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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
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第229話

今回は珍しく日常回!

何気にこういうのは久しぶりなんじゃないでしょうか。

学園祭を間近に控え、僕は「何だか準備の風景やらそういうことはあんまし描写してないな、そう言えば。あ、僕準備しないでサボってたから知らないや」 とそんなことを考えていた。


いやはや、暗殺術のスキルやその他のスキルの向上に伴って、あの死神ちゃんすら騙せるほどの技術を手に入れてしまったようだ───と言っても、今の死神ちゃんは本来の力の数割程度しか出せてないと思うけど。



閑話休題。



というわけで、僕は今日も今日とて、部室で準備をサボっていた。


正直言えばつい先日のアレでかなり疲れたのもあるし、何よりも僕があの場にいて誰かと何かを協力して何かを出来るとも思えない。僕に何かをやらせたいならば単独行動をさせるべきだな、うん。


そんな傍から聞けば何を言っているのかも定かではないような、そんなことを思って茶請けをバリバリと頬張っていると───何やら、唐突に嫌な予感がした。



「『エアロック』」



瞬間、僕の視線の先の部室のドアがガッチリとその場に固定され、その直後にグッと扉を開けようとする力が感じられた。


───おや、いつもは何かが起こってから力技でなんとかする僕には珍しく、問題ごとを事前に防ぐことが出来たようだ。今日は運がいい。



「ちょっと! スメラギ先輩がここに先輩がいるって言ったんじゃないですかー! このドア鍵かかってるんですけどー?」


「ふむ......、私の長年の調査(ストーキング)に基づいて考えれば、今ギン様がこの部室でサボっている確率は九十パーセントを優に超えておるのですが......。ま、まさか私たちの行動がバレて......?」


「あー、それあるかもですねー。あの先輩なんか私たちの行動とかしっかりと確認してそうですしー」



───ちょっとー? 本人の前で何言ってるんですか君たち? って言うかお前らの行動なんて確認してるわけないだろ、興味とか皆無だし。



「あ、今なんかムカつくこと言われた気がします。多分居留守ですねー?」


「奇遇ですな、私も丁度ギン様に馬鹿にされたような気がしたのです。恐らくはこの中で私たちの会話を盗み聞きしているに違いない!」



......やだ、何この子達エスパーですか?


と、そんな感想を抱いていると、二人といえば無理矢理にでも突破しようと考えたのか、エアロックの上からドンドンドンッ、とドアに体当たりを決行し始めた。



───とまぁ、そんなことをしているヤツらには少し罰ゲームだ。



二人がお互いに視線を交わし、同時にそのドアへと渾身の体当たりをくらわせようとした───次の瞬間、そのドアがガラッと横に開き、標的を失ったふたりは勢いそのまま地面へと思いっきり体当りしていった。



二人は一瞬、何が起こったのか理解出来ていなさそうではあったが、僕が投げかけた言葉を聞いて完全に理解に至ったようだ。




「お前ら......、流石に自意識過剰にも程がありすぎて気持ち悪いぞ?」




☆☆☆




その後、怒り狂った二名ではあったが、めんどくさかったのでルーシィに追い回される幻術をちらっと見せたら静まり返った───月光眼って本当にチートですね。これ使ってたらスメラギにも勝ってたのに。


閑話休題。


というわけで、どんな用事できたのかは知らないため、とにかく二人を座らせて要件を聞くことから始めた。



───のだが、




「はぁ? また護衛か?」


「「はいっ、そうです!」」



二人揃って口にしたその肯定に、僕は思わず項垂れた。


二人曰く、学園祭って言うのは学外からも色々な人物が訪れるらしく、毎年毎年学園に通っている貴族や王族が襲われるのは恒例行事なのだとか。


そのため、毎年王族や貴族は各々護衛を雇って学園祭を謳歌するのだが......、何とまぁ、この子達と来たらこの僕に対して護衛を頼んできやがったというわけだ。



「いや、お前ら少し考え直せよ? 僕ってこれでもリリーの護衛をしくじった経歴を持っ...」


「リリー!? リリーですと!? ギン様はいつからこの女狐の事を下の名前で呼ぶようになったのです!? 初期に私がリスクを冒してまで音が聞こえるところまで接近した時は『ガーネット』と呼んでいたではありませぬか!」


「ふふっ、スメラギせんぱーい、もしかして嫉妬してるんですかー? 私たちってこれでも修学旅行を二人で抜け出してデートした仲なんですよぉー?」


「き、貴様ァァァ!! よし表へ出ろこの女狐め! この私が直々に成敗してくれ...ぐはぁっ!?」



二人の会話を聞いてみた感じ、このまま行けばふたりが決闘をし始めて、先生方がこの場所に集まってくる未来しか見えなかった。そのため事前にその元凶のうち片方を潰しておいた。エアブレッドで。



「大人気ないぞ、スメラギさん。相手は高校生低学年だ。この程度のガキにおちょくられて恥ずかしくないのか?」


「が、ガキですとー!? ちょっと先輩! 私がガキとかちょっと見る目腐ってるんじゃないですか!? ちょっとその目に私のグラマラ...」


「その凹凸のない体がどうしたって?」


「ぐはぁっ!?」



───訂正しよう、もう片方も潰しておいた。精神的に。


僕は四つん這いになって項垂れている二人を見て、一つため息を吐いてから話を本筋へと戻すことにした。



「で? 僕はこれでも護衛に関してはあんまり役には立たないと思うが? 何でわざわざ僕にそんな依頼をしてくるわけだ?」



僕のその声にぴくりと反応した二人。


彼女らは先程までの傷心した様子はどこへやら、ずいずいっと僕の方へと顔を寄せ、つばを飛ばす勢いでこう言ってきた。




「決闘では勝てなかったので、この護衛の途中事故というふうに見せかけて既成事実を作ってしまおうかと!」


「なんかいきなりディーン先輩を誘うのは緊張するので、来年に向けて先輩で練習しておこうかと!」




僕はあまりにも酷すぎるその志望理由にため息を吐き、ジトっとした視線を向けてこう言った。




「却下」と。




☆☆☆




その後、却下と言ったのにも関わらず引こうとしない二人を見た僕は、


「とにかくもっとまともな理由を考えてこい。その理由によってはもしかしたら一緒に学園祭回ってやるかもな」


と、そんなこと有り得もしない言葉を吐き捨て、意気揚々とやる気を出し始めたふたりを送り返した。ほんと馬鹿ばっかり。



───というわけで、僕はまた一人でお茶を飲んでいたのだが。



「あーにじゃーっ! わたしとあそべー!」



そう言ってこの部室へと突入してきたのは、ついこの間一緒に授業を受けた義妹、アメリアちゃんである。

いやはや、今日も今日とて見事なパイナポー。前から思ってたけど、その髪型セットするの秒で終わりそうだな。


アメリアは上靴を乱雑に脱ぎ捨てると、僕の前に位置する長机もお茶も何もかも無視して、そのまま一直線に飛びかかってきた。



───まぁ、そんな危険を僕が許すわけもなく。



「『愚者の傀儡(マリオネット)』」



空間支配の能力、愚者の傀儡によってアメリア自身をその場に浮かせ、ゆーっくり慎重に僕の隣まで移動させる。


するとやはり僕のこの能力を気に入っているアメリアは騒ぎ出すわけで。



「きゃははっ! あにじゃっ! いまのもっかい! もっかいやっておくれー、なのよー!」


「こら、お姉さんのモノマネしちゃいけませんよ。君のお姉さんは『ナノヨウイルス』っていう強烈極まりない病気を持ってるんだから。アイツのモノマネしたらアメリアまで病気になっちゃうぞ?」


「えー? あねうえは病気なのー?」


「そう、アイツは生まれ持っての病k...」



瞬間、僕の頬を鋭い風が切り裂いた。


───魔力回路を発動していないとはいえ、それでも素でも防御力が上がった僕の肌に傷をつけられる風使いなど、僕はこの学園で一人しか知りはしない。



「ふ、ふっふっふっ......、ギン? 貴方一体私の妹になんてことを吹き込もうとしているの......かしら? その変なウイルスとかでっち上げにも程があるの......あるわ」



部室に上がったところでそう、慣れもしない口調に四苦八苦しながらも僕の方を睨みつけている水色は、やはり僕のみ知った人物で。



「で、出たーー!? 逃げるぞアメリア、『ナノヨウイルス』の病原体の襲来だ!!」


「はいです、あにじゃっ! ナノヨウイルスー、撲滅するのですよー!」



結局、最初のアメリアの依頼通り、姉であるルネアを使って思い切り遊んでやった。



───もちろん、ルネアもそこら辺は十分に承知していてくれたのだろう......と、思いたい。




☆☆☆




ルネアが遊び疲れて眠ったアメリアを連れて帰った後、僕はまた一人の時間を過ごしていた。


今日は一日、色々な奴らがこの部室を訪れたわけだが、なんだかんだ言ってもう夕方。日が半分ほど沈んで、赤い光が部室の窓から入ってきている。



「まぁ、流石にもう誰も来ないだろ」



そう呟いて再びお茶を啜ると、僕の言葉に反応してか部室のドアがピシャリと開けられた。


───はぁ、言った先から何処のどいつだよ、僕の安寧を邪魔する奴は。


そう少し苛立ちげに部室の入口を見て───僕は完全に固まった。




「クックックッ......、いい度胸じゃねぇかこの野郎。俺様でさえ準備に動員されてるってのにお前は一人高みの見物かァ? あァ?」




そこに居たのは、身体中から死のオーラを振りまいている我らが担任兼、顧問の教諭、死神ちゃんであり、僕は彼女のあまりにもブチッときてる顔を見てこう思うわけだ。



───あぁ、僕、ここで死ぬんだな、と。



「よく分かってんじゃねぇか? そうだよ、お前みてぇな奴は一旦死んでもっかい蘇れ。そんで蘇った途端にもっかい殺してやるから、十分に悔い改めてこい」



死神ちゃんはそう言ってなんの躊躇もなく神器ルゥーインを召喚すると、その爛々と光り輝く赤い瞳を僕の方へとロックオンしてきた。


───死。


正直言って、あの時ルシファーにやられそうになった時以上の明確な死の気配を感じ、僕は思わず身体を震わせる。


背中を冷や汗が伝い、ゴクリと喉が鳴る。



「な、なぁ、死神ちゃん。ちょーっと死ぬのは不味い。こっちとしても保険とか色々かけてんだからさ。頼むから今回は目を瞑っていただけないでしょうか?」



そう僕が声を震わせながら言ってみるが、死神ちゃんと来たらなお一層顔に浮かぶ笑みを大きくして、こちらへ進む速度をあげ始めた。


───だ、ダメだこの人......、僕のことを確実に殺す気だ。


僕はその姿を見てそう確信すると、今までで一番じゃないかってくらいに頭をフル回転させ始める。



一歩、また一歩と死の足音が響きわたり、


僕の身体からは膨大な冷や汗と脂汗が吹き出してくる。


数秒もしないうちに彼女は僕の前で立ち止まり、


その、手に持つ大鎌をおおきく振りあげ───




「い、いい男性を知っているのだが! 死神ちゃんに紹介したいけど、死んじゃったら紹介出来ないかもなぁ!!」




───ピタリと、僕の目の前でその大鎌が止まった。



そうしてしばしの間、緊張感溢れる静寂が部室を占め、数秒してから彼女は恐る恐る口を開いた。



「......おい、その話は本当か?」と。



僕はその言葉にしっかりと頷くと、死神ちゃんにもわかりやすいように僕の知る男性───それもその中で一番死神ちゃんと仲良く出来そうな奴を頭に思い浮かべる。


───彼と出会ったのは始まりの街、パシリア。


覚えているだろうか、僕らが最初に止まった宿、宿屋ダムダムの店主、ルーシィと共にいた一人の男の事を。


元冒険者にして、料理上手、


なかなかダンディな顔立ちに、ガッシリとした体つき。

いざと言う時に頼りたくなるその笑顔、そしていつでもどんな話を聞いてくれる、その優しさ。



僕はそれらを想像して、死神ちゃんへと彼の名を告げた。




「パシリアの街、元Aランク冒険者のエルビン。確か歳は二十六歳。どうだ、僕を見逃してくれれば、二人の仲介だけならしてあげよう」




───死神ちゃんは、迷うことなく頷いた。


エルビン、覚えてますでしょうか、エルビンです。

たしかに初登場は51話、丁度お話が全然進んでなかった時期ですね。読み返すと、色々と書き直したくなってきます。

という訳で、エルビンと死神ちゃんはうまく交際できるのでしょうかね(棒)。

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