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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第四章 王国編
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閑話 新たな伝説の始まり

ほんの少しのサービスシーン有りです。

二月の下旬。


雪も溶け始め、だんだんと春に近づいてきた頃。ついでに言えば僕らの勉強も一段落した頃である。



カポーン、とどこか遠くでそんな音がなり、僕はぐぐぐっと背を伸ばして、もののついでとばかりに背の大きな岩に体重を載せる。



......ん? あぁ、そういえば誰が編入するか、言ってなかった気もするな?


───今回は育成期間ということで、生徒として入学するのは、僕、オリビア、マックスの三名だ。そして従者として僕らについてくるのが、ネイル、アイギス、浦町となっている。


僕&ネイル


オリビア&アイギス


マックス&浦町


まぁこんな感じだ。騎士組と浦町は力不足を補うため、ネイルは前に「私はハーフエルフですからね、学校なんて行けませんでしたよ」と悲しそうに言っていた為である。


といっても、本当はネイルやアイギスが生徒側でもよかったのだが......如何せん年齢がね。二十歳過ぎで編入はあまりにも目立つだろう。まぁ、僕も一応二十歳なのだけれど。ちなみに浦町は単純にジャンケンで負けたのだ。



閑話休題。



魔法学園都市には小等部、中等部、高等部の三種類の学部があり、小、中等部は基本的に小、中学校と変わらない。

だが、どうやら高等部に関しては一年生~六年生までがあり、年齢的にいえば僕は六年生に入る。


そうなると、オリビアは高等部三年生、マックスは高等部五年生で編入することになる。


ついでに言えば僕と同い年のギルバートは高等部六年生、マックスと同い年のルネアは高等部五年生、アメリアは小等部一年生だ。いいね一年生、最高だね。



───だがしかし、四月に編入する僕らは総じて高等部四年生に入れられるとのことだ。


実はこの高等部、少し制度が難しいのだ。

高等部では一~三年で学校を卒業して職に就くか、それとも試験に合格して四年生になるか、その二択があり、大体それで二択になるのだとか。


さらに言えば、その高等部に入って学ぼうとする場合、その四年生に混ざって編入するか、中等部卒業証書をもらった上で高等部一年生として現役の受験生たちに混ざって受験するかの二択しかない。後者に関しては中等部からやり直せということである。


よって今回、学園長グレイスは「うむ、お前ら実力ありすぎるから四年な」ということをお考えになったらしく、僕らはみんな揃って四年生として編入することとなった。


まぁ、ギルバートやルネアと同じ学年だったらそれはそれで面倒くさそうだし、四年生でよかったのだと思うことにしよう。



と、そんなことを思ってはいるがお前は今何をしているんだ、と聞かれれば───単純明快、露天風呂に入っていると答えるだろう。


実は気晴らしに森へと魔物退治に出かけた僕達だったが、突如エロースが『こ、ここはぁっ!? ま、まさかっ、天然温泉!?』とか四つん這いになって叫びだし、危なそう(主にエロースが)だったので、下がって様子を伺っていると......なんとあの女神、掘り起こしやがったのだ。



あぁ、ちなみに男二人は、と言えば......、



レオンは「温泉? 食えないのであれば興味無いのである」


マックスは「よ、よせよっ、お、俺にそんな勇気はねぇ。せいぜい隠れて覗くくらいしか......」



との事だった。



───というわけで、僕はマックスをぶん殴って気絶させ、レオンに預けた後、そのエロースが掘り当てた温泉に......、






ちゃぷん、と僕の左の方から水音がした。




......あれ、おかしいな。このあたりには誰もいないはずなんだけど。




そう考え少し不安になった僕だったが、そちらへと視線を向けると、僕が背もたれに使用している大岩の影から暁穂がこちらを覗いていた。



「おやマスター、こんなところにいましたか」



僕は「一瞬お化けかと思って身構えちゃったじゃないか」と溜息を吐いて、岩の影から出てきた暁穂の方を再び向き、






───思わず鼻血が吹き出した。






「っておい!? なんでタオル巻いて無いんだよっ!?」




そう、この変態、まるで僕を目の前にして当たり前とばかりに、その生まれたままの体を見せびらかしていたのだ。


どちらかと言えばスレンダー、モデル体型、そんな言葉が似合うような身体。けれどもそれは確かに女性としての丸みも帯びており、それでいて程よく引き締まっている。更には胸も十分に.........っと危ない。それ以上視線を上下に動かしていたら鼻血の出すぎで死ぬところだったぜ。



「風呂にタオルを持ち込むのは......ぐふっ、い、イケナイことですよ? さ、さぁ、マスターもタオルを......」


「.........はぁ、お前はただ単純に露出し放題な風呂に興奮してるだけだろうが」


「さ、流石はマスター。私のことなどすべてお見通しというわけですか」



いきなり現れた全裸の暁穂。


今は冷静を装っているが、僕としても内心ドキドキヒヤヒヤものである。流石に下着姿を見慣れた暁穂とは言っても全裸はまた別だ。僕の脳はそれだけでパンクしそうなのにも関わらず、これでもかと言うばかりに新手が押し寄せる。



「あーるじーさまー! どこにおるのじゃー? 妾はもう準備万端なのじゃぞー!」


「クハハハハ! 湯煙でよう見えんが、この湯のどこかに全裸の主殿がいると考えればこそ、我の心が踊るというものッッ!! さぁ、お互い全裸のさぐり合いと行こうではないかッ!」


「わ、わわわ、私はっ、ぎ、銀様に全てを捧げるのですっ! もうどこからでもかかってこいなのですっ!」


「え、えっと......私もご一緒して大丈夫なんですか.....って、きゃぁっ!? う、浦町さん!? た、タオル返してくださいっ!」


「ふっ、まさか貴様だけ入らないわけではあるまいな? ネイル」


「......了、顔真っ赤ですよ?」


『あーるじー! どこなのだー!?』


「あーっ! あっちから親友くんの匂いがするよっ!」




───や、やばい、やばいやばいやばい!



僕はその声を聞いただけで大体の事情を把握し、思わず空間把握を使いかけるが......そうすると体の隅々まで分かってしまう。それはダメだ、僕には早すぎる。




───と、そんなことを思っていた僕ではあったが、かのポンコツ女神様は、今回ばかりは僕の味方のようである。



クンクン、と自分で擬音語を発しながら、エロースは僕達のいる方向とは真逆へと進んでいく。しかもその足取りに迷いはない───意図的なものかと思いきや単なる馬鹿だったようだ。


しかもその迷いのない姿につられて他の奴らもそのあとをついて行っているようだ。ちゃぷちゃぷとした水の音が次第に離れてゆき、そして聞こえなくなった。



僕はそこまで来てやっと「ふぅ」と息をつくことが出来た。


未だ、すぐ側には全裸の暁穂が居るのだが、それでもあの馬鹿どもが全員ここを訪れるよりは幾分マシである。



暁穂は「それでは失礼して」と口にして僕のすぐ隣へと腰掛ける。ものすごく近い......と言うか彼女は僕の左腕を抱きしめているのか、先程から肘の少し上の方に柔らかい感触が伝わってくるのだが.........、うん、視界に映っているよりマシだと判断しよう。どうせ言っても「大声出しますよ?」とか言って脅されるだけだろうし。




───しかし、僕は先程聞こえた声の中に、二名ほどいなかった奴らが居たことをすっかり忘れていた。




だからこそ、僕はまるでこちらへとまっすぐ歩いてくるような水音にギョッとして、さらにその正体に思い至って冷や汗をかいた。




───ま、まさかっ!?




僕は思わず体ごとそちらの方へと視線を向け.........、






「.........ギン、お姉ちゃん。何こんなところでエッチなことしてるの?」


『おおっ! 主殿と暁穂殿ではありませぬかっ! 素晴らしい程にエロエロですなっ!』





全裸の恭香を見て、鼻血を大量に吹き出したのだった。



───伽月はどうでもいいけど恭香ちゃん? きちんと隠しましょうね?




☆☆☆




「クランを作ろう!」


「......え? なにそれ」



僕は鼻にティッシュを詰め込みながら、恭香へとそう問い返した。

というのも、恭香の言った言葉が僕には理解出来なかった為である。


『クラン』


恭香が言ったその言葉を英語だと考えると、一族、一門、大家族等々.........って、あれ? 家族?



───瞬間、僕の脳内にて一つの答えが弾き出された。




「ま、まさかっ!? 求婚してるのか!?」


「な、ななな、何を言ってるのさ急に!? そ、そんな訳ないじゃん!」



恭香は僕の口から告げられたその言葉に思わず顔を真っ赤にして立ち上がる。

するとまぁ、見えてしまうわけで、僕は咄嗟に目を逸らす。

恭香曰く「どうせギンとは将来......ゴニョゴニョ......な訳だし、恥ずかしいけど......見てもいいよ?」との事だったのだが、流石にまだ早すぎる。もったいない気しかしないが、それでも僕にはまだ早すぎる。ついでにゴニョゴニョの間に何を言っていたのか気になります。


未だに真っ赤になって何事化を呟いている恭香を他所に、僕はコホン、と数回咳をしてからおそらくは事情を知っているであろう暁穂へと事情を聞くことにした。



「んで、クランって一体なんなんだ? たまにネットゲーム云々言ってた久瀬から聞いたことがあった気もしないでもないけど.......」



......言っちゃ悪いけどここだけの話、僕は大体久瀬の話は聞き流している。

だってアイツってラノベやらネトゲやらの話ばっかりなんですもの。僕ってこう見えてもただの読書家だからな?


そんなことを考えていると、暁穂は僕の質問に対して、「それでは」と言うといきなり立ち上がった。


───がしかし、眼福眼福、と言いながらも僕が目を逸らす間もなく、行動を先読みしていたのであろう恭香が大事な部分を自らの身体で隠した。クソッ、ちょっと期待してたのにっ!


何故か暁穂はがっかりしたような表情を浮かべた後、恭香に大切な部分を隠されたまま話し出した。



「クランとは基本的に一定の目的を持つ者の集団の事を指します。その数は百人、二百人、中には千人やそれ以上の人員を持つものもありますね。その中でも事戦闘関連を目的とするクランはそのうちの大半が冒険者や傭兵など、そういう者達で構成されていると思ってくださって構いません」


「......つまりは『ギルド』という集合体の他にもう一つ、『クラン』という集合体があって、お前らはそのクランとやらを僕に立ち上げろと言っているのか?」


「もちのろんです、流石はマスター。物分りが良すぎますね、元から知ってたんじゃないですか?」


「単語の意味しか知らなかったんだけどな......」



僕はそう言うと、再びその『クラン』とやらについて考える。


おそらくはそのクランという集合体はギルドとは全くの別物。でなければ暁穂が「冒険者や傭兵など」なんて言葉は使わないだろう。

つまりは冒険者ギルドへの所属とクランへの所属の掛け持ちは可能。そして別集団ということはクランそのものに依頼がやってきて、その依頼をこなすことで自らのクランそのものの評判をあげる必要があるが......、執行者である僕がいる時点でそれは問題にはならないだろう。


───だが、なぜ今更クランなんかを組む必要があるのだろうか? と、そうしばしの間考えて、はたとある答えが頭に浮かんだ。




「もしかして......、人外がギルドでのパーティの結成では除外されるから......か?」



実は......と言うか当たり前なのだが、ギルドというのは人間のために作られたものである。そのため人外───理の教本である恭香や、一応は魔物に分類される従魔たちは、ギルド内では立場も居場所もなく、さらに言えば人権すらも無い。普通は大切な従魔には護衛やら何やらをつけるらしいが......、この僕の連れに手を出す馬鹿なんて滅多に(・・・)居ないだろう。そもそも手を出したところで勝てるわけがないし。



僕はそういう考えの元、恭香たちへとそう聞いたのだが......、









「やたー! 親友くんはっけーん!!」





───帰ってきたのは、ポンコツの鳴き声だけだった。




☆☆☆




あの直後、咄嗟に全力での隠蔽逃走をしたのが功を奏し、僕はなんとかあいつらから逃げ出すことに成功した。


そうして僕は温泉から上がり、体をふいた後に換装の指輪で元のローブ姿へ。そうして今現在、温泉を掘り当てた報告とクラン結成の承諾をもらうために、再び王城へと来ていた。


ここにくる迄の間に恭香と念話して分かったことは、クラン結成には、目的に沿った能力があること、国王の許可を得ること、クランのホームがあること、そしてこれは暗黙のルールなのだが、最低でも五十人前後の人員が居ること。



───最後のはキツイが、所詮は暗黙の了解、思い切りぶっちぎったところで誰かからお咎めが来るわけもない。



「ってわけだ、エルグリット。お前に頼みが二つある」


「.........止めても聞かねぇよな?」


「無論だな」



僕がそう即答すると、エルグリットはとても、とても深い溜息をつき、とても嫌そうに机の引き出しから一枚の書類を乗り出した。



「これがクラン結成の許可証だ。他の条件をすべて満たした上で俺が直々に判を押す、それでやっとクランとして認められるわけだが......、もう一つのお前のお願いって一体なんだ? あまりいい予感はしないが......」



エルグリットは、記入欄がなにも書かれていない白紙の許可証に何の迷いもなく判を押すと───一国の王が何勝手なことやってるんだよ───僕へと疑いの目を向けてきた。


まぁ、僕の日頃の行動を鑑みればそういう行動に出るのも致し方ないかとは思うが、僕が今回ここに来たのは、何もエルグリットと喧嘩するためではない。




僕はニヤリと笑って白紙の契約書をアイテムボックスから出すと、それをペラリと机の上へと滑らせた。




「残念ながら、今回は商談(・・)だ」




僕はそれと並行して懐から赤色の(・・・)スマホを取り出すと、それも机の上に出してみせる。





「先程掘り出した温泉の所有権と、その僕が作った遠距離通信魔導具とその製造方法、その三つを譲ってやるから、僕のクランホームを作るのに最適な場所の土地を寄越せ」





───もちろん、商談は一秒もかからずに成立した。

どうでしたでしょうか? 色々と。

全員で14人も居て、その半数以上がパーティメンバーになれないのは少し酷いだろう、という訳でギルドという枠を外れてクランを作ってみることにしました。

※ギンの空間把握と恭香の知識、それに浦町の技術が合わさったことで、案外簡単にスマホを複製することに成功したようです。


次回! 少しホラー気味です!

この前読み返して少し怖くなったので、僕(ギンと同等)レベルでお化けが苦手な方はご注意を。



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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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