表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第六章 聖国編
319/671

第277話

なんか小説出そうとした途端にスマホにノイズが『ズザザザッ!』ってなりました。

もしかしてスマホが新たな能力に目覚めたのかな? とか、異世界行けるアレじゃないの? って一瞬思ってしまった僕は重症でしょうか?

 その二日後、戦争当日の午前八時三十分。


「こうして見ると壮観だな」


 僕らの目の前には、機動要塞アブソリュートがこの二日間で召喚し続けたデュラハンロード、総勢およそ千体。

 正直この数はフルパワーの僕でも相手にしたくないレベルであり、これらに加えてコイツである。


「ふはははっ! 主人様よ! 見事この拠点を守りきることが出来ればテイムしてくれるということで良いな!」

「はいはい、頑張れ頑張れ」

「全身全霊を持ってッ、我が主人s」


 以下略。

 ケリュネイアに対する態度がひどい? ハッハッハー、何を言っているんだ君たちは。変態を吸収して我がものにする輪廻転生願望を持つハイブリッド変態など、正直相手にするだけ無駄なのだ。何せこいつ、あの後白夜の『ドM』を我がものにしやがったからな、完全に。


 閑話休題。


 今回の布陣はこうである。

 まず“国を滅ぼしまぁす”というキャッチフレーズでお馴染み、カチコミ特攻班は、僕、白夜、そして輝夜の三人である。正直に打ち明けると、まだ僕の体調は万全には程遠い。こんなことになるのが分かっていたなら悪鬼羅刹使わなかったのに⋯⋯と思わないでもないが、使ってしまったからには仕方ない。助っ人(・・・)も呼んであるし、恐らくは十分だろう。

 そして次に“主神ぶっ殺してきまぁす”というキャッチフレーズでお馴染み、ワレ責任取れや神界突撃班は、恭香を初めとした他の面々である。というのも、どうやらゼウスがブチギレたらしく、きちんと話のできる奴らを連れていかねばゼウスが主神を僕らの見てないところで殺しかねないらしいからだ。

 本心を言えば恭香やネイルなどの比較的実力の無い面々が戦争に参加するのを避けるためだが、そこら辺は言っていない。バレてるだろうがな。

 そして最後、ホームはケリュネイアと総勢千体のデュラハン・ロードたち。関係の無い住宅街には手を出さないという約束がされているはずだが、一応王国や帝国、魔国の騎士達も何人か住宅街に常駐している。アブソリュートの超障壁もあるしここは安心できるだろう。


それと余談ではあるが、何やら僕が去ったあと、エルグリットがなにやら戦争の様子を生中継しよう等と言い始めたらしく、子供に見せられないグロシーンにはモザイクがかかるらしいが、どこからか生放送のカメラが回っているらしい。


というわけで、僕らは全大陸の監視下の元、クリーンで公平な戦争をすることとなった。

まぁ、汚い手を使っていないかどうか国民たちに監視させるという名目もあるだろうが、エルグリットと獣王は『面白そう、観戦したい』という理由から、魔王は『グレイスの弟子、面白そうじゃない』という理由から、聖女は『相手の動向を見れるなら⋯⋯』という理由からだろう。まったく、ふざけた連中しかいないぜ。

僕は帝城の庭に残された天界への転移魔法陣へと向かう天界組を送り出すと、そう思ってため息を吐いた。

するとそれを見計らっていたのか、白夜と輝夜が話しかけてきた。


「にしても主様よ? 話は聞いておったがその『助っ人』なるものは一体誰なのじゃ? 言っちゃ悪いのじゃが、この大陸で妾たちより強い者なぞそうそう居らんのじゃ」

「クハハハハッ! 確かにそうだな! 我らはまだしも今の主殿より強いものなど時の歯車の面々以外には考えられぬな!」


僕は二人の方へと視線を向けると、思わず苦笑いしてしまった。

確かに今の僕はかなり強いだろう。

アスモデウス戦で本気を出し、その時に自分の『本気』を知って、それが間違いなくerror級に両足を突っ込んでいるのだと確認できた。

その上レベルアップによる馬鹿みたいなステータス上昇である。副作用があるにしても、レベルアップ前の僕とさほど変わらない動きが出来るであろうことは何となくだが確認出来ている。

恐らくは二人はそんな僕の現状を知った上で『助っ人なんて必要ない』とその言葉を使ったのだろう。

だがしかし───今回に限って言えば油断は命取りにもなり得る。


「今回は、噂の白紫くん(・・・・)が向こうにいるらしい。そいつはレオンたちを圧倒し、恭香をさらって行った。いくら今の僕が強くなってようと油断はできないだろう」


───それになにより。

僕は、左拳をぎゅっと握って、この二日間、溜めに溜め込んでいた怒りを声に滲ませた。


「そのクソ野郎は、僕の仲間に手をあげた。道中で力を使うなんて以ての外だ。溜めて、溜めて、一対一で跡形もなくぶっ殺してやる」


集団リンチなんて以ての外。

道中、自分の力を使うのも極力避ける。

誰にも手出しなんてさせやしない。

でなけりゃ───この内に潜む怒りが治まらない。

僕のその言葉に今回ばかりは一対一での戦闘を許してくれたのか、確かな怒りの籠った表情を浮かべた二人もコクリと頷いた。

きっと彼女らも手を出したいのだろう。自分の手でその男を倒し───いや、殺したいのだろう。


「悪いな⋯⋯二人共」


僕はそう口を開く。

二人は「何が」とは聞かなかった。ただ黙って頷くと、まるで何かを託すかのように僕の胸へと拳をコツンとぶつけてきた。


「妾の分、一発じゃ」

「我の分も、一発頼むぞ」


二人はそう言ってニヤリと笑みを浮かべる。

僕も「何が」とは、聞かなかった。聞かずとも、彼女らの思いは十分に伝わったし、他の神界組の気待ちも十分に伝わっている。

僕はコクリと頷くと、真剣な表情を浮かべてこう告げた。



「安心しろ。僕が必ず、罪を贖わせてやる」



その言葉に、背後から聞き覚えのある声がかかった。




☆☆☆




「や、やめて下さいっ!」


その女子と呼ぶにも幼すぎる少女の声に僕は疑惑を覚えて背後を振り向く。

そこには間学発表会の会場で再開したゼロパーティが居り、かつて僕がゼロの集落から救った魔族の紫髪紫目の少女、ユイがそう言ったのであろうことは火を見るより明らかであった。

その背後を見れば、困ったような顔のベルナ、ベルク姉弟、悲しげに顔を伏せたゼロ、アイク姉弟が居り、僕は全く想定もしていなかったその状況に少し戸惑ってしまった。


「お、お願いします! ど、どうかっ! その人を殺すのはやめて下さいっ!」


聞こえなかったと思ったのか、再びそう叫んで頭を下げてくるユイ。正直意味がわからない。


「ユイ⋯⋯であってるよな。そいつは僕の仲間達に手をあげた張本人で、恭香を攫った野郎だ。それを───なぜ止める?」


知らぬ間に、どうやらその言葉には威圧が混じってしまったらしい。

ベルナとベルクが顔を真っ青にして震えだし、ゼロが隣のアイクの手を握る。ユイはそれを直に受けたためか顔を青を通り越して真っ白に染め上げ、今にも倒れそうな勢いである。

───けれど、そこから引くような気配は見当たらなかった。

恐らく、これ以上威圧を続けても無意味だろう。多分ユイはいくら威圧を強めようとも、恐怖に怯えようともその場を動かないであろうし、その意志を曲げはしない。黙らせるには殺す他なくなる。まぁそんなことはしないけど。

僕はため息を吐いて威圧を解くと、それと同時に荒い息を吐き出すゼロパーティ。どうやら息を止めていたようだ。


「主様よ、今のは妾でも怖かったのじゃ⋯⋯。こやつらに我慢しろという方がおかしいぞ」

「え⋯⋯僕そんなに怒ってた?」

「クハハッ、かなり怒っていたな!」


おっと、どうやら僕はかなり怒っていたらしい。白夜たちが怖いとかそりゃあ息も止めるよな。

僕は頭をガシガシとかくと、今度は普通にユイへと聞いてみることにした。


「んで、なんでお前は僕を止めたがる? もしかしなくてもそいつの知り合いか?」


すると、ゼロとアイク、ユイは一斉に目を見開いた。わっかりやすいなこの子たち。いつか騙されるぞ。

そんなことを内心思っていると、ユイが驚愕の新事実を口にした。


「た、多分っ、その人私のお兄ちゃんなんです!」


僕らは、その言葉に思わず絶句した。


「その⋯⋯数年前にお兄ちゃんが攫われて、村でつい最近になって『聖国に攫われた』って分かったんですけど、それと同時に盗賊に襲われて⋯⋯」


それ絶対聖国の差金じゃん、とは現場の悲惨さを知っている僕の口からは言えなかった。


「⋯⋯で? 何でそいつが兄貴だって分かったんだ?」

「その⋯⋯ここの近所の方が写真を撮ってたみたいで⋯⋯掲示板にこれが」


そう言ってユイは、スマホに保管された一枚の写真を僕らへと見せてくる。

そこにはゼロと少し上の、紫がかった白髪の少年が写っており、なるほどそう言われればユイともどこはかと無く似ている気もする。


「なるほど⋯⋯で、何とかその聖国の兄貴に会いたいとここまで来てみれば、なんと命の恩人がそいつを殺すと言っていたわけで、さして何も考えずに突っ込んできたわけか」

「ご、ごめんなさい⋯⋯」


僕は「はぁ」とため息を吐く。

殺したい。盛大にぶっ殺してやりたい。血反吐はくまでぶん殴って、土下座して赦しを乞う様を見ながら頭を踏み潰してやりたい。許す気なんて毛頭ない。

だがしかし、それと同時に僕の直感がこう告げる。その男はまだ使い道がある。利用価値がある。

そして理性が僕へとこう告げるのだ。こんな少女から兄を奪って、お前は何がしたいんだ、と。

僕はボリボリと頭をかくと、ユイへと指をさしてこう告げた。


「殴る蹴るの暴行はする。生きながらえる程度の瀕死まで追い詰める。罪は贖わせる。けど、命だけは助けてやる。そして貸し一つだ。これ以上は手を打たないが十分だな」


彼女は、涙を浮かべて黙って僕へと頭を下げた。

その涙は嬉し涙か悲し涙か、僕にはどちらか分からなかったが、それでもやはり、僕のやるべき事は変わらなかった。




☆☆☆




その後、その白紫くんと知り合いだというゼロとアイク、そして妹のユイがついて行くと言って聞かず、結果ベルナ、ベルクの二人こそ置いていくことになったが、カチコミ特攻班にゼロ、アイク、ユイの集落組が加わることとなった。


「と言っても、まず間違いなく出番なんてないだろうけどな」


僕はそう呟くと、それに反応したゼロが頬をふくらませて反論してきた。


「た、確かにお兄さんたちには勝てないけど、でも私たちだって結構強くなったんだよ!? ね、アイク!」

「僕はよく分かんないなぁ⋯⋯」

「アイク!?」


なんだか意気込んでいるのか笑わせようとしているのかわからない二人であったが、そのおかげか僕らの間には変な緊張感はなく、きちんと、程よい緊張感と適度な高揚感が入り混じっていた。

まぁ、これから人を殺しに行くのだから多少の高揚感が無ければ殺す度に罪悪感を感じなければならなくなるし、今のような状況が丁度いいのではないかと思う。


「まぁ、戦争なんて体験したこともないけどな」

「妾も見たことはあれど参加するのは初めてなのじゃ」

「クハハッ、我も似たようなものだな!」


そんなことを話しながら僕らは付近の草原まで歩を進めており、感覚でいえばもう街からは一キロ近く離れているのではないかと思う。

───そろそろ、かな?

僕は内心でそう考えると、その場に立ち止まる。

すると僕が止まったことを見た他の五人も同じように立ち止まる。


「ふむ? ここまで来たということは妾に竜の姿へと戻れと言うことであるか?」


白夜が首を傾げてそう聞いてくるが、僕はその問に対して首を横に振り、災禍(ヘイルテンペスタ)を召喚した。


「いや、ここで助っ人を召喚する(・・・・・・・・)


その言葉と同時に現れる、目で測ることすらすらできない程の、超巨大な渦動魔法陣。

それは恭香を呼び戻す際の眷属召喚に使用したものと同じではあったが、人一人を召喚するにはあまりにも大きく、それは僕と同格の者を召喚するにしてもあまりにも大きすぎた。


「『眷属召喚』」


その言葉と同時に魔法陣が回転を始め、眩い、紫色(・・)の光が弾ける。

白夜たちは、そのあまりの光量に思わず腕で目を隠し───そして次の瞬間、光が止んだ先を見て、目を見開いた。


そこに居たのは───かつて戦った僕の宿敵。

宿敵と言ってもかつては相手にすらならず、結果首以外の全てを消失するという結果に至ったわけだが、きっと今ならばもっと善戦できるだろうと思う。


白夜と輝夜は先程言った『助っ人など必要か』と。

たしかに僕達だけでも助っ人なんて必要ないほどの戦力を保有しているが、それでもやっぱり最強の一(・・・・)がいるのといないのとでは不慮の事故への対処のし易さが変化する。

まぁ、何が言いたいかといえば───



「まぁ、僕らの方がこのクソッタレなダンゴムシの足で纏いになりかねない、ってことなんだよな」

『ふん、道理をわきまえているようで何よりだぞ、このクソッタレなコウモリが』



そこに居たのは───世界竜バハムートであった。


以上、懐かしのバハムートでした。

補足ですが、神器をどんな形であれ使うには魔力とは別に精神力が削られます。そのため、単に魔力しか使わない『眷属召喚』の方が最終的に見れば楽できるんですね。

ちなみに何故バハムートを召喚できたか、というのは、単にギンがバハムートに認められているからです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
― 新着の感想 ―
[一言] 重症だと思います、( ◠‿◠ )
2021/05/20 23:57 アサアサア
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ