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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
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第264話

何だか二作目に力入れすぎてストックが切れてきました。現状、一番多かった時期(二話投稿してた時期)の半分ほど⋯⋯、執筆せねば。

一方その頃、ギンとギルバートとは少し離れた場所。


そこでは影竜と機械竜が組み合い、殴り合いの激戦を繰り広げていた。体が大きいとはいえ影竜は誕生して未だ間もない。数ヶ月とはいえ経験の差が実力を埋め、二体の勝負は拮抗していると言っても過言ではなかった。


───そしてその足元では。



「『夢国の従者(ドリムバレット)』っ!」



桃野がそう声を張り上げると同時に、彼の周囲からぼふんと音を立てて大きなぬいぐるみ達が召喚される。


彼のユニークスキル『夢国の従者』は、自らの想像する架空の従者を作り上げ、召喚して戦わせるという能力。

それらの能力はスキルレベルと彼の想像の精密さによって変化し、今回に至っていえば守りに特化したパンダのぬいぐるみ達だ。ちなみにどんな動物になるかはその時の気分次第である。


そうしてパンダたちは桃野の前でしっかりと守りを固める。


だが、イリアはもちろんの事、ディーンもニアーズの一員である。二人の猛攻から桃野をそう簡単に守りきれるはずもない。



───もしも彼が、一人だったのならば。



「シッッ!!」



瞬間、縮地によってディーンの懐に潜り込んだオウカが、彼めがけて霊刀ライキリで袈裟斬りを放つ。


彼は咄嗟にその身体を引いて傷を浅くすることに成功したが───けれどもその身体は完全に動きを止まってしまった。



霊刀ライキリの能力───それは斬った対象へと雷を放ち、麻痺させるというもの。

それに加えて単純な振る速度の高速化や、切れ味の増加などもあるが、その最たるものがその能力であり、ディーンのように傷は浅くとも耐性がなければ無効化することは出来ない。


オウカは彼が動けないのを見ると、その首へと刀を振るう。



───その直前ですぐ隣から爆音轟く衝撃波が彼女を襲い、十数メートル吹き飛ばされてから着地する。



ギンパーティは、前衛がオウカ、後衛が桃野。

ギルバートパーティは、前衛がディーン、後衛がイリア。


前者に関しては、前衛を務めているオウカの実力が高すぎる上、実力的にはイリアには到底及ばないが、それでも桃野の二つのユニークスキル(・・・・・・・・・・)が厄介極まりない。


後者に関しては、前衛を務めているディーンの実力がオウカと比べて圧倒的に劣っている。シャープと出会うまでは前衛を務めていたため数合は打ち合うことも出来るが、それでもオウカと打ち合うなどギンでもやらない愚の骨頂だ。

そしてそれらを『歌姫』イリア・ストロークがユニークスキル“音の王”を駆使して支え、その持ち味の万能さを生かしてサポートから攻撃まで全てをこなしている。


そのため、戦況を数値化するとすれば六と四。

もちろん“六”がギン率いるオウカと桃野で、“四”が生徒会の二人である。


その元凶はなにか、と聞かれればその最たるものは今現在進行形で霊竜シャープを止めている影竜───否、ギルバートを圧倒しながらもこちらに手出しをしているギンである。


影竜の存在は、傍から見れば彼がひた隠しにしてきたある意味奥の手のようなもので、本人にはそんな感情はなくとも他の面々からすれば洒落にならない化物だ。



───だが、そうだからと言って何かが起こるわけでもなく、二つのパーティの間には次第に、確実に、その差が現れ始めていた。




「『ミラーバッシュ』!」



瞬間、彼の前に召喚されたいくつかの鏡が相手へ向かって打ち出され、イリアはそれらを防ぐために能力の使用を余儀なくされた。



───桃野の持つもう一つのユニークスキル、その名を『鏡魔法』という。



それは鏡に関する全てを司る魔法であり、相手からすれば一番厄介な魔法である。


ギンの『影魔法』のようにある程度凡庸性のある能力でこそないものの、その厄介さは他のユニークスキルを圧倒しており、その使いにくさを除けば黒髪の時代の中でもトップクラスのユニークスキルだ。



イリアは桃野から飛ばされてきたそれらの鏡を全て音の衝撃波で撃ち落とし、それと同時に反撃しようとして───反響定位によってディーンへとオウカが接近していることに気がついた。



「ま、まずっ───」



振り向いた時にはもう既にその刀は振り切られており、幾度となく攻撃を受けたディーンは奮闘虚しくMPゲージを空とし、控え室へと転移して行った。


それと同時に影竜の相手していた霊竜シャープも光となって消滅し、イリアはこれによって勝利が遠く儚いものになったのを感じてしまった。


───けれど、今目の前にいるのは刀を降り抜いた姿勢のままのオウカ。今ならばこの女だけは道連れに出来る。


刹那にそう考えたイリアは身体の内にある魔力の大半を使って音の衝撃波を作り上げ、それをマイクに載せて発射した。




───だが、イリアの相手はオウカだけではないのだ。




「『ダイレクトミラー』!!」




瞬間、イリアとオウカの間には大きな鏡が出現し、それと同時に放ったはずの衝撃波がその鏡に反射してイリア本人へと跳ね返ってきた。


それには思わずイリアも目を剥き驚いたが、もうそれをどうにかするだけの魔力も残っておらず───




「ご、ごめんなさい、会長......」




彼女は最後にそう呟いて、控え室へと転移していった。





☆☆☆




僕は影竜ちゃんから送られてきた感情を読み取り、ニヤリと笑みを浮かべた。



───どうやら、向こうの決着が着いたようだ。



ギルバートもそれに気がついたのか、チラリと向こうへと視線をやって眉にシワを寄せると、ふぅと息を吐いて僕の方へと視線を向けた。


その瞼の奥から覗いていたのは───覚悟の決まった燃えるような瞳。


先程までの彼は保守的になって僕の攻撃を回避して居たが、恐らくは今の彼は違う。後がなくなって逆に肝が据わったのだろう、先程までとは一転してその観音の腕を構えだしている。



「私は意外なことにも、仲間との友情を大切にする熱い男でね。勝つ可能性が低いとはいえ、仲間がやられた以上引くわけにはいかないんだよ」



言葉だけ聞けば冗談のようにも聞こえるだろう。

けれどもその言葉に滲み出るのは僕らに対する“怒り”と“覚悟”であり、彼の言っていることが本当なのだと教えてくれる。


僕は内心で『さすが生徒会長』と苦笑しながらも彼へとまっすぐ視線を向けると、ふぅと息を吐き出した。




「こうなった以上、魔法での攻略は難しいかな」




恐らく彼が取る戦法としては、僕の放つ魔法をすべて吸収しつつ、僕の隙を見て攻撃を放つというもので、さらに言えば攻撃には僕の魔法は使ってこないだろう。つまりは罠はもう使えないというわけだ。


ならば近接戦闘で切り込んでいくしかないわけだが───



『わかってるとは思うが、氷魔剣を使うのは止めておけ。あれは一応私の“能力”だ。一度でも手に触れちまったら吸い込まれて利用される。格下相手とはいえ、あの量を相手にすんなら武器がねぇ一瞬は命取りだ』



そう、あくまでも今の僕の主力武器である氷魔剣(アイシスソード)は能力だ。


原始魔法の『創造』のように本当に武器を作り出すのならばまだしも氷魔剣は『強奪と贈物』の対象内であり、だからといって『創造』で武器を作ったところで霊器を相手にするならば能力として不足している。


ならばパッと思いつく他の武器としてさアダマスの大鎌くらいなものだが......。



「アレは逆にデカすぎて簡単に触れられそうだしなぁ」



僕は思ったより厄介そうな今後の戦いに思わずため息を吐き、とある決心をする。




「銀滅雷牙に眷属召喚、これ以上は後々の奥の手的な感じで残しておきたかったんだけどな」




その呟きが聞こえたのか、ギルバートをピクリと反応して頬を引き攣らせている。


僕はヌァザの神腕を真横へと伸ばして語り出す。





「昔も昔、大昔、とある有名な英雄が、どこかで何やら悪事を働いたらしい複数の頭を持つ大蛇を退治しましたとさ。その大蛇は回復力がとんでもなく、彼はその手に待つ刀でその身体を切り刻んだそうだ」



───全く、切り刻まなければ死なない回復力とはゾッとするぜ。



どこかで昔、僕は似たような話をしたことがあっただろう。

その時と同じように、僕はそう言ってふっと笑うと、それにこう付け加えた。




「そんな化物を切り刻む、その馬鹿げた刀にも、な」




瞬間、僕の右手の中に闇色の光が生まれ、それは次第に刀の形をとってゆく。




「実際にはその刀はその大蛇の尻尾に隠されてたとある神剣を攻撃して刃がかけたそうだが、神剣相手に切りつけておいて刃がかける程度で済むなんて素晴らしいじゃないか」




そう言って僕は、右手に握られた刀をふっと前へと振りかざす。


風のように美しい刃文に、黒い柄、金色の鍔。




「召喚『宝刀・天羽々斬(あまのはばきり)』」




これは蛇関連というわけで何故か常闇が持つ能力なのだが、この刀には俗に言う『能力』というものが殆どない。


殆ど、と言ったが、この刀は唯一、変幻自在に大きさを変えることが出来るくらいで、それ以外の能力は何もないのだ。



───けれども、その代わりに兼ね備えているものもある。



僕は前方へと振りかざしたその刀をスッと下ろし、その切っ先をギルバートの方へと向ける。




「これは俗に言うところの“だいたい何でも斬れる刀”だ。僕の天羽々斬とお前の霊器。どっちが上か、勝負してみるか?」




その言葉を受けたギルバートは、一瞬この刀を見て呆気に取られたものの、すぐに正気に戻って笑みを浮かべた。




「これは霊器───つまりは神々の神器を真似して作られたものだ。それがそこらの刀に負けるとでも思っているのかい?」




───なるほど、負けるつもりは毛頭ない、という事か。



僕はキッと笑みを潜めて刀を構える。


それに応じてギルバートも百の腕を構える。



そうして僕らの間には張り詰めた緊張が漂い始め、どこからか息を呑むような音が聞こえた。


徐々に視界から不必要な色が抜け落ちてゆき、音も次第に消えてゆく。


耳に届くのは僕の心臓の鼓動。視界に入るは彼の姿と百の腕。



そうして構えること十数秒。



僕らはどちらとも無く瞼をキッと見開き、相手へ向かって地を駆け───






『メーデーメーデー!! ヤバイ、ヤバいですよ、執行者さん! 今入った情報なんですが、この会場に向かって大量の魔物達が進行してるみたいなんです! もう試合とかどうでもいいですから救援お願いします!!』


「「.........はっ?」」





瞬間、そんな司会さんの声が響き渡り、それと同時にフィールドが元の会場へと戻ってしまう。


僕の身体は不思議と刀を腰だめに振りかぶった姿のまま止まっており、ギルバートもまるで時が止まったかのごとく止まっている。


そんな中、先ほどの集中など知ったことかとばかりに避難の放送がかかり、観客たちが驚愕と恐怖に顔を歪めながら係員の指示に従っている。



僕は構えを崩して両手を下ろし、その嫌味までに雲一つない青空を見上げる。



気がつけば僕の口元からはギシリギシリと嫌な音が鳴っており、歯の隙間から怒りと苛立ちが混じった、怨嗟の声が漏れ出ていた。




「ぶちッ、殺すッッ!」




きっと今の僕は、酷く不細工な顔をしているに違いない。



ここで! ここで来るのか大悪魔!?

ちなみにですが、桃野くんの『鏡魔法』はかなりのチートです。反射系統の技がメインですね。

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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