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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
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第223話

ギンVS白髪褐色です!

試合開始の合図と同時に、白髪褐色はその手に霊器の剣を握ってこちらへと駆け出し、剣を振りかぶった。


その踏み込みからの剣の振り下ろしは、まず間違いなく先ほどのメザマよりも早いもので、あの時剣を振るった時のヤツが本気ではなかったにしても、恐らくは剣の実力だけでいえばコイツの方が数段上であろう。



───だが、反応できない速度ではない。



僕は短剣モードのブラッティウェポンをギュッと握りしめると、月光眼によって完全に捉えたその剣を短剣の刃で逸らして躱す。


だが、流石にここまで勝ち抜いてきただけあって、白髪褐色もここで隙を作るようなマヌケはしない。



「はぁぁッ!!」



振り下ろした剣をその場にとどめ、一瞬の貯めの後に思いっきり振り上げる。


見えてはいたし、反応もできる。


だが、僕は体力と魔力だけならまだしも、その他のステータスは概ねここにいるどの生徒よりも劣っている確信がある。


だからこそ、僕はその一撃は真正面から受け止めることはもちろん、先ほどのように受け流せるような威力や角度ではないことに気が付いていた。



───それが生身であれば、の話だが。



ガギィン! と金属と金属がぶつかり合う音がして、その衝突場所から火花が舞い散る。



ヌァザの神腕(アーガトラム)



日頃の修練のおかげで随分と使いやすくなったその腕ではあるが、その修練による成果が出ているのは何もそれだけではない。


義手部分の腕力強化はもちろん、銀炎を使用したエンジンブースト、能力封印に治癒再生の能力はもちろん、僕が今まで使ってこなかった───と言うか使う機会がなかった、もう一つの能力もさらに強化されていた。



「避けろよ白髪褐色。でなけりゃ火傷じゃ済まないぞ」



僕はその言葉と同時に銀腕の凹凸で受け止めていた霊器の剣を思いっきり振り払い、右腕全体に銀色の炎を纏った。


それには流石のコイツも焦ったのか、急遽攻撃をやめて回避行動へと移る。



───けど、それじゃあ回避距離が足りないな。



「『銀炎波』」



その言葉と同時に振り払った銀腕は、その腕に纏った炎を一瞬にして拡大し、僕の腕が通過した延長線上を広範囲に渡って焼き尽くした。


銀炎波。


かつてアーマー君がマックス戦で見せた緑炎斬。あれは剣に炎を纏って使用する技であったが、この能力は銀腕、及び銀腕が触れていたものに銀炎を纏って使用する範囲攻撃。しかも物理攻撃の威力まで向上してくれるというのだからなかなかどうして使い勝手がいい。



───だが、世の中にはそんな炎などものともしない馬鹿がいるものだ。



「どらぁぁぁっ!!」



僕はその銀炎の中から現れた白髪褐色の剣を確認すると、位置変換によって事前に後方に設置しておいた石ころと位置を入れ替える。



「かはぁっ、はぁっ、はぁ......、この化物が。予想以上に高熱で焦っちまったじゃねぇか」



そういう白髪褐色は全身が水をかぶったかのように濡れており、なるほど水魔法を使って熱を和らげたという事が伝わってくる。


───どうやら、コイツはマックスと同じタイプ。つまりは能力をひた隠しにする油断ならないタイプのようだ。




「いやはや、お前が僕の嫌いなタイプだったなら、もう少し油断して相手してやったんだけどな」




僕はそう呟くと、ブラッティウェポンを右手に、氷魔剣(アイシスソード)を作って左手に握り込み、構えをとる。


その構えはグレイスのものを二刀流用に改良したもので、グレイス本人からもお墨付きが出たものだ。


僕は腰をしっかりと下ろして前を見据えると、油断ならない()に対して、こう宣言した(・・・・)




「悪いが、勝たせてもらうぞ、アストランド」




───僕は、宣言したことだけはやり通す主義でしてね。




☆☆☆




僕は銀滅炎舞を両脚に使用して、強化された脚力で一気に奴との距離を詰める。


その他にも活性化やベクトル変化なども使用して更に速度を上げ、最終的にはここの生徒達をも上回る速度ではコイツの前へと躍り出ることが出来た。



「なぁッ!?」



僕のあまりにも大きすぎる変化に目を向く白髪褐色ではあったが、僕の目を見てその驚愕は形を潜めた。


───本気。


この先の試合のことなど知ったことか。

僕は今やるべき事をやるだけだし、コイツは僕の本気を出すに値する強敵だ。


それに何より、もしもこの先ニアーズの誰かやオリビアやマックス、黒髪の時代と当たったとしても、きっとその時はその時の僕がなんとかするだろう───なんとか出来そうにないなら覚醒でもしてもらわねば困る。ほんとに。



「ハァァァッッ!!」



僕は右手に握ったブラッティウェポンを勢いをそのまま振り下ろすと、霊器でその短剣を受け止めようとする白髪褐色


───だが、その直前で受け止めるのを諦め、回避へと走った。


次の瞬間、先程まで奴がいた場所を銀炎の斬撃が走り抜け、次々とステージを破壊してゆく。



「なるほど、いい判断だ」



これは益々、手を緩めるわけにはいかなくなった。



僕は今度は左の氷魔剣での突きを回避した先の白髪褐色へと放つと、やはり氷魔剣の纏う魔力も察知したのか、剣で防ぐことはせずに回避する───そして刀身を延長するかのように伸びる銀氷の斬撃を彼の頬を浅く切りつけた。


受け止めることが出来ない斬撃。


それが交互左右、銀炎、銀氷、そしてまた銀炎と、対処するまもなく交互に繰り出され、白髪褐色は徐々にその体勢を崩してゆく。



───だが、何も僕の能力は受け止めることが不可能な斬撃だけではないのだ。




「『縛れ』」



瞬間、奴の足元の影が蠢き出し、その足を縛りあげようと形を成す───が、縛り終える前にその場を飛び退く白髪褐色。やはり一度廊下で見せた技、通じると考えるのは尚早だったか。



───だが、受けようが躱そうが、別にお前が動いていてくれれば結果は変わらない。




「クソッ!」



二刀流、範囲攻撃、そして影魔法まで使用された白髪褐色は遂に姿勢を崩し、僕へと初めて隙を見せた。


もちろんこの僕がその隙を見逃すはずもなく、一瞬の迷いも無くその隙へと踏み込み、




───作戦通りと、笑った白髪褐色が瞳に映った。




「油断したなッ、執行者ァッッ!!」



姿勢を崩したと見せかけた(・・・・・)白髪褐色は、しっかりと地を踏みしめ、僕の胴体へと決死の突きを放ってくる。


僕は基本、彼らとの真剣勝負では常闇を使うつもりは無い。


前々から決闘を挑んでくる相手にもそうは言っていたため、白髪褐色は勝利を確信し、見ている生徒達も白髪褐色の策に目を剥いた。



───が、僕に騙し合いで勝てる奴なんて、読心持ちを抜かせば全世界で三人(・・)しか居ないんだよ。




誰もが霊器の剣が僕の胴体を貫いたと思った瞬間、僕の身体がブレ、次の瞬間には僕の姿は白髪褐色の背後に現れていた。




「悪いけど、絶歩を応用すれば位置の偽装なんて簡単なことなんだよ」




僕はそう言って、彼の首筋に手刀を落とした。




☆☆☆




ふぅ、と身体の中に篭っている熱を吐息に乗せて吐き出すと、やっと僕の身体から緊張が抜けて来たように思えた。



『試合終了ーーーッッ!! まさに圧巻! 一撃も受けることなく執行者さんが勝利しましたッ! 今の戦い、グレイスさんはどう見ましたか?』


『......ふむ、やはり人を騙し、心理を読み取り、そして誘導することにかけては超がつくほどの一級品だのぅ。もちろんそれを行える頭脳があっての芸当だが、それでもあれだけ見れば間違いなく全世界で五本の指に入るぞい』


『ぜ、ぜぜ、全世界で五本の指にッ!? な、何ですかその全く戦闘に関係なさそうな才能はっ!?』


『その全く関係ない才能をフルに使って強くなってきたのだ。賞賛することはあっても貶したり下に見るようなことでは断じてないぞよ』



そんな司会席の二人の会話が聞こえてきたが、まずはその圧巻という言葉に苦言を呈したい。全く圧巻でも何でもなかったのだ、と。


正直言って精神的な余裕はあったが、それでも肉体的な余裕は皆無と言っても差し支えなかった。


本来一般人レベルの肉体を鍛えに鍛え、それでも足りぬ差をスキルやドーピングをして無理やり白髪褐色と同レベルまで引き上げたのだ。


......もしもの話だが、恐らくは僕が回復能力に長けた吸血鬼でなければ、筋肉が断裂しまくっていて立ち上がることすら出来なかっただろう。


まぁ、一言で言えば無茶。無謀ではなかったがそれでもかなりの無茶をして、それでやっと勝ったという感じだ。



「まぁ、そういうのを身をもって実感して、それでやっと次のステージに上がれるんだろうけどさ」



僕は左拳をぎゅっと握ってみる。


正直実感も何も無いし、制限が解除された時が三度ほどあったが、そのどれも素の力を慣らし終える前に勝敗が決していた。


そのため本当に強くなっているのか実感は無い。



───けれど不思議と、僕の心の奥底で、本能が僕へと告げてくれる。



「うん、強くなってる」



そう言ってニヤリと笑うと、出場選手たちが揃っている客席の方へと視線を向けた。



恐らくは今の白髪褐色より実力が上のクラウドにディーン、それに黒髪の時代はもちろん、オリビアとマックス。そしてニアーズの上位陣。


影神はもちろん、世界構築に幻術、常闇のローブも、更には影纏まで封じた上で戦うのはかなりキツイと実感できたし、正直この先のアイツらとの戦い、それらをすべて封じたまま勝てるとは正直思えない。



───けど、これ程までの同格相手たちとの連戦。滅多に味わえる経験じゃないことも確かだ。




「なら、出来るだけ勝った方が沢山戦えてお得、ってことだよな?」




僕はぎゅっと銀腕を握りしめると、その無機質な拳を奴らへと向けてこう言った。




「少しでも油断すれば、一瞬で誰も彼もを抜き去ってやる」




その言葉は歓声によって掻き消され、彼ら彼女らに届いたかどうかは甚だ疑問であったが、



───まぁ、奴らの顔に浮かんでいる表情を見れば、その答えは自ずと見えてくるというものだろう。


絶歩、チートですね。位置変換や月光眼の幻術と合わせて惑わせることが出来れば最強なんじゃないかと思います。

ちなみにですが、ギンは位置変換も『戦い』では多用する気がないようです。まぁ、長くは続かないと思いますが。

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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