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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第六章 聖国編
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第275話

意外と前回の会議が人気だったようです。

という訳で、前回に引き続きイラッとくるギンをご覧下さい。

 僕はそれらを見て晴れやかな笑みを浮かべると、ふぅと額の汗(出てない)を拭いてこう言った。


「いやはや助かりました〜、危うく聖国と二国の戦争になってしまうかと冷や冷やしましたよ〜」


 ───どの口が言うか。

 間違いなく全員にそんなことを思われたはずである。

 だがしかし、僕はそれらを華麗に無視すると、淡々と、そして確実に王手への道筋を辿ってゆく。


「そう言えば、とある吸血鬼族が聖国に捕まったとのニュースを見た覚えがあるのですがー、あの時捕まったとかいう男の吸血鬼族、名前をなんと言いましたかね? 僕と名前や境遇が似ていたと記憶しているのですが」


 顎に人差し指を当てて、明らかに挑発しながらそう告げる。

 エルグリットたち三人は僕が何をしようとしているのか察することは出来なかった様子だが、僕のあまりにもイラッとくるその様子を見て少し様子を見ることにしたようだ。

 ちなみに当の本人である聖女様は、明らかに青筋を浮かべ、僕が求めていることを察したのか静かに頭を下げた。


「も、申し訳ありませんでした。あれは人違───」

「あぁ、今思い出しました! 確かあれは『執行者を捕まえた。処刑する』と言った内容では無かったですかな? 人違いだったとしてもあなた方は何の罪も無いこの僕を捕縛し、処刑するつもりだった。それに対する弁明はありますか?」


 徐々に追い詰められ、プライドを八つ裂きにされてゆく聖女。

 僕はぷるぷると震えだした聖女を見てニッコリと笑ってやると、彼女はおずおずと口を開く。


「き、吸血鬼族は、悪だと我らが主神が───」

「申し訳ありませんが、僕はそのミラグリ教徒ではありませんからね。教徒でもない相手にその教えを無理矢理押し付け、何も知らない人族以外の種族を皆殺しにするのがあなたの言う主神様の言うことですか? あ、ここには僕と獣王、魔王さんの三人の人外が居ますね? 殺さないんですか?」

「⋯⋯す、すいませんでした」


 彼女は再び吸血鬼へと頭を下げる。

 今程度の文言ならば丸め込んでしまえばいいものを。どうやらそろそろ我慢の限界が近づいてきたようだ。

 僕はそう考えると、まるで今考えついたかのごとく「あっ、そう言えばー」と声を上げる。


 ───果たしてそれは、どれだけわざとらしく、苛立たしかっただろうが?


 僕はそれらを全て察した上で立ち上がると、自らの影に腕を突っ込み、とある男を引き出した。

 その男は、かつて教会の裏で僕を攫おうとした荒くれ者で、その顔は僕への明確な恐怖に怯えているようであった。

 ───否、長く影の中で放置されたことに対する恐怖か。


 僕は目を見開く聖女へとわざとらしくチラリと視線を向けた後、その男に対して優しく問いかけた。


「ねぇ君。君の受けた依頼の内容、そして依頼人を教えてくれないかな?」


 すると彼は、怯えながら聞いてもいないことまで喋り出す。


「お、おお、俺ばっ、聖国の神父に依頼を受けでっ、その神父はっ、せ、聖女が裏で手を引いてるって! 殺されたくなければ従えって、脅され───」


 瞬間、バンッ、と机が叩かれた。

 そちらへと視線を向ければ、堪忍袋の緒が切れたか、顔を真っ赤に染めた聖女が立ち上がっており、僕へ向かって叫び始めた。


「そんなもの証拠になり得ません! 先ほどの映像といいその証人といい偽造工作も甚だしい! 恥を知りなさい!!」


 それは明らかに『証拠のない侮辱』であった。

 今ここになって僕のしたいことを察したか、まともな王様ズは苦笑し始め、話についていけない水井はとりあえず怒っているようだ。

 僕はそれらを見てクックックと肩を震わせると、最早口調を隠すつもりもなく、初めてタメ口で話し始めた。


「あ〜あ、それって根拠や証拠のない感情論でしかないよなぁ? こっちは証拠映像を見せつけて証人も出してやったのにその態度。三度目だ。ほら、頭踏んでやるから土下座して謝れ」


 僕がクイッと下を指さして、顔に満面の嘲笑を浮かべてそう言ってやると、彼女はあまりの屈辱に顔を真っ赤にして憤慨する。

 その様子を見て僕はにやりと笑って、手の中に銀氷によるチェスの駒を作り上げると、机の上にトンッと置いてこう告げた。



「チェックメイトだ」



 僕はそう言ってニヤリと笑うと、淡々と現状を伝え出す。


「聖女、お前は最初、エルグリットと獣王、魔王さんを侮辱して、戦争を避けるために(・・・・・・・・・)謝った。だが、今さっきそれと同じことをして、僕がわざわざ同じように『謝れ』と告げたにも関わらず言い返してきた」


 そこまで言うと彼女も気がついたのか、目を見開いて驚きを顕にする。


「それは、僕との───執行機関(ネメシス)との戦争を望んでいるとの捉え方もできるわなぁ?」


 僕はそう言って楽しげに笑うと、席についてこう告げた。



「さぁ、戦争だ。僕の仲間を傷つけた罪、償ってもらうぞ」




 ☆☆☆




 その後、ここまで来ておいて引けるはずもなく、聖女は戦争を受け入れた。

 どうやらこの世界の戦争は実にクリーンなようで、戦争開始の日時から決着方法まで明らかにし、その上で関係ない者達を襲撃しないように行うらしい。もしも破れば全ての国による集団リンチ確定である。


 そうして話し合いの結果、戦争開始は三日後の午前九時。どちらかの責任者が白旗をあげるか、もしくは相手の勢力が全滅かすれば終わりとのことだ。

 正直人殺しなんて僕の領分じゃないし、戦争だって本来は行いたくない。

 下手すれば一般市民を殺してしまうかもしれないし、中には全く関係ない人々もいる事だろう。


 だからこそ、僕は最後に水晶玉へと視線を向けると、これを見ているであろう全ての人へとこう告げた。


「聖国の全国民に告ぐ。生きたければ一時的にでも国外に出ろ。巻き込まれたくない関係ない奴らも国外に出ろ。今聖国へと向かおうとしている奴らは踏みとどまれ。これを聞いても尚居続け、僕に敵対しようと言うならば容赦はしない」


 それだけ言うと僕は踵を返してその部屋から出てゆき、それを最後に久方ぶりの四大会議は幕を閉じたのだった。


 ───そうして今現在。


「なーにが『容赦はしない』じゃ! 主様が害のない一般市民を殺せるわけがないのじゃ! 生粋のチキンじゃからの!」

「クハハハハッ! カッコよかったぞ主殿! あの聖女の焦った顔と来たら街中が大爆笑の渦に飲まれたものじゃ!」


 何故か城門の前で待ち構えていた、白夜と輝夜。

 僕は二人のそんな声を聞きながら、王都の出店街を歩いていた。

 今日は色々とあったせいで忘れがちだが、今はもう既に夜なのだ。

 日はとっくに暮れており、皆も仕事が終わり帰る時間帯。

 わざわざそういう時間を狙っての全国放送だったため、先ほどの会談はそこら中で噂になっており、先程から「さすが執行者」だとか「聖国終わったな」だとか「お、あれ執行者さんじゃねぇか?」とか話し声が聞こえてくる。


「まぁアレだな。白夜の言う通り一般市民まで傷つけるつもりは無いし、何よりも敵対しない者は立場がどうあれ傷つけるつもりは無いよ。聖女とあの勇者、そして恭香を攫った奴を除いてな」

「甘いのぅ、甘ちゃんじゃ! そんな事考えてると足元すくわれてやられちゃうのじゃぞ!」


 白夜がそう言ってきたので、僕は何でもないというふうにこう返した。


「そういう時のお前だろ、白夜」と。


 まぁ、僕としてはそれだけ信頼してるぞ、と伝えたかったのだが、白夜は何を思ったか顔を真っ赤に染めて照れている。なにこれ可愛い。


「やはり白夜は信頼されてるな⋯⋯。我、羨ましくてしょうがないぞ!」

「カ、カカッ! 妾と主様はとんでもない程長年の付き合いじゃから仕方ないのじゃ!」

「日数でいえば輝夜とは数日差じゃなかったか?」

「うるさいのじゃ!」


 そんな事を話しながらも、僕らは出店でいくつか美味しそうなものを買い込み、クランホームへと戻ったのだった。


 やるべきは───とりあえず晩飯である。




 ☆☆☆




 その後、僕らはテレポートによってクランホームへと帰った。

 すると、どうやら暁穂が色々と料理を作ってくれていたらしく、それに僕らが買ってきた料理を含めると些か豪華すぎる気もした。

 けれど、病み上がりの三人や一応誘拐された恭香、そしてボロッボロな僕のことを考えると⋯⋯まぁ、丁度いいだろう。


 という訳で、僕らは少し遅めの晩飯へとあり付けた訳だが───



「で、どちらさん?」



僕の視界の先には───女騎士様が串肉を齧っていた。

 年齢は二十代後半だろうか?

 褐色の肌に肩までの、ピンクブラウンの髪。

 どこかで見たような青い瞳が僕のことをじっと見つめており、その身には白色の皮鎧に緑色のマントを着用している。


 ───言うなれば、そう。見たことも聞いたこともない女騎士さんである。正直全く見覚えがない。


 そんなことを考えながらも、何かが動いたような感じがして視線を上へとあげて───僕は全てを察した。

 僕の視線の先───彼女の頭部には、どこかの誰かの角を思い出すような赤いカチューシャがあり、その左右からは見覚えのある鹿の耳が生えていた。


 僕はソイツの正体を察して、もう一度皆へと話しかける。


「なぁ、不審人物が勝手に家に上がってきてるんだが。誰だよこいつ、追い出すか?」

「なっ!? 今のは『美しいな、ケリュネイア』とか言ってくれる場所ではないのか主人様よ! 追い出すとは何たることじゃ!?」


 そう、確信したくなかったがこの人、多分ケリュネイアだ。全く声が同じだし。何より自画自賛してるしな。


 そんなことを思っていると、彼女は何を思ったかコホンコホンとわざとらしく数回咳をして注目を集めると、真剣な表情を浮かべて口を開く。


「主人様とその愉快な仲間たちよ。お主らは話によるとあの白鎧の者達と戦うのであろう?」


 彼女の言葉を聞いて、僕は「お前も白鎧だがな」という言葉を飲み込んで頷くと、それを見たケリュネイアは眉にシワを寄せて俯き出す。

 その顔に浮かんでいたのは───確かな、不安。


「ならば余からのアドバイスじゃ。余はまだお主たちに死んで欲しくないからな」


 そう言って彼女は顔を上げ、こう言った。



「紫がかった白髪の男。そやつには絶対に出くわすな」



 その男の特徴を聞いて、恭香たちは目を見開く。

 まぁ、そんな反応を見せてくれればその男が何者か、理解出来ると言うもので。


「なるほど、そいつに出会ったら即殺せ、って意味だな?」

「違うわ!!」


 ケリュネイアのツッコミが、クランホームに響き渡った。

 ちなみにあとから聞いた話によると、ケリュネイアをボコったのもその男だという話であった。

次回、再びの掲示板回。

VRとはジャンルが違うのに掲示板回があるのも珍しい気がします。

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