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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
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第240話

今回は少し短かった気もします。

多くは語りませんが、強くなったら誰でもトリップしちゃいますともさ。ギンだって男の子ですもの。

その光景に、誰もが目を見張った。



完全破壊不能のはずの訓練場は、見るも無残な状態へと破壊し尽くされ(・・・・・・・)、倒れ伏すは白銀竜、最高位のアンデット、伝説級の神狼、そして───世界神。


世界神───寵愛神エロースに関しては霊具レベルリセッターにより弱体化されている。

だがしかし、それでも尚余りある程の強大なステータスと長年の戦闘経験は、それだけで彼を倒すのに十分すぎた。



───だが、負けた。



「フゥッ、フゥ......、ハァッ......」



荒い息遣いが聞こえ、それを刮目していた真の強者たち───氷魔の王グレイスと、死神カネクラは、期せずして互いに目を見合わせた。



彼の背から生えるは、身に覚えのある一対の翼。



その漆黒色と紅蓮色を混ぜ合わせたような、最も近しいものをいえばダークレッドだろうか。

そんな『禍々しい』という言葉を体現する、燃え盛るような翼は次の瞬間には消え失せており、それと同時に、それを顕現させていた彼の身体が支えを失ったかの如く崩れ去る。



「ぎ、ギン!?」



彼の身を案じた恭香が真っ先に飛び出し、その声で我に返った他の面々もそれに追随する。



その中で、二人だけはなんとも言えないような表情で見つめ合い、数秒の後にどちらとも無く大きなため息を吐いた。




「もう、すぐそこまで来ておった、という訳かのぅ?」


「いんや、あの馬鹿の成長速度が馬鹿げてるだけだ」




二人はそれだけ言うとふっと笑みをこぼして踵を返すのであった。




───ちなみに向かうは、合コンである。




☆☆☆




チュンチュン、と子鳥のさえずりが聞こえる。


開け放たれた窓からは風が入ってきて室内の暖かな空気を循環させており、やはり夏にしては過ごしやすい現状でないかと思う。



そんな中、僕は微笑みを讃えながら、ワイングラス片手にバスローブ姿で、ソファーに腰を下ろしていた。



「ふっ......、朝風呂も、たまにはいい」



その口から出てくるのは、普段通りのイケメンボイス。


───否、きっと違うのだ。そう違うのだ。



「なんせ僕は───」



そこまで言って僕はワイングラスの中身を口に含み、ふっと微笑む。




「これが求めていた───強者の景色、というものか」




瞬間、何処からか何かを落としたような音と、UMAを目撃した時のような、声にならない声が聞こえてきた。


僕はふっと笑ってそちらを見やると、そこには限界まで目を見開いた我が仲間達の姿と、それぞれの足元に転がる何かの荷物が。


なーんだ。驚かせるなよっ、このこ...




「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」




瞬間、居間に恭香の絶叫が響き渡った。




「ちょっとギン、落ち着きなよ! 強くなったのは分かるし嬉しいのもわかるけど一人でトリップしすぎだよ! 何そのキャラ、これ以上新しい属性でも付ける気なの!?」



ズカズカと寄ってきて僕の胸ぐらを掴み上げ、僕の頭を前後に思いっきり揺らしてくる我が愛しのハニーを見ながら僕は再三微笑みかける。



「ふっ、僕はもう既に完成形なのさ。これ以──」


「っていうか、何! その手に巻いてる包帯! 中二病でも再発したの!? それ悪化したらアレみたいになっちゃうんだからね!?」



僕の言葉を遮った恭香の視線は、僕の左手───炎十字のタトゥーを隠すように巻かれた包帯、そして朝っぱらから眼帯&鎖&黒っぽいコスプレという姿の輝夜を経由し、そして必死さがにじみ出るような瞳で僕の目をのぞきこんできた。


するとどうだろう、輝夜の姿を見て少しだけ思うところがあった。



「あ、えっと、その......、流石にアレと一緒にされるのはちょっと.........ね?」


「主殿!? 我の姿を見て素に戻るのは酷いというものではないか!? それに二人して何だ、アレって! 流石に我でも傷つくぞ!」



───っと、危ない危ない。危うく今までの僕に戻ってしまうところであったわ。


僕は恭香の手を振り払うと、アイテムボックスの中に入れておいた常闇のローブをバスローブの上から着用し、バッ、と左手で払って風にたなびかせる。



「今の僕はニューでスペシャルなギンくんだ。今までのパッとしない地味な僕だと思ったら、大火傷するぜ?」



僕のセリフを聞いて「うわクッさ」とでも言いたげな表情を浮かべる皆───ねぇちょっと? ギンくん傷ついちゃうんですけど。


すると皆は何やら円形になって集まりだし、コソコソと僕にギリギリ聞こえるような声で話し出した。



「あれだね、強くなって舞い上がっちゃったんだね」

「ふむ、なんだか可愛いのじゃ」

「しかし......、主殿の隠してる左手、あれはなんなのだろうな? 誰か見た者は居ないのか?」

「あの時は介抱でそれどころじゃなかったのである」

「私もなのですぅ......」

「あれじゃないですか? ただのカッコつ──」

「馬鹿! それ言っちゃダメなやつだろうが!」

「そ、そうですよ! たぶんですけど、あれでもギンさんだって頑張ってるんですから!」

「ハッハッハー! 気持ち悪いですな!」

「きもいのだー」

「にしても珍しいな。あそこまでテンションの高い銀は非常に珍しいぞ。写真でも取っておくか」

「......ねぇ、みんな? なんだか親友くん、涙目になってきてるんだけど......」




僕はその日一日、自室に閉じこもった。




☆☆☆




翌日。


皆の説得に負け自室から出てきた僕は、居間のソファーでぐったりと横になっていた。

最早昨日のバスローブ姿など影も形もなく、ただ単純にTシャツにジャージという普段通りの姿である。


もうあれだよね、あんだけ痴態晒せばもう僕の人生終わったも同然だよね───あぁ、死にたい。



「いいじゃん、たまにテンション高い時があったってさ」



僕の真向かいのソファーで新聞を読んでいる恭香がそんなことを言ってくるが、僕は恭香が新聞読んでる方がよほど気になっていた。



「なぁ恭香、お前全知の癖してなんで新聞なんて読んでるんだ?」


「ん、何となくだけど? 一種の賢さアピールかな」



......あ、そうですか。



僕はそれ以上深く聞くことを諦めて上体を起こす。


まぁ、こんな黒歴史は過去を遡ればいくつもあるのだ。一々こんなことでグダっててもしょうがない。兎にも角にもなにかしよう!


僕はそう考えると何をしようかと周囲を見渡す。


居間を見渡せば、僕と恭香の他に、マックス、アイギス、浦町、エロースの四人がそれぞれ暇そうにしており。



「剣、槍、天才に......、弓か」



僕は四人のそれぞれの武装(約一名を除く)を思い出して、「はっ」と、とてもいい考えが頭に浮かんだ。


っていうか、この場に丁度この四人がいるということに運命を感じずにはいられない。ついでに言えば、だいたいなんでも知ってる恭香も居る。なんというベストメンバー。


僕は漆黒色の嫌な記憶に蓋をすると、よしと意気込んで立ち上がる。



「よし皆。今暇だったらでいいんだが、ちょっとばかし付き合って(・・・・・)くれないか」




何故か、浦町とエロースがとっても驚いていた。




☆☆☆




「「......付き合うって、そっち」か」



僕は何故か落胆している二人を含めた五人に、それぞれ武器を配って歩いた。


恭香には杖、マックスには長めのロングソード、アイギスには長槍、浦町には大太刀、エロースには弓を。それぞれ練習用に木で出似たものを配った。



「なんだかこの先、いろんな武器も使いそうな気がしてな。それぞれ使いそうな武器をメインにしてる奴らがいたからちょっと招集かけてみた」



僕の言葉を聞いた面々の反応は人それぞれで。



「まぁ、いいけどね。暇だったし。......でも私、杖使ったことないんだけど」


「別に教えるのは構わないが、さすがにこの剣長すぎやしねぇか? 一体どんな場面で使うんだよ」


「まぁ、いいんじゃないですか? って言っても私は槍と言うよりも盾の方が専門ですが......」


「ちょっと待て、私に関しては、何故、の一言に尽きるぞ。刀など使ったこともないし、そもそもなんだ、この長さは。私の身長より大きいぞ」


「弓かぁ......、あっ、今度ネイルちゃんにも教えてあーげよっ!」



まぁ、各々言いたいことはありそうだが、それでも適任なのだから仕方ない。輝夜あたりならば件の器用さでなんとでもなるかもしれないが。




「ま、とにかく頼りにしてるよ」




僕はそうして、新たな修行へと入るのであった。



ギン、覚醒!

ギンの黒歴史、その表紙を飾るであろう事件でした。いやぁ恥しい。逆に、あそこまで痴態を晒して一日で部屋から出てこれたギンは素晴らしいとも思います。

次回! 新たなる修行と久々の冒険者ギルド!

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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