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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
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第266話

やっと登場です。

な、長かったァ⋯⋯、本当に。

僕が大悪魔アスモデウスと戦う前に、明かさねばいけない過去があるのをお覚えだろうか?


そう、これは僕が夏休みに入って、クランホームへと帰宅した翌日のこと。


その日といえば僕の黒歴史ができる前日であり───なにより僕が覚醒し、アイツ(・・・)と対話した日でもある。



という訳で、僕VS白夜、輝夜、暁穂、エロースの、無謀にもほどがあった決闘のことから話すこととしよう。




☆☆☆




ズガガガガッ!!



瞬間、先程まで僕がいた場所に複数本の矢が突き刺さり、僕がそれを走って躱したと同時に、左右からドラゴンの爪と神狼の爪が迫ってきていた。



「ぐぅっっ!」



僕は咄嗟にその間に常闇を挟めてガードをすると、その直後にまるで弾かれたかのごとくローブごと体が後ろに飛んでゆく。


ダメージは無い。衝撃はあれど耐えられる程度だし、仮にダメージがあったとしても一瞬で回復できる程度だ。


そう考えながらも数十メートル飛ばされてから立ち上がると、その直後に先ほどと同じ矢と、左右からケルベロス二体による火炎放射が僕めがけて発射された。



───ったく、どんなコンビネーションだよっ!



僕は空を蹴り上空へと駆け上がってそれらを躱す。


だがしかし、それすらも読まれていたのか空中には白夜と暁穂の姿があり、僕は咄嗟に常闇を丸めてガードに移るものの、白夜の尻尾にて吹き飛ばされ、その先で暁穂の爪によってさらに攻撃をもらい、今度こそ常闇越しにもダメージが入る。


だがしかし、たまたま僕が飛ばされた先は後方で支援を行っているエロースのすぐ近くであり、僕はアイテムボックスからブラッディウェポンを取り出して切りかかる。



───だが、



「ごめんね親友くん。さっきのはカッコよかったけど、流石に力量差があり過ぎるよ」



そんな声が聞こえ、次の瞬間には僕の身体中にまるで殴られたかのごとく痛みと衝撃が駆け抜ける。

驚いてエロースへと視線を向けると、彼女は拳を構えたままの状態で止まっており、なるほど本当に力が離れすぎているのだろうと実感した。


その上───これだ。



「死に晒せよ主殿!」



僕は背後から振るわれたその大鎌───ソウルイーターを何とか躱すと、それと同時に周囲へと原始魔法にて作った短剣を飛ばす。

それにはさすがの輝夜とエロースも後ずさり、やっと僕だけの空白地帯が出来上がる。



───訳もなく。




『今回ばかりは、無謀じゃったぞ主様』


『これで終わりです、マスター』



気がつけば、神化した白夜と神狼化した暁穂が眼前へと迫っており、僕の意識は呆気なくもそこで途切れた。




☆☆☆




「貴方様は、力を求めますか?」



その声が聞こえ、僕は目を覚ます。


そこは先ほどの訓練場とは全く別の、赤と黒を基調とした少し大きめな一室であり、僕は一人がけのソファーに腰を下ろしているようだった。


部屋中にはピアノやタンスなど、様々なものが置かれており、全体の大きさに比べると小さく感じられる。

部屋の中にはシックなメロディが流れ、そちらを見ればくるくると回るレコードの上を針が走っている。


ふと身体へと目線を下ろすと、光を吸収しているような闇のように黒いスーツに赤いワイシャツが見え、どうやら本格的に何者かの世界に迷い込んでしまったようだと確信した。



そして、きっとその相手とは───



僕は視線を上げる。



そこには小さな机を挟んで僕と同じようなソファーが置かれており、そこに一人の人間───いや、そのような『何か』が腰をかけていた。


見た目の年齢は───恐らくは二十代前半だろう。


肩まで伸びるダークレッドの髪に、自分の影分身を連想してしまうような、僕と同じような真っ赤な瞳。

このスーツと同様、光を吸収する闇のような漆黒のローブを羽織っており、見た目だけならば男とでも女とでも表現できる。


そのため僕はとりあえず、一番気になることを聞いてみた。



「お前、男と女、どっちなんだ?」と。



するとキョトンとした表情を浮かべる───そうだな、一応彼女としておこう。髪長いし。


彼女はキョトンとして少し目を見開いて固まると、少ししてやっと言葉の意味を理解出来たのかクスクスと笑い出す。



「ふふっ、まさかこの部屋に招待されて一番最初に口にする言葉がそれとは。さすがは私の───いえ、今はやめておきましょうか。ちなみに性別は不詳ということで。その方が萌える、という方も居るでしょうから」



───おおっと、なんだか今までに無い新キャラだな。僕の言葉にコロッと騙されてしまうチョロインたちとは大違いだぜ。


僕は内心でそんなことを思っていると、ようやく笑い止んだのか、彼女がその真っ赤な瞳を僕へと向けてきた。



「それではいきなり本題に移るのもアレというか、単純に長年この部屋に閉じ込められていたため話し足りないというか、兎にも角にも暇ですし雑談から始めましょうか」


「......雑談? 雑談って言っても僕、そういう自分から話振るの苦手なんだけど」


「ふふっ、もちろん存じ上げております。なので私が長年ために貯め続けた話のネタを幾つか消化しようではありませんか」



いきなり雑談を始めようと言い始めた彼女。


まぁ、普通なら絶対緊張するか怪しみ、警戒するところだろう。

けれども不思議と僕の中には彼女に対する『不安』は無く、言っていることこそ分からずとも、まるで長年一緒にいる仲間を前にしているかのように、気がついた時にはもう既にスラスラと言葉が口から漏れ出ていた。



「まずは自己紹介からですね。私の名───ではありませんが、私の種族名は“円環龍ウロボロス”といいます。一応昔は世界の輪廻転生を司っておりましたが、今は一介の魂でしかありません。どうぞ末永くよろしくお願い致します」


「あぁ、それはそれはどうも───ってちょっと待て? なんだよその滅茶苦茶強そうな名前と経歴は」


「わかりやすく言えば世界獣ベヒモスと世界竜バハムートの上司ですかね。それなりに強かったと自負してます」


「なにそれ怖い!」



僕は予想以上にヤバイその正体に思わず身を引いて打ち震えた。


円環龍ウロボロスとか名前からしてやばいし、あのDeus級最上位であるバハムートの上司とか、魔物分野で言えばコイツが頂上なんだろうと確信できるレベルである。


僕の反応を見て再び「ふふふ」と上品に笑うウロボロス。

僕はそれを見ているとやはりどうしてもとある疑問が頭に浮かび、しばしの間どうしようかと考えたが、結局思い切って聞いてみることにした。



「なぁ、その円環龍様がどうし───」


「あぁ、その種族名長いので名前をつけてくださりませんか? 人間風味に例えるなら『おい人間』と言われているようなものですから」



瞬間、聞こうと思った途端に違う話を被せてこられた。もしかしてそこは地雷原だっただろうか?


僕はそう考えて「うむむ」と唸っていると、名前を考えてくれているとでも考えたのか、ウロボロスは楽しげな笑みを浮かべてソワソワしだした。何この人可愛い。


僕は内心で何だかんだで流されている現状にため息を吐きながらも脳を回転させると、十数秒間考えた後にいい感じの名前が浮かび上がった。



「よし、“ウロボロス”と輪廻の“廻る”から最初と最後をとって『ウル』って言うのはどうだ? 最初期と比べたら素晴らしいネーミングセンスだと思うんだが」



僕は自信満々にそう言ってやると、彼女は顎に手をやって「ウル......ウル、ウル?」としばらくその名前を呟き続けた。


もしかして『ウル? 何その名前ダサッ、まぁ、何とか許容できなくもない感じ......かな?』って感じかな? だったとすればかなり死にたいんだが。


僕がそう考えて心の中で泣いていると、彼女はふっと顔をあげて満面の笑みでこう告げた。




「はい! 世界に私の個体名を『ウル』で設定し終わりました! 素敵な名前をありがとうございます!」




僕はそのあまりにもスケールの大きくて大事な出来事に、思わず彼女の頭を引っぱたいた。




☆☆☆




「痛い......、いきなり酷いです、ご主人様(・・・・)



頭にたんこぶを作ったウルがいきなりそう言い出し、それを聞いた僕は主に後半部分について言いたいことがありすぎた。



「......ちょっと待ってウルさん? 何その呼び方、恥ずかしさのあまりゾワッとするんだけど」


「? 奴隷でもなんでも名つけ親を『ご主人様』とお呼びするのは普通なことですよ? それとも何か、親子という設定で『パパ』とでもお呼びし───」


「もうご主人様でいいです」


「はい、ご主人様っ!」



───どうしよう、魔物の頂点のご主人様になっちゃった。


僕はこめかみをグリグリとやりながらため息を吐くと、そろそろ決闘の続きがきになってきたので話を進めようとして───




「貴方様は、力を求めますか?」




いきなりウルの口から漏れたその言葉に、僕は思わず目を見開いた。

それは今、僕がちょうど求めていたもので、この部屋に来て一番最初に聞かれた言葉でもあったからだ。



「私は、ずっとご主人様のそばに居ました。出会ったのはあの暗いダンジョンの中。その後の大進行や武闘会、王都の占領に此度の学園に至るまで。ずうっとご主人様のお側に居ました」



その言葉で僕が思い出したのは───僕の相棒。


恭香と出会うよりも先に出会い、今日までずっと共にいて、共に成長してきた相棒───ブラッディウェポン。それに宿る魂。


僕はそれに思い至って目を見開くと、何を察したか彼女は微笑んで頷き、口を開いた。



「初めのブラッドナイフ、今のブラッディウェポン、そして第三段階、第四段階。徐々に私の意識が表層に出られるようになり、第三段階にもなればクロエさんをこの部屋にお呼びすることも、これまで以上にご主人様に話しかけることも可能となるでしょう」



───ですが、それには強さが足りない。始祖では足りない。



そう言って彼女は自らの指を噛み、僕へとその指を差し出してくる。


滴る鮮血。


僕は思わずそれを見て喉を鳴らし、それを見た彼女は再び僕へと問いかけた。




「貴方様は、力が欲しいですか?」と。




☆☆☆




そうして話は今へと戻る。


僕は目の前に広がる魔物達を眺めながら、あの部屋にウルと一緒に住み始めたというクロエに呼びかける。



「おいクロエ。情報じゃお前や常闇と同位の化け物がいるんじゃなかったか? どこにもそんなの見当たらないんだが」


『一番強ぇのがあの蛇とその背中の大悪魔だろうよ。だがerror級とはいえ私達はerror級の最上位だ。あの蛇なんかはerror級下位の雑魚だし、あの大悪魔にしたってお前が前遭遇したテュポーンと同位───つまるところせいぜいが中位クラスだ。お前の師匠はビビってたが、正直この程度ならあの師匠なら瞬殺だぞ、瞬殺』


「全盛期でもないのにこれ瞬殺出来るのか、あの人......。まんま化け物じゃないか」


『ったりめェだ。あの師匠はお前んとこの駄女神と同じDeus級だぞ?』



僕は内心で『テュポーンと同格って全然大丈夫そうにないな』と考えながらも、神祖になって少しだけ大きくなった翼を広げる。


僕は左手を顔の前まで上げて、甲を前へ向けるように握り込む。


そこには前まで『炎十字(クロスファイア)』の紋章があった場所であり、今はちょっとカッコつけて包帯が巻かれている場所である。



「流石にテュポーン相手にするなら封印も解除しなきゃ不味いよね」


『なにが封印だ。この男女、お前が使ってくれねぇって言ってしょげて───ちょ、やめろこの野郎! ばらされたくなけりゃしょげんなクソが!』



何やら楽しそうなクロエの声を聞きながらも、僕はその包帯に銀炎を点火し、一瞬にしてそれらを燃やし尽くす。



───現れたのは、己が尾を喰らう円環龍の紋章。




「『災禍(ヘイルテンペスタ)』!」




瞬間僕の左手の中に禍々しい血色の魔力が溢れ出し、一瞬にして十字架の杖が完成する。


僕の身長より大きなその杖は、二本の黒いパイプが交差するような形状をしており、それに力を入れた途端、僕の翼が禍々しいダークレッドに燃え上がった。


───それは、全ての頂点に立つ輪廻の王の力。


僕は尚一層怯えだした魔物達へとその杖の先を向けると、ニヤリと笑ってこう告げた。




「行くぞ大悪魔。今の僕はかなり最強だ」



※神祖への進化条件。

圧倒的格上の血を体内に取り込むこと。

※ギンの吸血について。

普段は白夜と輝夜がメインで、エロースには未だ吸血してません。首筋に跡が残っちゃいますしね。

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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