第22話
今回は少し短めです。
起きたらお腹の上に白夜が居た。
「うへへー、主様ぁー」
「『......』」
あの後、何故か僕から離れようとしない白夜を、
「いいか? 僕は疲れているんだ。今日はどっかの馬鹿に殺されかけて、その後2体のボスと戦ったんだぞ? どっか馬鹿みたいに移動途中も楽じゃなかった僕は疲れてるんだ、頼む、寝かせてくれ」
と、結構真面目に頼み込んだら白夜は渋々頷いてくれた。
流石に所有物がどうとかこうとか言ったけど、女の子と寝るには僕の理性は脆すぎる。もう少しMNDが上がらないと難しそうだ。
そう考えながらも僕は眠りに落ちていったはずだった......
だが、そうして朝起きたらこうなっていた。
僕の枕元、と言うか僕の枕にしていた恭香も起きていたのか、白夜の寝言にちょっと引いている。
「なぁ、恭香。これってどういう状況だ?」
まさか朝チュン? 朝チュンなのか?
『いや、落ち着いてよマスター。2人とも衣服は乱れてないよね、だったらセーフだよセーフ』
「せ、セーフか。朝チュンしちまったかと焦ったぜ」
いやぁ、真面目に焦った。
朝起きたらお腹の上に銀髪美幼女だぜ?
もう心臓ばっくばくですよ。
『そう言えばマスター。吸血どうするんですか?』
「ん? 普通に白夜から貰おうかと」
『...それなら最初から貰えば良かったのでは?』
「いやぁ、色々抱え込んでそうだったからねぇ。せっかくなら罪悪感とかそういうの、全部解消してもらおうと思って」
白夜も昨日はあんなに気を張っていたのに、今ではとても気持ちよさそうに寝ている。罪悪感が完全に無くなったわけではないと思うが、それでもかなり減ったのではないかと思う。
ついつい頭を撫でていると、
「んむぅ? おぉ、主様ぁ、おはようなのじゃぁ」
「ん? あぁ、スマンな。起こしちゃったか?」
「んーっ、大丈夫なのじゃ!」
起きた白夜は僕の上から退けて体をのばしている。
って、うわ、僕の服涎と涙と鼻水だらけなんだけど...
『ぷぷっ......ふべぇっ!』
笑い声が聞こえた気がしたのでそこへ向けてコークスクリューを1発打ち込んでおいた。
「はぁ、朝から憂鬱だ...」
僕は上の服をすべて脱いで水魔法で作った半径1メートルの水球に放り込んだ。多分だけど、これで何とかなるだろう。
「ふみゃぁぁあ!! あ、主様っ! な、何で裸っ!?」
可愛らしい叫び声をあげて目を両手で覆う白夜。
「おい、手に隙間が開いてるぞ。何覗いてんだよこの変態」
「うほぉぉぉ! あ、朝から酷いのじゃっ...」
何言ってんだ興奮してるくせに。
少しして洗濯が終わったので、風魔法Lv.2で覚えた『乾燥』を使って服を乾かす......よし、そろそろいいかな?
袖に手を通してみるが特に変なところも見当たらず。
「よし、そろそろ飯にするか!」
『ご飯を食べたらマスターの吸血ですね』
「うむっ、妾が受けるのじゃっ!」
((あ、コイツ、さっき起きてたな......))
考えるまでもなく即答した白夜を見て確信する僕たちだった。
☆☆☆
朝食を取り終えた僕たちは、とりあえず吸血を済ませてしまうことにした。
じゃないと僕、今日中に死んじゃうみたいだし。
僕が壁に背をつけて座りこむ。
そして昨日のように白夜が僕の両太ももの上に跨る。
「白夜、本当にいいのか?」
「う、うむっ! 覚悟は出来ておるわっ!」
白夜は着ている軍服のボタンを上からいくつか外すと、首を右に傾けて、その白い首筋を見せてきた。
その首筋を見た瞬間、僕はまるで何かに取り憑かれたかのようにそこへと誘われてゆき......
気づけば僕は彼女の首筋に噛みついていた。
「くうっ、あっ、んっ! あぁっ!」
何故かいやらしい声を出す白夜。 やはり変態だったか。
僕は早く吸血を終わらせるために血を吸う速度を上げる。
八重歯から体内へと白夜の血が入ってきて、その度に僕の身体から力が湧き出るかのように吹き出してくる。
「うっ、んんっ! あ、あるじさまぁぁぁ! んんっ!」
それと同時に聞こえる白夜の嬌声。
って......これ大丈夫か? 絵面的に......。
何も変な事はしていないのに、いけないことをしているかのような気分になってしまう。
そんなモヤモヤを抱えて十数秒後、僕の初めての吸血は終わりを迎えた。
そして僕は、次回からは普通に傷口からの摂取にしよう、と決めたのだった。
☆☆☆
「はぁ、はぁ、死ぬかと思ったのじゃ......」
『いやぁ、何だか酷い絵面だったねぇ』
「くっ、そんなの分かってたよっ!」
吸血を終えた僕たちは少しの休憩をはさんで、次の大部屋と向かうべく可視化させたマップを覗き込んだ。
「えっと?残っているのはあと2つかな?」
『ここから見て北へ数キロ行ったところにある大部屋と』
「この、最北にある最大級の大部屋じゃの?」
僕たちが今居るのは邪竜が居た大部屋である。
そう言えば、こういう大部屋にはゴブリンたちは入ってこれないらしい。
僕たちのいる大部屋から見て北の方に、今の部屋と同じか、それより少し大きな大部屋が見て取れる。おそらくAAAクラスの魔物が相手だろう。
そして問題は最北の超大部屋。
「ここって、間違いなくラスボスで、Sランク以上だよな...」
「よかったのぅ、銃の整備ができるのじゃ」
『そうだねぇ、この部屋のサイズなら確実にSランクの魔石を持ってると思うよ?』
それもそうだろう。
なんてったって......
「まさかこの部屋の3倍の大きさとはなぁ...」
そう、最北の大部屋は、邪竜のいたこの大部屋よりふたまわりほど大きかったのだ。
さてさて、ラスボスは何なのやら?




