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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
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第249話

スメラギ回は次回になりそうです。

今回はちょっとお触れだけ。あとメザマ。

ヤァァァ!! トォォォッッ!! という掛け声とともに木剣の衝突し合う甲高い音が響き渡り、数人木剣をモロにくらった者がいるのか、合間合間に鈍く小さな悲鳴が聞こえてくる。


今現在、僕は『シル=ブラッド』として剣術部にお邪魔し、大したことが出来るわけでもないが、とりあえず霊器を解除した状態で彼らの練習に混じっていた。


というのも、グレイス曰く、

「霊器を発動するのは日常生活と自主練、そしてワシらとの修行の時だけで良いぞよ。今のお前ならば例え霊器を使用したとしても生徒達では相手にならんからのぅ」

との事だった───過大評価にも程がある。


まぁ、そういう訳で、もしかしたらこの先『シル=ブラッド』が役に立つ時が来るかもしれないし、純然たる『シルの強さ』を見せるためにもフルパワーで手加減しながら相手してやっている。



───のだが、相手しているのであれば何故そんなにもゆっくりと思考出来ているのか、という話にもなるだろう。



僕は肩をポンポンと木剣で叩きながら前方へと視線を向ける。


そこには木剣を杖のようにしてぷるぷると震える足で立ち上がろうとしている天動説野郎───メザマの姿があり、何故か(・・・)顔をぼっこぼこに腫らしていた。


コイツ、何度も留年してる上に常闇にあそこまで一方的にボコられたくせに、良くもまぁ学校止めないよな。理由は知らんが見上げたものだ───まぁ、好きか嫌いかは別として。



「そろそろ諦めたらどうですか? それ以上やれば命に関わりますよ?」



僕のコイツへの報復はもう既に終えた。

だからこそ、僕はこれ以上何の理由もなくコイツを痛めつけるつもりはなく、顔面を攻撃したのはただ単純に、この性格ゲロティスクならば顔が腫れ始めれば外見を気にして諦めるだろうと思ったからだ。


───まぁ、僕の予想はまんまと外れた訳だが。



僕は尚も立ち上がってこちらへと剣を向けたメザマへと仮面の下で訝しげな視線を向けると、その視線に気づいたのか気づいていないのか、メザマは僕へと初めて口を開く。



「俺にはなァ......はぁ、心から憎んでる、ぶっ殺してぇクソがいるんだよ! あの野郎をぶっ殺せんなら恥も命も捨ててやる! 特にテメェは、なんでかあの野郎の影がチラついてムカつくんだよ! ならぶっ殺す他道はねぇだろうが!」



なるほど、うまい具合に一皮剥けて『復讐者』となった訳か。前のエセ正義マンよりは余程マシだが、なんだか逆にタダのチンピラに成り下がったって感じだな。言葉とは裏腹に命の危険性を感じない。



僕は「ティィオヤァァァッッ!!」と気持ちの悪い掛け声で突っ込んできたメザマの頭蓋に木剣を振り下ろし、いい具合に気絶したのを見て残心する。




「前が二点だとすると、今日のはさしずめ五点、と言ったところですかね」



───もちろん、百点満点での話ですが。



僕はそう告げて、次の対戦相手の元へと向かうのだった。




☆☆☆




休憩中、僕はマックスに手招きされ、訓練場の隅の方に寄って行った。

するとマックスと来たらいきなりドンと僕の右腕を軽く叩いてきて、僕は思わず首を傾げる。



「え、何。男からのスキンシップとか洒落にならないくらい鳥肌モンなんだけど。お前とうとうそっち系に──」


「馬鹿かお前は。いきなり何の連絡もなしに現れたと思って驚いたとと思いきや、お前、それヌァザの神腕じゃねぇだろ。まず硬さからしてあの小型兵器とは違うじゃねぇか」



ヌァザの神腕を小型兵器とな。マックスもなかなか言うではないか。

僕は内心でそんなテキトーなことを考えながらも、マックスに言われた右腕を軽く動かしてみる。


───と言ってもこの腕の理屈は簡単で。



「中身の骨と筋肉を影によって補い、表の皮膚一枚だけ変身スキルで表現してるだけだよ。皮膚だけとはいえ混沌にやられた部位を元に戻しておくのはやっぱりきついけど、まぁ、バレることはないだろ」



なにせ、皮膚は肌の色を着色しておいたし、今の服装は長袖に手袋という直接肌の見えない格好である。ちなみに今は夏だが、この服装でも神の布のおかげか暑さはさして変わらない。


するとマックスは僕の言葉を聞いて少し目を見開いた。



「お前、そう簡単そうに言ってるが、混沌の影響が無かったとしてもそんな化物じみた芸当、普通の奴じゃ出来ねぇからな?」


「......えっ? そうなの?」


「ったり前だろうが、お前みたいな化物と俺ら一般ピーポーを一緒にすんな」



個人的には『一般ピーポー』なんて言葉をどこで習ったかの方が気になるのだが。まぁ十中八九浦町だと思うけど。同じクラスだし。


───にしても、浦町とマックスって仲いいんだろうか? あんまり話してるところ見たところないけど。


と、そんなことを考えていると、僕らが何を話しているかが気になったのか、スメラギさんが汗を拭きながらこちらへと歩いてきた。



「どうしたのですかな、シル殿、マックス殿。ギン様からは聞いておりませぬが、もしやお二人は知り合いでしたか?」



何だか普通なスメラギさんを見て「あれ、この人誰だ?」と思いながらも、僕はなんとか言葉をひねり出す。



「ええ、マックス殿とは長い付き合いで、以前に一度、本気で手合わせしたことがあるのですよ。今の彼がどれほど強くなっているかは分かりかねますが、我輩の予想ではスメラギ殿、貴女といい勝負になると思いますよ?」



瞬間、スメラギさんの目がすぅっと細くなった。


あれ、なんかまずいこと言ったかな、と考え思わず冷や汗をかいてしまったが、その視線はマックスへと向かっており、よくよく見ればそれは獲物を見つけた獣のそれであった。


マックスもそれに気がついたのか『今まで本気でやらないようにしてたのに!』といった感じの非難の目線が僕の身体に突き刺さり、なんだか少し申し訳ない気持ちになってくきた。


いやね、僕の中では『普段の』スメラギさんを相手にして考えているから、今の『普通の』スメラギさんを相手にすると少しばかり勝手が違ってくるのだ。


今だって普段僕と話している時であれば『そ、そうなのですか!? なるほど......、私もまだまだ精進語りませぬな!』とか言うはずだ。



───が、現状はどうだろう?



「なるほど、マックス殿との練習にはどこか違和感を覚えていたのですが、シル殿の言う通り手加減されていた(・・・・・)、と考えれば───いやはや、なんだか今すぐにでもお相手願いたくなってきましたな?」



それを聞いて僕とマックスはゾッとした。


笑みを浮かべているのにも関わらず、その薄く開いたまぶたの奥には全く笑っていない冷たい瞳。

右手は腰の木刀へと伸びており、なんだか冗談抜きで今すぐにでも襲いかかりそうな勢いである。


あれか、プライドを傷つけられた、とかそういう奴か。


僕にはそこまでたいそうなプライドはないからよく分からないが、たしかに雑魚に『あ? 今まで手加減してやってたんだから俺が負けて当然だろ』とか言われた日にはぶん殴るだろうと想像できる。



───はぁ、これはスメラギさんには禁句だったかもな。



僕は内心ため息を吐くと、居合の構えを取り始めたスメラギさんの前へと躍り出る。


スメラギさんは怪訝な表情を、マックスは助かったと安堵の表情を浮かべ、周囲の視線が僕に集まり始める。



そんな微妙な静寂の中、僕はスメラギさんへとこう告げた。




「ギン殿が貴女のことをどう思っているか教えて差し上げましょう。その代わり、マックス殿の代わりに我輩と勝負して頂けませんか?」




迷う素振りもなく、スメラギさんは頷いた。




☆☆☆




周囲にはどこかピリッとした緊張感が漂い始め、僕はブラッドメタル製のステッキを片手に彼女の前に立ちはだかる。


彼女自身気づいている訳では無いだろうが、僕は彼女と戦うのは二度目である。


一度目は序列戦。

本音を言えばあそこまで真剣に勝負を挑んでくる相手には本気で相手をしてやりたかったが、あの頃の僕にはそれは出来なかった───技術的に。



───だが、今は違う。



僕の目の前には既に臨戦態勢のスメラギさんが居り、その瞳は真っ直ぐこちらへと向けられている。なんだかこうしているとなんだか心の奥まで見透かされているようでもある。


それほどまでの集中力と、明らかに以前よりも増しているプレッシャー。



───なるほど、この人もこの人で、とんでもない速度で成長してる、ってわけか。



「クフフッ、その歳でその実力。数年もすれば追い越されてしまいそうで怖いですな」


「ご冗談を。失礼を承知で申し上げますが、貴方はギン様やグレイス学園長、カネクラ教諭同様に底が知れない(・・・・・・)。俗に言う『人外』という枠に居られる貴方にそうそう追いつけるとは思いませぬよ」



いや、僕の成長速度も大概だが、スメラギさんのこの短期間での成長ぶりも正直どうかと思うぞ? 先程は『マックスといい勝負』って言ったが前言を撤回したいくらいには強くなっている。



───まぁ、だから何だと言う話だが。



僕は「そうですか?」と言いながらステッキを構えると、即座に刀へと手を添えたスメラギさんへとこう告げた。




「彼の気持ちを知ってから戦うか、負けてから彼の気持ちを知るか、二択に一つ。さて、貴女はどちらを選びますか?」




瞬間、僕は身体中から魔力を放出し、スメラギから発せられるプレッシャーを跳ね除け、霧散させる。


その言葉と僕から発せられる威圧感に彼女は思わず目を剥き、冷や汗が頬を伝う。



「ふ、ふふ......、その権利を勝ち取る、という選択肢は無いのですかな?」


「クフッ、面白い冗談ですな」



そう自信満々に言ってやると彼女もやっとやる気になったのか、口を閉ざしてこちらを睨みつける。


そこにはかつて相対した時と同様、『本気』の目をしているスメラギさんの姿があり、やはりこうでなくては、と内心一人ごちる。



僕は審判を買って出たマックスへと一度視線を向け、再びスメラギさんへと顔を向ける。




「それではッ! 試合開始ッッ!」




そうして僕と彼女の、もう一つの戦いが始まった。



メザマは完全にヤンキーと化してましたね。最初期と比べると見る影もありません。まぁあの頃よりはイラつかない分マシでしょうか?


次回! シルVSオウカ!

勝敗はともかく恋愛要素ありです。

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