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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
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第235話

学園祭は次とその次で終了です。

いやぁ、力入れすぎましたね、ほんと。

この学園の正式名称を答えよ。


いきなり出題された意味不明の問題に思わずフリーズしてしまった僕と浦町ではあったが、それはたったの数瞬間。

浦町はどうかは知らないが、少なくとも僕の記憶の中には見当たらないその名前を、限界まで頭を使って記憶を探り始めた。


───この学園の名前。


俗に言う"◯◯市立◯◯高等学校"のような、そんな感じの正式名称だろうか? ......いや、小等部から高等部まであるのだから"王国立◯◯学園"と言った感じだろうか?


......にしても、



「ここって名前あったのかよッ!?」



すっかりここしか『学校』がないものだと思っていたが、もしもここ以外のどこかにも同じような『学校』があるのだとすれば、正式な学校の名前があって然るべきだ。


だが、こちとらここが唯一の学校だと思い込んでいたお馬鹿さんである。正直言ってそんな名前なんて知ったこっちゃない。


僕は不安に思って浦町の方を窺うと、同じように額に冷や汗を流しながらこちらを窺ってくる浦町の姿が見えた───どうやらお馬鹿さんは僕だけではなかったようだな。



『おーっと、先程まで先にどちらが押すかで勝敗がついていたのにも関わらず、今回の問題に関しては黙りだァァァ!! ちなみに答えないまま三十秒経過、又は両者ともに不正解となった場合は両者とも不正解、つまりは二勝二敗一分けということで優勝者は無し! というつまらない結果に終わってしまいます!』


『けっ、どっちが勝っても誰かがデートするんだ。んならもういっそ両方間違えて冷水の中に落ちちまえ。......てか、この学園って名前あったのか?』


『私も初めて知りました! 今解答見てみましたが初めて聞く名前ですね!』



それに加え、観客のうち大勢が「......え? お前名前知ってる?」みたいなこと言い合ってる───あぁ、こりゃグレイスが泣いて引きこもりそうだな。その時は慰めてやろう。

......っと、そうじゃなかった。今はその答えを探す方が先だもんな。


僕はすぐ横で怪訝な表情を浮かべてこちらを見上げてくる白夜を見やると、まさかな、とは思いながらも一松の希望を感じながら問いかけた。




───のだが、



「おい白夜、まさかとは思うけどお前は知らないよな?」


「なんじゃ? 知っておるがそれがどうかしたのかのぅ?」


「やっぱり知らないよな......っておい、お前今なんて言った?」



僕は帰ってくるはずの「知らない」という台詞とは真逆のその言葉に、思わず二度見して聞き返した。



「なーんじゃ、主様たちが黙り込んでおったと思えば問題の答えがわからんかったのじゃな? ならばここは妾に任せておくのじゃーっ!」



ピンポン! と、白夜はそう言い終えると同時に、自信満々に解答ボタンを押した。


───あぁ、なんと頼もしいことか。


コイツはいつものアホっぽい所をよく見てるからそうは思えないけど、こんな形でも中身は神童だ。頭脳だって僕や浦町、恭香程ではなくとも僕のクランでも群を抜いている。


まぁ、そんな天才の白夜がこんなに自信満々で問題を外すわけもなく......、




「カカッ! "王国立グレイシア学園" なのじゃっ!」





ブッブー、と馬鹿にしたような機械音が聞こえ、次の瞬間───足元の床が、消失した。



───そうして僕は、全てを悟った。




「こんっっの、馬鹿野郎がァァァァァァ!!!」


「のはぁぁぁっ!! これを待っておったのじゃぁぁ!!」



バカの叫び声を聞きながら僕らの勝利の可能性は潰え、僕らは二人揃って冷水へと入水する。


そして身体中に伝わってくる、狂おしいほどの冷涼感。

───否、そんな冷涼感などといったレベルをはるかに超越した、痛いとも取れる馬鹿げた冷たさに、僕は大声を出すことすら忘れて慌てて水面へと顔を出す。


そして隣から聞こえてきた馬鹿の独白。



「ぶはぁっっ、はぁっ、こ、これを待っておったのじゃ! 決勝戦でこれに勝てたら優勝! そこまで来たところで予期すらせぬどっぽん! これぞ妾が予定しておった最高の展か...」


「馬鹿かお前は!? ねぇ、なんでお前はそういう時だけ僕すら騙せるような頭脳を発揮するの!? もう少し違うところに頭使った方がいいんじゃないのかよ、この馬鹿ッ!」


「ば、馬鹿とはなんじゃ主様! 主様にしては罵倒のボキャブラリーが貧困なのじゃ! もっと全てを台無しにした妾を貶すのじゃっ!」


「死んじまえこの変態クソドラゴンがァァァ!!」


「のほぉぉぉぉぉっっ!!! イイッ! イイのじゃぁぁぁぁぁっっ!!」



僕の心の底からの叫びが上がったとほぼ同時に、ガラス一枚挟んだ観客の方からも歓声が上がった。



『な、なな、なんと!? 予選で圧倒的な力を見せたギン&白夜ペアが脱落!? この展開はどう思われますかカネクラさん?』


『チッ、なんだよあの落ちたあとの絡みはよォ? あん? お前ら夫婦なのか? じゃなきゃどんだけ仲いいんだよお前ら。一発死んじまえ』


『......はい! とにかく執行者さんとそのお仲間の白夜さんがデキかけてる、もしくはデキてるという情報が得られたところで次行きましょう! 解答権が移りますので次は浦町&エロースペアです!』



なんだか途中、とても陰鬱とした台詞が聞こえたような気もしたが、まぁ、あまりの冷たさによって起こった幻聴だろう。そういうことにしておかないと「僕が紹介したエルビンとはどうなったの?」 って聞けなくなってしまう。というか聞きたくない。


僕は悲しみにため息をひとつ漏らして、腰に巻いていた常闇のローブを取り外すと、目の前で恍惚の表情を浮かべている白夜へと羽織らせた。



「ふむ? どうしたのじゃ主様?」



全く自分の状態に気付いていない白夜はそう呑気に話しかけてくるが、こちとら二十歳前の健全な童貞である。あまりそのままの姿で居られるのは困る。



「今から上に引き上げるけどせめて前だけは隠してけ」



多くは語らなかったが、自分の体の前の方を確認した白夜はいきなり顔を真っ赤にして頭から湯気を出し始めた───一つだけ補足しておくと彼女の今の服装は白のワンピースである。それ以外は最早言うまでもあるまい。


───あぁ、ここにいるのが暁穂じゃなくて本当によかった。


そんなことを思いながら『愚者の傀儡』で白夜を穴の上まで浮かび上がらせると、僕は翼を出してスイスイっと上まで飛び上がってきた。ちなみに僕の制服は翼が出せるように改造済みである。



「あ、主様! べ、別に妾は大衆にこの姿を晒すのもやぶさかではないのじゃが、主様がどうしてもというから隠してやるのじゃっ! せいぜい感謝するのじゃぞ!」


「はいはい、お前の顔が真っ赤じゃなければ感謝してたかもな」



僕は上で待ち構えていた白夜をテキトーに受け流すと、隣でこちらの事さえ気にする余裕もなく集中している浦町へと視線を向けた。

どうやら彼女自身も未だ答えには至れていないらしく、今はおそらく記憶を隅々まで探っているところだろう。まぁ、浦町がパッと思いつかないって時点で記憶にはないことは確定してるのだが。


つまりは浦町がしているのは無駄な足掻き。



───問題は、その横で今か今かとボタンに手を添えて待機している、あのピンク色である。



アイツが答えを知っているか、と聞かれれば僕は考えるまでもなく首を横に振るだろうが、それでも僕の答えが正解とも限らない。もしかしたら『気まぐれ』で調べたことがあるかもしれないし、何よりも怖い時のエロースを思い浮かべれば不安要素を撲滅出来ない。


僕の視線の先にいる浦町はやっと僕の考えと同じところまで至ったのか、諦めたかのように息を吐いてエロースへと視線を向けた。



「悪いが私には思いつかない。後は君に任せたぞ、エロース」


「りょーかいっ! 後は私に任せておいてよっ!」



エロースは、浦町のその言葉を聞いた途端にピンポン!とボタンを押した。



「なぁっ!? ま、まさか......、エロースは本当に正解を知っていたのか!?」



僕はそのあまりにもためらいのない行動に思わず目を剥いてそう叫ぶ。

僕同様にその動きに確信めいたものを見出した浦町は僕の方へと向かってニヤリと笑い、エロースに関しては完全なるドヤ顔だ。



───あぁ、僕、負けたかも。



そう思い、半ば諦めた僕は。





「はいっ! いもむし幼稚園!!」




ブッブーという機械音と、その後に聞こえた二つの悲鳴に、思わず吹き出してしまった。




☆☆☆




という訳で結果としては決勝戦は引き分け。

勝者も敗者もない代わりに報酬もなく、ただ単純に楽しんだという事実だけが残った。


まぁ、僕としては十分に楽しめたため満足だし、白夜も入水&僕からの罵倒でかなり満足気だった。




───そしてこれは今から数分前、クイズ大会が終わってしばらく経った頃のことだ。




「「「け、決勝戦にすら行けないなんて......」」」



そう言って食堂の長机に顔面を突いて両腕をだらんと下げている敗者たち。そして悔しそうに顔を歪めている浦町とエロース。

描写はしていなかったが他の面々もあのクイズ大会には出場しており、そして予選で僕らについて来れずに敗北していたのだ。


まぁ、答えなかった分入水は無かったみたいだから、それだけ良かったと思っていただきたい。



───にしても、結局のところ学園の正式名称って何なんだろうか? 何だかんだで知らず仕舞いだけれど。



と、そんなことを考えていると、食堂に取り付けられている時計を見たエロースが「うわぁっ!?」と言って立ち上がった───なんだ、もしかしてお月様に帰る時間がやってきたのか?



と、そう考えるのと並行して、ピンポンパンポーン、と流れ出す放送の前兆。



『高等部、四年一組、ギン=クラッシュベル様。四年一組、ギン=クラッシュベル様。学園長グレイス様がお呼びです。至急、学園長室までお越しください』



───何故か、僕らの間に静寂が訪れた。



エロースの「うわぁっ!?」という驚き。


その前に時間を見たという行為。


グレイスからの至急の(・・・)呼び出し。



......何故だろうか? なんだか嫌な予感しかしない。


僕は一抹どころかかなり大きな不安を感じながらも立ちあがる。



「まぁ......、あれだ。後で自力で探して合流するから先行っててくれ」


「りょーかいだよっ! そんじゃーみんなっ、行ってみよーっ!」




そんなエロースの声を聞きながらも僕は学園長室へと向かい───そして今に至る。




僕の前には真剣な表情で椅子に座っているグレイスと、その横に立っているクソイケメン───ギルバートの姿があった。




「実は、ミスコンテスト決定戦の審査員である教頭が、今日を楽しみにしすぎて風邪をひいてのぅ。そこでお前に来てもらったわけなのぞよ」




───そして、僕は全てを悟った。




「さぁ、もうすぐ開演だよ。急いで向かおうか、ギン。そして学園長」




僕はギルバートに差し出されたその右手を、わざわざヌァザの神腕を出してまで握ってやった。



───それはそれは、固く握ってやった。


次回! ミスコンテスト開催!

さて、優勝するのは果たして誰でしょうか!?

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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