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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第四章 王国編
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閑話 聖遺物と執行機関

長かったようで本当に短かった王国編もこの話で最後です!

聖遺物。



それは簡単に言えば一言で済む。


───教祖や聖人の遺骸、又は遺品。


一言どころか二十字以内である。実に明快でわかりやすいのではないかと思う。



まず話しておきたいのが、この世界においてそれらの聖遺物はアンデットに対して絶大な威力を誇る、という事である。

まぁ、正確にはアンデットのみならず、夜っぽかったり悪っぽかったりする奴らには大概効くのだ。もちろん吸血鬼も聖遺物の前ではかなりの劣勢を強いられてしまうのではないかと思う。



何故こんな話から始めたかと聞かれれば、僕はその聖遺物を持つ相手と戦い、勝利し、勝ち取った過去があるからである。そう、じつは『思う』だなんて言葉を使ってはいるが、実際に戦ったのだ。そして何とか勝利を収めた。



その相手とは、未だ記憶に新しいのではないかと思う、悪魔ムルムル───つまりはあの脳筋悪魔である。



そう、あの悪魔が持っていたあの槍こそが聖遺物だったのだ。



実際には聖遺物は悪魔にももちろん効く。そのためあの脳筋がそれを知った上で持っていたのか、強いと言うだけで持っていたのかはわからないし、さらに言えば途中から暴走して剣を使ってきていたため、あまりその槍自体は印象強くなかった。



───のだが、ムルムルを倒し、たまたま目の前に転がっていたその槍を手にして鑑定した僕は、その槍の正体を知って思わず鳥肌が立ったのを覚えている。




その槍は現代日本に住む大体の学生なら一度は聞いたことがあるのではないか、と思えるほどに有名で、強力でだったのだ。



もうここまで話しただけでも察している人がいるかと思われるが、一応言っておこう。







───その名は、聖槍ロンギヌス。





かの有名な教祖の血を浴びた、聖遺物の中の聖遺物である。




☆☆☆




「はぁ、はぁ......、な、何とか逃げ切ったか」



バタンッ、と思いっきりドアを閉め、僕らは一息つく。


僕らはあの後も追って来たテケテケを振り切り、何とかアイギスの部屋まで辿り着いた。

僕はまだしもアイテムボックスを持っていないアイギスやその他一般人にとっては、防具や武器は部屋に置いておくのが常識である。そのため僕達は聖槍ロンギヌスを取るためにこの部屋へとやってきたのだが......、



「「うわぁぁぁぁっっ!?」」


『「「うおわぁぁぁっ!?」」』



目の先には、まるで僕らを待ち構えていたかのように黒い影が二つ。



───否、僕と同じような考えでここへやって来たのであろう被害者が二人。





「ふ、ふぅぅぅ......、ギン様たちだったのですぅ」


「び、びび、ビックリさせないでくださいよ二人共っ! し、心臓が飛び出るかと思ったんですからねっ!」



そこには、あまりの恐怖で目を見開いて尻餅をついているオリビアと、ネイルが居たのだった。


もちろんこちら側としても、室内にもお化けが入り込んでいたのかと思って思いっきりビックリしている。

アイギスはぺたんと座り込んでしまっているし、クロエも何だかんだでビックリしていた。なんだ、可愛いところあるじゃないですかクロエちゃん。



『う、うるせぇっ! わ、私はもう寝るからなっ!!』



クロエがそう叫んだ途端に、何やらタトゥーから力が抜けていく感覚があった───寝やがったなあいつ。



と、そこへ来て初めて室内へと僕は目を向けた。



女の子女の子した感じのピンク色の天蓋付きベットに、たくさんのぬいぐるみ。

ちょっとした本棚に勉強机もあり、やはり僕の部屋と同じように大きな窓を設置している。


と、そこで僕は何か壁に貼ってあるのを見つけた。



「ん? あれは.........写真か?」



恐らくは、僕と恭香、浦町の三人で開発して皆に配ったスマホの、その内の機能の一つとして取り入れた『カメラ』を利用して写真を撮り、ついでとばかりに発明した印刷機によってプリントアウトしたものだろう。

しかも部屋に飾るとしたら......何かいい景色でも取れたのだろうか?


何故かピクリと反応したアイギスを傍目に、僕はそう思って暗い部屋の中、その小さな壁に貼り付けられた写真へと歩を進める。今の状態じゃ角度的にも明度的にも少しキツいものがあるしな。



そう思っての行動だったのだが......、



「うわぁぁぁぁっっ!! み、見ないでくださいっっ!!」



僕が動き出したのとほぼ同時に、アイギスが先程アレから逃げた時よりも尚さらに早い速度で駆け出し、一瞬でその写真を壁から引っぺがした。

───おい、なんだ今の動きは。油断していたとはいえ僕でも目で追うのが精一杯だったぞ?


僕の驚きなど知らんとばかりに、僕の視線の先ではアイギスが引っぺがした写真を大事そうに胸に抱えている。しかもちょっと涙目だ。



アイギスとネイルに至ってはニコニコしながら、



「恋する乙女は最強なのですぅ」


「青春してますねぇ......」



とか言ってる。

コイツらあの写真が何だったのか知ってるのか......?



僕はそう疑問に思って、その写真について聞こうと口を開いた




───その時だった。





テケ、テテケケケッ、テケテケテケテケテケテケッ!


テケケケッ、テケッ、テケテケテケテケテケケケッ!





そんな、先ほどの女性の声と、僕らが最初に聞いた笑い声の持ち主と思われる子供の壊れたような声が、扉の向こうから聞こえてきた。



「ま、まさかっ!?」



僕はとっさにそこを飛び退き、彼女達が控える傍で着地する。



次の瞬間、部屋のドアが壊れるのではないかと思えるほどの衝撃音が響いた。

ドンッ、ドドンッ、ドンドンッ、ドンッ! と何か二つのものが同時にぶつかっているような音。そしてその合間にぴちゃぴちゃと生々しい音が木霊する。クソッ、防音って一方通行かよ!


それに応じて絶対破壊不能のはずのこの部屋の扉がみしりみしりと嫌な音を奏で出す。



───こ、これ、やばくないか......?



僕と同じことを思ったのであろう、ほかの三人がコソコソと僕の背後へと隠れ始める。ねぇちょっと、そういう時だけ頼るのやめてくれません?


そう言おうとして振り向くと、アイギスがその手に一つの槍を手にしていることに気がついた。



金色の模様が描かれた漆黒色の柄に、その柄の先からは金色の穂先が伸びている。



───聖槍ロンギヌス。一目見ただけで感じるその危険な雰囲気。見た目もあの時の槍と変わってはいないし......まず間違いないだろう。



ドンドンッ、と今尚その音は続き、僕らの間はピンと張り詰めた緊張感が漂い始める。



相手は二体。槍は一本。


聖槍ロンギヌスの聖遺物としての力はその穂先部分に集中しており、他の部分で触れたところで、ただのとてつもなく硬い鈍器にしかならない。


さらに言えばあのお化け───テケテケの速度は常時の僕の速度をはるかに上回り、耐久力もかなりのものだ。

耐久力はこの槍の力を信じるしかないが......、速度は僕自身で何とかするしかない。



「『影纏』『活性化』『風神雷神』『正義執行』......『神王化』」



瞬間、僕のステータスが最大の状態へと至り、僕の身体がTシャツ姿から神王モードへと変異する。




───のだが、





「.........あれ?」



僕はムルムルとの戦闘時に比べれば随分とステータスが上がっている。確か素の状態でも二倍程には膨れ上がっているはずなのだ。


けれど、僕の今の状態はあの時と比べても、強化後のステータスが遜色ないような気がする。



───つまりは、通常の状態でもあれだけ感じられたパワーアップの違和感がほとんどと言っていいほど、皆無なのだ。



ふと、僕が初めて神王化した際に『身体の内から作り替えられているみたいだ』とそんな感覚を覚えたのを思い出す。


そして、『人間モドキ』という新たな称号。





「も、もしかして......、」




僕は、あまりにもおかしな現状に少し違和感を覚え、その嫌な想像を言ってしまいそうになったが......、




ドゴォンッ!!!




そんな音が扉の向こうで響き渡り、僕の中の違和感は一瞬にして霧散した。


───今はそんな可能性の話をしている場合じゃない! まずはこのピンチを乗り越えなきゃ考えても無意味だろう!


僕は聖槍ロンギヌスを左手でしっかりと握ると、少しずつ扉に近づいてゆく。



扉の向こう側はいつの間にか静かになっており、空間把握には映らないが、恐らくはこちらの動きを察して戦闘態勢へと突入しているのだろう。



───勝負は一回きり。



先に突き刺すか先にやられるかの全力勝負。




ゴクリ、と緊張で口の中に溜まっていた唾液を胃へと送ると、槍を構えた左腕に銀炎を宿して筋力を上げる。


空間支配で少しずつ、少しずつドアノブを捻り.........、





───一気に開け放つ!






「死に晒せこの死体モドキがぁぁぁぁっっっ!!!」




瞬間、僕の手の中にあった聖槍ロンギヌスが、扉の前にいたその標的へと目掛けて放たれる






───はずだったのだが、





銀炎を纏った槍が、そいつの顔面の真横でピタッと止まる。



足元には倒れ伏し、光の欠片となってちってゆく二つの上半身。



そして、僕の目の前に立っていたのは......、





「チッ、仕留め損なったか」


「えええっ!? そ、それってどっちの意味なの親友くん!?」





聖獣と互角の化物を無傷で倒した正真正銘の化物だった。




───はぁ、槍がもう少し横にずれてれば経験値ガッポリだったのになぁ。



そんな事を思いながら、僕はため息混じりに神王化を解除した。





☆☆☆





「......も、もちろん作り話だよな?」


「そうだったら良かったんだけどなぁ......」



場所は変わり王城の執務室。


僕の目の前には青ざめた顔をしたエルグリットと、その横でプルプルと震えている王族一同───ちなみにオリビアはアブソリュートにてお留守番である。それとついでに言えば、何故かアメリアだけがニコニコしていた。やっぱり将来は大物になるな、この娘は。


まぁ、オリビア以外の王族が全員集まっていることや、僕がわざわざ昨晩のことを話したことからもわかるとは思うのだが、今回はクラン結成を正式に認めさせに来たのだ。


あの後アブソリュートはエロースが完全に除霊したし、鑑定しても呪い系統は見当たらなかった。

更には目的も決めたし、クランの名前も決めた。

あとはこの愚王から許可を貰うだけである───と言うか判は既に貰っているので口頭でただ一言、「認める」と言ってしまえばそれでおしまいだ。



「って訳で認めるって言ってくれないか? 昨晩にあんな事があった成果今日はものすごく寝不足なんだ......、ふわぁ......眠っっっむ」



僕は大きな欠伸をして目尻に溜まった涙を袖で拭くと、その横でぷるぷると震えていた王族達が一斉に話しかけてきた。



「ギ、ギンっ、ま、まさか君に憑いてたりしないよなっ!? そ、そのテケテケとかいう化物はっ!」


「そ、そうなのよッ! そ、そんな内臓を引きずり回しながらとてつもない速度で駆けてくる魔物なんて......、そ、それこそ想像するだけで眠れなくなっちゃうのよっ!」


「あねうえー、なら一緒に寝るかー、のよー?」


「あらあらまぁまぁ、アメリアは本当にお姉さん思いねぇ......。お願いだから今夜は一緒に寝てくれないかしら?」


「りょーかいなのよー!」


「「は、母上っ!?」」



やはり根っからのこの世界の住民な王族共だ。

昨日の夜は全然怖くて寝れなくて、致し方なく恭香の部屋に添い寝しに行って呆れられた僕とほとんど同じような反応をしている。

───ちなみに僕は恭香の部屋で一晩過ごしましたが、残念ながら話を聞いた皆が皆怖がって集まってきた結果、結局は全員でお泊まり会みたいになりました。



王族達が「母上ずるい」だの「母の特権」だの「エルグリットと寝なさい」だの「絶対嫌だ」だの、そんなことを喚き散らしながらエルグリットが涙目になっているのを傍目に見ながら、流石にこれじゃ収拾がつかなくなりそうだな、と思った僕は、コホンと数回わざとらしく咳き込み、一旦その話を無理矢理切らせてもらった。




「それじゃ本題だ。僕達のクランの目的と、名前を決めてきたから、それを聞いて許可するかどうか判断してくれ」



───まぁ、一晩みんなで考えた案を即否定なんてされたらそれこそ発狂しかねないけどな。



僕はそう言うと、印刷機でプリントしてきた鐘倉家の家紋の写真を執務机へと叩きつけ、にやりと笑みを浮かべてこう言った。






「このマークをシンボルとし、目的は『基本的になんでも可能。特殊なものは要相談』ってことで。そして最後に、僕が立ちあげるこのクランの名前は......」








こうして僕らの新たな伝説が幕をあげる。



と言ってもまぁ、現時点でもうかなり伝説になってしまっているので、単にそれに拍車をかけるだけなのだが。




リーダー、『執行者』こと、ギン=クラッシュベル


副リーダー、『断罪者』こと、恭香



その他、執行者の眷属や従魔、黒髪の時代に神様までが入会しているそのクランの名前は瞬く間に大陸中を駆け巡り、僕らが学園に向かって出発する頃には、大陸中ではスマホ片手にその名を口にする人達が増えてきたように思えた。





メンバー総勢十四名で結成された、史上最強にして、最大のクラン。








───その名を、『執行機関(ネメシス)』という。



クラン名は、執行機関となりました。

俗に言うところの万事屋と言ったところですね。ギンたちが不在の間は恭香たちがメインとなって動かすので、実際にどう展開してゆくのは不明ですが、個人的には少数精鋭で望みたいところです。


というわけで、次回! やっと来ました学園編!

ギンならば青春なんか知った事かとボッチを極めるでしょうが......、恐らくは結構ギンの"見せ場"が増えると思います。

面倒臭い性格してるギンのファンなどほとんど皆無と言ってもいいかもしれませんが、ギンファンの皆様方。どうぞお楽しみに。

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