第25話
ブラッドメタルの正体とは?
形状記憶合金ブラッドメタル。
恭香曰く『現存する金属の中で、最も優れたもの』との事。
これについて彼女が知っていた情報としてはこうだった。
およそ数千年前の話である。
神々は思った。
((((既存の金属ザコすぎね?))))
ちなみに、この『既存の金属』の中にはヒヒイロカネやオリハルコン、アダマンタイトなどが含まれている。まさに神々の思考回路であった。
最高神の1柱である創造神はこの世界の上級神を集めた。
闘神。
魔導神。
獣神。
邪神。
運命神。
鍛冶神。
破壊神。
死神。
以上の上級神8柱だ。
残念ながら集合しなかった者や、出来なかったものもいるが、それでもこの名前を見るだけでも充分過ぎるだろう。
集まって早々、創造神は本題に入った。
創造神「今はまだ居らぬかもしれんが、この先、きっと今の金属では不足するような人物が出てくるじゃろう。その為にワシらで今のうちに最高の金属を作り上げておきたいのじゃ」
死神「くっくっくっ、それで本音はなんだ?」
創造神「うむ、暇なのじゃ。付き合えぃ」
「「「「「「「「......」」」」」」」」
という事で神々の金属作りが始まった。
流石に8柱の上級神に創造神が加わったとしてもヒヒイロカネをも上回る硬度。ミスリルをも上回る魔力順応度を持つ金属の創造にはかなりの時間を要した。
熱による沸点の高さ、魔力による形状記憶、敵からの魔力攻撃をすべて防ぐ魔力耐性。
最高の金属を作る上で神々はありとあらゆる事を追求した。そのため更に条件がきつくなり、新たな矛盾点も続々と出てきた。
試行錯誤を繰り返しながらも時が経ち、3年前。
当時5歳だった恭香がこう呟いたらしい。
『皆さんの体の一部を使えば宜しいのでは?』
「「「「「「「「「それだっ!!」」」」」」」」」
神々はその金属に結合させるのに最も適したものは一体何であろうか、と考え出した。そして行き着いたのが...
神々の『血液』だった。
そこからは順調だった。
未完成だったその金属に全員の血を満遍なく染み込ませ、結合させた。そのおかげかいくつもあった矛盾点や問題点が片手の指で数えられる程にまで減ったのだ。
そうしてつい1年前にその金属が完成した。
名を『形状記憶合金ブラッドメタル』と言い、
硬度、魔力順応度、魔力耐性など、それのどれを取っても今までの金属とは一線を画した新しい金属が生まれたのだった。
☆☆☆
恭香が開発者メンバーだった件について。
「え、やっぱ恭香のパパって上級神なの...?」
『うふふ、秘密です♡』
...何だか恐ろしくなってきた。
「そう言えば、死神は分かってたけれど、創造神もかなりテキトーなんだな...」
『うん......天界って結構大変なんだよ?』
「妾よりもあんぽんたんなのじゃ」
((自分があんぽんたんだと自覚しているっ!?))
「何だか失礼な事を思っとらんか...?」
まぁ、そんなこんなで僕たちはこの金属の説明を恭香から聞いたのだったが、創造神はまだしも、それ以外の面々がヤバすぎるだろう。鍛冶神に死神ときて、破壊神や邪神までこの金属の制作に携わっていると思うと、なんだか恐ろしくなって来る。
それにだ。そんな神様たちが携わっているのならば、並外れた手段でなければこの金属を武器や防具に作り替える事は不可能だろう。例えば僕の『創造』スキルや、それに類するものでなければ、スキルがLv.5はないと扱えないと思う。
「あれ、そう言えば、何で僕は鑑定して目がやられたんだ?」
『えーっとね、確か、「この金属を作った神たちのうち、3柱以上の加護を持つ者にのみ使用が許される」とか何だか言ってたから、多分そのせいだと思うよ?』
くっ、なんてはた迷惑なっ。 というか、加護×3とか、そんなの持ってる人いるんだろうか......?
いや、この金属はその条件でさえ簡単に突破していくような人の為だけに作られただろう。大して力も持たない奴がこの金属を手に入れて、そのせいで傷を負ったとしても、それはある意味当たり前なのだろう。
まぁ、理不尽だが。
「うーん、それなら僕にはまだ使えないって事か?」
『まぁ、端的に言えば』
「喜んで損したのじゃぁ...」
まぁ、僕はもう既に2つ加護を手に入れているんだ。
それに、恐らく遠くないうちに魔導神の加護は得られるんじゃないかと思っている。MPとんでもない事になってきたしね。
けれど、もし加護を得たとしても、僕はこの金属を扱うに足る人物なのだろうか? 僕はまだまだ弱すぎる。神々もそんな僕如きに使わせる為にこれを作ったわけでもないだろう。
だからこそ僕は、僕自身がこの金属に相応しい強さになるまではこの金属は封印する事にした。でないと数1000年かけてこれを作った神様たちに失礼だろう。......まぁ、ただの自己満足なんだけどさ。
「それじゃ、魔石を確認してすこししたら出発するか」
『うん、そうだねぇ』
なんだかニヤニヤしたような声を出す恭香。
あ。コイツ、心を読みやがったな...?
クッ、本当に厄介な能力だ........。
ちなみにこの後、オートマタの魔石を鑑定してみたが、やはりと言うかなんと言うか、AAAだった。
☆☆☆
「さて。どうする?」
『どうしよっか?』
「うむ、どうするのじゃ?」
僕たちは未だに先程の大部屋に滞在していた。
この先に進むという事はSランク以上の化け物と戦わなければならない、という事なのだ。白夜がついているとは言えども、流石にこればかりは真面目にならざるを得まい。
「まず、恭香。僕の今の実力で、Sランクに勝てると思うか?」
これでも『魔道の真髄』を手に入れたことでかなりのパワーアップを済ませてる。今ならば邪竜とも真正面から戦えるであろう。今ならばSランクと言えども、一方的に負ける展開は無いのではないだろうか?
しかし、そんな僕の思惑とは逆に恭香はこう言った。
『まず、不可能ですね』
「──ッ!? な、何故だ?」
『ギルドでのランク付けにおいて、ランクAAAとランクSにも圧倒的な隔たりがあるんだよ。今まで通りの1ランク上の存在だと思ってたら、多分一瞬でやられちゃうよ? 少なくとも3ランクくらいは違うと思っておかないと......』
なるほど、そういう事か。
恭香が、『白夜ちゃんはSSの中の下』と言った時に、僕はどうしても納得できなかった。彼女はそんな器ではないだろう、と。
しかし今の言い分を聞いて、なんとなくだが、AAAからS、SからSS、SSからSSSにはそれぞれ高い壁があるのだろうと言うことが分かった。道理で彼女がSSランクなわけだ。
「うーん、例えるならランクDの冒険者がランクAの魔物に勝負を挑む、みたいなもんかな?」
『まぁ、ほぼそれに近い状態になるだろうね』
「うむ、確かに勝ち目は薄そうじゃのう......」
これは困ったことになりそうだなぁ......。
ラスボスはまだ考え中です...。
ドラゴン、巨人、ゴーレム、はたまた幻獣の類か......非常に悩みます。




