第231話
そろそろギン×エロースとの閑話を作ってもいいかも知れませんね。なんだか彼女だけ扱い酷いですし。『作って欲しい!』との要望があれば作るつもりです。
その後、
『あれっ? 良く考えたらここにエロースだけ並ばせておいて、先にリリーのクラス見てきた方が効率的じゃないか?』
なんて悪い考えは浮かんだものの、流石に僕とて鬼ではない───吸血鬼だけど。
まぁ、僕だってエロースのことが嫌いな訳では無いのだ。むしろたまーに表に出てくる怖い部分と底抜けにポンコツな部分を抜かせば悪しからず思っている。......その二つを抜かせばビジュアルと強さしか残ってなさそうだが。
という訳で、僕らは四人仲良くその列へと並んでいたのだが。
「えええっ!? 親友くんの親友くん、君って女の子じゃないの!? 神界でも君みたいな可愛い子は滅多にいないんだよ!?」
「あはは......、僕のことは和彦でいいよエロースさん。でも僕はネイルさんやエロースさんの方が美人さんだと思うよ? だって二人みたいな美人さん、僕初めて見たもん」
「いやぁ、私に関しては隣にエロースさんが居るから引き上がって見えてるだけですよ。だって私って全然モテませんし.....」
「あ、それって単純に、銀と親しい人に告白する勇気が出ないってだけじゃないかな?」
「「あ、有りうる......」」
そんなこと女子達───もとい、女子二人&男の娘一人の会話を聞きながら、僕はチラリチラリと周囲へと視線を飛ばす。
───いや、言うまでもないが先程からとんでもなく注目を浴びているのだ。
僕はこの列に並んでしばらくした頃から気配を遮断しているためあまり目立ってはいないが、僕の後ろには(美男)美女が三人もいるのだ。そりゃ目立つだろう。
───特にエロースな。
コイツに関しては雰囲気に服装、ビジュアルにその体に至るまで、それら全てが俗に言う『エロい』という奴だ。
正直、恭香と婚約する前の僕ならば危なかったところだろうし、前の世界でコイツに迫られていたら間違いなく落ちていたのは僕であったろう。
それ程までに───鋼の精神を持つチキンたる僕にそう言わしめる程に美しいエロース。
......まぁ、その彼女が目立たないわけもなく、
「ねぇキミー、かわうぃいネー! 良かったら僕と一緒に遊ばない?」
背後からモロにエロースへと話しかけているであろうその軽そうな声を聞き、僕は思わず背を冷や汗が伝うのを感じた。
いや、明らかに"人"という枠を超越してるエロースに何の躊躇いもなく話しかけたナンパ野郎もそうだが、何よりもそういう輩にあからさまに誘われた時の彼女の受け答えときたら......
「ん? あー、ごめんねっ? 私、貴方に全く興味ないから」
───男からすれば、心にグサッとくるレベルではないのだ。
振り返り、そのチャラ男の背後の方に五、六名のチャラチャラしたヤツらを確認した僕は『あ、これは乱闘になるぞ』と半ば確信し、気は進まないがその前に手を打っておくことにした。
僕はあまりにも痛々しい静寂が占める中、気配を元通りに戻すと二人の間に割って入っていった。
「あー、すいませんね。うちの連れったらオツムと運にかけては全世界で並ぶ者がいないほどに酷いもので。出来れば今のは忘れて引いてはくれませんかね?」
「ちょっと親友くん!? 何だか私に対して棘が混じってたように思えるんだけど気のせいかなっ!?」
───うるせぇポンコツ女神、お前もゼウスと同じくらい強いならもう少し頭使え、頭。お前は僕よりINT高いだろうが。
と、そんなことを思ったがチャラ男と来たら、
「アァん? なんだテメェガキコラァ? この女がテメェの連れだと? テメェみてぇなガキには分不相応だ、俺によこせよな? かっ、勇者気取りとかマジウケるぜ!」
───よし、なんて言っているかは理解不能だが、とりあえずエロースVSチャラ男という枠組みは解体できたはずだ。その第一条件さえクリア出来ればあとはなんとで...
「ねぇ親友くん、コイツ懲らしめちゃっ...」
「却下だ」
───もちろん即答した。
今のは危なかった。今の言葉を最後まで言わせてたら「アァァん? なんだテメェ女コラ、いてかますぞ、オォン?」 とか何とか言われてたところだ。
僕はエロースへと向けて「僕に任せろ」と小声で伝えると、全く怖くもなんともないメンチを切ってくるチンピラへと体を向けた───メンチを切ってるって、何だかメンチカツ切ってるみたいだよな。
「クハっ、テメェ、まさか俺に勝とうってんじゃねでだろうなぁ? 俺ってばこれでもBランク冒険者で、それも最近かなりの有望株って有名なんだぜェ? テメェみてぇなヒヨッコが俺に勝てるわけねぇんだよッ!」
こちとらSSランクだぞ、おいコラ。
そう言ってやりたがったが、何だか彼はとっても自信満々に言ってるみたいだし、『もしかして弱そうなのは見た目だけか?』と、僕は新しく得た能力を使用して確認してみることにした。
(『差異査定』!)
───差異査定。
月光眼、Lv.2で使えるようになった新たな力である。
能力は読んで字のごとく相手との『力量の差』を調べるという能力であり、相手がどんな裏技を隠していようと、相手の最も力の発揮できる状態、で表してくれるからたとえ相手がゼウスやグレイス、エロースであろうと自身との力の差がオーラとしてはっきりと確認できるチート技だ。
───だが、
「......あ、青色......か」
それもかなり深ーい青色。もしかしたら紺色に近いかもしれないオーラをしていた。
あ、ちなみに言っておくと、僕とだいたい同等のやつが緑色、格下は青色、格上は赤色となっており、赤と青に関しては色やオーラの大きさがが強いほど差が大きいという調査結果が出ている。
───ちなみにゼウスやエロースに使った時は眩しすぎて目が潰れそうになった。眩しいとかこいつらほんとバケモノだな。
閑話休題。
まぁ、ここまで説明すれば大体わかった人の方が多いだろうが。
「死に晒せこの糞がぎゃぁはぁぁぁっっ!?」
僕の顔面へと殴りかかってきたチンピラに対して、魔力回路の全力使用、その五割で対応してやった。
───僕の顔からではなく、彼の腕の方から骨かなにかが折れる音がしたのは......まぁ、チンピラ君のご愛嬌、ってことにしておこう。
☆☆☆
その後、後ろに控えていたチンピラが出てきたが、何故か僕の顔を見た途端に顔を真っ青にし、土下座してから這う這うの体で逃げていった───まだ僕の顔を知らない奴いたんだなぁ、と思っていたため何だか微妙な感じである。
という訳でそれから十数分後、僕らはやっと迷路内へと突入することが出来たのだった
───のだが。
「ぱんぱかぱーん! ようこそいらっしゃいましたお客様方! 当店は和の国のダンジョンの攻略速度を競う遊戯をモチーフに考えられた迷路の攻略速度を争うという場所であります! まぁまず出ることすら不可能でしょうが、とりあえず皆様方、ごゆるりとお楽しみくださ.........ってギン様でありませぬか。ギン様なら数分もかからずに終わるでしょうから頑張って下されー」
何やらとてつもなくいい笑顔で迎え入れられた僕達ではあったが、相手が僕達だと気づいた途端いきなり疲労が表に出たのか、両肩を落としてやる気を失ったスタッフさん───もとい、スメラギさん。
「ルールは簡単、壁や障害物を壊さなければなんでもありです。スタートラインを越えると同時に始まりますので、なるべく短めに準備体操をした後にご出発してくだされ」
───おいスメラギさん、お客さんいっぱい来たからって流石に元気なさすぎじゃありませんか? こっちだって一応客なんですけど?
と、そんなことを考えていると、僕の隣にいた駄女神様が僕の方へとグイグイっと迫ってきた。
「ね、ねぇ親友くんっ! このダンジョンのクリア速度で勝負しないかなっ? 勝った方が相手になんでも一つ命令できる、っていうのを賭けてっ!」
その瞳に浮かぶのは、簡単に言う見え透けるほどの感情。
恐らくは結構真面目に攻略し、「相手になんでも一つ命令できる権利」とやらで、僕の愛人───ないしは僕の恋人にでもなろうとしているのだろう。
───僕は賭事ってあんまり好きじゃないんだけれど、まぁ、このポンコツ相手に負ける僕でもないか。
僕はふっと笑うと、改めて条件付きでその勝負を受けてやることにした。
「いいだろう、但し、出口の一歩手前でスメラギさんへと念話、そして『許可』を貰ってからゴールだ。もちろん元からのルールは守るし、スメラギさんを買収して許可を出させないなんて真似もしない。その条件を飲むならば受けて立とう」
「ふふんっ! 私ってばこの距離なら簡単に念話できるもんねっ! 電話番号知らないからってそう考えてるなら甘い考えだよっ!」
......それ以外に頭が回らないお前に、その言葉をそのまんま返してやりたいよ。
僕はそう考えて内心ほくそ笑むと『出たいけどエロースさん出るんだもんなぁ』みたいな顔をしてる二人をよそに、そのスタートラインへと両足を並べる。
それに続いて自信満々のエロースもフワフワと浮かびながらも僕の隣に並び、馬鹿っぽく上半身だけスタンディングスタートのポーズをとっている。
僕はスメラギさんの方へと視線を向け、準備完了の合図を視線で送ると、スメラギさんは一つうなづいて手に持っていた旗を振り下ろした。
「それではっ! スタートです!」
瞬間、僕の隣にいたエロースの姿が掻き消えた。
───本気。
設備などは一切破壊してはいけないため本気の本気ではないだろうが、ある程度制限をつけた上での世界神の本気であった。
まぁ、もちろんまともに相手しては勝てるはずもないが。
「オウカ、たとえどんな状況になったとしても、僕からの念話が来たら即了解してくれ。あと、あと数秒もしない内にエロースから念話くるだろうから来たら教えて」
「え? あ、はい......、にしても今の御方は一体......?」
次の瞬間、どこからか「見つけたーっ!」と大声がして、スメラギさんだけでなく僕に対しても念話がかかってきた。
『ふふんーん! 私ってばもう見つけちゃったもんねーっ! どうっ? どう、親友くんっ! 私の直感がまだ親友くんはスタート地点にいるって言ってるよ!?』
う、うぜぇ......、お前は子供か、エロースよ。
いちいちイラッとくるその言葉に少し感情が荒ぶってしまったが、僕もこの程度でいちいちムキになるようなガキではない。
そのため僕はスメラギさんへと念話を繋げ......、
───僕とエロースの位置を、入れ替えた。
目の前には廊下へと繋がる一枚の扉。
そして足元には『本物のゴール』と書いてあった。
「オウカ、許可ちょうだい」
『あっ、はい。許可しますぞっ!』
然して僕は、なんの苦労もすることなく最高記録を打ち出したのだった。
───なんだか最近、前よりも一層鬼畜になってきた気がします。
☆☆☆
結果、僕はエロースに『なんでも一ついうことを聞かせる権利』を得たのため、正直そんなの無くてもなんでもいうこと聞いてくれそうなエロースに、前に恭香が、
『いや、何だかうちのパーティってこれだけいるのに獣耳って一人もいないんだよね。って訳で獣耳成分を力技で作るためにも、はいこれ』
と言って無理やりアイテムボックスの中へと入れてきた、形状変化可能の高級獣耳を使用することにした。
───何故か獣耳をつけた途端に尻尾まで出てきたが、どこから出てきたかは知らぬふりをしよう。詳しく探ってはいけない気がする。
とまぁ、そんなこんなで僕は泣き崩れるエロースに獣耳を装着し、その場に放置したまま高等部三年生のクラスのある方へとやってきたわけだが......、
「よし、帰るとするか」
リリーのクラスの出し物と、その最後尾に並ぶ奴を見て僕は即座に引き返したが、残念ながら声を発したのがいけなかった。
ガシッ! と僕は後ろから羽交い締めにされ、背中には二つの柔らかい感触が伝わってきた。
まぁ、振り返るまでもなく片眼鏡をしているソイツの顔には見覚えがありすぎたのだが。
「待ってましたよマスター、さぁ、一緒に入りましょうか」
───お化け屋敷。
やはりその響きに、いい思い出は皆無だった。
鬼畜ですねぇ、ギンくん。
エロースが必死に探し当てたゴールを横取り、その後、変な獣耳を装着して放置する。
───君は一体、どこの魔王様ですか?
次回! ギンは暁穂に捕まった! 彼はお化け屋敷から逃げられるのか!?




