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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第四章 王国編
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第178話

今回の章最後の本編です。

少し恋愛要素と、ギンの最新ステータスもあります。

気づけばいつの間にか『深夜の処刑場』は消え去って、景色は元の謁見の間へと戻っており、神王化にヌァザの神腕も解除されている。



視線を前へと向けると、数メートル向こうで最早原型の残っていない何かが転げ落ちており、白い煙を上げている。



───そうしてからやっと、僕の脳内へと勝利を告げるファンファーレが鳴り響いた。




ぴろりん! レベルが上がった!

ぴろりん! レベルが上がった!

ぴろりん! レベルが上がった!

ぴろりん! レベルが上がった!

ぴろりん! レベルが上がった!

ぴろりん! レベルが.........




僕が生きた状態でレベルアップのインフォメーションが流れているということは......、




「か、勝っ......ぐはぁっ!?」



何だか勝った実感は沸かないが、それでも勝ったんだと思った途端に、僕の横方向から何か黒い物体が僕へと飛び込んできた。


精神の疲労が酷く空間把握もしていなかった上に、何故か超直感も危険を示さなかったため、僕はそれを事前に察知するすべがなく、何とか倒れることだけは防げたがたたらを踏んでしまう。



僕はその胸に飛び込んできた黒い物体Kをビックリして覗き込むと、やはりそのKは恭香のKであり、彼女はギュッ、僕の胴に手を回して抱きついてきた。


お、おう、大胆ですな、と僕は思いながらも、今朝の輝夜と浦町の言葉を思い出して、こちらからも背中に手を回してみる。


何故か手を回して抱きしめた瞬間にビクッと反応してあたふたし出した恭香だったが、僕は初めて抱きしめた女の子の感触に、心臓がバクバクと音を立てて動き出していた───きっとあれだな。戦闘中にドバドバ出てたアドレナリンが切れたんだろうな。



僕は先程からニヤニヤとこちらを見ているメフィストをキッと睨むと、その隣で羨ましそうに指をくわえているエロースを無視し、一旦恭香の背中へと回していた手を離して座り込む





───つもりだったのだが、恭香にそれは阻止された。






「んっ」



そんな恭香の声が妙に近くから聞こえ、僕の唇になにか柔らかいものが触れた。



目の前数センチの所に、こちらの瞳をじっと見つめる恭香の瞳があり、メフィストからは口笛が、エロースからは絶叫が聞こえたことからも、なんとなく今の状況は理解出来た。




───はぁ......、本当にモテ期でも来たのかな。




恭香とキスする事なんて初めてだけれど、不思議と僕には驚きはなく、どちらかと言えば「やっと」という感じが強かった。



果たして僕は、離そうとしていたその左腕を恭香の腰へと再び回し、瞼を閉じて、身長差で離れそうになっていたその唇に自らの唇を押し付けた。




いつの間にか頭の中のインフォメーションはなりを潜め、メフィストもエロースもその場から姿を消していた。


ムルムルがこの部屋に突入した時に出来たのであろう、天井の穴から漏れる陽の光が僕らを照らし、なんだか神様に祝福されているようだ、とメルヘンチックなことを思った僕ではあったが、




───やっと僕は彼女との関係を、次へと進めることが出来たような、そんな気がした。





☆☆☆





「いやはや、羨ましい限りですね」


「ほんとだよっ!! 私なんて親友くんの......き、キスシーン見せられたの、に、二回目なんだからねっ!?」


「おやおや、それはそれは......」



そんなどうでもいいことを聞き流しながら、あの場から退散してきた私達は屋根の上へと上がった───流石に私といえどもあの場所に同席するのはちょっとご遠慮したいですからね......。


けれど、私の頭の中のから先ほどの映像が離れるはずもなく、今なお先程のギン殿の姿が頭から離れません───恐らくはこんなことを言ってはいても寵愛神様も同じなのでしょう。



黒髪にあのローブ、そして服装は違いますが......、あの佇まいと雰囲気。そして何よりも戦っている時の彼の顔。



「はぁ......、本当に血の繋がりを疑ってしまいますよね......。あれで血が繋がってないとは、正直驚きですよ」


「ええっ!? わたしってば、親友くんってウラノスちゃんの子供なんだと思ってたんだけど......、それって違うの?」


「ええ、全く血は繋がってないらしいですよ?」




腕を真上にあげて笑みを浮かべた姿。


戦闘中のその後ろ姿。


とても楽しそうな笑みを浮かべているその顔。


───そして、大技を出す際にカッコつける癖。



何から何まで神王様そっくりでした。本当に目を疑いましたよ。



それに何より、万が一にもないだろうと心の底では思っていた彼の覚醒。


そんなフィクションの中での主人公のようなことを現実で可能にできる人物、そんな方などそうそう存在しないでしょう。って言いましてもギン殿は主人公らしくないですが。



───けれど彼はそれを実現させた。



どうしてかあの時とムルムルが大剣を振り上げた際にちょっとした違和感を感じましたが......、あ、もしかしたら神王様が直々に介入したのかも知れませんね。本当によく分かりませんが。




「まぁ、それでも私は、楽しく踊れれば十分満足ですよ」




───それが誰の掌であろうとも、ね。




私はそう言って立ち上がると、そろそろ終わっている頃合だろうと思って天井の穴から下を覗き見ます───って、まだやってるんですか。青春しすぎでしょう。



「はぁ......、寵愛神様、私はそろそろお暇させていただきますので、あの狂暴者の死体の証拠隠滅を頼めますか? 流石に神王様に見つかったら殺されそうなので」



私は致し方なく寵愛神様にそう頼んでみましたが、何やら寵愛神様は引き攣った笑みを浮かべて、珍しく冷や汗を流してますね。

......一体どうしたのでしょうか?





───けれども、そんな私の疑問は、寵愛神様の言葉一つで解消してしまいました。





「あー......、ごめん、手遅れみたい」




私がその言葉の意味を理解したのと、私に気付かれずに背後にたった彼に肩をがっちりと掴まれたのは、奇遇にも同時のことでした。





「やぁやぁメフィスト、エロース。久しぶりだねぇ! ......それと、僕の息子をよくも虐めてくれたね?」







───あぁ、私、死んだかも。




私は久しぶりにそんなことを思いました。





☆☆☆





あの後屋根の上で、父さんの怒った声とメフィスト、エロースの叫び声が聞こえだして、僕らはやっと正気に戻った。


───いやぁ、疲れてたとはいえちょっと理性が蒸発してました。キス以上はしませんでしたが。さすが僕、今日もしっかりチキンだね!



僕はその後、屋根上から悲鳴轟く謁見の間から白夜たちへと「もちろん本物だ」と頭につけて念話を送り、何だかそのムルムルの焼死体とグリフォンの死体も残しておくのは忍びないため、魔導で呼び出した白炎によって滅却、その後に白夜たちが待っている食堂へと向かうことにした。


───僕にしては珍しく今回は気絶してないため「あれ、もしかしてこれで終わりじゃないの?」とも思いはしたが、屋根上でメフィストがボコられてる姿がチラリと見えて、その可能性はないなと確信した。



「い、いい、いや、こ、こ今回は、ぶ、武闘会とか、な、無かったし......、き、きっとそのせいじゃない??」


「おい恭香、めちゃくちゃ声が裏返ってるぞ。流石に動揺しすぎだ」



そんな状態であいつらの前出てみろ、まずバレておちょくられる未来が見えてくるぞ。あとエルグリットにエミリー様、ギルバート、ルネア様あたりになんか言われるに決まってる。主に僕が。



そんなことを思いながら、僕はたまたま通路の横から出てきたミノタウロスのゾンビの顔を殴り飛ばして経験値を得る。


先程からまだまだムルムルが作ったゾンビたちがこの城の中を周回しているのだが......、これってムルムル死んだら消えるやつじゃないのかな?



「ふ、ふぅ......、う、うん。ムルムルは、魔物の体にどこかから引っ張ってきた魂を植え付けてたみたいだからね。放火魔が火を放ったとして、その放火魔が捕まったからと言ってその火による被害は止まらないでしょ? それと同じ感じだよ」



やっと落ち着いてきた恭香の説明を聞きながら、「なんで例えが放火魔なんだろう」と思うと同時に妙にわかりやすくて納得した。死んでも尚迷惑とはあいつある意味最悪だな。


そんなことを思うのと同時に、先程から疲れているのにも関わらず妙に身体が軽いのが気にかかった。


......何故だ?



と、そんなことを考えていると、呆れた様子の恭香が話しかけてきた。



「......レベルアップしたの忘れたの?」


「......あっ、そういえばそうだったな。恭香のキスが印象強すぎて忘れてたわ」



そういった瞬間、恭香は顔を真っ赤にしてぷいっとそっぽを向いてしまったが、残念ながらそんな姿も可愛いのです。あ、湯気が上がってきた。


そんな姿を見てニマニマしながらも、僕は少し───いや、かなりレベルアップした今のステータスが気になっていた。レベルアップする前と比べて明らかに動きが違うのだ。それも自分でもわかってしまうくらいに。


ついでに、またまた向こうから現れたブラックオーガをカウンターパンチ一撃で経験値と化す。もちろん素材はアイテムボックス行きだ───億単位の金をゲットしたのに、今の僕のアイテムボックス、EXランクはもちろんSSSランクが大量発生してるぞ。王都のギルドで買い取れるんだろうか?



閑話休題。



「今は付近に魔物は......いなさそうだな。ちょっと見てみるか? かなり怖いけど」


「そうだね......、Lv.MAXとかになってたらどうする? 流石にないとは思うけど」



僕は恭香へと「流石にそれはないだろ」と笑いかけ、まさかまさか違いますよね、という確認の意味も含めて気楽な感じでいつもの合言葉を唱えた。




「『ステータス』!」





☆☆☆





結果、やっぱりLv.MAXには到達していなかった。



いや、ムルムルはめちゃくちゃ強かったし、凶暴者とやらになった後はステータス十五億だったのだ。そりゃその経験値も膨大だったはずだし、普通の種族なら一回で上限まで到達するだろう。


───が、僕は吸血鬼族の始祖、更には特異種でもある。特異種は強い代わりにレベルが上がり辛いらしく、やはり上限には達していなかったのだ。


まぁ、そうでもしなければゲームバランス崩れちゃうだろうしね。





というわけで、これが僕の今のステータスだ。







名前 ギン=クラッシュベル (20)

種族 吸血鬼族(始祖特異種)

Lv. 903

HP 18280000

MP 53000000

STR 14120000

VIT 13210000

DEX 19800000

INT 45800000

MND 36800000

AGI 21630000

LUK 903


ユニーク

神王化Lv.1

開闢Lv.1

正義執行Lv.3 ↑+1

妖魔眼Lv.3 ↑+1

万物創造Lv.3

神影Lv.3

空間支配Lv.3

スキル統合

特異始祖

魔導Lv.3

雷神風神Lv.3 ↑+1

エナジードレインLv.2

アイテムボックスLv.5 ↑+1


アクティブ

鑑定Lv.7 ↑+1

テイムLv.8

念話Lv.4 ↑+1


パッシブ

オールウェポンLv.4 ↑+1

総合格闘術Lv.6 ↑+1

料理Lv.4

並列思考Lv.7 ↑+1

魔力操作Lv.5

超直感Lv.6 ↑+1

存在耐性Lv.4 ↑+1


称号

迷い人 神格 人間モドキ (new) SSランク冒険者『執行者』『冥王』神王の加護 全能神の寵愛 狡知神の加護 創造神の加護 死神の加護 魔導神の加護 世界竜の友 名も無き才能 トリックスター 救世主 ロリコン 支配者 竜殺し 超越者 魔導の神髄


従魔

白金神竜プラチナムドラゴン

ゴッドオブ・ナイトメア

ブラッドギア・ライオネル

フェンリル

バハムート

ペガサス


眷属

オリビア・フォン・エルメス

マックス

アイギス





やっとムルムルのステータスの半分来ました。


これだけ見ればまだ半分なのだが、やはりムルムルは悪魔に堕ちたことでステータスが五倍になっていたらしい。まぁ僕が今五倍になれば二億五千万、つまりは圧勝だ。


十五億は流石にほかのブーストも必要だけど。......称号は気にしませんとも。半分人間やめてるってことだろ?



───けれど、僕は身体の使い方もよくわからないし、魔力の使い方だって下手くそなのだ。


だからいくら頑張っても魔力操作のスキルが上がらないし、さらには圧倒的に経験も不足している。


恐らく僕が今最高神に挑んだところで傷一つ付けられないであろう───相手が例えステータス上では格下だったとしても。




まぁ、今の僕より格下の最高神なんて存在しないんだけどねっ!




というわけで今現在、僕は一人心の中で「この後はどうするかな」と悩みながらこの国の会議室の一席に腰を下ろしていた。



僕は今回の裏事情と───もうすっかり忘れていたけど、今回の発端、つまりはキューリップ家や他の貴族達による集団での婚約発表についての説明をするためにここに座っている。


あの後とぼとぼと歩いていた顔が腫れたメフィストが言うには、



「あの人たち、何か仕返しがしたいと言っていたので、鼻で笑いながら冗談半分で提案したら『それは名案だ!』とか言って止めるのも聞かずに実行してましたよ?」



との事だった。


確かに迷惑だけど、婚約発表してどうなるんだ、って話だよな? そもそも僕が今回の事件に絡んだのは裏にメフィストが居たせいだし───うん、アイツらだけなら僕動いてなかったぞ?



という訳でメフィストという大悪魔のことを伏せてそこら辺のことを説明したところ、会議室中から一斉にため息が聞こえ、今に至る。


今は「僕ってここにいる必要ある?」という感じで、貴族達と王族たちによる話し合いが勃発しており、街の避難を担当していた第二班の中から選ばれた暁穂も僕と同様に暇にしているようだ。


一応第二班のリーダーはレオンなんだけど......、流石にアイツはこういう所に連れてきたくはないからな。『腹減ったのである』とか言っていきなり帰りそう。



そこまで考えたところで僕は再び最初の思考へと戻るのだ。



───この後どうしよう、と。



ここで言う"この後"というのは二つの意味がある。



一つはこの会議が終わった後のこと。まぁこれは十中八九帰って即寝るに決まっている。



そしてもう一つが、将来という意味での"この後"だ。


この街に滞在するか、どこかいい場所を見つけてそこに定住するか、冒険に出かけるか、修行するか、はたまた死神ちゃんと創造神の討伐に出かけるか。


他にも神々の仲間入りするという手もある......が、死神ちゃんは僕を部下にする気満々だろうけれど、しばらくは神様になる気は無いな。



そんなこんなで考えていると選択肢を切っては思いつき、切っては思いつくのだ。



もうこの先の未来が枝分かれしすぎていてどこの道を通れば強くなれるのか全然わからん。

修行するって道が一番強くなれそうだが、修行するにも今の僕じゃ限界が見えてきている。

......もうこうなったら誰かに弟子入りするしかないかな? 父さんとか。



......けど、なんだか最近は生き急ぎすぎてた気もするんだよな。強くならなきゃ、強くならなきゃ、って。


でも、今はもう久瀬や穂花に抜かされるのとかもあんま気にしてないし。急いで強くなる必要も無いんだよな......。



───まあま、どうせ抜かされたところでトラブル体質な僕のことだ。次の章でLv.MAX、そして二章後くらいには進化してるだろうし、あっという間に抜き返すことも可能だろう。



それに今はエロースが居るから大体の場合は仲間も守れるし。




───あぁぁぁ、考えてたら頭痛くなってきた。もうこの会議寝て英気を養おうかな。そして寝て元気になってからみんなで考えよう。




僕はそう考え、面倒くさくなってそう決めてしまうと、さっそく居眠りの体勢に入った。



さて、僕は関係ないし、今は寝かせてもらうとするよ......。






───だがしかし、こういう時に限って安寧が訪れないのがこの世界の理である。理の教本でもない僕が分かってしまうほどには理なのだ。




僕の方を見て呆れたような顔をした王族たち。もちろん空間把握で確認している。


だが、この中で一名だけニヤリと何かを企んでいそうな笑みを浮かべた奴がいた。




「そういえばそうなのよ、お父様! つい先日獣王様からギンにお手紙が届いてたはずなのよ!」




そう、ツンデレお姫様こと、ルネア様である。


はぁ......、なんでこのお義姉様はこう落ち着きがないのかしら。親の顔が見てみたいわっ。......あ、父親だけで結構でした。だからエミリー様、僕をまじまじと見ないでくれません?


僕の心の懇願が通じたのかは分からないが、エミリー様は侍女さんを呼び、何か入っていそうな封筒を取ってこさせた。



「はいギンさん。獣王様からのお手紙です」



どうやらその封筒が獣王からの手紙らしい。


たまたま隣に座っていたエミリー様はその封筒を僕へと渡してくるのだが......、これって明らかに中身確認されてるよね? 普通にハサミで封が切られてるんですけど。


半分分かりきっていたことを今更考えても無駄だろう、ここの王族は頭がイカれた奴しかいないんだ。

僕はそう割り切ると、その封筒の中に手を突っ込み、何やら文字の書かれた三枚のチケットと、一枚の手紙を取り出した。


僕は視線でエミリー様に確認すると「どうぞ」ととてもいい笑顔で返されてしまったので、残念ながらここで読むことになってしまった。




えー、なになに?





☆☆☆





ぐはははははっ! 我、参上!


久しいな執行者、元気であるか? まぁ元気に決まっておろうな? ちなみに我は超元気だぞ、最近さらにレベルアップしたのだ。筋肉がなお一層増えて、我の練習相手を務めるアックスの奴が嬉し泣きしておったわ。



閑話休題。



今回我がお主に手紙を送ったのはお主がそろそろ壁に突き当たっているのではないかと思ってのことだ。


お主は恐らく他人にものを教わらずに、我流でここまで上り詰めたのであろう?


だからお主の戦い方には変な癖が出来ておるし、さらに言えば、身体も魔力も全く使いこなせておらん。恐らくはお主のステータスはかなりのものになっておるだろうが、それでも今のお主では我にさえ攻撃が当てられんと思うぞ? ぐはははははっ!



───というわけで、だ。



我の知り合いに鬼人族のグレイスという女がいる。

知ってのとおり時の歯車の副リーダーを務めていた女だ。間違いなく最高神のトップ達と同格の強さを誇る、我以上の化け物だ。

其奴は人にものを教えるのと、人の本質を見抜く目だけは本物でな。お主が戦闘の根幹となる土台を作り直すのには最適ではないかと思う。


其奴は今、エルメス王国の王都近郊に位置する魔法学園都市の学長を務めておる。

お主は今はその王都に居るのであろう? 走れば一時間もかからずに......お主は飛べるのだったな。飛べばもっと短時間で迎える故、気が向けば行ってみるがよかろう。

まず間違いなく強くなることだけは、我が獣王の名にかけて誓ってやろう。


まぁお主のことだから、我がこう書いておけば間違いなく魔法学園都市へと向かうと分かっておる。そのため事前にグレイスにはお主らのことを伝えておいたのだ。

すると「はよ連れてこんかい」という手紙と学園への編入試験許可チケットを三枚贈られてきた。今回同封しているものだ。


どうやら生徒三名+それぞれの従者、計六名まで学園で学ぶことが出来るらしい。

とにかくまぁ、行くように。さもなくばグレイスが暴れ狂って我の国が崩壊するのでな。本当に頼むぞ?




追伸、グレイスはエルザが苦手だ。面倒くさいときはとりあえずエルザの名前を出しておけ。





☆☆☆





まぁ、それを見て僕は思うわけだ。



「クソ野郎.....、行くしかねぇじゃねぇかっ....」



もしここで行かなかったとすれば、最高神のトップたちと互角という鬼人族と、八つ当たりをくらった獣王レックスによる同時攻撃を受けることになる。

それだけは、それだけは流石にエロースがいても厳しいのではないだろうか。


そんなことを考えていると、さっきからニコニコしていたエミリー様様がまるで見計らったように、あら、と呟くと、またニコニコしながら王族たちを見渡す。



「今はその学園は冬休み、もしも編入するとなれば四月からになるでしょうね......。あら、四月? そういえば貴方たちも奇遇にも同じ学園へと通っていたはずよね?」




───その言葉を聞いて全てを悟った僕は、嫌々ながら視線を手紙から上げると、そこにはニヤニヤとした王族一同。



「ふふっ、私は六年だな」


「私は五年なのよっ!」


「しっこうしゃのあにじゃー! わたしは一年、なのよー」



一人だけ通ってる場所が違うのであろうパイナップルヘッドが紛れ込んで居たが、今はそんなことは関係なさそうだ。



僕の瞳を覗き込んだエミリー様は、ニコニコとした顔で僕へとこう告げた。




「ギンさん、兄妹の護衛。お願いできますこと?」





まぁ、一応この国のお姫様と婚約してしまった上に、結局は行かねばならないとわかっている僕としては、もちろんそのお願いを聞き入れないわけにもいかず。




ということで、僕らの次の行き先が決定した───否、勝手に決定された。




───次の目的地は、世界中から老若男女が学問や魔法を学びに足を運ぶ学園がある街、魔法学園都市。




とりあえず通い始めるのは四月から───つまりはあと二ヶ月弱もあるのだ。とりあえずは編入試験に落ちないように勉強......いや、その前に行くメンバーの選定から始めよう。




僕はそんなことを考えて、溜息を吐いた。








この時の僕はまだ知らない。




───その魔法学園都市にて、僕のもう一人の親友と再会することになろうとは。



もう分かっちゃいましたかね。

次章、学園編です!

少しネタバレしますと、学園に行く面々以外はしばらく出番ありません。この後閑話二つを挟めますが、それ以降はしばらくのお別れです。

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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