表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第五章 学園編
214/671

第180話

今回は入試です!

数日後。とうとう今日は試験当日である。



あれからというもの、ギルバートたちが泊まる予定の宿のオーナーさんにお願いして馬車を付近に止めさせてもらい、僕らは試験に向けて最後の勉強をした。


と言っても、試験を受けるのは頭脳だけは神童な僕、王宮にて高等教育を受けた王族であるオリビア、そして一応は天才であられるマックスなので、勉強と言っても少し確認する程度であとは当日に向けて体調管理をしたくらいなのだ。まぁ、主にオリビアに料理をさせないようにしたくらいだな。



───というわけで今現在、僕らは学園の前まで来ていた。



学園の門の前はもう既にかなりの行列になっており、その列に並んでいるのは大陸中から集まった金の卵たち。


中には、今回は生徒のみで来るように伝えられているはずなのに、何故か従者を侍らせた貴族のボンボンの姿も、逆に気合を入れて少し奮発したのであろう服を着ている少年少女の姿も伺える。

......前者と後者だと、なぜ後者の方が優秀そうに思えるんだろうかね? 意識とか覚悟の差かな?



そんなことを考えながらも、僕達はその列の最後尾につく。



流石に『執行者』『天拳王』『灰神王』と執行機関(ネメシス)が誇る特徴的な三名が揃っているため、それはそれは目立ちまくっている上に、「なんで今更」みたいな声も少し聞こえてくる。


いやはや、全くの同感ですな。異世界に来た大学生がなんで今更高校なんて通わなきゃならんのだ。


それに、今回連れてきた五人って色々と絡まれそうな奴が多いから気が進まないんだよな......。特にオリビアとネイル。王族は目立つし、混血は場所によっては迫害の対象なのだ。ましてやここには大陸中から人が集まってくる。そんな場所で混血が迫害されないわけがない───まぁ、だからこそ僕の従者として登録したのだが......、いちゃもんつけてくる相手が貴族とかだったらなお面倒だな。



そんなことを考えていると、どうやら入場が始まったようだ。ソワソワした空気がここまで伝わって来て、少しずつ列も進み始めたのだが、その空気に影響されたのか、ふと、少し手に汗をかいていることに気がついた。




───しかし、そんな緊張など、王族を護衛している時の緊張に比べればミジンコみたいなものだ。




そう考えてふぅと息を吐くと、強ばっていた僕の身体が少し解れてきた。

流石に試験を無緊張で乗り切るのは無理そうだが......、それでも先程よりは幾分マシだろう。




「そんじゃ二人共、主席は目立つから取らなくていいけど、それなりの順位は取れよ?」


「取らなくていいのです? お父様から取ってこいと言われているのですよ?」


「おいオリビア、ギンがいる時点で主席なんて取れるわけねぇだろうが」


「あっ! そ、そうだったのです! マックスは頭いいのですぅ!」



───なんですかそのプレッシャー。主席なんて取れて当たり前だろ、ってことか?



僕は二人の会話を聞いて、先程より深いため息を吐いた。





けれど、何故か僕の緊張は、少し解れてきたように思えた。





☆☆☆





あの後入場した僕達は、それぞれの試験会場へと別れて別々に試験を受けることとなった。


試験会場は校舎の教室で、僕が教室入りした時はもう既にほとんどの席は埋まっており、数人を除いて机に齧り付く勢いで勉強していた。

ちなみにその"数人"と言うのは、如何にも貴族っぽい坊ちゃんとか、紺色の髪をした主人公っぽい奴だったりとか、そんなのばっかりだった。

───まぁ、僕の顔を見た瞬間「......あれっ?」って顔をしていた為、もう目立たないということは不可能なのだろうと思う。僕の特徴知れ渡りすぎだろ。



そうして僕はさも当然のように自分の席に着き、十数分ほど頭の中で暗記科目の復唱をしていると、やっと試験時間になったのか担当の先生らしき人物が現れた。




そうしてその先生らしき人物はチラッと教室中を見渡して、全員がこちらを向いていることを確認した後、「カンニングはするな」だとか「魔導具やスマートフォンの電源は切れ」だとか、そういう注意事項を述べ、皆が準備できたところで試験用紙を配り始めた。





一科目目は国語だった。



印象としては、試験用紙を配る際に後ろを振り向いた前の席の生徒がかなり驚いていたことと、日本ほどではないにしても国語は難しいのだと思い知らされた。因みにこの世界の文字は猛勉強したお陰でバッチリである。それにしても、いつも本読んでるのに国語が苦手とかどういう事だよ。





そして二教科目、数学。



印象としては超簡単だったということだけだな。

他に語ることは.........、無いな。皆無と言ってもいい。





そして三教科目、歴史。



これは完全に暗記科目だな。

この歴史についてはこの大陸を───いずれは外の大陸も発見してみたいと思っている僕にとっては興味深く、勉強が捗ったのを覚えている。お陰で問題文を見れば考えるまでもなく答えが埋まっちゃったね。手が頭に追いつかないとはまさにこの事。




───そして今現在、僕は四教科目である『魔法』を受けるべく、校舎に隣接されていた二つの運動場のうち一つへと来ているのだった。


魔法とか言うから筆記試験なのかと思っていた時期もあったが、恭香曰く魔法の試験は実技試験なのだとか。五教科目の戦闘能力の試験、六教科目の適性試験とやらもこの場で行うらしい。やっと道半ばという感じだろうか。



と、そんなことを考えながらふぁぁっと欠伸をしていると、どこかで見た気もしないでもない獣人族の男の子が話しかけてきたのだが......、





「な、なぁ! アンタってギンって奴だよな!? 最近噂の少数精鋭クラン『執行機関(ネメシス)』ってのを立ち上げたっていう執行者なんだろ?」





───瞬間、先程まで少し話し声が聞こえていた運動場から音が消えた。




皆が皆、思ったことであろう「何言ってんだ馬鹿」と。



恐らくは先ほどの話し声も内数割が僕やオリビア、マックスについての事だったのであろう。生憎と二人共別の会場だったのか、僕の耳に届いたのは僕の噂だけだったが。


だがそれを僕を介さずお話だけにとどめておいたのは、なんだかんだで皆、僕を前にして緊張している───もしくは恐怖している者もいるかもしれない。

何せ僕は、伝説上の生物だった悪魔と互角にやり合う正真正銘の化物なのだ。確かに噂では美化されたりしているが、それでも『もしかしたら』という恐怖は拭いきれまい。


だからこそ誰も僕へは話しかけてこなかったし、僕もそれはそれで楽ちんで最高だな、と内心喜んでいたのだが......、



「お、俺っ! 執行者ファンクラブの会員なんだっ! 俺が入ったのは比較的最近で、No.10209なんだけど......」



───おいちょっと待て、一万? 一万ってなんだ。そこまで僕のファンクラブは拡大しているのか?


そんな驚愕に思わず顔を歪めかけたが、僕は腹筋に力を入れて、何とか僕は凛々しい表情を崩さずに済ませた。顔に力を入れたら強ばっちゃうからな。


ふと気がつけばほぼ全員の視線がこちらへと集まっており、流石にいつまでも無言と言うのも居心地が悪くなってきたので、僕はとりあえず返事をすることにした。



「あぁ、初めまして、ギン=クラッシュベルだ。お前は......確か僕の前の席に座っていた奴だよな?」



やっと思い出した、コイツは確か僕の前の席に座っていた奴だった気がする。そう考えると確かにこの熊の耳と赤い髪には見覚えがあった。


僕はそうして手を差し伸べるのだったが......、




『はい静粛にー! 主にそこ! 黒髪赤目吸血鬼と赤髪の獣人、喋ってんのお前ら2人だけだからなー』



───なんといいタイミングでしょう。


なんと、運動場の中央にあったステージに上がった先生がタイミングよく、拡張器で声をかけてきたのです。

......ネタばらしするとタイミングは狙わせてもらいました。流石に入学前から波風を立てたくはないからな。



僕は『今気づきましたすいません』というオーラを醸し出しながら頭を下げると、先生の方へと向かって向き直った。周囲の皆もはっと気づいて先生の方へと向き直り、赤髪少年もとても残念そうにはしていたが先生の方へと向き直った。ここで優先順位を間違えるほど熱くなっていたわけではなさそうだ。



僕達の視線を一斉に浴びせられた先生は一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに顔を引き締めて、拡張器の魔導具によって話始めた。





『それでは、これより魔法の実技試験を開始する』





☆☆☆





「『火よ! 槍となりて敵を撃て! ファイアランス!』」



詠唱が滞りなく成功し、その少女の頭上に炎で出来た槍が浮かび上がる。

少女は頭上へとあげていた手をまっすぐ振り下ろし、それと同時に的である藁人形へとその槍が飛んでゆき、見事命中した。


彼我の距離はおよそ三十メートル。


百点満点で考えたとして、Lv.2のファイアランス、魔法構築速度、さらには的に命中したことも鑑みると......



趣味が悪いことに、ババンッ、と音が鳴ってこの会場に付けられているスクリーンに『72』と点数が映し出される。



この学校では国語、数学、歴史、魔法、戦闘能力、そして適性検査の六項目、全600点満点のうち、400点以上取ることが出来れば合格者数関係なしに入学及び編入ができるのだとか。まぁ、加点制度らしく稀に100点overもあるらしいが、それらは入試の点数としては100点とされるらしい。


───と言っても高等部は三年生までは基本的に座学らしく、魔法に関しては60点も行かない者達がほとんどらしい。つまりは中等部までで習ってきた魔法と、高等部で習った新たな知識を使ってどれだけ魔法が扱えるか、ということなのだ。それで72点はかなりの点数だろう。


僕の予想は正しかったらしく、会場中から、おおおっ、という声が上がり、傲慢そうな貴族のボンボンでさえ拍手しているのだからかなりの物なのだろう。




───あぁ、嫌だなぁ、目立ちたくないなぁ......。



僕の前の前の席に座っていた少女の点数を見ながらそんなことを思っていると、次に呼ばれるのはもちろん僕の前の席に座っていた赤髪少年である。



『続いて受験番号109、ロブ。ステージに上がってくれ』


「は、はいっ!」



赤髪少年───ロブはガッチガチに緊張しているのか、まるで錆び付いたロボットのように歩き出した。


......はぁ、こりゃまずいかもな。


タダでさえ魔法の苦手とする人の多い獣人族───グランズ帝国にて僕が戦った熊の獣人族(ぬいぐるみ)は思いっきり魔法を使っていたが、あれは姿を見ただけで変異種とわかるだろう。あれは例外だ。ついでに言えば鳥の獣人族も魔法を使えていた気もするが......、まぁ頑張ったのだろう。



僕は一瞬声をかけようかと思ったが、ステージから降りてきた先ほどの少女がツンツンとロブの肩をつつき、耳元でなにか囁いた。


一体何を言ったのかは分からないが、なんとそれでロブの身体中を支配していた緊張が目に見えて霧散した。




───あの娘......一体何を言ったんだ?




そんな疑問を持ちながらロブを見送る少女を見ていると......、何故だろうか、ものすごく僕の知り合いに似ている気がした。



先程はあまり顔は見ていなかったため気づかなかったが、そう気づいてしまうともう本人以外の何者でもない。




「何故ここに......?」




僕が思わず口にしたその言葉を明らかに聞き取ったのだろうその少女───いや、正確には同い年か。とにかく彼女はニヤリと笑みを貼り付けたその顔をこちらへと向け、まっすぐ迷うことなく僕の目の前へと歩いてきた。




「いやぁー、髪染めてるとバレなくていいよねー」




───そう、彼女は黒髪の時代の一員。



鳳凰院の親友、忍者の人、藍月と名前が被ってる。



そんなことを言えばなんとなく思い出せるかもしれないが、問題はそこではない。





「やっほー、久しぶり銀くん! 倉持愛華でーす!」




───問題は、鳳凰院と常に一緒にいるこの人と同じ街に、学校に、鳳凰院が居ないわけが無い、ということである。





☆☆☆




「いやぁ、分かるよ銀くん、君は今『コイツがいるなら鳳凰院も来てるのか』から始まって『あいつ頭良かったっけ』に繋がって『......受かるに決まってるよなぁ』と絶望してるところだね? うん、何一つ間違ってないよ!」


「絶望まではしてないさ......。ただ、今回僕が護衛してきた中に鳳凰院と相性最悪のお姫様がいるんだよ」



───いや、名前までは言明しないけどね?



ふと周囲を見渡せば、いきなり僕に話しかけた上に仲良さげにお話している倉持さんへと好奇の視線が浴びせられている。

もちろんそれは倉持さん本人も分かっているみたいで、あまりここに長居するつもりはなさそうだ。



「まぁよく分かんないけど、一つだけ言っておくね?」



そう言うと倉持さんは思いっきり背伸びをして、僕の耳に何かを囁こうとしているが低身長のせいで届かない。仕方ないから僕が少ししゃがんて合わせてやると、「ありがとっ」と言って僕の耳へとこう囁いた。




「私たちのパーティは全員この学園に入学してるんだけどさ......、その中にいる君の親友(・・)が『会いたいなぁ』って言ってたよ?」




───親友?




この人の顔を見た途端にはたと気づきかけたその真実。今のその言葉でもう喉元まで出かかっているのだが......、なんだろう、あとちょっとのところで思いつかない───これが世界の強制力なのだろうか。


僕は頭の中で燻り続けるその正体を顎に手をやって考えていたが───残念ながらそんな時間はなさそうだ。





『それでは次......ほう? 受験番号110番、ギン=クラッシュベルだ。ステージに上がってくれ』



次の名簿を見た途端にピクリと反応した先生は、何故か少し面白そうに笑みを浮かべながら僕の名を読み上げた。ふとステージの方を見ればどんな魔法を使ったかは知らないが、満足気なロブが降りてくるところであった。



「まぁいいや、そんじゃ倉持さん、今度は学校で」


「にししっ、自信満々だねー」



僕は倉持さんに一応挨拶すると、ステージへと歩き出す。


───何故かステージまでの道が真っ二つに開けたが......まぁ気にしないでおこう。こんなことで傷つく僕ではないのだ。


僕はしばらくしてステージへとたどり着き、先程から皆が立っていた付近に立つと、それとほぼ並行して僕の隣に先ほどの先生が立った。



「ギン=クラッシュベル、学園長から話は聞いている。あの人曰く『お前の実力を知りたい、全力とはいかんまでも実力が測れる程度には抑えるな』だそうだ。学園長はそう言ってるが少しくらい手加減してくれよ?」



抑えるなやら、手加減するなやら、少しどうすればいいのかは分からなくなりつつあった僕ではあったが、まぁ今の状態で少し魔力を抑え目に、それでいて魔導のLv.3でも使用すれば十分に実力も測れるだろう───どこから盗み見ているのかは知らないが。


僕が頷くと同時に先生はその場を離れ、まるで何かから身を守るかのようにステージにおいてあった盾を装備した。ちょっとそれ酷くないですか?



「そ、それでは始めて大丈夫だぞ!」



先ほどとは打って変わった様子の先生は盾を構えながらそう言うと、それを見た受験生たちも少しステージから遠ざかった。



───酷いけど、まぁ懸命な判断だろうな。




瞬間、僕は魔力を解放させ、左手を前方へと向け、最近開発した僕の新魔法を唱えた。






「『白狼召喚』」





それとほぼ同時に、ピキピキッ、と音を立てて僕の前方のステージが凍りつき、その氷の上に一体の白狼が現れる。

体長は小さめ(・・・)で十メートル、身体はもちろん氷で出来ており、まるで僕の銀滅氷魔のように身体中から冷気を発している。



───これが先生の言う手加減なのかは分からないが、とにかくさっさと済ませてしまおう。




「行け白狼、ブレスであれを凍らせろ」




僕の命令に、ウォォォォォンッ! と遠吠えをあげたは白狼は、その口を大きく開け、凍てつく氷の破壊光線を放つ。


シュンッ───とその氷の息吹は小さな音を立てて標的に着弾し、標的の藁人形は瞬く間に氷付けにされた。




「「「「「「.........へっ?」」」」」」



皆のそんな声が聞こえた気もしたが、僕は白狼を消して先生へと振り返ると、笑みを浮かべてこう言った。





「被害は最小限です。これって一応手加減ですよね?」





───帰ってきたのは、顔を引き攣らせた先生の首肯と、スクリーンに表示された『error』の文字だった。



※例の茶髪は倉持さんではありません。

確か倉持さんの初登場回は119話だったと思うので、覚えていないよーって方はそこら辺をチラリと見てくだされば。

次回! 引き続き入試です! 次回もギンの新たな力の見せ場はあると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ