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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
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第182話

ギンVS学園長グレイス

果たして勝つのは......はもう分かりきってますので、こう言い直しましょう。

ギンはどれだけ粘れるのか!?

僕がロリババアと馬鹿にした途端、開始の合図もなくグレイスは僕へと襲い掛かってきた───やはりこういうタイプに向かってロリババアは最高の貶し文句だな。


さて、と。


今回は後も控えている事だし、そもそもこの化物相手に数分も戦っていられるわけがない。頑張りまくっても数分だろう。



───だったらもう、最初っから全力だ。



グレイスの拳が眼前まで迫る。



手加減してくれているのであろうグレイスの顔が、驚きに染まったように思えた。



果たしてそれは、僕が攻撃を防がないことに対する驚きか、それとも期待していたより弱いということに対する驚きか、




───はたまた、僕が神器所有者だったということに対する驚きか。




ドンッ、と音がして僕はその拳を右腕(・・)で受け止める。





「『ヌァザの神腕(アーガトラム)』」




それと同時に神王化を発動し、僕の身体が作り替えられる───やはりムルムル戦の時のような超強化ではないのだが、それでもステータスだけならあの時以上。ならばそれで十分だ。


ヌァザの神腕に神王化と来て、なら次はこれだ





「『エナジードレイン』」




瞬間、僕の身体の中へと膨大な量の力が流れ込んで来て、ヌァザの神腕によって消耗した僕の身体を、上限以上に回復させる。



エナジードレイン。



この能力は、触れているものならばそれが何であれ力を吸収できるというものだ。魔力、体力や筋力、防御力、知力、精神力、それらのありとあらゆる『力』を吸収して我がものとする───まぁ、簡単に言えば『ステータス強奪』というわけだ。正にチートである。


しかし、残念ながらこの能力には時間制限があり、時間が経てば経つほど相手はその能力が回復してゆき、僕はそれらの力を使用する度に奪った力を消費してゆく。

つまりは奪った直後にどれだけ相手を追い詰められるか、という話だ。



───だが、相手も鬼人族。エナジードレインについてはもちろん知っていたのだろう。



自らの身体から力が抜けた感覚があった途端に僕の腕を振り払い、後ろへと飛び退る。





「けど、その距離も僕の射程範囲だぞ?」




僕は右腕を頭上へと上げると、それと同時に空中に無数の銀炎と銀氷の槍が出来上がる。



───残念ながら僕の神器(クロエ)は全世界トップクラスなんでね。



僕は目を見開いてあまりにも膨大な数の炎と氷の槍に固まっているグレイスへと、容赦なく腕を振り下ろした。




「『退魔の銀槍(バイデント)』!」




瞬間、僕の頭上に浮かび上がっていた全ての槍が、ほんの少しの時間差を開けて次々と発射される。


さすがのグレイスも全てを受けきるのは骨が折れるだろうし、ましてや僕の目の前で『攻撃など当たらない』と豪語したのだ。この程度で攻撃が当たればそれこそ学園長の名折れだろう。



僕が半ば予想していた通り、グレイスはタタタタッ、と横へと駆け出し全ての槍を躱しながら次第に僕へと近づいてくる。



やはりこの技に対して最も有効な手段としては真っ直ぐ突っ切ってくるか、それとも円を描きながら少しずつ近づいてくるかのどちらかであろう。




───だが、僕の能力は何も神器だけじゃないんだよ。





「『ヘルプリズン』!」




瞬間、走り回っていたグレイスを中心とした床一面にかなり大きな漆黒が広がり、ズブズブとその上にあるものをその中へと飲み込んでゆく。


久しぶりに使った影魔法Lv.4の魔法だ───死神ちゃんを知っているグレイスならば、もちろんこの技の危険度も十分すぎるほど知っているだろ?



「こ、これは......カネクラのッ!?」



やはり自らの足首がどっぷりとその影に飲み込まれているのを見たグレイスは、思いっきり膝を曲げて、そのまま上空へと飛び上がる。


それはヘルプリズンを回避する定石でもあるだろう。





───けどさ、グレイス学園長。





僕は上空のグレイスへと右手を向けて、常闇の能力を使用する。





「『背水の陣(シャットダウン)』」





瞬間、上空のグレイスを囲むように、五面の黒い膜が完成し、それはさながら、逃げ道が一つだけ用意されたパンドラの箱。



グレイスもそれが何かまでは思い到れなくとも、そこ不気味な黒い箱から脱出しようと動き出した。





「けど、もう遅い」




瞬間、入口付近に設置した銀氷の槍と、僕の体が入れ替わる。




僕の右拳にはムルムル戦の時以上に凝縮された銀炎が纏っており、さらに言えば今のグレイスに逃げ道は無い。




僕の目の前には、黒い床を蹴り、今現在空中を移動中のグレイスの姿があった。




その瞳には明らかに「あ、やべ」という焦りが浮かんでおり、それが演技でないことくらい詐欺師の才能のある僕には、手に取るかのように分かってしまう。






「残念ながら、僕は頭脳だけは化け物クラスでね」




───油断し慢心したロリババアに、正義の鉄槌を。





僕はそうニヤリと笑って、容赦なくその拳をグレイスへとぶちまけた。






「『正義の鉄槌(シルバーブロー)』ッッ!!」






瞬間、学園の上空にとても大きな爆音が響き渡った。





☆☆☆





その爆発を見たオリビアとマックスは心底呆れたかのように呟いた。



「「ハッチャケすぎ」なのです」と。



今現在、オリビアとマックスの二人はもう片方の会場───何故かこちらは『訓練場』というよりは『闘技場』と言った感じで、室内の設備も驚く程に整っていた───で戦闘能力の試験を終えたところであった。ちなみに二人共教官を倒して百点満点である。学園側からすればとんだブラックホースだ。


まぁ、この会場に入った時から注目されていた二人なのだが、魔法試験の途中からそれらの意識は殆どが隣の訓練場へと向かってしまっていた。



始まりは、明らかに魔物だろうと思われる狼の遠吠えが響き渡ったこと。


続いて、冷たい風が吹き込んできて、馬鹿みたいな威圧感が垂れ流しになったこと。


そして、先ほどの戦闘音と、今の大爆発である。



もうオリビアとかマックスがどうのこうのじゃなく、その二人と一緒に受験している、正真正銘の化け物すら窮地に追い込む吸血鬼に注目が集まりすぎているのだ───と言っても気づいているのは二人だけなのだが。



───いや、その他にあと数人、その爆発の正体に気づいた者達が居た。




「ふむ......、本当にあれは銀なのか? 俺には化け物にしか見えないのだが」


「僕達の差って、確か数日だったはずだよな? 何であのクソ野郎があんなに強くで僕達がこんなに弱いんだ?」


「おーっほっほっほっ! 流石は私が見込んだ男! こうでなければ従えがいがありませんわっ!」



ほう、鳳凰院パーティの面々である。



上から順に、



角刈りの巨漢ヤンキー、小島拓哉。


鳳凰院のオトモアイルー、的場亮二。


そして我らがお胸様、鳳凰院真紀子である。



登場シーンはかなり昔の事なので既に記憶の彼方に埋蔵されている彼女達ではあったが、どうやら今回の章では、スポットは彼らにも当たるようだ。





───そして、今ステージから降りてきた彼にも。





「いやー、さっきの爆発で先生が固まってくれたおかげで何とか勝てたよー」




教諭に勝つなど通常はありえないことではあるのだが、それをさも当然のように言ってのける少年が一人。



少女に見間違えるような細い身体のラインに、そこらの女子よりも白い美肌に、サラッサラの茶色い髪。


白いローブに身を包み、胸にその長杖を抱き抱えて笑う彼は、果たしてギンの親友その人であった。




「ふふっ、マックス君もオリビアちゃんも、久しぶりっ! ぼ、僕のこと、覚えてるかな......?」





───彼の名は、桃野和彦。




魔王少女とかいうふざけた二つ名を持つ、男の娘(・・・)である。





☆☆☆





結果から言おう───僕の完敗だった。



一体何が起きたのかは定かではないが、明らかに一瞬本気を出したグレイスは何かをして、何かがどうにかなって、そしていつの間にか僕は地面に倒れており、グレイスは満面の笑みで立っていた。大人気ないにも程がある。



というわけで僕は、神器の連続使用で消耗した精神力を回復させるため、一人、壁際に座っていた。



「まさか何も見えないとはなぁ......」



そう呟くと「当たり前ですよ」と言わんばかりに、手の形を模した常闇のローブが僕の肩へとぽんと置かれた。

確かに当たり前の結果ではあるのだろう。そもそも最高神と同クラスのあの化物を、本気を出させるほどに追い込んだ僕に、少しくらいは賞賛があってもいいのではないかと思われる。


───まぁ、さして仲のいい人が居るわけでもなし、賞賛が欲しくて本気を出したわけでもなし。だから別に冗談で行ったことなのだけれど。



そんなこんなで、常闇のローブが視界の隅で動いているのを傍目にぼーっとしていると、どうやらこちらの会場の戦闘能力の試験は終わったようだ。先生がボロボロになったステージを見てため息をついている姿が遠目に見えた。



「ちょっとやりすぎたかもなぁ......」


「そうでもないぞよ? 一番大きな攻撃を空中で発動して被害を抑えただけでも十分すぎるであろうに」



その声を聞いてため息をついた僕は、視線をスススッと隣へとスライドさせる。


そこにはさも当然のように学園長グレイスが居り、座っている僕をニヤニヤと笑いながら見下ろしていた。



「何でここに?」


「今回の試合に関しての評論と、次の試験に関しての一応の注意......でも無いな、ネタばらしを少しな」



───ネタばらしって、それってもっともやってはいけない事なんじゃないだろうか?



そんな僕の心情などつゆ知らず、グレイスはひとりでに語り出した。




「まず今回の試合について......なのだが、これは見事という他に言葉が思い浮かばんな。改善点や不審な点はいくつか見つかったが、それでもワシをあそこまで追い込み、ましてやほんの少しでも攻撃を掠らせた。ほれ、ワシの腕を見てみい」



そう言ってグレイスは甚平の裾を捲って、その肘のあたりがほんの少し赤くなっているのを見せてくる。あれだけやってその程度って......どんな化け物なんですかアンタは。



「まぁ、他の点については、編入後に色々と指摘しては直して、指摘しては直してを繰り返すしかなかろうて。特に魔力と神器の扱いはものすごく下手っぴだったからの? まだまだ伸び代は多いぞよ?」



───伸びしろが多い。



その言葉は裏を返せば『力を扱えきれていない』という事にほかならない。つまりは僕の努力不足だ。


はぁ......、まだまだ頑張らなきゃいけないことばっかりだな。



僕がそんなことを考えて空を見上げたのと、グレイスがはたと思い出したというふうに僕へと次の試験のネタばらしをしたのは、ちょうど同時刻のことだった。







「それとのぅ、お前、次の試験は間違いなく百点満点ぞよ?」



「.........はっ?」




それは、僕が一番聞きたくなかったネタバレだった。

まぁ、色々と言いたいことはありますが、

エナジードレイン、やっと使えました。

茶髪の正体は桃野君でした。

グレイスはやっぱり強すぎました。

と、簡潔にまとめるとそんな感じです。

......余談ですが『悪鬼羅刹』の能力、未だにしっかりと決まってないんですよね。この章の終わりまでにはお披露目したいところです。


次回! ゴスロリ金髪幼女神再び! まさかまさかの、ギンの更なるチート化が!?

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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