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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
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第263話

試合開始の合図と共にディーンの霊器が光り輝き、一瞬にしてその姿をメタリックな白銀竜へと変化させる。


───霊竜シャープ。


ディーンの持つ霊器であり、そのドラゴンは自らの意思を持つ人造生命体でもあるらしい。

そのため普通のロボットと比べるとはるかに高性能であり、例えるなら機械モードのレオンみたいなものだ。あそこまでの自由さは無いが。


しかもその体表は鋼よりも硬く、低威力の魔法はもちろん、刃での攻撃もほとんど効かない。



───つまりは、打撃戦(なぐり合い)で打ち勝てばいい話である。



「『眷属召喚』! いでよ、影竜ちゃん!」


「グラァァァァァァァ!!!」



瞬間、僕の影が膨張し、通常モードの影竜ちゃんが召喚される。

彼か彼女かはわからないが、とりあえずちゃん付けなので彼女とすると、彼女の身体はシャープよりも一回り大きい。これ以上眷属を召喚しても邪魔になるだろうし、とりあえずアレは影竜ちゃんに任せておけばいいだろう。



───問題は、




「『ラアアアアアアアアア!!!』」




瞬間、イリアを中心として音の衝撃波が走り抜け、上手く向こうのチームメンバーを避けて僕らに襲いかかる。


僕は咄嗟に僕らの前方へと影の壁を召喚してそれを防ぐが、音が止んだ次の瞬間にはその影の壁は消滅しており、そのすぐ向こうにはギルバートの操る観音の腕、その一つが伸びてきてきた。


そして感じられる───奪われた、という事実。



「なるほど......、この上それを使えるとなれば厄介な事この上ないな......」


「ハハハッ、さすがはギン、普通なら今のイリアの衝撃波だけで対応出来なくなってるんだけど......ねっ!」



瞬間、ギルバートの上空にいくつかの魔法が浮かび上がり、魔法が発動された形跡がないことに気がつく。



───チッ、奪い貯め(・・・・)、ってのもあるのかよ!



僕は後ろの二人を守った上での反撃は出来ないだろうと察すると、咄嗟に原始魔法によって暗器に使えるような大型の針を創造、それを上空の魔法目掛けて投げつける。


それらはかなり力を込めた投擲。


ギルバートは咄嗟に反応することは出来ず、それらの針は寸分違わずそれらの核を撃ち抜き、魔法を霧散させて向こう側の壁へと突き刺さった。


その様子にはギルバートも驚いたのだろう。驚くことによって彼に僅かな隙ができた。

もちろんそれらを見逃す背後の二人ではなく、二人は一斉にイリアとディーンの方へと駆け出してゆく。



「なっ!? そんなことはさせないよッ!!」



一瞬の硬直の後、ギルバートはそれを止めるべくおおよそ二十本足らずの腕を伸ばすが───それは二人の元まで届かない。


それらの腕は二人へと届くその手前で、白銀色の縄にまとめて縛り上げられており、その縄を辿ったギルバートは僕の手のひらから伸びているそれを見て悔しげに呟いた。



「くっ、それが噂の『グレイプニル』っていうヤツかい?」


「どういう噂かは知らないが、僕が召喚できる縄は生憎とこれしか持ち合わせていないな?」



そう言って笑ってやると、彼は八十本では不足と見たか、一度霊器を解除して使用し直した───その間、およそ十分の一秒。僕でさえも『短い』と感じてしまうその間に彼はそれをやってのけた。


───それは紛れもなく、数千数万と繰り返した努力の証。


なるほどどうやら、タダの才能任せの天才ってわけでもなさそうだな。



僕は切り替えの瞬間を狙うのを諦めると、僕は左手を前へと向けて魔法を発動した。



「『ファイアボール』!」



瞬間、僕の周囲に二十近いファイアボールが浮かび上がる。


それらは銀炎でも無く、加工を加えた魔法でもなく、子供でも使えるとされるファイアボール。

普通魔力切れでもない限り命のやり取りである戦闘で使う者はいないとされているファイアボールだ。


その魔法に一瞬怪訝な表情を浮かべたギルバートだったが、これらの魔法の威力を見て彼は目を見開いた。



「なるほど、君の場合は、ただの“ファイアボール"でも常人の“蒼炎”並の威力があるってわけか」



僕はギルバートのその呟きに笑みを浮かべると、それに応えるかわりにそれらのファイアボールを一斉に打ち込んだ。


今の僕は魔力回路を持っているおかげで使用した魔力をほぼ100パーセント完全に魔法へと注ぐことが出来る。そして僕が常時魔法に使用している魔力は通常の魔法使いの十倍~百倍。並の魔法だと思ってかかれば火傷どころでは済まない。



───だがしかし、



「悪いけど、私に攻撃は通じないんだよ」



瞬間、それらの魔法にそれぞれの手が触れ、それと同時にそれらは跡形もなく奪われた(・・・・)

しかもそれによって減った彼の体内魔力は極わずか。月光眼で見てそうなっているのだから本当なのだろう。



「見た感じ、吸収と放出にもほとんど魔力は使用せず、さらに言えば本当にどんな攻撃でも吸収できるみたいだな?」


「なんだい? 私を疑っていたのか?」



ギルバートはそう疑問に疑問で返すと、僕が先程放ったファイアボールを五つ召喚し、僕の方へと投げつける。


やはり魔力の消費は極わずか───色々観察してるけどなんだよこのチート能力。普通に考えれば魔法での攻略不可能だろうが。


かと言って近づけばそれはそれで大量の魔法を全方位から投げかけられて詰むわけだ。僕なら力技で何とか出来そうな気もするがそれは“試合に勝って勝負に負けた”的な感じがする。なんだかそれは嫌だ。



───という訳で、僕は正攻法でこの能力を調べているわけだが。




「案外、攻略は簡単かもしれないな」




僕は返ってきたそのファイアボールの様子を見てそう呟くと、それを横に駆け出して避けきった。


駆ける、駆ける。

ギルバートを中心として円を描く様に大理石を踏み込み、ぐるりぐるりと駆け続ける。


視線の先のギルバートは僕の動きはなんとか目で追えているのか、僕が背後を取る時は最新の注意を払い、それ以外の時は手を数本伸ばして牽制をしてくる。


そんな中、僕はとある魔法を左手に形成し、それを思い切りギルバートへと投げつけた。



「『スチームエクスプロージョン』!」



それは、かつて暁穂(フェンリル)や帝国のウイラムくんの股間に使用した爆弾。

見た目は少し大きな石の玉だが、その中身はキンキンに冷えた水で満たされており、その中に炎を入れた途端───大規模な爆発が起こる。


ギルバートも本能の部分でそれが危ないと察したのか、僕が想定していたよりも比較的早い段階でその魔法を吸収する。咄嗟に火をつけたが爆発が起こる前に吸収が完了してしまった。


僕は少し大きめな音で舌打ちをしてやると、彼もやっと安心したらしく、先程僕が放った爆弾をその左手で召喚した。



「何がしたいのかは分からないけどッ、とりあえずお返しするよ!!」



そうしてギルバートは、僕の時同様にその爆弾を振りかぶり───




「残念、それは既に着火済だ」




彼の手元で、スチームエクスプロージョンが爆発した。


ドゴォォォン!! という爆発音が鳴り響き、それと同時に彼の身体が後方へと吹き飛ばされる。


今回のスチームエクスプロージョンは小型化していたためフェンリル戦で使用した時のような威力はないが、それでも生身の人間を死に至らせるには十分すぎる威力を誇る。


どうやら咄嗟に右手で爆発を吸収したらしく、僕が予定してたほどのダメージは見受けられないが、それでも彼にとっては看過できないレベルの痛手だろう。



「くっ、ポーション───はさっきの爆発で割れたみたいだね......。これは少し油断しちゃったな」



ギルバートは腰に手をやりながらそう言って立ち上がるが、ダメージが大きかったのかフラフラとしている。


僕は彼のユニークスキル『強奪と贈物(ギブアンドテイク)』を初めて見て、その能力を聞いた時、正直言えば「どんなチート能力だよ、勝てっこないじゃん」と呆れ返ったものだ。


だがしかし、それと同時にこうも思った───その能力には何か穴があるのではないか、と。


だからこそ僕は彼の能力を観察し、実験し、そして先程返されたファイアボールで確信した。



彼の能力は───言い換えれば『その攻撃を時間の止まる異空間に収納し、そこにあるものをそのまま召喚して使用する』というものなのだろう、と。



だからこそ僕は、まずファイアボールで油断を誘い、あえて投擲型の(・・・・)スチームエクスプロージョンを暴発する直前で彼に吸収させ、彼が同じように投擲するよう、導いた。


するとそれをそのまま使っている彼はその手元で爆弾が爆発させることとなり、結果自爆することとなった。



───そして何より、彼はこれ以降迂闊に能力を吸収することが出来なくなった。



それは一種の恐怖だろう。


今まで負け知らずだった最強の能力が力押しでもなく純粋な知略によって攻略された。

それもあえて攻撃を吸収させることでの攻略。ならばこれ以上不可思議な魔法を吸収すれば今以上のダメージを受ける可能性がある。


僕のよく知る彼ならば必ずそう思うはずだし───何よりも保守的になるはずだ。



「『雷撃刃(エレクトロブラスト)』!」



瞬間、僕は左腕を彼めがけて振り下ろし、それに応じて銀色の雷が刃の形となって襲いかかる。

それはあえて速度を落とした魔法───そして彼が見たことのない魔法でもある。


彼はそれを吸収しようと手を伸ばすが───その直前で、なにかに気がついた様子でそれを避けた。


もちろん僕はただ雷の刃を飛ばしただけであり、決して先ほどのように吸収して何かがあるわけでもない。それなのに───彼は攻撃を躱した。吸収出来るその攻撃を、だ。



「なんだ? 吸収しないのかギルバート?」



僕はニヤリと笑ってそう言ってやると、賢い彼は全てを察したのか苦く、引き攣った笑みを浮かべてこう言った。




「全く君は、性格が悪いにも程があるだろう......」と。




僕はその言葉を聞いて凄惨な笑みを浮かべると、ヌァザの神腕を発動して両手を左右に大きく広げた。


全ては計算通り。


細工は重畳、恐怖もしかと植え込んだ。


ならば後は彼の見知らぬ魔法を使っている攻めに転じ、万が一吸収された時の仕掛けも作れば万事解決、オールグリーンだ。




「さぁ、全ての準備は整った!」




僕はそう大きく声を上げてたたらかに宣言すると、彼へと向けてこう告げた。





「これより、執行を開始する」



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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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