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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第六章 聖国編
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第272話

そう言えば文体変わりました。

二作目の方がこの文体なのですが、ちょっと書いてるうちに最初の方の文体が気持ち悪くなってきまして。

もしかしたら『なら昔のやつも直せよ』という方がいるかもしれませんが⋯⋯三百話ですよ? 正気ですか?(苦笑)

 現状把握。


 今現在僕はエロースを連れて隠密行動中であり、目と鼻の先には僕らのクランホームが見えていた。

 エロースからの情報と月光眼によると、暁穂、レオン、伽月の三人は奥の訓練室で横たわっており、その一室にはエロースによる結界が張られている。


 というのも、エロースが帰ってきた時点でロビーに転がっていた三人を咄嗟に彼女が拾い上げ、状況もわからぬまま安全な場所に閉じ込めたのだとか。十分すぎる成果である。

 ───まぁ、そのお陰で眷属召喚で呼び戻すことが出来ないのだがな。


 閑話休題。


「エロース、今回はかなりマジだからな? フリとかじゃなく時間無いから余計なことするなよ?」


 僕が彼女にそう告げたのは、果たしていつだったろうか。


「ふふん! 私は女神の中の女神様だよっ? 宗教国、それも中級神を主神と崇めてる人たちなんて私に逆らえるわけないんだよ!」


 彼女がそう言って飛び出して行ったのはいつだったろうか。


「ちょ、ま、待てエロース! 人か神かなんて見た目でわかるわけな───クソッ、馬鹿じゃないのかあの馬鹿!」


 僕がそう叫んで、諦めたのはいつだったろうか。


 ふと叫び声と怒声が聞こえて背後を仰ぎみると、そこには数え切れない程の白騎士たちから逃げ回っているピンク色のポンコツの姿があり、彼女は気配すら察知することの出来ない僕の名前を叫び続けていた。


「親友くん! 親友くーん!! いや、親友様! お親友様! おねがい! おねがいだからたすけて!? この人たち目が血走ってて怖いんだよぉぉぉ!!」

「死に晒せこのパチモン女神がァァァ!!」

「我らが主神様を侮辱した恨み晴らしてくれる!!」

「火炙りだ! 照り焼きにしろォォォ!!」


 僕はそれらを見て目元に浮かんだ涙を吹くと、笑いをこらえてこう呟いた。



「お務め、ご苦労様です」



 僕はそれだけ言うと、囮を放置してクランホームの中へと突入した。




 ☆☆☆




 一方エロースがその身を張った囮を決行している頃、恭香たちは周辺に散開している騎士達を全滅させ、姿を隠しながら街の中へと突入していた。


 というものの、ギンとエロースだからこそ誰にも気付かれずにクランホームまでたどり着くことが出来たが、それ以外の面々にとってはこの包囲網を掻い潜るのは至難の技。

 それに加えて彼女らの仕事は『敵の殲滅』であり、クランホームにたどり着くことよりもこの街に蔓延る白騎士たちの方が余程優先順位が高いのだ。

 そしてその殲滅が上手くいっている理由こそ───


「いやぁ、ギンがエロース引き取ってくれて本当によかったね〜」


 という事にほかならない。

 ギンは自分では気がついていないが、ヤマタノオロチ、大悪魔との連戦に悪鬼羅刹の行使、そして件の時代穿つ神羅の罪セクロ・デュスペガードの使用によって身体だけでなく脳にまで支障をきたしている。今の彼の知能は普段のおよそ七~六割と言ったところだろう。

 だからこそ『エロースを引き受ける』などという無謀な蛮勇に走り、結果として上手く作用したものの、恐らくは今頃になって自らの脳の異常を確認していることだろう。


 という訳で、倒す→白夜→転移で捨てる、ということを繰り返していたのだが、残念ながらこちらサイドにも災厄(ポンコツ)がいた。


『ふむ、森のない所は隠れられぬな。致し方ない、ここら全てを森に変え───』

「馬鹿じゃないの!? そんなことしたらギンに絶対なんか言われるからね!?」

『それは“褒められる”という意味で良いな?』

「嫌われるって意味だよ!?」


 ───そう、ケリュネイアである。


 彼女は人の話を聞かない賢い馬鹿であった。

 ギンのようにプライベートで好き勝手暴れている馬鹿(仮)ではなく、例えるなら白夜のような賢いけど馬鹿。そんな感じの酷い性格の持ち主だ。ちなみに性癖は尚酷い。

 その上白夜のように物分りもよくなく、結果として色々と正確に教えてやらねば行動に移さず、何も言わねばそれこそここら一帯を森にするくらいは平気でやってしまう。


 ───まぁ、言うなればエロースとはまた別な意味でのポンコツ野郎である。野郎ではないのだが。


 とまぁそんなこんなで、本人曰く『森がないから』という理由で身を隠さない彼女は見つかりまくり、結果としてうまい具合に白騎士たちを捕縛し投棄しているわけだが───


「き、きき、貴様らァァァ!! そ、それ以上抵抗してみろ!? コイツがどうなってもいいのか!?」


 ───中には、倫理観を無視した悪行に走る者もいる。


 その声に「しまった!」と恭香が叫び、皆は内心で『ケリュネイアさえ隠れてくれれば.....』と思いながらそちらを振り向き。


 そして皆は───予想だにしなかったその光景に目を剥いた。


「あ〜れ〜、捕まっちゃいました〜。きっと私の艶やかな肢体をいやらしい目で見つめながら裸体をまさぐってくるこの騎士に『ぐへへっ、姉ちゃん、助かりたければ俺といいことしようぜ』とか言われて辱めら───」

「そんなことするか!? というか貴様! 何が裸体だ、ぬいぐるみ(・・・・・)ではないか!」

「てへっ♡」


 そこに居たのは、人質の首を腕で抱えながら長剣を添えている白騎士と───巨大なペンギンのぬいぐるみ。


 ───そう、万屋の店主アスタさんである。


 全知である恭香さえ知認することなく街に居座り、不審に思って行ってみればまさかの売上ゼロ。

 そして意味不明なペンギンの着ぐるみを着てどこからか生み出したお金という名の賄賂を渡してくる。まさに意味不明の人物である。


 彼女について唯一わかるのは───とてつもなく強いこと。


 恭香は咄嗟に『この人に任せればいいんじゃない?』と思って声をかけようとするが、その直前でアスタが大声で叫びだした。


「あーあー! このままじゃみんな人質に取られてやられちゃいますー! もしもどこかに定期的にうちにパンでも買いに来てくれる素敵なクランがあれば、なんか私の超パワーでこの場を乗り切れるのにー!」


 瞬間、皆は思った───この野郎! と。

 だがしかし、パンを買うだけならば入荷して喫茶店ででも出せばいいし、なにより恭香は知っていた。

 ───この人は、案外チョロい、と。


「うん、美味しければ毎月最低でも十個───」

「超絶愛してますよ断罪者さん!!」


 瞬間、彼女を中心として白銀色の雷(・・・・・)が迸り、敵のみを滅するそれは街中を走り抜ける。

 ───導電回路(レヴィアンダール)

 それは間違いなくギンの使用する『銀滅雷牙』の能力であり、彼女の能力を知らぬ面々はその能力を見て目を剥いた。


 けれどもアスタはさして自慢するでもなく、にひひっと頬を緩めながら告げた。


「はい、お掃除終了ですっ!」


 結果、街中の白騎士たちはたった一瞬で全滅したのだった。




 ☆☆☆




 エロースのお陰で手薄になっているクランホーム内。

 僕は今現在進行形で、気配を最大まで希薄にして堂々とその中を歩いていたのだが、突如として襲来した白銀色の雷───恐らくは『導電回路(レヴィアンダール)』であろうそれを見て思わず目を剥いた。


「今のって⋯⋯絶対あのペンギンだよな?」

『ったりめェだろ。何だか私と同じ能力感じて起きてみりゃああのペンギン野郎、銀炎以外にも雷まで使いこなしてるじゃねぇか』

『いやぁ、どんな能力かは知りませんが末恐ろしいですねぇ。何故あの方が銀雷を使えているのかは分かりませんが』


 僕とクロエはウルの言葉に思わず唸って頭を悩ませたが、とりあえず今はこっちが優先だろう。

 僕の目の前には、ピンク色の膜がはられた訓練室の出入口。

 これこそがエロースの言っていた『障壁』であり、咄嗟に一番強いものを張ったのか、内と外を完全に遮断する最高位の障壁である。まぁ、流石はエロースと言ったところか。


「まぁ、こっちからすれば触れるだけ壊しようもあるんだけどな」


 僕は左手に天羽々斬を召喚すると、属性強化済の血色の影を纏わせた。

 今の僕は病み上がりもいい所。正直言えばこれを維持するのも一苦労で、なによりも頭が全く働いていないことに今頃になって気がついた。

 今考えればエロースにここまで先行させておいて障壁を解除させ、その間に三人を眷属召喚すればもっと早かったに違いない───全く、マスタークにあれだけ説教しておいてこのザマか。


 僕はあまりの酷さに苦笑すると、天羽々斬をその障壁へと思いっきり突き刺した。


 ガシュッ!!


 天羽々斬の超絶切れ味、完全破壊の能力を持つ血色の影。

 それらを総合した一撃は何とかその切っ先を貫通させることに成功し、僕はまるでノコギリでも使うかのごとくギッタバッタと障壁を切り崩してゆく。


「ふぅ、滅茶苦茶硬いなこの結界⋯⋯流石はエロースだな」

『向こうからしたら破られるだなんて微塵も思ってないでしょうけれどねぇ』


 ならば何故僕に一人で来させた、とエロースにそう聞きたくなったが、そこら辺は彼女らしいということで終わらさておこう。

 僕はやっと出来た小さな隙間から身体を霧に変化させて侵入すると、入ったところで身体を元の人型へと戻す。


 すると目の前には、荒い息を吐いて横たわる三人の姿があり───


「悪い遅くなった。今助けに来たぞ、三人とも」


 三人は、薄く目を開いて微笑んだ。



こんな時でも相変わらずだなぁ。あの人たち。

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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