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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
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閑話 幻魔と指揮者と執行者

閑話です!

学園祭が終わって数日。



「......」


「ねぇねぇギンちゃん、この前僕を裏切ったことについて話そうよー。いや、全然おこってないからさー」


「......貴方、目が笑ってないわよ?」



執行部の部室には僕とアイギス、浦町のほかに、いつか女風呂に置き去りにした茶髪メガネと、つい先日ミスコンの審査員を務めていた魔国の姫が居り、



「んで? 何の用だよ、ソルバ、マイアさん」



───そいつらは、序列でいうところの二位と八位の、幻術使いであった。




☆☆☆




二人はどうやら依頼をしに来たらしく、それぞれの依頼内容を簡潔に言うとすれば、


『吸血鬼の最上位種である執行者から幻術についてご教授願いたい』


という一言に尽きた。


というのも、昔に言った覚えがあるが、吸血鬼というのは本来幻術や幻惑、幻覚などのプロフェッショナルであり、ことその系統に限れば並ぶ者はなく、神族や悪魔族、更には伝説となりつつある天魔族でさえ並ぶ者はいない───まぁ、最初の二つに関しては吸血鬼から成った奴も居るらしいので『全く』という訳では無いが。



閑話休題。



という訳で、幻術の能力を持つ霊器を使用する二人は、より一層幻術に磨きをかけるため、そのプロフェッショナルであるこの僕へと教えを乞いに来たのだった。

そして今現在、とりあえずは部室内で色々と試してみようということになった。


まぁ、差し当たっては───



「『月光眼』!」



瞬間、僕の左眼が発動し、周囲の景色が一変する。


イメージとしては、僕がかつて父さんに連れてきてもらった───幻想の紅月(ルーアン・イルゾニア)のモチーフとなったあの世界である。


その世界で僕とアイギス、浦町は長いソファーに、ソルバとマイアさんは長机を挟んで、それぞれ一人がけのソファーに座っているという構成だ。



「「「「......えっ?」」」」



やっと周囲の変化に脳が追いついたのか、今頃になって驚き慌てて周囲を見渡す四人。

今回は自分も幻術の中の世界に入ってはみたが、初めての試みながらなかなかどうして上手くいっているのではないかと思う。


───ちなみにこの幻術では体感時間を極端に長く伸ばしているため、現実世界に戻ったところで恐らく一秒とて経っていないだろう。例えるならイタ○の○詠みたいな感じだ。


僕は一通りどんな感じかを見終わったので、未だキョロキョロしている二人へと視線を向けて話し出した。



「今の弱体化してる僕ができるとすれば、こんな感じで目が合った人たちに幻術をかけたり、その他には『体が動かない』と誤認させてその場から動けなくさせたり。主に『幻術』と『催眠』の二つだな。霊器さえ無ければもっとできるとは思うけど」



その言葉を聞いてこちらを見た二人は、僕の左眼を見たのかゴクリと喉を鳴らしていた。


たぶん、この位の能力は『幻覚魔法』というスキルさえ持っていればどうとでもなるだろう───だが、それでもなお二人が驚いているのは、その幻術の『質』のせいだと僕は思う。


恐らくは通常の『始祖』の持つ『幻覚魔法』ではせいぜいが一人を二人に見せたり見ているものを誤認させたりと、まぁ所詮はその程度のものだろう。

言っちゃ悪いがこの二人も『自分の幻術が始祖相手にどれだけ通じるのか』と言った考えで来たのだろうし、万が一にも負けるなどとは思っていなかったのだろう。



───だが、序列戦で見た二人の能力ではとてもじゃないがここまでの幻術は見せられない。



それに、万が一この二人と僕が戦ったとしても、正直言って今の僕ならば瞬殺できる自信がある。純血種としての始祖の力と、それにくわえて最高位の魔眼である月光眼があれば、そんじょそこらの幻術や催眠、果ては魅了なんかに負けるはずもない。


と、僕はそこまで考えると、指を鳴らして幻術を解いた。



「そんじゃ、とりあえず二人の出来ること、教えてくれないか?」




☆☆☆




まずは序列二位、ソルバ。


このチャラメガネの持つ霊器は『霊球ラスライト』、例えるならばゼウスの『雷霆(ケラウノス)』の形と色を変えた球体だ。


そして、この霊器の能力を一言で言い表すならば『多種多様な幻術』だ。

本人の頭のよさ(?)とそのバリエーションが上手く合致し、最終的に『指揮者』という二つ名を冠する程に戦闘を操るのだそうだ。まぁ、いいんじゃないかな。上から目線だけど。




次に序列八位、マイア・ロード。


魔国の姫である彼女の霊器は『霊具カゲウミ』である。見た目は僕の『霊具レベルリセッター』と同様単なる腕輪らしい。


そして、その能力も『幻術』である。

───がしかし、ソルバの霊器ほどのバリエーションはなく、単に『幻術』と『催眠』の二種類に特化しているのだとか。そのため付けられた二つ名が、『幻魔』である。


戦術の一例を挙げると、幻術で自身の分身を見せ、催眠でその幻覚には実体があると錯覚させることも出来る。そうすれば相手は幻覚の攻撃をくらい、ダメージを受けたつもりになる様である───えげつないなそのコンビ。



という訳で、ソルバの霊球とマイアさんの霊具。


二人はそれぞれの能力を使用して戦い、そしてそれぞれ上位まで勝ち残ってきた強者である───だが、それでも尚幻術という技術に関してならば僕の方が上である。



騙す技術。


考える能力。


判断し対応する能力。



それらを総合して相手へと幻術をかけ、状況に応じて対応し、順応させ、そして相手を地獄へと容赦なく叩き落とす。


まぁ、僕もそんなに幻術の修行法について詳しいわけでもないが、それでもアドバイスくらいならできるだろうとは思う。



僕はまず二人へとそれらを説明した上で、僕なりの修行方法をたった一言にまとめてこう告げた。




「幻術とはッ、つまるところの妄想だ!!」


「「.........はっ?」」



二つ程意味わからないと言った様子の声が聞こえ、両隣からは呆れたようなため息聞き超えてきた───クッソ、コイツら全く信じてねぇな?


僕は信じようとしない馬鹿四人に向かって呆れたようなため息を返すと、一から順番立てて説明することにした。



「すごく単純にいえば、幻術って言うのは自分の頭の中で作り出した世界を相手に見せる行為だ。そしてその行為をするために一番重要なのは豊かな発想力と機転の利く頭脳、そしてそれらを一瞬で構築することに対する『慣れ』だ。まぁ、この考え方は魔法にも通じるところがあるだろうけど」



例えば先ほどの幻術や、僕が使っている魔法でいうところの雷龍召喚や白狼召喚、マジックキャンセルやその他のオリジナル魔法。

ああいうのは発想力、そしてそれを実現できるだけの理解力───つまりは頭脳。そして何よりそれを何度も反復練習をし、それに慣れること。それらが重要なのである。


僕がそこまで言うと、さっきまで馬鹿にしてた四人もけっこうマジなことを言っているのだと分かってきたのか、先ほどとは打って変わって真面目な表情を浮かべていた。



「まず一つ、頭脳に関しては各々の方法で努力してもらいたい。流石にそこまで深入りしてお前達のスキルアップするつもりは無いし」


「うーん、まぁ、妥当な考えだよね」


「ええ、そうね。それで、他の発想力と慣れに関してはどうすればいいのかしら?」



僕の言葉に二人は頷き、それぞれの顎に手をやって考え始める。人に教わってばかりだと伸びないからな。まぁ、なかなかいい傾向ではないだろうかと思う。


だがしかし、僕はここで『さぁ、考えてごらん? 正解が出るまで一緒に考えてあげるから』などといった正義マンっぽい善人ではない。

って言うか正直にいえばいい案が出るまで付き合うのが面倒くさい。


そのため、僕は早々にアドバイスを二人へと授けるのだった。



「これは僕の持論でしかないけど、発想力に関してはこの先色々なものを見て、学んで、知って、そして自分のモノにしていくしかないと思うよ。たとえば冒険者にでもなって旅をしてみるとかさ」



───まぁ、それに関しては僕の『夢』でしかないのだが。



「そして慣れに関してはひたすら反復練習だな。どうすれば相手をうまく誘導し捉えられるかを誰かを相手に実践し、そして不備を直し、改良してやり直す。それを延々と繰り返して感覚で使えるようになればその時は今の僕を超えてるんじゃないか?」



そう言って二人へとそれぞれ視線を向けると、ソルバとマイアさんは何やら考え込んでいる様子で、今のアドバイスが二人の中でどう変化し、そしてそこから何を得るのかは分からないが、それでも十分変化を促す役割は果たせたのではないかと思う。



───その証拠に、



「よしっ! それじゃあ僕は、ロックちゃんにでも実験体になってもらうとするかなーっ!」


「私は夏休みに国に帰った時、母上にでも練習相手になってもらうとするわ。魔王本人が相手となればそれだけ得るものもあるでしょう」



二人はそう言うとそれぞれ「ありがとう」と礼を言って去っていった。


きちんと扉が閉まり、二人の足音がそれぞれ離れていったのを感じて僕はやっと一息つくことが出来た。



「いきなりやって来て、もらうものだけ受け取ってすぐ帰るって......、なんだか嵐みたいな奴らだったな」


「私個人としては君の隠してた『夢』とやらが聞けて満足だがな」


「えっ? ギンの夢ですか? 私初耳なんですけれど....」



そりゃそうだろう、誰にも言ってないし。



「それと浦町、夢とは言ったけどあれは一人で(・・・)悠々と行うことが夢なのであって、お前らと一緒に行くのは夢じゃなく単なるストレスだ。そこのところ勘違いするなよ?」


「「ストレス!?」」



何やら僕の言葉に精神的ダメージを被った様子の浦町はがっくりと肩を落とし、アイギスも何の話かは分かっていなさそうだが同じように肩を落としている。


まぁ、楽しさでいえばたしかに皆で旅した方が勝るのかもしれないが、それでも僕は元来孤高性なのだ───新しい単語を作ってしまったが、一人の方が気が楽で落ち着ける、という意味である。


そのため今僕が目指すべきは最強ではあるが、もしも最強へと至ったならばその時は一人抜け出して旅にでも出よう。まず間違いなく追手がかかるが最強ならば振り切れるはずだ。そう信じよう。



僕はそう夢を膨らませながら、お茶を啜る。




───そうして今日も、放課後は過ぎてゆくのだった。


ギンはやっぱりチートでした!

正直、月光眼さえ使えば学園の生徒内には敵はいません。

ちなみにですが、“月光眼”の他にもう二つ、全世界で最高位の魔眼があります。まぁ、そのうち片方はもう既に登場しているのですが。果たして最終的にその『三大魔眼』は誰の手に渡るのでしょうか?


次回! 学園祭も終わり夏休みに突入! やっと里帰りですね!

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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