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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
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第269話

僕は荒い息を吐いて膝を付いた。


ズキンッ、と身体中に痛みが走り、僕は呻くように言葉を捻り出す。



「ぐぅっ....、はぁ、はぁ、はぁっ、き、きっついな、これ」



気がつけば背後の渦動魔法陣も解除されており、頭の中に心配そうな声が響いてきた。



『大丈夫ですか、ご主人様? かなりの無茶をしたように思えましたが』


『今までのを鑑みんと、今回は半月くれぇはまともに戦えそうにねぇな。かなり身体にガタきてるみてぇだが、まぁ、治る後遺症でよかったんじゃねぇか?』



二人の声を聞きながら、僕は災禍(ヘイルテンペスタ)を杖にして立ち上がる。


そして内心こう思う───本当にクロエの言う通りだな、と。


実は死神ちゃんやウルに言われたことなのだが、どうやらこの悪鬼羅刹による身体への悪影響は、魔法や回復薬───果てはあの“神の髪”でさえ治すことは出来ないのだとか。


エロースの“女神パワー(笑)”ならば治せずとも痛みの緩和くらいはできるのだが、それでも尚『羅刹』を身体に降ろすのは無茶がすぎるらしく、本格的に短期間で済まそうと考えればゼウスを頼る他なくなる。そんなレベルだ。


───まぁ、言うなれば『諸刃の剣』だろうか。圧倒的な力を得る代わりに甚大な損傷を負う。しかもその傷は自然治癒以外では回復不可能ときた。



「ったく、本当に面倒な能力だな」



僕は回復魔法で身体の痛みを少しでも軽減させながらも周囲を見わたす。



「にしてもどういうつもりだアイツら......。さすがに僕が怒ってたからって近くにすら来ないって舐めてるにも程があるだろ」



そう、グレイスや死神ちゃんはまだしも、白夜と輝夜すらこの付近に来ていないのだ。確かに今のあの二人はまだ実力的に足りていないため来ないという選択肢もあるだろうが、まさかあの二人がそんな正しいだけの選択をとるとも考え辛い───自分で言うのもなんだが、アイツら極度のマスターコンプレックスだしな。


ならば、残る選択肢は───



「こっちはフェイクであっちが狙われてる.....のだとすれば『ご愁傷さま』って感じだし、なにより大悪魔を囮にする訳もないしな......」


『まぁ、あの師匠と死神のいる場所に攻め入るなんざ馬鹿のすることだな』


『ええ、昔戦って殺された(・・・・)覚えがありますが、あのお二人はそれはもうとんでもなく強かった覚えがありますよ』


「『......はい?』」



思わずそのとんでも発言に驚き声を上げた僕とクロエであったが、僕は何故かこの現状に引っかかるようなものを覚え───





「何故助けにこないか、教えてあげましょうか?」





ほくそ笑むようなその気持ちの悪い声に、咄嗟に僕は常闇で身体を覆った。


次の瞬間、とてつもない速度でその場所(・・・・)から何かが飛び出し、僕をそのガードの上から吹き飛ばす。



「うぐっ!?」



先程までとは文字通り格の違う攻撃に僕は思わずぐぐもった悲鳴を上げ、数キロ(・・・)飛ばされた後にやっと止まることが出来た。



───が、その数値に僕は疑問を覚えて周囲を見渡す。



そこには目の前数百メートル(・・・・・・)の地点で不気味な笑みを浮かべて立っているその女───アスモデウスと、どこまでも続く草原、そして遠くに見える王都。



そして僕は───ほぼ変わっていないその景色に、やっとその答えに行き着いた。




「ま、まさか、超高位の結界か!?」




僕の声が届いたのであろう、アスモデウスは気味の悪い笑い声を上げ、余程高位のものだったのか、言われて初めて察知できたらしいウルが悔しげに声を漏らす。



『も、申し訳ありません、どうやらいつの間にか脱出不能の結界に囚われていたようです......』


『チッ、こりゃァ素の私でも気ぃ抜けば騙されちまうレベルの超高位結界だな。まず間違いなく大悪魔どもの切り札だ。正直今の私たちじゃ発動されたことすら気が付けねぇシロモンだぜ?』



その声に思わず僕も歯を食いしばり、舌打ちを漏らす。


すると僕の様子を目敏く察したのだろう、アスモデウスは笑いながらペラペラと語り出した。



「キャハハハハハッ!! ざまぁ! ざまぁ無いわね! 倒したと思った相手に出し抜かれた気持ちはどぉお? お仲間さんたちが助けにこないことを知った気持ちはどぉお? 手を抜かれていたことに気がついた気持ちはどぉお? キャハハハハハ!! チョーウケるんですけどっ!」



一言伝えられるなら『超ウゼェ』だろう。


だが、正直僕にとってはこの無駄話もありがたい。この大悪魔を───コイツいわく本気のアスモデウスをもう一度倒すには、今の体力・魔力では間違いなく力不足だ。


だがしかし───もしもそれで倒せたのだとしても再び復活されていては話にならない。無駄骨もいいところだ。


そんなことを考えていると結界の調査が完了したのか、ウルの声が頭の中に響いてきた。



『調査完了です、ご主人様。この結界はとある魔導具によって作られたものであり、その効果は外と内の隔離、そして発動者の死亡を一度だけ無効化し、復活させるという能力ですね。あと、この魔導具は破壊して初めて使えるものですので解除するにはアスモデウスをもう一度倒す他ないようです.....』



その声を聞いて、僕は内心焦りを見せる。


今の状態で先程より強いアスモデウスと戦うのは無謀もいいところだ。勝ち目は皆無と言っても過言ではない。


考えられる勝ち筋は『幻想の紅月(ルーアン・イルゾニア)』を使用して勝負を挑むくらいだが、いまのアスモデウスならば発動する前に僕を殺すことくらい造作もないだろう。


そもそも今アイツが僕を攻撃しない理由はたった二つ───生き延びたことへの安堵と、相手への盛大な嘲笑のためだ。要は僕を悔しがらせたいという訳だな。


にしても、僕が言えたことじゃないが性格悪いなぁ、あの女。そして何だか馬鹿っぽい。



───よし、とりあえず試してみるか。



僕はふぅと息を吐くと、ピクピクと悔しげに眉を歪ませながら言葉を吐いた。



「悪いがこちらは頭が弱くてな。先程までのお前は明らかに本気に見えた。冥土の土産、と言ってはなんだがその秘訣でも教えてくれないか、綺麗なお姉さん?」



これで話を引き延ばせたら重畳、その秘密を聞き出せたら大勝利だ。まぁ、普通なら聞き出せないでそのまま殺されるだろうけどもな。


僕は内心緊張しながら、その返答を待って───




「あら? アナタなかなかいいこと言うじゃない? いいわ、どうせ死ぬのだし最後に色々と教えてあ・げ・る♡ キャハハハハハ! チョーウケるんですけどっ!」


(勝ったァァァァ!! まさかの大勝利だ!!)




───内心で、ガッツポーズを上げた。


僕は一人で言って一人で笑ってるお馬鹿な大悪魔を内心で笑いながらも、精一杯悔しげに「た、頼む......」と告げると、彼女はますますいい気になったのか色々と喋ってくれた。




「キャハハッ、これは全能神も知らないっぽい超秘密なんだけどぉ、実は大悪魔っていうのはそれぞれが『根源化』って能力を持っててねぇ? んで、その大悪魔の......なんて言ったらいいのかしら、モチーフ、って感じ? そんな感じの動物、又は魔物に姿を戻すことが出来ちゃうのよ。んでぇ、その力を引き出せばそれだけ力が強くなるんだけどぉ、今の私なんて姿変わるギリッギリまで引き出しちゃってるのよぉ? アンタ、私ほどじゃないけどなかなか強かったわよ? キャハハハハハ!」




絶句。


その全能神さえ知らないらしい秘密を知って、僕は思わず演技も忘れて絶句した。


───つまりアレか、メフィストやルシファー、アスモデウスとか大悪魔はみんなそういうモチーフがあって、その本来の姿に戻れば戻るほど力が増すってことか?



『全く知らなかったぜ......』


『私も長年生きてますが初耳ですね......』



そしてこの二人が知らないという驚愕の事実に再び絶句。

それに拍車をかけているのが、月光眼でアスモデウス見た際、それはもう溢れ出る悪意を感じたが、それは僕を絶望させるという意味での悪意であり、嘘をついているような感じではなかったのだ。



───つまりは、あれだ。僕は大悪魔たちの本来知っちゃいけない、ホント物語の終盤で知るべきだったガチな奥の手を知ってしまったわけだ。



何故かメフィストが頭を抱えて蹲る姿が頭に浮かんだが、それはともかくとしてだいたい必要なことは聞き終えた。体力もこれ以上は回復しそうにもないし、残るは何とかしてアイツを倒すだ───





「だいたい話し終わったし、そろそろ殺すわよ?」




瞬間、超直感が警鐘を鳴らし、僕の身体は理解するより前に動き出す。


次の瞬間、僕の目の前に現れたその獣の爪(・・・)を、咄嗟に僕は災禍(ヘイルテンペスタ)を使って防ぐことに辛うじて成功する───と同時に身体中を襲う先程よりも強い衝撃。



「がはぁっ!?」



衝撃は吸収しきれずに僕の腕から内臓まで突き抜け、僕は内から上がってきた血液を吐出する。


それと同時に吹き飛ばされた僕の身体は、きりもみ回転をしながら先程よりも遥か遠くへと吹き飛ばされ───けれども結界のせいで彼女との差は一定の距離以上は開かず、景色もある場所から決して変わらない。



そしてしばらくして、やっと身体が勢いを失って止まる。



───その直前、気がついた頃には僕の身体は獣の腕にめり込んでおり、直後には再び吹き飛ばされて、先程とは違う方向に吹き飛ばされる。



僕の口からは───悲鳴は出なかった。



先ほどの攻撃はまだガード越しの攻撃だった。


けれども今の攻撃は防御する暇もなく食らった、正真正銘のクリーンヒット。クリスマスの聖獣にやられた一撃よりも遥かに強く、そして鋭かった。




『ギン!? 大丈夫かッ!?』




そんな、珍しく焦ったようなクロエの声が聞こえたような気もしたが、その直前に僕の意識は暗転した。




☆☆☆




「ぐふっ、ゲホッ、ゴハッ......」



咳が出て、それと同時に僕の口から大量の血が吹き出した。


場所は───どこか、見慣れぬ場所だ。よく分からないが、あの場所から微かに見えた森が見える。


僕はそこでうつ伏せに横たわっており、ここまで何をして、どうなったのかは思い出せない。



「かハッ......、い、意識、トンでたか...?」


『おい! 気がついたか!? テメェ早く起きやがれ! このままじゃマジで死んじまうぞ!?』



クロエの必死な声が頭に響き、僕は周囲を見渡す。


視界に映る範囲の草原はベッタリと血で染まっており、これが一人の人間の血液だとすればソイツはもう出血死もいい所だろう。


けれども不思議とそれらを見た僕は『あぁ、これ全部僕の血なんだな』と確信し、僕の死期が迫っていることにも何となく気がついた。



「生き......なきゃ。ダメ、だよな...」



僕は必死に左腕を地面に付き、立ち上がろうと力を入れる。


けれどももう既に身体からは力が失われており、左腕は自らの血で滑って身体が地へと叩きつけられる。


生憎と、神祖になったお陰で血をいくら失おうとも肉体にも不死力を持つようになった僕だが、それでも血液さえなければ僕の肉体はあのヤマタノオロチと同格───いや、それ以下だろう。



「ハハッ......、勝てる、予定だったんだ、けどな」



身体からは徐々に力が抜けてゆき、不思議と気持ちいい気分になってきた。


まるで思い切り疲れた日に自宅の布団に倒れているかのような、まるで安心にも似た心地よい気持ちよさ。何もかも忘れて楽になれるような、そんな心地よさだ。


───ふと、何がいけなかったのかと頭を過ぎった。


言い訳になる気もするが、きっと万全の状態だったならば僕はアスモデウスに負けはしなかったろう。苦戦はしても負けることは無かったはずだ。

けれども今負けているのは、復活可能という反則地味た高位結界と、その前のヤマタノオロチのせいだ。


そのヤマタノオロチを思い出して僕はこう思う───やっぱりああいう奴とは相性最悪だな、と。正直まともに相手してられないし、出来ることならばもう二度と会いたくないものだ。


頭の中に最早理解もできなくなりつつあるクロエとウルの声が響き、地震にも似た足音が響き渡る。



視線を上げる。



そこには恐らくアスモデウスのモチーフであろう、ありとあらゆる魔物が混ざった───いわゆるキメラ。

そのキメラさえ可愛く見える程“醜悪”という言葉が良く似合う巨大な魔物が鎮座しており、その顔は間違いなく喜色に滲んでいた。


僕はその姿を見て、その顔を見て、絞り出すかのように声を出す。



「死にたく、ねぇなぁ......」



───死にたく、ない。


人間としては当然の思考であり、何よりも仲間を思えば当然の思考である。


きっと僕が死ねば、みんな悲しむだろう。

もしも僕がみんなから忌み嫌われてるんだったならば喜び踊られるほど騒がれるのだろうが、僕はこれでもけっこう好かれてたからな。


まぁ、何を言いたいかっていえば。




「皆を......、恭香(アイツ)を、泣かせるような真似は、出来ない───ッ!」




身体中が悲鳴を上げる。


タダでさえ限界ギリギリまで身体を酷使し、その上意識がなくなるまで嬲り続けられ、無くなっても尚いたぶられ続けた。


最早、回復力が追いつかないほどに身体はボロボロで、きっと立ち上がるだけで何も出来ないだろう。



───けど。



「肉はいくらでもくれてやる、骨もいくらでも断たせてやる、何なら生命だって欲しけりゃ削らせてやるさ」



僕は口の中に溜まった血を吐き出すと、目の前の怪物に精一杯睨みを聞かせてこう告げた。




「来いよクソ悪魔。何度お前が僕を潰そうと、僕の心だけは絶対に折れやしない」




気がつけば頭の中の二人の声は止んでおり、アスモデウスの顔は一転して怒りと苛立ちに歪んでいた。


勝てはしない。きっと勝てはしないだろうさ。


けど、僕はどんなに傷を負おうと、どんなに拷問されようと、どんなに殺されようと。



───僕は最後まで、生きることを諦めない。



気がつけば僕の目の前にはその獣の爪が迫っており、走馬灯とはまた違うのだろうが、僕には何故か、その様子がとてもスローに見て取れた。


徐々に迫り来る巨大な鋭爪。


ガンガンと警告音をならす超直感。






───そして、チリンと鳴る、鈴の音。






『やはり気に入ったぞ、我が主人よ』




瞬間、目の前に白色の障壁が張られ、その爪と一瞬の衝突の後にその攻撃を跳ね返した。



「.........はっ?」



僕は予想だにしなかった現状に思わず間抜けた声を出し、そして一瞬の硬直の後に、その声の主を発見した。



───僕の身体のすぐ隣。



大きな体躯に圧倒的なまでの威圧感を放つその赤い角。


茶色い毛皮に青銅の蹄。


こちらを覗くは───透き通るような青い瞳。



その姿は僕がかつて見た時とは異なっており、やはりあの後僕が残した“神の髪”を使用したのだろうと確信できた。


だからだろうか?

助けたからこそ、助けに来てくれたのだろうか?


僕は思わず混乱して色々な考えが頭に浮かんだが、とりあえず目の前のコイツに、最初に言うべき事だけは定かだった。




「ありがとう....、助かったよケリュネイア(・・・・・・)




そこに居たのは、雪国で出会った森の神様であった。


やっと来たかケリュネイア!

ちなみにですが、根源化は混沌が隠し続けてきた大悪魔側の奥の手です。ついでにこの結界も勝手に持ち出してきた使い捨ての奥の手ですね。アスモデウス、怒られぞぉ〜?

次回! 学園編ラストです!

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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