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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
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第192話

今回はギンの学園生活を覗いて見ましょう。


それから一週間。



毎朝ネイルと学園を走り続け、


ちょくちょく現れる挑戦者をぶっ飛ばし、


精神力と魔力を限界まで使い果たし、


午後からは延々とグレイスと戦い続け、


そして夜になれば泥のように眠る。



そんな地獄のような生活を耐え忍ぶこと一週間。

───今日、やっと僕の停学が終わり、真の学園生活が幕を開けるのだ。


って言うかさ、学園モノのくせに初日から停学くらって授業ついていけなくなる主人公とかどこにいるんだよ。カッコ悪すぎじゃないか? まぁ、それは僕が主人公ではない理由にもなるのだが。



そんなことを思いながら、僕は内壁付近を走り続ける。


一週間も続けた上に吸血鬼の回復速度も相まって、僕の体はかなり筋肉質となっており、腹筋も軽く割れて、十周するのも何とかできるようになっていた───それでも一時間半はかかるが、もしかして霊器が少し壊れてきたんじゃないかと思える成長速度である。


ちらりと視線を横へと向けると、隣には感心すべきか驚愕すべきか僕と同じように走っているネイルがおり、僕の視線に気づいたのか笑って見せた。


ネイルとは何だかんだで毎朝一緒に走っているのだが、ネイルはなんとこの一週間の間、僕の成長にピッチリとついてきたのだ。もうこれは驚愕と言っても過言ではないだろう。



と、そんなことを考えながらもやっと十周を走りきった僕達は、荒くなった息を座り込んで整える。



「はぁ、はぁ......、もしかして、ネイルも腹筋割れてきたんじゃないか?」


「なっ!? な、なな、なんてこと言うんですかっ!? ふ、腹筋なんて割れてませんよっ!」


「......めちゃ怪しいな」



そんなネイルムキムキ説を唱えた僕ではあったが、どうやらかなり時間も差し迫っているようだ。


僕らは少し焦ったような顔を見合わせると、二人揃って寮へとダッシュしたのだった。




───もちろん途中で体力が切れたのは言うまでもない。




☆☆☆




どうやら桃野とネイル曰く、魔法学園都市の授業にはノートや教科書は不要らしく、筆記用具だけ持っていけば後はプリントを配られるとのことだ。

ついでに言えば死神ちゃんの授業がめちゃくちゃ分かりやすいとの意見もあった───死を司る神様がなにやってんだよ。



と、そんなことを考えながらも僕はネイルと桃野と一緒に登校したのだが......、




(......な、波に乗り遅れた)



僕は今、自席で頬杖をついて窓の外を眺めていた。


ふとあたりを見渡せば僕の周りだけ人の気配が皆無で、僕の周囲一メートルより向こうはとても賑やかなのだ。



───要するに、僕はこちらでもボッチになってしまった、ということである。



たしかにネイルや桃野、ディーンにクラウドなんかとも話せることは話せるのだが......、残念ながら皆が皆グループを作ってしまっている。しかもそのグループの半数ほどが見も知らぬ生徒達なのだ。入り込める気がしない。



───まずはディーングループ。


と言うかこのグループにほぼ全員が集結していると言っても過言ではない。



構成メンバーは、



ディーン・カリバー


クラウド


見知らぬ白髪褐色の男子生徒


金髪ツインテールのツンデレっぽいお嬢様


灰髪お下げに眼鏡の女の子


そして、ネイルだ。



なるほど、ネイルがあんな目に遭ったのを見たディーンたちがネイルに話しかけ、結果としてああいう感じに収まったのだろう。みんなで和気あいあいとしていて実に楽しそうだ。


ちなみに残った桃野は男女関係無くそこら辺の人たちと楽しそうに話している。



───うわぉ、良く見たらこのクラスで一人なの僕だけだぜ? 異世界きてまでぼっちとか僕って一人になる才能があるのかもしれない。


しかもあれだ。僕がこうして一人で居ると、なんだか女子たちがこっちをチラチラと見てくるのだ。しかもチラチラと見ながら何事かを呟いて「「「キャーーッ」」」とか言っている。何これ虐めですか?



何だか悲しくなってきた僕は、寝ている風を装って瞼を閉じる。



少しあの女子たちが何を話しているか想像してみよう。




『ねぇ、ちょっとあの人ぼっちだよー』


『そりゃそうでしょ、執行者なんて恐怖の象徴だし、しかもあの貴族の人をどうしたかと知ってるでしょ? あんなの怖くて近づけないよー』


『だよねー。しかもネイルちゃんに告白まがいのことしてたじゃん! ネイルちゃんからしたら最悪だよねー、黒歴史だわー』


『あっ、見て! あの人今こっちのことチラッと見たよ!』


『『『『キャーーーッ!!!』』』』




───なにこれ泣きそうなんですけど。


自分で想像して言うのもなんだけど、結構リアルっぽい会話で案外間違ってはいないのではないかと思う。ちなみに地獄耳を使って確かめる勇気はない。もし本当だったら引きこもって衰弱死する自信あるし。



「......はぁ、死にたい」



僕は誰にも聞かれないようにそう小さく呟くと、異世界なら友達ができるかも、と期待していた心の中の自分の息の根を止めた。



───やっぱり僕の学園生活は、孤独こそがふさわしい。




☆☆☆




基本的にこの学園で習うのは、国語、数学、歴史、それに加えて魔法技術と戦闘技術の五つについてだ。


そのうちの国語、数学、歴史の三つを三クラスのそれぞれの先生が一つ担当し、その他の魔法技術と戦闘技術については担任が担当するとのことである。



そうして今日の一時限目は国語だった。



教鞭を取る先生は三組の担任であるドラム先生。

筋肉マッチョのthe体育系といった感じの先生であり、僕の予想は正しかったのか、やはり授業にも不慣れな感じがする。



「『問、下線部Aについて。この文章で作者が伝えたかったことは何か。自分の考えをかけ』......ってか? そんなの全員正解じゃねぇか馬鹿野郎ッッ!!」



そうしてプリントを床に叩きつけるドラム先生と、この一週間で慣れたのか、黙々とプリントを埋めていく生徒達───誰一人としてまともに授業を受けてるやつが存在しないとはどういう事だ。


───ちなみに僕は開始十数分ですべて問題を埋めたので、今はぼーっと頬杖をついている。ちなみに今はまだ開始二十分と少し。五十分授業で六時間もあるのだから、まだまだ先は長いのだ。



僕がそんな感じでぼーっとしていると、ドラム先生は初めて授業を受けに来た問題児が授業についていけていないと思ったのだろう。その暑苦しい体でドスンドスンしながらこちらへと寄ってきて、今朝から誰一人として話しかけようとしなかった異端児へと話しかけた。



「ギンと言ったかね? 大丈夫か? 授業ついてこれているか?」



うわぁ、この先生めっちゃいい人だなぁ。


悪意なんて全く感じられないし、月光眼が無くともその心配そうな顔を見れば一発で本心だと分かってしまうだろう。


ドラム先生が予想以上にいい先生だったのには驚いたが、僕はなるべく笑顔で「大丈夫ですよ」と言ったのだが、その瞬間に色々な席で「く、ぐはっ...」と言ったような声が聞こえてくる。主に女子たちの席から。



───何ですか、このクラスの女子たちって僕に恨みでもあるんですか? 喋った途端に気持悪くて吐血とか、もうめんどくさいからそのまま死んでくれませんかね?



僕がそんなことを考えている間にも、ドラム先生は僕の机の上に置いてあったプリントの束を手に取り、それを一枚一枚ペラペラと捲ってゆくのだが......、何故かその度に瞼が見開かれてゆく。

まぁ、結構真面目に解いたし、さらには今回のプリントは入試問題よりも随分と簡単だった。だから恐らくはほぼあっているだろう。


そんな僕の考えは外れることなく、



「ぜ、全問、正解だな......。満点だぞ」



ドラム先生は、まるで信じられないものを見るかのような目でその解答用紙をまじまじと見つめていた。



「あっ、そうですか」



僕は何に対して驚いているのかまでは分からなかったが、とりあえずそうとだけ返事を返して、再びぼーっとし始めるのだった。




───あぁ、早くお家に帰りたい。




☆☆☆




一時間目と二時間目が何故か同じ国語で、三時間目と四時間目が二組と合同での戦闘技術の授業らしい。



現在地は、合同で戦闘技術の授業を行う際に使う第一訓練場───訓練場と言うよりは闘技場のようだが、まぁ客席のついた訓練場とでも思ってくくればいい。


そして僕たち生徒一同は今、ジャージを身に纏ってその訓練場の内壁付近をグルグルと走り続けていた。

ちなみに今着ている水色のジャージは一時間目が始まる前に死神ちゃんから受け取ったものである。どうやら今年度の四年生は水色のジャージを着るものらしい。



「はぁ......めんどくさい」


「めんどくさいって......、ギンって今は弱体化してるんじゃないんですか? さっきからすごく余裕そうですけど」



その声に横を向けば、赤いポニーテールを揺らしながら走っているアイギスの姿があった。



「まぁ、僕も弱体化してから随分と鍛えたからな。今なんて腹筋バッキバキだぞ?」


「そ、そうなんですか?」


「......なに? 筋肉フェチなの?」


「ち、違いますっ!!」



そんなことを話していると、僕の周囲の男子生徒たちから「おおおおっ」と声が上がり始めた。

僕の視線の先にいるアイギスは背後を見て虚ろな目をし始めるし、僕の空間把握にはプルンプルン揺れる二つの双丘が映った。


というわけで、僕とアイギスは期せずして同時に走る速度をあげた。



───だがしかし、流石は黒髪の時代の代表格。久瀬と穂花ばかりが目立ってはいるがその実力は伊達ではない。




「おーっほっほっほ! 久しぶりですわね銀様! 私は貴方様と会えない間、ずーーーっと寂しい思いをしておりましたっ!」


「んで? だから何」


「あふぅんっ!? さ、さすがは銀様、そのような冷たいお言葉、銀様以外に繰り出せるはずがございませんわっ!」



嫌々ながら逆隣へと視線を向けると、そこにはジャージを破かんばかりに揺れている巨大なお胸様。そして少し視線を上へとずらすとそこには満面の笑みを浮かべた金髪ロールの顔があった。


───そう、言わずもながな鳳凰院真紀子である。



「待ってなのですぅ! 鳳凰院ちゃん!」



すると鳳凰院の後ろの方からやってきたのは我らがロリっ子高校生、オリビアである。


どうやら二組での僕の知り合いは、オリビア&アイギスペアと、この面倒くさい鳳凰院の三名なのだろう───すると残りのマックス&浦町ペアと、倉持さん、的場、小島の五人はドラム先生率いる三組になっているのだろう、多分。



そんなことを考えていると、やっと終わりの見えないランニングが終了するのだろう。訓練場の真ん中に立っている死神ちゃんがピピーッと笛を鳴らした───本当に先生やってるじゃん、死神ちゃん。


周囲を見渡せばかなり疲労している様子の生徒達が見受けられ、もしかして体力だけならコイツら越してるんじゃないかと考えてしまう。



「それでは好きに二人一組になれ! だが決して男女でペアを組むな! もし組んだらそいつらまとめて退学にしてやるから覚悟しておけ!」



きっとその理由は聞いてはならないのだろうが、死神ちゃんはそう宣言した。



───が、僕はここで異議を申し立てたい。実際にはしないけど。



好きに二人一組になれ? はぁ?


なんだよそれ、ボッチに死ねと言っているのだろうか? いや、間違いぼっちに対する虐めだよね。


毎回毎回思うけどそういう事言う先生って生徒のことなんにも考えてないよね。それならいっそ「お前らァ、今から二人一組になってもらうが一人でもハブってみろ、俺が独断と偏見で全てのペア決めてやるからなッ! ほら始めろォッ!!」とか怖い先生に言ってもらった方が余程いい。僕多分そんな先生いたらめちゃ好きになっちゃうと思います。



死神ちゃんも僕のその意見には賛成なのか軽く頷いてはいたが、何故か行動を起こすような気配はない。ふっ、どうせ死神ちゃんもその程度の器だったってことだな。


僕は死神ちゃんに見切りをつけてペアを探そうとあたりを見渡すが、いつの間にか周囲には二人で話し合っている男女たちの姿があるばかり。



───あれっ? もしかして僕、溢れちゃった?




僕は焦って周囲に視線を向けるが、やはり周囲に余っている男子は見当たらない。



頬をツーっと冷や汗がつたり、次第に一人でいる僕へと視線が集まるようにってきた。



───その周囲からの視線に晒された僕に残された手は、僕が考えられる範囲で言えば一つしか残っておらず......、






「あっ、体調悪いんで見学していいですか」





僕は堂々と、読心スキル持ちに対して嘘を吐いた。

どうでしたでしょうか。最高にボッチしてますねぇ、ギン君。

ちなみに、今の学園の主な話題は『執行者って、強くて度胸もあって、結構かっこよくない?』です。

ギンは学校に行くと途端に鈍感になります。鈍感というか、学校での期待を全て捨て去っていると言った方が正しいですが。


次回! 部活動開始なるか!?

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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