記の副次効果に過ぎないのだが、僕たちのクランへの入団希望者が莫大的に増加した。莫大的、という単語があるのかは分からないが。

 今は恭香とネイルが受付を行っており、暁穂を中心としてレオン、エロースが喫茶店を経営し、他の面々が実際に仕事を行っていたらしい。

 だが、今ではもうその人数では対処しきれないレベルの人数が訪れているらしく、僕は今更になってここまで目立つ場所に家を建てた自分の失策に気がつ⋯⋯ごほん。まぁ、あれだ。最初っからここまで読めてたもんね。十分なお金を稼いだら後は目立たない街中にでも引っ越すつもりだったもんね(泣)。


 そして最後に、自らの課題の発見。

 着目するべきは、あの改造人間──フカシとの戦闘だ。

 結果から見れば、終局に至ってもまだ僕には余裕があった。確かに攻撃手段こそ少なかったものの、最悪、常闇のローブに篭って守りに専念すれば先にフカシが力尽きていたであろう。

 そういう面では確かに余裕だったが、それはイコールで僕が、この半年近くを修行に費やしてきたこの僕が、それ以外の手段を思いつかなかったということでもある。

 何故グレイスの劣化版たるフカシにそこまで追い込まれたか、と聞かれれば、僕は間違いなくあのユニークスキルの名を答えるだろう。

 ──根性。

 あのグレイスでさえ、ウルの『絶対破壊』が付与された攻撃を見た時は『バカモン! そんなの放ってきおって! 万が一触れたらワシでも重傷ぞよ!?』と言っていた。

 だからこそ内心で油断していたのだ。まさかソレを素手で砕いてくる化物が居るとは思いもせずに。

 その結果、僕は咄嗟のことに攻撃手段に思い至らず、最後、神剣シルズオーバーの魂が呼びかけてくれなかったら、それこそ例の守備特化の手段を取らざるを得なかった。

 まぁ、そのお陰で色々と僕の弱点や甘いところも見つかったので、結果だけはよかったのだろう。


 まぁ、それらが今回得た形として残らなかった成果であり、こうして並べてみると今までどれだけテキトーにやって来たかが分かるだろう。あんな称号を持っていて情けない限りである。


 そして、次に形に残った成⋯⋯


「ちょっとアナタ、いつまでくっちゃべってるつもり? ここはお茶の一つも出ないのかしら?」

「⋯⋯ねぇ? 今せっかくお前のこと話そうとしてたのになんなのその態度? ぶん殴るぞ」

「ふ、ふんっ! こ、殺したいなら殺しなさい!」

「⋯⋯⋯⋯」


 そう、もうお分かり頂けたであろうか?

 僕の素晴らしいナレーションに、というか地の文にいきなり割り込んできたこの人物こそ、()聖女ミリアンヌである。

 というのも、彼女こそ形に残った成果の一つであり、あの後聖国を経とうとした僕達に彼女は、


『ま、待ちなさい! ここまで私の計画を滅茶苦茶にしたのだから責任もって殺しなさい!』


 と叫びだしたのだ。

 それには僕も呆れてため息が出たが、それを見た彼女は何を思ったか、顎に手を当てて数秒──


『うん、決めたわ! アナタ何だか危なそうだもの! アナタについて行けばきっと死ねるわよね!』

『はいは⋯⋯ってお前今なんて言った?』


 以上、回想終了。

 正直要らないことこの上なかったが、それを見た彼女が、


『分かったわ、もし断るようなら⋯⋯アナタに「◯◯して欲しくなければ僕の○○○になれ、この◯◯が」とかいって◯◯されたって下僕たちに言いふらすから』

『隠語使いすぎじゃないかな聖女さん!?』


 とか言ってきたので渋々クランホームまで連れ帰ってきたのだった。

 そしてこの女と来たら、ずっと『早く危ない目に遭いなさい、もしくは早く私を殺しなさい』と言った感じなのだ。

 だからこそ僕の言うことは聞かないし、毎回毎回生意気なことを言い始めるし、しかも殴るぞとか言ったら怖がるし。面倒なことこの上ない。

 僕は頬をふくらませてそっぽを向いている、ちょっと可愛い聖女ミリアンヌを見て、



「せめて、ここに居るなら働いてもらうからな?」



 そう、諦めたように呟いた。




 ☆☆☆




 聖国との戦争終結から三日が経ち、その日の夕食時。

 僕は目の前で騒ぎ立てている女騎士様をじぃーっと眺めていた。


「ふははははっ! のう主人様よ! そろそろ余の名前は考えついたのではないか!? 流石にそろそろ『ケリュネイア』と呼ばれるのには飽き飽きしてきたころじゃ!」


 そう、ケリュネイアである。

 僕は彼女に「家を守りきったら仲間にする」的なことを言った覚えがあり、彼女は見事この街を守りきった──というか敵兵が一人も来なかった。そのため結果だけ見れば彼女をテイムする理由にはなるのだが──


「いや、だってお前萌え要素皆無じゃん。そこまで変態してたら流石にドМや露出狂で熟れてきた僕でもドン引きしかないんだけど。なに、輪廻転生願望って。馬鹿なの?」

「馬鹿とはなんじゃ! 輪廻転生こそ至高の喜び! その上二つの人生において主人様に純血を捧げるなど最高ではないか! という訳で主人様もそろそろ童貞を捨ててみんか?」

「プッ⋯⋯童貞」

「おい聖女、お前今なんで笑った?」


 僕は「べっつにー」とか言ってくる聖女をみて額に青筋を浮かべながら息を吐いた。

 輪廻転生願望マシマシのポンコツ、ケリュネイア。

 破滅願望マシマシの聖女、ミリアンヌ。

 前者も後者も少々どころかかなり扱い辛い変人ではあるが、


「ふむ、ケリュネイアは変態じゃのぅ」

「そうですね。変態の風上にもおけない変態です」

「いや、お主らにだけは言われたくない」

「カカッ! ⋯⋯⋯⋯ちょっと後で面貸すのじゃ」

「クハハッ! 血の晩餐が始まるか!」


「ミリーちゃん、これどうぞです!」

「ミリーちゃん!? ちょっとアナタ、馴れ馴⋯⋯」

「だ、ダメだったです⋯⋯?」

「く、くうっ!? す、好きにしなさいっ!」

「ミリーはツンデレちょろいんなのだー」

「ちょろ⋯⋯? どういう意味かしら?」


 視線の先には、何だかんだで仲良く話し始めている仲間達の姿があり、話している内容こそ酷いものの、彼女達が浮かべているのは楽しげな笑みだった。

 まぁ、僕としては色々と問題が起きそうだし、心労も募りそうでなるべく遠慮したいのだけれど⋯⋯



(まぁ、皆が楽しそうなら、別にいいかな)



 僕は内心でそう考えて、少し頬を緩めた。

以上、ミリアンヌが仲間になった! ものすごい不安要素っ!


にしても最後の最後で最終回っぽい雰囲気出しやがって。

※終わりません。

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