第253話
今回は間学発表会の準備回です。
翌日、学園長室にて。
「ふむ、仲間達の説得には成功したようだのう?」
机の上の書類を片付けながらも、そう言ってこちらへと視線を向けてくるグレイス。
僕はその言葉に苦笑しながらも頷くと、机の上に置いてあるお茶を啜り、ソファーの背もたれに身体を預ける。
「これでも超直感のLv.8を持ってるんでな。未来視までは行かなくとも、魔学発表会が平穏無事に終わることは無い、ってことくらいは分かるさ」
───そう、あくまでも大悪魔が来るって言うのは僕やグレイス、エルグリットの自論でしかない。何かがあるのは確かだが、それがどれほどの脅威になるのかは測りかねているわけだ。
そう言って僕はグレイスへと再び視線を向ける。
すると彼女の目としっかりと目が合い、僕は少し真面目な口調でこう告げる。
「グレイス、こっちは護衛向きの最高戦力を揃えるつもりだが、さすがに会場全域をカバーするのは不可能ってものだ。もちろん他にも会場の護衛は雇うつもりなんだろ?」
そう、どのような規模になるかは不明だが、大陸中の学校という学校が一同に集うのならば、それが数校だけだったとしても僕らだけではカバーしきれない。
やろうと思えば影分身や空間把握を多用して全域をカバーすることも出来るだろうが、それを長時間───それも丸一日にわたって行うのは僕とて不可能だ。不死な僕でも疲労死してしまう。
だからこその言葉だったが、グレイスはこれでも僕の師匠だ。それくらいは把握していたのだろう。
「当たり前ぞよ。エルグリット、獣王、魔王にはそれぞれ騎士達の支援要請はしてある上、ランクは度外視した上での実力のある冒険者、更には実力派クランにも依頼済みぞよ。お前達が最高戦力なことには変わりないが、学園のイベントとしては過剰とも呼べるほどの戦力を用意しておる」
───まぁ、いざとなればお前が一人で暴れ、後の皆は生徒達の護衛に徹することになるだろうがのぅ。
そう言ってグレイスは再び書類に目を通し始めると、ふあぁ、と欠伸をして目を擦る。
僕は内心、「うちの担任とお前だけでも十分すぎる過剰戦力だよ」と苦笑いしながらも、残っていたお茶を啜る。
───魔学発表会まで、余すところ一週間である。
☆☆☆
そうして僕達は魔学発表会の護衛をすることとなり、恭香へもあの二人を会場へと向かわせるよう伝え、僕らもそれに合わせて色々と準備しなければ行けなくなったわけだが。
───だがしかし、僕らの本分は学生である。
そのため僕らは護衛をしつつも競技に参加しなければならなくなり、競技に参加するのは選ばれた一握りだとしても、この僕がそれから外れることは難しかったようだ。
「はいこれ。全競技の詳細とその時間割、そしてギンが出る競技の一覧ね。お節介かもしれなかったけど、一応生徒会の方でギン専用のスケジュール作っておいたから、まぁそれに従ってくれれば問題はないと思うよ。まぁ、全部勝つって想定した上でのやつだけどさ」
そう言ってわざわざクラスまでそれらの資料を届けに来てくれたのは、我らが生徒会長、ギルバート・フォン・エルメス。あの水色髪のイケメンである。
僕は渡されたそれらの資料をペラペラと捲って目を通してみると、さすが生徒会と言うべきか、かなり詳しく、そしてわかりやすく詳細が載せられていて少し驚いた。
「す、凄いなこれ......。悪い、もしかして大変だったんじゃないか?」
「あはは、本来なら一個人に対してここまでする生徒会じゃないんだけどさ。ことギンに限って言えば、正直その資料さえ作ってしまえば勝ったも同然でしょ? それを考えたらさして苦でも無かったよ」
僕はそのあまりにも重い信頼に「お、おう」と少し引きながら答えるが、
───とあるページで、僕の手がピタリと止まった。
気が付けば僕の眼球はそのページが『間違いではないのか』と疑うように動いており、数秒後、それらが間違いではないことに考え至る。
全競技、四種目の内、僕が出場するのは───
「とりあえず三種目は、うちの勝ちが確定だね?」
マジックバスター。
攻城戦。
掃討戦。
僕はなんだか、面倒くさそうな種目に出場することになっていた。
☆☆☆
「うーん......、どうしたもんかな」
昼休み、僕はそれらの紙を見ながら唸っていた。
その唸り声を聞きつけたのか、前の先からは桃野が、隣の席からはネイルが僕の机をのぞき込んできたが、それらの資料を見てその笑顔は凍りついた。
というのも、それは全四種目のうち三種目への出場についてなのだが、別に僕やスメラギさん、ギルバートなどの実力者は三種目出場は珍しくない。
───が、それが本人の確認もなしに秘密裏に進められていたことが問題で、さらに言えばニアーズ以外が三種目出場するのも歴代初なのだとか。
まぁ、この際だ。それらの出場に関しては目をつぶるとしよう。
だがしかし、次に問題となるのがそれらの競技と、出場高校についてである。
出場高校は、この王立へフォルマ学園───略して王立学園の他、正式名称は知らないが、それぞれ帝国と魔国に存在する、帝立学園と、魔立学園の計三校となっている。
まぁそれはいいとして、一番問題───と言うか面倒くさいのが、その行う競技である。
全競技は、僕の出場する、マジックバスター、攻城戦、掃討戦の三つに加え、ランニングマスターという意味のわからない競技の計四つから構成されている。
さて、それぞれの競技について説明しよう。
まず一つ目、マジックバスター。
これは魔法の威力を図る魔導具へと魔法を打ち込み、その威力を測り、勝負するというものである。
───まぁ、正直これはアンパイと言わざるを得ない。
二つ目、ランニングマスター。
これは単なる障害物競走だ。罠や問題などが盛りだくさんらしく、これに関しては僕は出場しないらしい。
三つ目、攻城戦。
これは従者以外の四~六年生は全員出場だ。
それぞれ三校に小さな城が譲渡され、その城のどこかにそれぞれの色の旗を設置する。
そして生徒達は三つ巴の状態で相手の旗を取り合い、自らの旗を守り、そして最終的に所有していた旗の数でポイントが入るのだとか。
これに関していえば、小さいとはいっても城は城だ。まず間違いなく難しい競技になるだろう。
そして四つ目、掃討戦。
これは学園から三人構成のチームを幾つか作り、それぞれトーナメント方式で対戦する、文字通りの掃討戦だ。
ステージは伝説級の魔導具によって様々な環境へと変化し、そのランダムで選ばれたステージを利用し、先に三人を戦闘不能にしたチームが勝利となるらしい。
ちなみに選ばれているのはリーダーのみで、ほかの二名は自力で探さねばならないのだとか。
という訳で計四つの競技によって争い、それぞれの一位、二位、三位に設定されているポイントの、その合計点によって勝敗を決するわけだ。
「さて、どうするか......」
僕は腕を組んで再び唸る。
マジックバスターと攻城戦については何も問題はあるまい。マジックバスターに関しては言わずもがな、攻城戦に関していえば誰かの指示にでもしたがって動けばいい。
───問題は、チーム戦である掃討戦。
最初は「オリビアとマックス誘って終わりでいいだろ」と思っていたのだが、先ほど二人に連絡を入れたところ、
『ご、ごめんなさいです! 私、鳳凰院ちゃんと倉持ちゃんと組むことになったのですぅ』
『あ、悪い。俺は的場と小島の二人と組むことになってんだわ』
と即断されてしまった訳だ。
まったくどいつもこいつも......。確かに全員で組むと護衛に支障をきたすかもしれないが、だからといってそこまで僕の孤独化を促進させなくてもいいんじゃないですかね?
そうため息をついていると、どこかから可愛らしいため息が聞こえ、それとは別にじっとりとした気持ち悪い視線が体に突き刺さった。
僕はなんだろうと顔を上げると、頬を赤く染めた桃野がチラチラとこちらへと視線を向けてきており『あれ、もしかしてさっきの可愛らしい視線は桃野のものかな?』とは思ったのだが、その背後───何故か教壇の後ろから手鏡が飛び出しているのを見て、僕はその視線を無視することにした。
「あ、あのね、銀......、良かったら、なんだけど。僕と一緒に───やらない?」
───瞬間、どこからか鼻血が吹き出すような音と腐った笑い声が聞こえてきて、なんだか久しぶりに聞いた“腐協和音”に思わず顔を顰めかけたが、桃野の視線を感じてなんとかポーカーフェイスを貫き通す。
僕は彼女...じゃなかった、彼の瞳をしっかりと見つめ、彼へと確認をと───
「ぎ、銀......。は、はずかしいよ......、あ、あんまり、見つめないでっ」
「「「ぐはぁっ!?」」」
瞬間、僕、ネイル、そしてどこかの委員長が同時に胸を抑えて苦しみ出し、なんだなんだと注目が集まってしまう。
だが、今のはちょっと反則だ。シリアスになんかなれっこないぜ。
「ふっ、流石は桃野。こんな強敵、初めて見たぜ」
「くっ、な、何なんですか今の可愛さはっ!? 一瞬背後に薔薇の花が見えたんですけど......」
「イイッ! イイよ桃野きゅん! モモ×ギンに加えてネイルちゃんと、まさかまさかの異色のトライアングルゼッツ! これはもう辛抱たまらん!」
「......? え? どうしたの、みんな?」
そうして僕は、一人目の仲間を手に入れた。
───追伸、やっぱり桃野の上目遣いは、世界一だと思います。
☆☆☆
放課後。
僕は今日はアイギスと浦町に部活を任せ、取り急ぎ残りの一名を探すために校舎内をうろちょろしていた。
すっかり忘れていたが、この腕輪を使用すれば相手の序列などのプロフィールもわかるため、強そうなやつを見つけてはプロフィールを確認し、却下。そしてまた探して見ては却下を続けて、延々と校舎内外をさ迷っていた。
というのも、ギルバートは普通にリーダーだったし、我らがディーン君はクラウドと白髪褐色をペアに指定しており、ソルバやマイアは完全に僕の下位互換。桃野が後衛、僕が遊撃に回るとしても、残るひとりは圧倒的火力の前衛が好ましい。
───のだが、
「一般生徒に、僕や桃野と肩を並べられるヤツなんているわけないじゃないか......」
そう、僕はこの真理にたどり着いてしまったわけだ。
正直僕と肩を並べられるとなると大陸中で検索をかけなければならないし、桃野にしたって一般生徒からしたら十分すぎる程に化け物だ。
従者有りならばアイギスや浦町を選ぶのだが、もちろんそれは論外であり、他に知り合いって言ってもリリーやアメリアくらいのものだ。
そう考えるとやっぱり僕が遊撃から前衛にジョブチェンジし、テキトーにそこら辺から中衛、又は後衛を引っ張ってくるべきか......?
僕はそこまで考え至ると、とりあえず色々と諦め、少し大きな声でこういって見ることにした。
「あー、すっごく可愛くて従順で一途で、しかも学園内でもトップクラスに火力のある前衛美少女、どこかに居たりしないかなー?」
「呼びましたか、ギン様!!」
───瞬間、スメラギさんが縮地にて見参した。
いや、分かってましたとも。
教壇の後ろに隠れて期待に満ち溢れた視線をこちらへと寄せてきたり、それでも反応ないと分かるとチラチラと視界の中に入ってきたり、終いにはT字路にて隠れ、タイミング良く僕の前に現れて無視されたりと、まぁ色々やって来たのは重々承知している。
───が、この人確か、この前僕に宣戦布告して去っていったはずなのだが。よくもまぁ抜け抜けと僕の前に現れるよな。そのエロース並に図太い根性だけは尊敬するよ。
内心ため息を吐きながらも彼女へと視線を向けると、まるで犬のように期待に目を輝かせながら僕への視線を向けてくる。
もしこれが犬の獣人だったら絶対尻尾振ってるよな、という感じのスメラギさんを見て、僕は左手を前に出してこう告げた。
「オウカ、出来れば力を貸して欲しい」
「もちろんでありますぞ! ギン様!」
僕の手を両手で握ってきたスメラギさんを見て、僕はとりあえず、何でリーダーに選ばれていないのかはスルーすることにした。
お知らせ(二回目で最後)
新しい小説書き始めました。
何故か日間ポイントがこっちより上でした。どういうことでしょう(怒)。
という訳で『ワールド・レコード』!
主人公最強なお話です! 是非ご一読お願いします!




