表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
295/671

第255話

その後エルグリットによって鎮められたその場は、とりあえず『自業自得』と満席一致となり、結果何も無かったかのように自己紹介が行われる流れとなった。


と言っても自己紹介をわざわざ描写する気にもならず、とりあえず主だったメンバーの名前だけ挙げておこうと思う。


まず僕率いるクラン『執行機関(ネメシス)』のメンバー。


ゼロ率いる冒険者の五人パーティ(・・・・・・)


青マント率いるクラン『青の軌跡』のメンバー。


狐の獣人族率いるクラン『金の神獣』のメンバー。


それに加えて、王国からはアルフレッド率いる近衛騎士団。帝国からはかつて戦った直属護衛団長、アックス率いる近衛騎士団、魔国からも騎士団が派遣されている。


その他冒険者たち数パーティが参加していたが、その中には知ったメンバーの姿は無かった。

───ちなみにだが、ゼロのパーティにはあの三人の他にあと二人、僕が帝国で出会った姉弟、ベルナとベルクも参加しているらしい。今は私用で遅れているらしいが。


という訳で自己紹介が終わり、それぞれの役割分担が発表となったものの、会場周りの警護は騎士団が行うらしく、それ以外のメンバーは会場内をそれぞれ警護する流れとなっているらしい。



そして今現在、僕は生徒でもあるということで一足先に解放され、白夜と輝夜を連れて王立学園の控え室へと向かっているところであった。

ちなみにだが、白夜と輝夜に関しては「手に負えないからそっちで引き取ってくれ」とエルグリットに言われたため、どちらかと言うと王立学園専門の警護になるだろう。


───まあ、グレイスと死神ちゃんがいる時点であまり意味なさそうだが。


そうして三人で廊下を歩いていると、背後からドスドスという足音と、気になって振り返ると、そこには懐かしい顔があった。



「久しいな執行者。何やら前よりも遥かな高みに登りつめたようだな?」



そう声をかけてきたのは、帝国の国王直属護衛団長、かつてエキシビションマッチにて対戦したアックスである。


その前よりも数段大きく見える巨体と、その背中に背負われている背丈ほどもある斧をセットで見ると、なんというか、まさに“ザ・強者”という感じである。



「久しぶりアックス。獣王の調子はどうだ?」


「ふむ、貴殿の成長ぶりを聞いたのか、最近はより一層鍛錬に励んでおられるぞ? 本人曰く全盛期よりも上との事だ」



───うはぁ、何あの恐竜。あれよりまだ強くなるのかよ。


僕はあまりにも衝撃的なその言葉に引き攣った笑を浮かべると、それを見てどう思ったのか、アックスは顎に手を当ててふむと考えた様子を見せる。



「こちらからすれば、貴殿も獣王様ほどではなくとも限りなくその近くまで来ているのではないか? 明らかに以前とは格が違うであろう」



そう言ってくるアックスではあったが、僕はその言葉を受け止め───結局肩をすくめて見せた。



「それに関しては『分からない』って言うのが正解だ。まだまだこの力(・・・)には慣れてないし、そう易々と本気を出す訳にも行かないんでな。だから、まだ本気を出したことがないんだよ」



そう───僕は自分の力がわからないのだ。


実は一度、とあるペンギン相手に本気の体術勝負を挑んだことがあるのだが、それを抜かせば件の四対一の決闘以降、僕が本気を出したことは一度もない。


そう告げるとアックスは一瞬目を見開いたが、次の瞬間にはニヤリと言った風の笑みを顔に貼り付けており。



「まぁその話は後々見定めさせてもらうとしよう。今は王立学園の控え室へ行くのだろう? せっかくだ、案内しようか」



彼はそう言って、ズカズカと僕らの先へと歩を進めるのだった。




☆☆☆




歓声が鳴り響き、秋の冷たい風と、真っ赤な太陽から降り注ぐ日光が僕らの体へと突き刺さる。


───場所は会場のステージ内。


今現在、そこには王立学園、帝立学園、魔立学園、それぞれの四~六年生が整列しており、チラリと周りへと視線を巡らせると、空席一つ見当たらない客席と、それぞれの制服で埋め尽くされている生徒用の客席、そして貴族達の貴賓室、更には嫌な予感しかしない司会席などが視界に入った。


そして───演説台の上のエルグリット。


彼はマイクスタンドの前まで歩を進めると、ぐるりと生徒達を見渡してから口を開いた。



『去年は確か魔国開催だったが、今年の魔学発表会はここ───エルメス王国、王都にて行うこととなった。まずこの会場へと来ているので観客や来客の皆々、そして生徒諸君、御苦労であった』



まず最初、エルグリットは頭を下げることこそ無かったが、しっかりと感謝と労りの気持ちを言葉にした。



『魔学発表会とは本来、それぞれの学園がしのぎを削って競い合い、それぞれの学園の有用性、そして生徒達の力を示す場である。生徒達にとっては、自らの力を国王である俺や有力貴族達に見せるための機会でもある。場合によっては俺自ら騎士団にスカウトする場合もある』



瞬間、生徒達の間に大きなざわめきが広がり出す。

なにせ、目の前にいるのはこの国の頂上───国王エルグリットであり、その国王本人が『スカウト』という言葉を口にしたのだ。通常の生徒ならばやる気を出さない方がどうかしている。


そして、それを狙って引き起こしたエルグリットは、恐らく内心は笑みを浮かべながらも話を続ける。




『自らの力を示せ、仲間との協調性を示せ、器の大きさを示せ、伸び代の大きさを示せ。今まで学園で培ってきた全てを用い、頭脳、力、スキル、全てを駆使して成り上がれ』




それは間違いなく『国王』としての彼の言葉。


その言葉に周囲の生徒達は胸を打たれたのか、感動したような表情を浮かべながらも、その瞳には轟々と燃える意志が宿っていた。




『それでは! これより今年の魔学発表会を開催する!』




客席からは溢れんばかりの歓声と拍手が鳴り響き───魔学発表会の幕が、今切って落とされた。




☆☆☆




『さぁ、始まりました魔・学・発・表・会〜っ! 司会は毎度おなじみ、司会さんこと私とー?』


『どうもこんにちは。エルメス王国の国王直属護衛団の団長を努めさせてもらっています、アルフレッドがお送りします』


『いやぁー、アルフレッドさん! お会いするのは帝国の武闘会以来ですね! しかも司会席! もしかしてこれって運命でしょうか? あの噂の赤い糸ってや───』


『はい。それでは最初の競技に移りましょう』



はい、もちろん分かってました、再び登場、司会さんです。


名前すら登場してないのにも関わらず、何故か本編にこの登場回数。彼女は一体何者なのだろうか?

───ちなみにだが、司会さんはエルフ耳に明るい赤髪セミロングの小柄な女性である。よく考えたら普通に怪しいな、おい。


そんなことを思っていると、その間にもアルフレッドがどんどん話を進めてゆく。



『第一競技はマジックバスターですね。毎年競技は変わらないため、これは魔法の威力を点数にして表す魔導具にそれぞれ全力で魔法を打ち込み、その点数を競うというものですね。私のような前衛タイプには不利な競技ですね』


『はい! アルフレッドさんに関していえば聖剣(エクスカリバー)の超パワーで何とか出来そうですが、通常の前衛からすれば地獄の競技です! この競技にはそれぞれの学園から二名ずつ、計六名が出場を認められており、帝立、魔立、王立学園を一セットとして二周行われます!』


『ふむ......、身体能力で勝る分、獣人族の多い帝立学園にとっては不利かも知れませんね......』



そうして司会さんたちによる説明はあらかた終了し、それと同時にステージ中央に、ぷかぷかと浮かぶ大きな黒球が出現した。誰も驚かないことからもアレが件の魔導具なのだろう。


僕は体育館ほどの大き差を誇る控え室のあちこちに取り付けられているモニターからその様子を見て、何となく空気からそう察する。



「にしても参加は二人だけなのか......。片方は僕だけど、もう片方は誰なんだ?」


「ふむ、あまり多くは知らぬが、マックスあたりが魔剣でも召喚すればそれなりに上手くゆくのではないか? 何なら我が試して───」


「まて輝夜、お前が行ったら魔導具が壊れるだろうが」


「主様、それは主様が言っちゃいけないセリフなのじゃ」



そうして話していると、何やらカツカツとこちらへと歩いてくる足音が聞こえてきた。


なんだか聞いたことある足音だな、と思いながらも顔を上げると、果たしてそこには、霊扇ウルスリスを開いて口元を隠しているルネアの姿があった。



「あら? もしかしてこの学園で私の他に選ばれた選手はギンだったの? これはこれは、運命って恐ろしいよの〜」



そう言ってくるルネアではあったが、口元は隠れていても、残念ながら目元が思いっきり笑っていた。



「......お前、普通に知っててここに来たろ」


「───ッッ!? ほ、ほほっ、な、何言ってるのよギン。わ、私がそんな真似するわけが無いのよ......」


「いや、でも───」


「う、ううう、うるさいのよっ! 運命なのっ! これは運命なのよっ!」



僕は一向に認める気配のないルネアを見て、とりあえず「ハッハッハ、そうかもしれないなー」と話を合わせておくことにした。


と、そこまで考えたところで僕は本題を思い出した。


───今の言葉から察するに、もう一人の出場者はルネアってことになるのか......?


そう考えて再び彼女へと視線を向けると、やはり彼女の身体から感じられる魔力量はなかなか高いものであった。

それに加えて霊扇ウルスリスによる風魔法の特化を鑑みると、純粋な魔法の威力だけを考えると間違いなく学園ではトップだろうと思う。


僕は彼女の魔力量を鑑みて顎に手を添えて少し考えると、僕は彼女へととある提案をしてみることにした。




「なぁ、ルネア。すこし頼みたいんだが───」




☆☆☆




『さぁ時間がやってまいりました! 魔学発表会最初の競技、マジックバスターのお時間です!』



瞬間、ザワザワとした話し声から一転して歓声が鳴り響き、あまりにも大きなその音量に思わず僕は耳を手で塞いでしまう。


場所はステージの内壁に作られた控え室───例えるならば野球のベンチのような場所。僕は今その一席に腰掛けており、ルネアはもちろん、それ以外の対戦相手、計四人も同じベンチの中にいる。


───一体何故敵同士を同じ場所に集めるのかは甚だ疑問だが、それでも離れすぎていて視認が難しいなんて事態よりかはマシだろう。


相手の大まかな魔力は測れるし、挑発して精神的に攻撃するのも多少ならば許されるだろう。それに何より、ステージ上でいきなり顔合わせとなるよりは、事前に見知っておいた方が楽だろうしな。精神的に。


と、半ば挑発されるのも覚悟していたのだが、どうやら相手側にそんなつもりは無いらしく、チラチラとこちらへと視線を向けてくるばかりである。


普通の生徒ならまだしも、少し(・・)頭のいい生徒なら『知略』として挑発してきてもおかしくないんだがな。ちなみに頭のいい生徒なら僕を見た途端にやる気を無くしてるだろう。



『さきほどに続きルールの説明です! ルールは簡単、三校の生徒達がそれぞれ順番に魔法をステージ上の魔導具へと放ち、その威力を測るというものです!』


『順番に関しては先にも言ったとおり、帝立学園、魔立学園、王立学園の順に行ってもらいます。二人のうちどちらが先でどちらが後かについては自由ということになっております』


『初めて見たよー、って人のためにこの競技に参加する生徒達の常識的な点と最高点を示してみますと、普通は500ポイント前後、最高点は去年、ルネア・フォン・エルメス選手がたたき出した1,032ポイントです! この競技に出てくるエリートたちのそのまた二倍、正直化物ですね!』


『ちなみにですが、この魔導具は“時の歯車”のメンバーでもあられるグレイス様、エルザ様、魔王ルナ様、ドナルド様の合作です。作られたのは比較的最近ですが、全人類での最高得点を言いますとグレイス様3,590,000ポイントです。これぞ化物です』



───あれだな、一体どう反応すればいいのか分からないな。



まずルネア。お前は凄いな。正直僕もここまでとは思っていなかったよ。

けどグレイス。お前はもっとすごいな。拳に氷を纏って殴ってる姿が目に浮かぶが、単純なパンチでそんな点数をたたき出せるとはさすが師匠だ。まさに化物だな。


そんなことを思って頬を引き攣らせていると、その間にも彼女達の話は終わっていたのだろう。




『それでは最初の出場者の方! ベンチから出てきてくださーい!』




司会さんの声が響き、最初の競技が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ