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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
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第233話

前半シリアスです。

まぁ、こういう感じのシリアスムードもここでひと段落ですね。

「......勧誘、だと?」



大悪魔からの、悪魔側への勧誘。


それを聞いて思わず僕の口をついて出てきた言葉に、メフィストは首を縦に振って首肯した。



「私個人としては貴方には好き勝手に生きてほしいのですが、それでも私は大悪魔。序列一位たるサタンやその上の混沌が『やれ』というのならばやりますし、現に『勧誘してこい』と言われたためここまで来てみました」


───まぁ、私といえどもあの二人や他の大悪魔の面々を敵に回すのは骨が折れますしね。



そう言って彼は肩を竦めて見せた。


『あくまでも自分の意思ではない。その為あまりこちらに責任を求めないでいただきたい』


と、そう言外に僕へと伝えたいのだろうか?

まぁ、それを言葉にして言ってしまえばメフィストの大悪魔としての立場も無くなってしまうだろう───こっちとしては立場が無くなって行き場に迷って欲しいところだが。


僕はため息を一つ吐いてから、ひとまず答えよりも先にいくつか聞いておくことにした。



「メフィスト、大悪魔たちが僕を勧誘したいってのはわかったけど、まず第一条件として何故わざわざ僕を選ぶ?」


「何を仰られるやら、貴方はいずれ最強へと至るのでしょう?」


「単にそれは自分で言っているだけだ。僕よりも素質のあるヤツや運のいい奴、更には現時点の僕よりも遥かに戦力となるやつだってザラにいるだろう」



そう、僕がいずれ最強になるというのは、自身への鼓舞を含めた『自称』に過ぎない。


───たしかに、まだまだ伸び代はあるだろう。


だが、それでもまだ僕があの最強(ゼウス)その先(ウラノス)に届くビジョンは、未だ見えない。


だからこそ、僕はあえて、今まで言おうとして来なかった本心を、彼へと向かってぶちまけた。




「正直に言うぞ、僕が他の誰をも押しのけて最強へと至る確率なんてのはかなり低い。そして、それをメフィスト、お前は確実に『知っている』。それでも尚、僕を勧誘した理由を答えろ」




いずれ最強へと至る道。


僕はきっと、今現在進行形でその道の上に立っている───否、『伸び代』というエンジンの詰まった車を走らせていると言った方がわかりやすいか。


僕は、恐らくは今において、最もそこへと至る最短ルートを、誰よりも早くかけ登っている。

その為、他の誰の追随も許さないほどの成長速度を見せ、周囲に『いずれ最強へと至る』と、そう思わせている。



───が、僕にはどうしても、コイツが僕の現状を知らないわけがないと思えるのだ。



「僕はお前を買っている。ほかの大悪魔はどうかは知らんが、お前は確実に僕のことを知っている。なら、僕がこのまま突っ走れる可能性が低いことも分かってるんじゃないのか?」



僕のその確認とも呼べる問に、メフィストは数秒黙ってから、ため息を吐いて答えを出した。



「確かに、貴方は決して天才ではない。正確には天才ではあれど、私たちと肩を並べられるほどの"才"を持ち得ていない。正直言って、そこまで至れたのは奇跡と言っても過言ではない」



そこまで言って、彼は一度その重々しい空気を断った。



「話は変わりますがギン殿、全世界に知るものは片手で数えるほどしかいないのですが、私の能力を教えて差し上げましょう」


「......能力?」



いきなり話が変わったことに対して少し疑問に思ったが、メフィストは僕の心情を知った上で話を続けた。



「全て教えるわけにはいきませんが、私の持つ能力のうち最も代表的な能力は『全てを見通す』という能力です。名前だろうが能力だろうが、過去だろうが未来だろうが、『完璧に』とまでは行きませんが、ある程度までは見通せる。そんな能力です」



僕はその話を聞いて、魔眼のようなものだろうか? とは思いはしたが、別段メフィストが嘘をついているようには思えなかった。

何よりも、それを証明するに足ることをメフィストは今までにも行い、実証してきた。


その僕の考えを見通したのであろうメフィストは、顔に笑みを浮かべて、尚更に言葉を続けた。




「そして、全てを見通せる私と、我が主からの伝言です」




瞬間、彼の姿が掻き消え、気づけば僕はメフィストに胸ぐらを掴み上げられていた。


僕の目の前にある彼の顔に浮かぶのは、なんとも言えない不思議な感情。



───けれども、彼の口元はたしかに笑みを浮かべていた。




「『君はいちいち面倒くさい奴だね。バスの席で老人が立っているのにも関わらず、それを我関せずと座っている若者にイラッとくるが、それを座って見ている自分に嫌気がさす。けれど君は優しい。偽善でも自己満足でもなく、根っからのお人好しだ』」


「........お前、何言ってんだ?」



思わずメフィストの主であろうその人の言葉にそう答えてしまったが、なるほどその人は僕のことをよく分かっている。

それほどまでにその指摘は正しく、だからなんだっていう話だし、正直認めたくもないが。それでもその言葉は正しかった。


僕の言葉を無視した彼は、尚も言葉を重ねてゆく。




「『そんな君に僕からのアドバイスだ』」



そう告げるメフィスト。

けれどもその後ろにいるであろう人の顔は、しっかりと僕の脳裏に浮かび上がっていた。




『一つ、他人には言い訳してもいい。けど自分にだけは嘘はつかないこと。ただし、真面目な時に限る』




その最後の最後で気の抜けるようなその言葉に、僕は思わず苦笑する。




『一つ、才能がないからと言って諦めるのはまだ早いよ。やる事やって、それでも足りなかったら......、まぁ、その時はその時だ。その時考えよう!』




一言この伝言を伝えてきたであろう相手にいうとすれば、きっと「馬鹿じゃねぇの?」だろう。




『一つ、グダグダ考えずに今を必死に生きてみればいいさ! 保証はできないけどきっと何かいいことがあるに違いない!』




馬鹿。本当にメフィストの主は馬鹿らしい。見ろよ、言ってるメフィストが珍しく恥ずかしがってるじゃないか。なんてこと言わせるんだアンタは。




『そして最後に、君にはまだまだ眠っている力がある。白虎と常闇は僕がなんとかしたけど、あと二つ(・・)は君が独力でなんとかしたまえっ! そうすれば大体は何とかなるさ!』




もはや正体を隠す気もないその言葉に、僕は本当に呆れ返ってしまった。



「......メフィスト、お前も大変だな。あれ(・・)の下とは」


「くっ......、こ、これでも十分慣れた方なんですがね」



メフィストはそう言うと、僕の胸ぐらから手を離し、数歩だけ後ろへと下がった。



「でもまぁ、なんとなく言いたいことは伝わりましたか? 兎にも角にもグダグダ考えすぎなんですよ、貴方は。そんなんじゃ最強になる前にファンが消えますよ?」


「う、うるせぇ! こっちはなんにも考えずに強くなれるそこらの主人公じゃないんだよッ!」



舐めてんのかこの野郎ぶっ殺すぞ、とそう思わず叫びたくなるようなことを言われた気もしたが、まぁ、今こいつに勝てるわけもない。処刑は数年後にでもズラしておこう。


僕は肺に溜まっていた重い空気を怒りと共に吐き出すと、何故かスッキリとしたような気分で、メフィストへとこう言った。




「勧誘の件、悪いけどそっちには行けないわ」



───何より、お前ら(・・・)には僕の経験値になってもらう役目があるし。



その時僕がどんな顔をしていたのかは分からないが、メフィストの顔が引き攣っていたことだけは確かである。




☆☆☆




翌日。


昨日の後半はなんだかオールシリアスで、不真面目なところといえば馬鹿からの伝言位のものだったが。




『さぁ始まりました! 学園祭二日目の最大企画うち一つゥゥゥ!! この学園なんでもありクイズ大会! 略して《この難あり大会》だァァァァ!!!』


「「「「うォォォォォォ!!!」」」」



テンションマックスの司会さんと、その背後に控える大勢の観客たち。


そしてそれらの前に並び出ている、数名のペア諸君。



───そして、僕はその大会に出場していた。



それに加えて......、



「よしっ! それじゃあ一緒に頑張るのじゃっ、主様!」



僕のペア、白夜。


まぁ、何があったかは置いておいて、頭脳だけ神童と正真正銘の神童が揃っているのだ。正直言って負ける気がしない。




『それじゃあ準備はいいかァァァ!? もちろん準備なんて無いけれど、とにかくそれじゃあ開始ですッッ!!』




僕はやる気をみなぎらせると同時に、なぜ初っ端からこんなに不真面目感満載になってしまったのか、過去を振り返るのであった。




☆☆☆




朝、食堂にて。



「......この難あり大会?」



僕は朝一番で告げられたその意味不明なクイズ大会の名前を聞いて、やはりそう問い返さずにはいられなかった。


───いや、流石に『この難あり大会』は無いでしょう。いい略称が思い浮かばなかったのかもしれないけど、さすがにそんないかにも難がありそうな大会に出る馬鹿は居るまい。



と、そう思ってた時期も僕にはありました。



「ふむ! そうなのじゃよ主様! 勝てば天国に近づき、一問でも間違えれば床一枚を挟んだ下にある氷水の中へとどっぽんじゃ! これはもはや受けない以外の選択肢こそ有り得ないのじゃ! という訳でペア戦故主様にお願いしに来たのじゃっ!」



僕の視線の先には、そのクイズ大会について書かれたプリントを手にした白夜が居り、その瞳にはありありと『期待』の感情が浮かんでいた。


僕はたまたま空いていた横の席を引いて、ひとまず白夜を座らせてから話す事にした。



「あ、主様っ、ありがとうなのじゃっ!」


「おう、それでそのクイズ大会はどういうシステムで優勝賞品とかはどうなってるんだ?」



僕がそう聞くと、白夜ははっと今更気がついたような顔をして、手に握っていたぐしゃぐしゃのその紙を僕へと渡してきた───こいつ、もしかしなくともそういうのなんにも見ずにここに来やがったな?


僕はそのプリントを受け取ると、シワを直しながらその大まかな内容に目を通す。



───が、




「『ポイント方式で全員同時勝負し、上位数ペアが決勝戦出場。誰でも参加可能で、勝てば学園内の誰かひとりと一日デート出来る....』って、そんな馬鹿みたいな報酬で誰がこんな危なそうな大会に参加するんだよ」




───瞬間、僕の周囲から音という音が消えた。


あっ、まずったかな。とそう思った時には時すでに遅し。




「「「「浦町様! どうか自分めとその大会に!!」」」」




もちろん僕の仲間達の指名先は天才の中の天才であられる浦町了で、正直いってしまえば、浦町が出るならばもはやそのペアが勝ち確定だろうと思えるほどであった。



「クイズ大会......ねぇ?」



僕はそう呟いて、隣で僕の方を期待の眼差しで見つめてくる彼女へと視線を向ける。



───まぁ、せっかくの学園祭だし、何よりも他ならぬ白夜からお願いだ。



「まぁ、ほかの奴らに負けるのも癪だしな」



僕はそういう建前を作り、立ち上がる。




「それじゃあ白夜、出るからにはブッチギリでの優勝を目指すぞ」


「ハイなのじゃ! 一緒に優勝するのじゃぞ主様!」





───そうして時系列は、今現在へと戻る。





『問、この学園の食堂にて月...』


ピンポン!


「最強デンジャラス定食!」



白夜が僕の合図と同時に電光石火の如く台に設置された赤いボタンを押し、超フル回転している僕の頭脳が最適解を導き出す。



───最早、我らに死角はない。




『せ、正解だァァァ!! ギン&白夜ペア! ブッチギリでの150ポイント!! これは決勝戦出場決定か!?!?』




誰かに対して現状を一言で言うならば、こうである。




『今現在、僕らは無双をしている』と。


メフィストの主はアイツだった!?

補足ですが、メフィストの能力のうち一つは『見通す能力』ですが、その能力で見通せるのは『大まかな』確定事実です。

人の心やステータスは別ですが、過去や未来に関しては大雑把にしか分かりません。

次回! 続・この難あり大会! 白夜、大活躍なるか!?

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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