第20話
ステータス。
それは僕たちの各能力を表したもので、自身の成長と共にその数値も伸びてゆく。
人族ならば平均的に。
エルフや魔族ならば魔法特化に。
獣人族やドワーフならば物理特化に。
基本的にはそんな傾向に伸びてゆくらしい。
だが、僕の場合はどうだろうか。
吸血鬼は基本的に平均タイプで、その個体によって魔法よりか物理よりかに分かれると言うのが多いらしい。
だが、ここまでのレベルアップの時のステータスの伸び方は少し異なっていたのだ。
最初のゴブリンを倒した時。
白夜をテイムして、経験値を得た時。
中ボス戦のキラースコルピオンを倒した時。
それぞれがレベルアップしたときの伸びがバラバラだったのだ。
今までは、
『別に強くなれればいっかな?』
とかテキトーに考えていたけど、そろそろステータスの上がり方について、きちんと考えた方がいいんじゃないだろうか。
特にMPなんかはどうしちゃったんだろう?
そんなことを思い始めていたところにこの邪竜である。
今回のは今までと上がり幅がまるで異なる。
ほぼ全てのステータスが大幅に増加してるのだ。
自分でも考えても仕方ないし、恭香に聞いてみるか、と思いたって聞いてみたのだが......
『あぁ、その事? 多分それは加護のせいだと思うよ?』
「......え?」
恭香曰く、基本的にステータスはレベルが格上の相手に対しては上がり幅が大きく、格下に対しては上がり幅が減少するらしい。
それが、僕が今回の邪竜で大きくステータスが上がった理由のひとつらしい。
そしてもうひとつの理由が加護だと言うのだ。
『実はね、神様たちの加護にはちょっとした隠れ能力見たいのがあってね。神様によって内容は違うんだけど、多分マスターのステータス増加は創造神様と死神様の加護の影響だと思うよ?』
「え......? そんなのがあるのか?」
「うむぅ...知らなかったのじゃ」
隠れ能力かぁ...。何だかこの世界の神様たちって人間らしい所あるよね......。
「それで? どうやったらそれを調べられるんだ?」
『うーんと、鑑定のスキルでステータスの加護の内容を調べたら出てくるみたいだよ? 『ステータス』って唱えたら加護の内容分かるのに、さらにそれに鑑定かける人なんていないからなかなかバレないみたいだねー』
た、たしかにバレなさそうだな...。
ステータスにさらに鑑定かけるなんて思いつきもしなかった。
「それじゃ、試してみるかな? 『鑑定』!」
創造神の加護
創造神の加護を受けた証。
創造のスキルを手に出来る
特殊技能:レベルアップ時ステータス増加量大
(大器晩成型。壁突破によるステータス増加あり)
死神の加護
死神の加護を受けた証。
魔力超強化、回復力超強化。
テイムのスキルを会得。
(MPの成長率上昇極大。INT、MNDの大器晩成)
(最初のテイムのみ成功確定)
「ん? 大器晩成は分かるけど壁ってなんだ? それに白夜がテイム出来たのって加護のおかげだったのか...」
「ぬ? 確かに妾もそれは不思議じゃったのじゃ。なるほどのう、テイムされたのは加護の影響じゃったか....。どうりで吸血鬼如きに従わされてしまったわけじゃ」
「おや? 変態の雌豚如きが僕に不満でもあるのかい?」
「くふぅ! そ、それは誤解じゃっ! 言葉の綾じゃっ!」
「いやいや、今のは確実に僕に喧嘩売ってたよね?」
「いや! 違うのじゃ! 妾はただ単純に実力の問題を言っていた迄で...うぎぃゃぁぁぁ!!」
『なにしてるの2人とも...』
僕はピクピクと痙攣して倒れている白夜から恭香へと視線を向けて、さっきの疑問について聞いてみた。
『壁...かぁ...。予想だけどいい?』
「おう、恭香の予想なら、全然違うって事はないだろう?」
『はぁ、何で8歳児にそんな絶対的な信頼を......。まぁ、いいや。多分だけど、壁って言うのはレベルの壁だと思う。今回でレベル300を超えたでしょ? そうしたらいきなりステータスが増加した。これから考えられる事は、300以降の決まったレベルを超すと壁を突破したと見なされてステータスが上がる、ってことかな? しかも大器晩成型だからこれからの壁突破ボーナスは凄いことになりそうだね...』
いや、これは予想じゃなくてほとんど正解を言い当てちゃってるんじゃないの? 創造神もびっくりしてるよ、多分。
「うーん、それじゃあ、次は400か500か600か。これのうちどれだったとしても、これから加速度的にステータスが上がっていくってわけね? そのうち白夜に追いつくんじゃないか...?」
僕はあまりの成長率に思わず呟いてしまった。
「はっ!?」
そう、ステータスの高さだけが自慢の変態がパーティにいるのも忘れて、だ。
ま、まずいっ!
そう思って振り返ると、さっきまでピクピクしていた奴はもうそこにはいなかった。
「ど、どこへ消えたっ!?」
焦っている僕の肩がガシッと掴まれる。
ま、まさか...!?
僕は恐る恐る後ろを振り返ってみると...
「な、なぁ? どうしたんだ? 白夜?」
そこには俯いたままの白夜がいた。
☆☆☆
ま、まずいっ! やっちまったっ!
しかし、どれだけ後悔しても後の祭り。
僕の肩を掴む彼女の手は震えていたのだった。
「の、のう? 主殿? わ、妾はもしかして、いらない...のか...? ......ぐすっ」
「......」
困った様に微笑む僕。
だがその内心は......
(ちょっと白夜ちゃん!? なんだかキャラ崩壊してるんだけどぉぉッッ!?)
(ちょっとマスター!? これ一体どうするのさっ!? 少し前に白夜ちゃんと仲間の話したばかりでしょっ!? 私はしらないからねっ!)
と。まぁ。こんな感じだった。
くそっ、まさかこんな事になろうとはっ!
こちらからの返事がないことに不安を覚えたのか白夜は僕の上着の裾をぎゅっと握ってこちらを上目遣いでチラチラと見ていた。
くっ、可愛いじゃねぇかっ!!
「って、白夜? なんでそんなことになるんだ? 僕たちは仲間だろう?」
なるべく笑顔で、かつ優しい雰囲気を醸し出しながら聞いてみたのだが......
「わらわっ、妾はのうっ、ぐすっ。頭も悪いしっ...変態だし、主殿を困らせてばかりだしっ...ぐすっ。......主殿に強さまで負けたらっ、もう何にもっ......ううっ、ううぅぅ、やだよぅ、あるじぃ、妾のこと捨てないでぇ......ひっく」
((あっ、可愛い.....))
ガチ泣きしてる幼女に興奮している変態が2人ほど、そこには居たのだった。
☆☆☆
「うぅ、ひっく。あ、主殿? わ、妾は本当にここにいていいのかのぅ?」
「あ、あぁ、もちろんだよ。僕たちは仲間だろう? 白夜が望むならずっと一緒にいてあげるって」
『マスター? 傍から見たら幼女を抱きしめて告白しているロリコンにしか見えませ...ふべっ!』
まったく、空気の読めん奴だ。
あの後、白夜を宥めたはまでは良かったのだが、初めて出来た仲間に捨てられるかも、という恐怖は流石に耐えられなかったのだろう。白夜は僕に抱きついたまま泣きじゃくり、30分ほど経った今になってやっと泣き止んだようだが、今度は困ったことに僕に抱きついた姿勢のまま動こうしないのだ。
「えっと、白夜? ひとまず座らないか? 別に抱きついたままでもいいからさ?」
ぶっちゃけ足が限界だった。
キラースコルピオン→長距離を黒狼モードで全力疾走→少しの休憩を挟んで邪竜→30分直立不動。
流石にLv.300でも限界だったようだ。うん。
白夜は僕の言葉に首を縦に振ると、そのままコアラみたいな感じで僕に飛びついてきた。
僕は木ですか?
やはり僕の足は本当に限界だったのだろう。僕が座ろうと思った時には、もう僕は腰を下ろしてしまっていた。
ちなみに白夜は僕の両太ももの上に跨って座っていた、もちろん僕に抱きついたまま。
(って、なんだとっ!? これではまるで自室の高校生カップルみたいではないかっ!?)
(何考えてるんですか童貞が。巫山戯るのも大概にしてください。相手は幼女ですよ?)
恭香の冷たい声が響く。うん、ロリっ子ボイスだからこわくないねっ!
って言うか、何故僕が童貞だって分かったんだ? って、まさかっ!? き、教本にはそんな事まで書いてあるのかっ!?
恐るべし教本。
と、まぁ、冗談はこれくらいにして。
「いやぁ、それにしても疲れたぁ.....。流石にボス戦の連チャンはやり過ぎたかなぁ?」
『いやいや、もうひとつ連続だったら流石にやばいだろうけど、2連くらいなら全然余裕だと思うよ?』
「なに初期の釘○ンチみたいなこと言ってんだよ?」
『...前から思ってたけど、マスターってオタク?』
初期の釘○ンチ知ってただけでオタクとは失礼な。
そんなどうでもいい話をしていると、喉が乾いてきた。
アイテムボックスから水筒を取り出すと一気に飲み干す。
「ぷはぁ、やっぱり水は最高だねぇ...。ん? そう言えば何だか最近、水を飲む回数が増えてきているような...」
うん、やっぱりこの世界に来てからは水を大量に摂取するようになった気がするな? 最初の頃は気にもならなかったが、最近では本当にしょっちゅう飲んでいる気がする......
「って、まさか!?」
『あぁ、マスターも気づいた? 私もそれの原因って1つしか思いつかないんだよね......』
今まですっかり忘れていたが、僕は吸血鬼だ。
吸血鬼として生きていく上でのタブーは主に3つ。
ひとつ、十字架に触れること。
ひとつ、日光に当たること。
そして最後に......
『多分、それは吸血の禁断症状だよ』
次回!初吸血!? 相手はどなたかっ!?




