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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第六章 聖国編
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第273話

感想の数だけは一人前。

 その数時間後。

 現在地───エルメス王宮の会議室。

 そこには急遽収集された各大国の重鎮たちが集っていた。


「どうやら、面子が揃ったようだな」


 エルメス王国、国王エルグリット・フォン・エルメス。


「ぐははははっ! 我もまさかこれ程急な招集があるとは思わなんだがな!」


 グランズ帝国、獣王レックス。


「正直私からすれば全く接点がないのだけれど。こちらも色々と忙しいから早く済ませてほしいものね」


 魔国ヘルズヘイム、魔王ルナ・ロード。


「私たちに関してはなにも聞かされていません。これは一体どういうことですか⋯⋯? それに今回に関しては最悪の背教者が居るようですし」


 ミラージュ聖国、聖女ミリアンヌ。


 それら四名の大国の代表が視線を送るは黙って目を瞑っている青年であり、彼は視線が集まっていることに気がつくと静かにこう告げた。


「じゃあ、そろそろ会議、始めませんか?」


 彼の名はギン=クラッシュベル。

 この会議を行うこととなった───元凶の一人である。




 ☆☆☆




 時を遡ること数時間。

 僕が三人の呪いと怪我を神の髪を使用して完治させたところから回想を始めようと思う。


「神の髪も残り三本か⋯⋯。初期に比べて随分とまぁ減ったもんだなぁ」

「も、申し訳ありませんマスター。私が不甲斐ないばかりに⋯⋯」

「あ、いや、気にすんなよ。誰が相手だか知らないけど、多分そいつ、僕かエロースじゃないと勝てないレベルの奴だろ? 次会ったときに力量差が縮まってれば十分だよ」


 僕がそう言った途端、今更になってどっと疲れが出てきたのか、もしくはアドレナリンが過剰分泌されていたのか、思わずクラッときてたたらを踏む。


「だ、大丈夫であるか主殿!?」

「ま、まさか、し、死なないですよな、主殿?」


 気がつけばレオンと伽月に体を支えられており、先程までとは一転して僕は三人に介抱されながら壁に背を預けて座り込んだ。

 視線を下ろせば左手がぷるぷると震えており、全く力が入らない。


 ───どうやら身体も限界みたいだな。


 僕はそう思ってふぅと息を吐くと───


「ま、マスター⋯⋯?」


 声が震え───目頭が熱くなっていることに気がついた。


「⋯⋯え?」


 僕はあまりの現状な目を見開き、顔を上げるが、それと同時になにか暖かいものが頬を伝うような感覚がした。


 ───涙。


 その正体に行き着くまでにさほど時間はかからず、僕は目を見開いて固まっている三人を他所に、かなり焦って袖で涙を拭いた。


 僕は思い出す───恭香が攫われ、仲間が傷つけられたと聞いた時のことを。

 胸が苦しくて、張り裂けそうで、初めて心の底から死ぬかと思った。

 けれども咄嗟のところで理性がストッパーをかけ、感情を押し殺し、激情を押し殺し、あまりにも膨大に膨らみすぎたその殺意と怒りに、そっと蓋をした。


 けれど、もう皆無事だ。

 トラブルはあったにせよ、終わりよければすべて良し。


 僕は黙って三人を抱きしめると、ぐぐもった震える声を振り絞って、こう告げた。


「無事で───本当に、よかった」


 その時の僕は、三人の温かみが何よりも嬉しかった。




 ☆☆☆




「いやぁ、ギンが泣くなんて珍し───」

「黙れロリっ子。僕は泣いてない」

「もう照れちゃって〜。私が攫われたのがそんなに辛かったの〜?」

「それ以上なんか言ってみろ? 今すぐ家出するからな。それも数年単位で」


 その後、住民と協力して白騎士たちを全員捕縛した恭香たちも戻ってきて、何故か『僕が泣いた』とかいう意味不明なことを言ってきた恭香に対して僕はそう言い返した。

 正直言えば、恭香もそこら辺について真面目に話したくないのだろう。きっと真面目に話したら顔真っ赤になっちゃうほど嬉しかったのだ。そうに違いない。愛い奴め。


 と、そんなことを考えていると、何やら疲れた様子のエロースが口を開いた。


「ねぇ親友くん? 親友くんが私を置き去りにした上に障壁を簡単に壊したのは追及しないけど、それはともかくとしてこれからどーするの?」


 そう、問題はそれである───主に後半。

 正直僕の心は『聖国ぶっ潰しまぁーす』でだいたい決まっているのだが、みんな無事だからといって激情で動けばそれこそただの殺人鬼に成り果てかねないし、何よりも何の罪もない人を害せばそれは聖国の奴らと同じになってしまう。それは嫌だ。


 ───それに何より、下手に動けばその化け物(・・・・・)にやられかねない。


 だからこそ色々と考えて動かなければいけないのだが。


「とりあえずはエルグリットに言われた通り王都の王宮に向かうのが最初だな。それと並行して僕の後遺症の改善と聖国への対応の仕方を考えながら、ついでにケリュネイアをどうするか考える、って感じかな? なにか抜けてるとこあるか?」

「ケリュネイアに関してはもうほっとくべきだと思うよ? 命令聞かないし正直なんの役にも立たなかったから」

『なんだと!?』

「私もケリュネイアに関しては同感だ。見た感じエロースと同格のポンコツさだぞ?」

「なんか横槍っ!?」


 ───正確には『とばっちり』な。


 僕は恭香と浦町という神童たちからのその言葉に思わずため息を吐き、ケリュネイアへと視線を向ける。

 正直ケリュネイアについては助けてもらったからある程度融通は聞かせたい───が、エロースと同格ともなればそれはまた別の話だ。

 観察しただけでもポンコツなのに、残念ながら僕は、ケリュネイアから白夜や暁穂と同じような匂いを感じているのだ。


 言うなれば、そう───変態の香り(クレイジー・スメル)


 暴食ドM、露出メイドときてもう流石にメジャーな異常性癖&キャラは突っ込んでこないと思うが、逆にそれはマイナーな、それこそガチで理解不能なヤバイやつを内包している可能性もあるということ。

 ───そう考えれば捨てたくもなりますよ。ねぇ?

 僕はうんうんと頷くと、サムズアップしてこう言った。


「とりあえず、王宮行ってくるわ」

『しゅ、主人様ぁぁぁ!?』


 僕はとりあえずエルグリットに言われた通りに王宮へと出向くことにした。




 ☆☆☆




 王都へと空を飛んで向かった僕は、外壁の少し手前で降り立ち、いつも通りに門番へとギルドカードを見せて入場した。

 そうして僕は王宮までの長く険しい(人口・有名度的に)道のりを突破し、かなりの時間をかけてそこまでたどり着くことが出来た。


 ───が、僕はその前に止められている白塗りの馬車を見て、思わず目を見開いた。


 白地に金の盾。

 それは間違いなく“ミラージュ聖国”の国旗であり、その国旗が彫られたあの馬車。

 しかもそれは、かつてパシリアの街を訪れたあの馬車とはワンランクもツーランクも上の馬車なのだろう。素人目にも格が違うと判断できた。


 ───さらに言えば、確かあの時僕らへとイチャモンをつけに来た神父はかなり位が高いものだった気がする。それよりも上となると、もはや勇者(仮)か聖女本人、もしくはその両方だろう。


 ちなみにだが、直感は最後の『両方』だと告げている。つまりは最悪な展開だ。


「あの聖国に共感してる勇者様か⋯⋯。正直、嫌な予感しかしないな」


 そんなことを一人呟くと、丁度懐にしまってあったスマホが着信音を鳴らす。

 一体こんなタイミングで誰だろうか? 内心そんなことを思いながらも通話ボタンを押して耳に当てると、ちょうどそれと同時に恭香の声が聞こえてきた。


『ギン今大丈夫? まだ見つかってない(・・・・・・・)よね?』


 何に見つかってないのか、とは聞かなかった。十中八九聖国の聖女と勇者にだろう。

 僕は周囲へと空間把握を飛ばすが、そこまで強い気配や勇者っぽい気配は見当たらない。僕は付近の家の影に隠れると同時に、恭香へともう言葉を返す。


「まだ見つかってないよ。で、そろそろあれから一時間経ったし、色々と情報でもわかってきたのか?」


 そう、恭香の能力は全知(仮)である。一時間以上前のことで、ロキが隠しておらず、高度な隠蔽もされていないことなら全てを知ることが出来るのだ。

 だからこそそう聞いたのだが、やはり帰ってきたのは肯定だった。


『うん、思考を読む限りじゃ聖国の馬車は見えてるんでしょ? ギンの想像通り、いまの王城には聖女ミリアンヌと勇者って名乗ってる異世界人───あの(・・)水井幸之助が来てるみたいだよ。ついでに言えば魔王と獣王も来てるみたい』


 僕はその話を聞いて、思わず絶句した。

 ───水井幸之助。

 かつて愚悪なまでのストーカー行為と思い込みによって、僕に頼ってきたとある女性を自殺へと追いやった人物である。

 まぁ、例えるならかつてのアーマー君を二乗にした感じ。まさに存在ゲロティスク。


 僕は再び開きかけた殺意と怒りの入り交じった容器に蓋をすると、上を向いて息を吐き出した。


「ふぅ⋯⋯いや、助かった。流石に何も知らずに会ってたらそのままぶち殺してたかもしれないからさ」

『でしょ、私としては何とか会わせないように頑張ってたんだけど⋯⋯実はその人聖女が大好きみたいでね。だいたい聖女が行くところには付いて行くみたいな感じになってるんだよ。トイレも扉の前で待ってるし、お風呂もそんな感じなんだって。気持ち悪いね〜』

「うわっ、なにそれ気持ち悪っ」


 何故だろう、殺意が消えて普通に会いたくなくなった。

 けどまぁ、僕としてもあの女性の遺書は読ませてもらったし、その両親からも『娘の相談に乗ってくださってありがとう』と言われたこともあって、正直罪を償わせられるならばそうしてやりたい。


「ただ、聖女の排便を扉一枚挟んだ所で盗み聞きしてる変態、さすがにあの娘も何も言わないと思うんだよなぁ。逆に目を逸らして泣いてそう」

『ねぇ? ちょっと私もそこまで言ってないんだけど?』


 僕は恭香の話をとりあえず無視して考え込むと、徐々に水井に対する怒りが収まってきた。どれだけイラつこうと所詮は変態のすることだ。哀れみの視線でも向けながら内心で笑ってやればいいさ。


「それで? 聖女たちはどうせ『仲間を人質にした、返して欲しければ投降しろ』的なやつで来てた(・・・)のはわかるけど、獣王と魔王に関しては何も知らないんだけど。一体どういうこと?」


 特に魔王に関しては会ったことすらない。たしか魔法特化型の魔族だって聞いた覚えがあるが、どんな性格の持ち主か、常識人かそれ以外か。そういうことは何も聞いていないのだ。

 しかもよく良く考えれば、王国、帝国、聖国、魔国、と四大王国の代表が全員揃っている。まず間違いなくただ事ではないだろう。


 そんな考えの元聞いた問ではあったが、電話越しに恭香から告げられた言葉はかなり納得のいくもので。


『軍を伴った領土侵犯とか、悪意のある行動なんかを起こされた時に限って『四大会議』っていう主だった四国と、それに関係する人たちが呼ばれるんだけど───』


 ───そういう時は毎回、戦争が起こってるんだよ、と。


 そう、恭香は淡々と告げた。


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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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