第28話
恭香『今回、マスターのレベルアップに伴って、私の能力もいくつか増えましたー。その一例として、今回からはマスターのステータスをほんの少しだけ改良してみたよ』
白夜「うーむ、恭香殿はハイスペックじゃのう。そのうち自力で人型とかにもなれるんじゃないのかのぅ?」
恭香『ふふふ、さて、どうだろうねぇ?』
ぴろりん!レベルが上がった!
ぴろりん!レベルが上がった!
ぴろりん!レベルが......
なんだろうか。
圧倒的な強者と戦ってそれに打ち勝ったのにも関わらず、なにか、大切なものを無くした気がする。
『人としての在り方だと思う』
......すいませんでした。
あれ? それにしてもレベルアップが長いな......白夜死んじゃったりしてないよね? 気絶だよね?
『うん、ただの気絶だよ?』
で、ですよねー......。
死んでたらどうしようかと思っちゃったよ。
..........レベルが上がった!
ぴろりん!レベルが上がった!
ぴろりん!レベルが上がった!
ぴろりん!レベルが上がった!
ぴろりろりん!種族進化の条件を一つ満たしました!
お、僕にもとうとう進化の兆しが......
「って、ええぇぇぇぇっっ!?」
インフォメーションは最後の最後にとんでもない爆弾を置いていったのだった。
☆☆☆
種族進化。
各種族は下位種、中位種、上位種、最上位種、神級種と5つのクラスがある。
人族ならば、
ハイヒューマン、半神、亜神、現人神と。
獣人族ならば、
長命種、帝獸種、幻獣種、神獣種と。
魔族ならば、
侯爵、公爵、魔帝、魔神と。
そして吸血鬼ならば、
デューク/ダッチェス、真祖、始祖、神祖と。
それぞれが種族進化を経て──そういえば白夜を瀕死に追いやったのは人族の亜神だとか恭香が言っていた気がするな──次のクラスへと進んでいく。
だが、それぞれの進化にはいくつかの条件を満たすことが必要なのだ。吸血鬼で例えるとしよう。恭香曰く、普通の吸血鬼がデューク、若しくはダッチェスに進化しようと思ったら、条件のひとつとしてLv.MAXであることが挙げられる。それに加えて全種族の血を吸血することが必要らしい。
僕のようにユニークスキルや加護を持っていない上にステータスも高くない吸血鬼にとってはまさに無理難題と言えるだろう。ちなみに冒険者で言うと、基本的にBランク以上が中位種、Sランク以上が上位種となっているらしい。
「それで、始祖への進化の条件のひとつが、『圧倒的な強者への勝利』ってわけか」
『うん、普通ならば、確実に不可能だよね』
それもそうだろう。ここで求められるのはAAAランクが単体でSSランクを倒すという事に等しいのだから。
「『良く考えたら、よく勝てたよね...』」
未だ気絶している白夜を見ながらそう呟く僕たちだった。
『そういえばマスター、まだステータス見てないよね?』
あ。
完全に忘れてた。
『なんで毎度毎度忘れるんだか...』
くっ、レベルアップする毎にそれ以外の重要案件が起るんだからしかたないじゃないか...
「白夜のテイムに初ドロップアイテム、万能薬とブラッドメタルの入手、そして今回に至っては進化条件ときた。次回は一体どうなることやら......」
『た、たしかに......』
そんな事を思いつつも僕はステータスを開くのだった。
名前 ギン=クラッシュベル (19)
種族 吸血鬼族(真祖)
Lv. 578
HP 4200
MP 42560
STR 6240
VIT 5400
DEX 7500
INT 16900
MND 11100
AGI 7900
LUK 677
ユニーク
真祖
マップ
影魔法Lv.4 ↑+1
アイテムボックスLv.2
影の王Lv.3 ↑+1
経験値3倍
吸血
眷属化
疾風迅雷Lv.2(共有) ↑+1
アクティブ
創造Lv.2
水魔法Lv.3
風魔法Lv.3
付与魔法Lv.2
鑑定Lv.3
威圧Lv.1
テイムLv.3
複合魔法Lv.1
並列思考Lv.3 ↑+1
パッシブ
小剣術Lv.4 ↑+1
危険察知Lv.2
全属性耐性Lv.2 ↑+1
混乱耐性Lv.3
痛覚耐性Lv.2 ↑+1
毒耐性Lv.1
アクロバティックLv.1
称号
迷い人 創造神の加護 死神の加護 白銀竜の主
竜殺し 魔の深淵(new)
従魔
白銀竜プラチナドラゴン
「な、なんか、すんごいレベル上がってないか...?」
『仮にもエンシェントドラゴンを狩ったんだよ? それも1人で。一応言っておくけど、今の白夜ちゃんは通常の始祖Lv.MAXよりも遥かに強いからね?』
「うわぁ...それはやっちまったなぁ......。ちなみに始祖のLv.MAXって、数字で言ったらどれくらい?」
「白夜ちゃんと同じくLv.1000だよ」
「ち、ちなみに今の僕は?」
『Lv.800だと思うよ?』
Lv.800かぁ......って、『だと思う』だって?
『いや、本当は800なんだけどね...。何だかこのステータス見てたら違うんじゃないかって気がしてきてさ......って言っても十中八九Lv.800で上限だってのは変わらないと思うけど......』
ん?つまりはどういう事だ?
『うん......このステータスね。実は、始祖のLv.500と同じくらいのステータスなんだよね......』
よくよく見たら、初期の白夜と互角だということに気づいた僕であった。
☆☆☆
『はっ!? ここはどこじゃっ!?』
ステータスを確認した数分後、気絶していた白夜が目を覚ました。明らかに挙動不審で何かに怯えているように見えた。
『いや、多分アレでしょ』
「いや、アレって言われても分からないんだけど」
『くっ、言わせないでくださいっ!』
明らかなセクハラであった。もしここが日本であれば僕はもうとっくに刑務所に入っているのだろう。
『うわぁぁぁっ!? あっ、主様っ!?』
あ、気付かれた。
くっ、面倒な事になりそうだ...
30分後後。
「くっ、ま、まぁそういう事にしておくのじゃ」
何とか白夜の説得に成功した。
あの後、何とか人型に戻ってもらった白夜を落ち着かせ、理論的な感じの事を延々と語った後、
『お前だって嬉しかったくせに』
と付け加えたら一瞬で黙った。
『やっぱりマスターとは言い争いしたくないね』
教本すら恐怖させる僕の交渉(恐喝)術であった。
「それで、恭香? 今の僕の強さならここのボスには..『勝てると思うよ?』...声、被せないでよ......」
「今の主様は間違いなくSランクの上位に入っとるのじゃ。今の主様でも苦戦するようなSランクともなると、最早、天使に悪魔、エンペラードラゴンに幻獣くらいしかおらんじゃろう」
「うはぁ、またまた強そうな名前だな...」
『本当は何度か負けながらも少しずつ経験値を得るはずだったのに、何だか1回で終わっちゃた上に、とてつもなくパワーアップしちゃったからね......』
「くっ、あの勝負は無効じゃっ! あんな卑怯な手はダメなのじゃっ!」
「いや、確かにあれは酷かったけど、こっちだってまさか気絶するとは思わなかったんだぞ? 抱きつかれて焦っている隙に影から飛び出して倒そうかと......」
「ふ、ふんっ、じゃ!」
「いや、やっぱり語尾変だぞ? お前」
「なっ! なんじゃとっ!?」
そんな感じで白夜もいつも通りに戻り、
僕たちは安心して最後の大部屋へと向おうとしていた
のだが。
「うぬ? そういえば主様よ、本当に何でも言う事を聞いてくれるんじゃろうな?」
あ。
魔の深淵
魔の深淵を覗いたものの証。
深淵もまたこちらを覗いているのだ。
取り込まれぬように気をつけろ。
MP、INT、MNDが大幅上昇




