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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
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第185話

余談です。

「暇つぶしに小説でも書いてみようかな?」と授業中に思い至り、勇気を振り絞って投稿してみた第一話。そして気づけばもう既に二百話を突破していました。

物語は初期に考えていたものからは随分と外れてしまっていますが、それでもまだまだ先は長い!

これからも頑張っていきますので、是非ともよろしくお願いします!

一つ、事前に言っておかねばならないことがある。



───それは、僕は男色趣味ではないのだ、ということである。



男色趣味で思い出すのは、かのパシリアにて宿屋を経営していたマッチョオカマ───ルーシィなのだが、あの化物はもちろんとして僕は男ならばどんな可愛いやつだろうと恋愛対象にしない自信がある。


そう、僕の目の前で恥ずかしそうにしながら着替えているこの男の娘であろうと、断じて僕は恋愛感情を抱くことないのだ。



「ぎ、銀......、あの、ちょっとこっち見すぎだよ?」


「大丈夫だ、僕はお前の背後の窓から見える空を眺めているだけだからな」



そう、僕は今、桃野の着替えを見ている訳では無いのだ。


その桃野の背後に位置する大きな窓から外を眺め、今日も今日とて雲一つない晴天を見渡しているだけなのだ。



───あぁ、素晴らしい。なんと素晴らしきかな、この合法......、コホン、実に素晴らしい青空だ。




とまぁ、そんな冗談はさておき、結構真面目にいえば僕は桃野の着替えも晴天の青空も、さして見てはいないのだ。


僕はぼけーっとしながらとあることについて考えていた。



───流石に出来すぎじゃないだろうか? と。



何が出来すぎかと聞かれればもちろん部屋割りに関してで、流石に僕の運が常人の五十倍近いからと言って、角部屋付近をこうも簡単に占領できるなんて、僕には到底考えられないのだ。


そうなるとやはり浦町が言ったように、学園長であるグレイスが仕込んだ、という結論にしか至らないわけだが......、




「霊器の制作に並行して......そんなことやってんのか? あのロリババア」




───部屋の扉がコンコンとノックされたのは、僕がそう呟いた数秒後のことだった。




「......あれっ? ここって......二人部屋、だよね? だったらお客さんかな?」



桃野がネクタイを結びながら壁に取り付けられたモニターへと歩き出す。


僕も少し気になって、そのモニターからその訪問者の姿を確認すると......、なんと全くの予想外。第一王女ルネアの姿がそこにはあった。僕としては痺れを切らしたあいつらが来たのかと思っていたが......どうやら勘違いだったようだ。


僕はまだネクタイを付けるのに苦労している桃野をちょいちょいと呼ぶと、モニターを指さした後に通話ボタンを押した。



『あっ、やっと出た......、ち、ちょっとギンは居るかしら!? 私はあの私の従僕に用があるのよ!』



あまりにも馬鹿馬鹿しいその発言に思わず吹き出しかけた僕ではあったが、流石は桃野。結構真面目に捉えてくれた。



「え、えええっ!? ぎ、銀のご主人様!?」



びっくりしたような様子でこちらへと振り向いてくる桃野に対して、僕は呆れたように首を横に振る。


───するとどうだろう。モニター越しでしか声が聞こえないルネアは見ず知らずの女の子の声(偽)しか聞こえないわけだ。



『あ、あれっ!? こ、ここはギンの部屋に間違いないのよっ! なんで女の子の声が......、ま、まさかっ!?』



いい感じに勘違いしてくれたところで、僕は万を持してドアを開けた。


すると案の定、その扉の向こうには驚愕に目を見開いたルネアの姿があり、僕の後ろをとてとてとてついてきた桃野を見てさらに目を見開いている───と言うか今にも泣きそうだ。



そうして僕は、最近僕のことを従僕扱いし始めたルネアに対して、止めの一撃をくらわせた。




「すまん、今ちょっと取り込み中だったものでな」





───ルネアの瞳には、焦ってネクタイをつけている見た目だけ女の子の姿が映った。





☆☆☆




ここは魔法学園都市内の高等部、その校舎の中。



今現在、僕は真っ赤な顔をして頬を膨らまてせたルネアに手を引かれて歩いていた。


もちろんあの後笑いながら誤解を解いてやったのだが、僕の掌で踊らされていたのだと理解したルネアは、要件も言わずに僕の腕をがっしりと掴み───そして現在へと至る


ちなみに今のルネアの服装は、僕と同じような白い線の入った黒色のブレザーに、こちらは黒色のみのスカート。そして首元に赤いリボンをつけている。ここまで来るまでにも同じような服装の女子生徒を見かけたことからも、きっとこれが女子の服装なのだろうと思われる。



「その服、似合ってるな」


「う、ううう、うっさいのよっ! こころにもないこといってんじゃないのよっ!!」


「いや、美人っていう括りならルネアは僕が知ってる中でも結構トップクラスなんだけど.........、まぁいいや」


「ふ、ふんっ、そ、そんな事言われても信じないのよっ! ......け、けど、まぁ少しだけなら許してあげなくもないのよ」



僕はそうしてルネアの機嫌を取りながら、そのままルネアの後について行く。ちなみにルネアの美人さんレベルはかなりマジだ。もしかしたら僕が知ってる"人間"の中ではトップかもしれない。


そんなことを考えていると、すこし機嫌が良くなったルネアがある扉の前で立ち止まった。



「もしかして......、ここか?」


「ええ、ここなのよ」



僕はちらりと視線を上げると、そこには『学園長室』との文字が書いており、その文字を見ればこの扉の向こうにいるであろう幼女の顔が頭に浮かんだ。



───まさか......な?



僕はルネアが訪ねてくる直前に言った言葉(ロリババア)を思い出し、少し冷や汗をかくが......、恐らくそれとは別件だろう。多分霊器製造の現状とか、主席になったからそれについての話とか。きっとそんなことではないかと思う。


僕は軽い気持ちでコンコンと扉をノックすると、扉の向こうからはつい先日知り合った白髪幼女の「はよ入れぃ」という声がした。ほんとテキトーだなあのロリババア。



そうして僕は扉を開けた。



すると案の定、その先の学園長室には偉そうに椅子に座っているロリババア。




───そして、見知らぬ金髪と、あの時の酔いどれ紺髪がいた。あ、良く見たら酔いどれの方は男の癖に髪の毛編み込んでやがるぜ? 主人公っぽさ醸し出しすぎだろ、気持ち悪いなぁ......。って言うか受かってたんだな、お前。



「やっときおったか馬鹿者め。......ん? 何をそんなに眉を顰めておる?」


「いや、気持ち悪いなぁと思って」


「.........何が、とは聞かんでおこう」



───さすがはグレイス。僕が言いたいことを一発で見抜いてくるとは、僕も精進しなければな。



と、そこに来てやっともうひとりの金髪へと意識が向いた。


僕や酔いどれと違って三年生からそのまま上がってきたのであろう。使い込まれた感のある制服に、その顔に浮かぶのは楽しそうな笑み。その佇まいはもう完全にこの学園に馴染んでいるように思えた。


それに比べて僕なんてサンダルにローブだし、紺髪に至っては気持ち悪いくらいにカッコつけてる───後で常闇のローブをパーカーみたいに変えて制服の中に着ておこう。今考えたら予想以上に目立っていた気がする。決して一人だけ浮いているこのバカを見てみたいからではない。



と、そんなことを考えていると、その金髪がグレイスに向かって話し始めた。



「学園長、話に入る前に少し彼に自己紹介をしていいでしょうか? 俺は彼とは初対面なので」



そうして彼がにっこり笑った途端、まるで背景に花が咲いているかのような気分にさせられてしまう。この純血の吸血鬼である僕に幻覚とは......此奴、やりおるな。


そんなことを思った僕ではあったが、単純に爽やかすぎるだけなのだ。紺髪野郎も僕よりはイケメンなのだが、この金髪に関してはレベルが違う。よく見なくともマックスよりもさらに上だろうと感じられてしまうほどに、それ程までにイケメンだった。


さらにはミントフレーバーのガムを食べたあとの口の中と比肩しても、圧倒的に勝っているほどに爽やか君と来た。



───もう分かっちゃったね。この学年で一番モテているのはこの男子だろう。なにせ、イケメンな癖して僕が嫌悪感を覚えていない時点で化物だ。恐らくは毎日毎日下駄箱にはラブレターが投入されている事だろう。



そんなことを考えていると、どうやら許可をもらったらしい金髪が僕の前へと歩いてきて、ニッコリと笑って右手を出してきた。





「初めまして。俺の名前はディーン・カリバー、今回は君に負けちゃったけど入試の次席だ。よろしく頼むよ、時期国王候補さん」





その爽やかすぎて、その上とてつもなくいい人オーラを醸し出している次席───ディーンに対して、僕が言うべきことは一つだった。






「すまん。僕って右腕ないから、その手だと握手出来ないんだけど」




☆☆☆




どうやらディーンは僕のことをあまり知らなかったらしく、右腕が無いと聞いて一瞬ポカンとしていたが、僕が二の腕の半ばからぷらんぷらんしている制服の右腕部分を見せた途端......、



「す、すまないっ! 気づかなかった!」



そんな感じでガチ謝りしてきたため、何だかなぁという感じである。ちなみに月光眼は相手の悪意も見透かせるのだが、なんという事か、ディーンには全くと言っていいほど悪意がなかった───何この人、めちゃくちゃいい人じゃん。



まぁそんなこんなで、そういう過程を経て僕らはやっとグレイスへと向き直った───ちなみに酔いどれは足を組んでソファーに座っている。なにこいつ、めっちゃ偉そうなんですけど。



「それで? 一体何の用だ、グレイス」



僕がそう聞くと、グレイスはふむと顎に手をやって、何やら考え始める。

はて、と首を傾げる僕とディーンだったが、数秒考えた後にグレイスは僕らふたりを見上げて話し始めた。



「実はのぅ、つい先日六年生が卒業した為、今のニアーズ十席の内の三席が空席状態なのだ。だからこそワシは主席と次席、そしてそれらを抜かして一番霊器に対する適応力の高かった者の三名を、その空席の三席に宛がおうと思ったのだが......」



グレイスはそこで言葉を区切った。


その意味は僕はもちろん、ディーンもおそらくは分かっていただろうし、何やら嫌な雰囲気を感じたのか、背後の馬鹿が今になってソファーから立ち上がった。



僕が見下ろしているグレイスの額には、ありありと青筋が浮かんでおり、僕の頭の中には猛烈な超直感が働いていた。





───防がなきゃ、お前でも死ぬぞ、と。






「相手の力量は測れぬ、相手を常に見下しておる、実力と自信は釣り合わぬ。そして何より学園長であるワシの前でその態度。......ワシは貴様の親か何かか? 糞餓鬼が」




瞬間、グレイスを中心として洒落にならないほどの冷気を孕んだ風が吹き荒れ、僕は咄嗟に影の防護壁を床から立ち上げて、僕とディーンの体をその冷たい風から守る。事前に予期していたのならまだしも、今のような短時間で無壊の盾(オーバーシェル)は使えない。影の防壁は防御力は低いが、風から身を守るくらいは問題ないだろう。



「す、すまないギン君! 助かった!」


「おう、次からは不穏な空気があればいつでも逃げられるようにしとかなきゃな」



僕が赤い影の防壁のこちら側でディーンに礼を言われている間も、この一枚向こうでは一層冷気が立ち込めていた。

ピキパキと壁や床が凍りつき、逃がさないとばかりに扉まで凍りついていた。もう逃げ場はないだろう。



「貴様は一体何様だ? 大した力も持たんくせに物語の主人公気取りか? その自信と態度と名前だけは認めてやる───だが、それ以外は劣等生だのぅ? 糞餓鬼よ」



あまりの変貌ぶりに言葉を失うクラウド。


きっとあれだな。クラウドはここに来た時も何かやらかしたのだろう。それ()グレイスは見逃してやったというのに、先程も過ちを繰り返した。退学まで行かなくとも停学か......それとも───。





「退学と刑罰、どちらがいいか十秒以内に答えろ、糞餓鬼」




───もちろんクラウドが選んだのは、刑罰でした。





☆☆☆





結果、グレイスはかなり譲歩して、新クラスの掃除を一年間たったひとりで行うというものだった───どうかこの馬鹿と同じクラスになれますように。

───だがしかし、僕個人としては、グレイスなら眼球の一つくらい凍てつかせるんじゃないかと思っていたが......、案外呆気ない締まり方である。


そんなことを思っていると、何やらスッキリした顔をしたグレイスが改めて僕ら三人(・・)に話しかけてきた。



「まぁ、てなわけでお前ら三人にはニアーズの称号と、これらのオルムマナタイトの原石を使用した正真正銘の霊器を授ける」



そうしてグレイスが机の上に出したのは三種類の腕輪であった。


ディーンの前には白色の、僕の前には赤色の、そしてクラウドの前には緑色のメタリック製の腕輪がそれぞれ置かれている。



「ディーン・カリバーは知っておろうが、これらは我か学園の生徒の証明品───俗に言う生徒手帳のような物でのぅ。これさえあれば学食は一日に三度まで無料であるし、学外と学内の出入りも自由、相手の霊器の情報を見ることも、さらには霊器にも変換するこどできる優れもの、ってわけぞ。本来なら新学期早々クラスの担任に配ってもらう予定だったのであるが、特別お前らには渡しておこうかのぅ」



そう言い終わったグレイスは、「ほれほれ嵌めてみぃ」と言わんばかりの表情を浮かべてきたため、僕は恐る恐るその赤い腕輪を左腕へと嵌めた。

───正確には愚者の傀儡(マリオネット)で腕輪を浮かせ、それに左手を近つけた途端、腕輪がぐにゃりと歪んで勝手に僕の左手首へと装着された、というのが正しい。ほかの二人のも見ていたが同じような感じだ。



「それで? これが僕の頼んでた霊器ってことでいいのか?」



僕の質問にはてなマークを浮かべた左右の二人ではあったが、グレイスはにやりと笑って僕へとこう返した。



「正しく会心の出来ぞ? 流石に一般人レベルまでは不可能だったがのぅ......。少なくともワシが装備すればお前でも勝てるほどに弱体化するわい」



───うわぉ、なんてものを作ってしまったんだいグレイスさん。これを相手に装備させて回ったら無敵じゃないですか。


僕は、左手首に嵌ったその赤色に光るブレスレットへと視線を下ろしてそんなことを考えたが、これの主な使い方は僕の弱体化、及びその先に待っている自身の強化だ。



僕は強敵と戦う時のように、口の端をニヤリと釣り上げる。





「それじゃ、師匠(グレイス)。早速霊器の使い方を教えてくれ」






弱くなることこそが僕が強くなる最善手なのだとすれば、それはきっと皮肉なことだろうし、僕がこの世界に来てから最も辛く厳しいことでもあるだろう。


恐らくはこの一年間は雑魚雑魚のポンコツ吸血鬼と化すだろうし、もしかしたら今僕の隣にいるコイツらに敗北することもあるだろう。




けれど、僕がこの一年間でどれだけ強くなれるのだろうかと考えれば......、





───やはり僕は、その笑みを抑えられないのだった。


次回、旧ブラッドナイフ、現ブラッディウェポンに宿る魂がちょぴっとだけ出てきます。

さて、どのような魂が宿ってるんでしょうか?

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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