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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第三章 帝国編
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第123話

エルグリッドVS勇者パーティ!

今回はなかなか力を入れてみました。

「うおおぉぉぉぉっっ!!」


「うおらぁぁっっ!」



ドゴォォォン! と、エルグリッドの拳と花田の大盾が衝突する音が闘技場に谺響する。



エルグリッドのあまりにもハイレベルな近接戦に、周りの他の参加者も巻き込まれないように逃げ出し、今や花田とエルグリッドの一体一の勝負となりつつある。


───正直、今の僕でもエルグリッドに接近戦は挑みたくはない。


十中八九勝てるだろうが、それでも動作予測と神童、それにあの体術のキレを考えると、最悪カウンターで一撃、なんてことも考えられる。そのカウンターに魔闘気や限界突破なんて乗った日には.........、かなり洒落にならない。




「まぁ、個人的には手を抜いているとは言え、エルグリッド殿を相手にまともに勝負できている花田殿を賞賛したいのですがね」



堂島さんの絶え間無い回復と強化、町田さんの後方からの支援攻撃、更には古里さんの穴を埋めるかのようなサポートを受けているとはいえ、あの時の僕でさえ相手にならなかったエルグリッドを足止めできているのだ。


───これを見事と言わずになんと言うだろうか?





そんなことを思っていると、横から口を挟んでくる人物がいた。





「たしかに凄い。だが、勝てないだろう? いくら頑張ろうと勝てなければ意味が無い」


「.........夢がないですなぁ、浦町(・・)殿」




───そう、いつの間にか隣に座っていた浦町である。



コイツは夢やロマンが無いというか......。いや、浦町はただの現実主義なのだろうが、それでも彼らを賞賛しない理由にはならないだろう。


確かに彼女のいうことには一理ある───と言うか、勝つ可能性なんて、一割......いや、それ以下だろう。





───だけど、





「確かに勝利には価値があって、敗北は無価値なのかもしれないですが、それでもその敗北が先に繋がらないわけではないでしょう?」




敗北したって、失敗したって、挫折したって。





───それがその先の、何にも繋がらないわけでは無い。




現に、今の僕は挫折と後悔と失敗、それにほんの少しの成功で出来ている。



だから、僕はこう思う。





確かに勝利には価値があるのだろう。




だけど敗北にも、それと同じか、それ以上の価値があるんじゃないだろうか? と。




「我輩はそういう意見なのですが、どうお考えですか? 浦町殿?」




僕がそう、問うと、




「ふん、確実性に欠けるし、そもそも現実的ではない。それはただの理想論で、願望でしかない」



浦町は、そうピシャリと言い放つが、





───だが、と彼女は付け加えた。






「くくっ、その考えは嫌いじゃないな」




横目で見た浦町の口元には、楽しげで、それでいて嬉しそうな笑みが浮かんでいた。




......はぁ、こいつもツンデレさんだよな。






☆☆☆






それからおよそ、三十分後。


第五回戦はようやく終盤を迎えようとしていた。






ようやく膜の中から出てきた輝夜とアイギス。



他の選手を倒しまくってニマニマと笑っているアルバ。



同じく気配を潜めながらも敵を倒しつつ、なんだかんだで生き残ったケモっ子。





そして今、最後の決着が付こうとしていた。





「うらぁぁぁぁっっ!!!」


「ハッハッハ!! テメェら最高じゃねぇかッ!!」




ドゴォォォン!と、再び衝突音が響き渡る。




勇者パーティは四人が四人、全員が疲労困憊の上に体力、魔力もほぼ限界だろう。

それに対し、エルグリッドは体力的にはかなりの消費は見られるが、それでも魔力は未だ健在。



───傍から見てもどちらが優勢かはひと目で分かるが、




「勝てよ花田......、スキルの使い所さえ間違えなきゃ、まだまだ可能性はあるからな......」


「み、皆頑張ってっ!!」


「ええ! まだ勝てる可能性は残っているわっ!」




一つ忘れてはいけないのが、相手は全員が全員、『そんなの有りかよ!?』ってレベルのチート持ちだってことだ。


その上、あの四人のうち三人は未だにそのチートを使っていない。



───エルグリッドの油断一つで、まだいくらでも逆転のチャンスが残っている、という事だ。




その証拠に、未だに彼らの目は死んでいない。




そんなことを思っていると、




「ふふっ、なんだかギンの目にそっくりだね?」



......どういうこと?


僕と同じ疑問を白夜や久瀬たちも思ったのか、同じように疑問符を浮かべている。



それを見て苦笑いを浮かべた恭香は、



「いつも戦闘について行ってる私しか分からない思うんだけどさ、ギンって格上と戦う時、それも命のかかった戦いの時には、いつも決まって同じ目をしてるんだよね」




僕にはそれはよく分からなかったけれど、それでも彼らの目を見れば「あぁ、そういう事か」と、実感できた。




「瞳の奥に火が灯ったような、ギラギラと輝いた」




そう、あれは......、






「勝利を渇望した人の瞳」






思い出すは、ダンジョンでの戦闘の数々。



バジリスクとの戦闘。



そして、暁穂、バハムートとの戦い。




───そして、いつも強敵を相手に打ち負かしてきた、僕。




なるほど、確かにアイツらの目は、僕にそっくりだ。





「ククッ、クフフフッッ!!」




その結論に、思わず笑ってしまう自分がいた。




───何故かって? そんなの決まってるじゃないか。








「彼らがギン殿と同じ瞳をしているのならばッ! もしかしたら大逆転劇が見れるかもしれないですなっ!!」




────さぁ、本格的に面白くなってきた!






☆☆☆






攻めあぐねたエルグリッドが一旦距離をとる。


今やエルグリッドもかなり本気を出しているが、それでも攻めきれないのは体力の消費と、花田の守りの才能によるところが大きいだろう。



───だが、このままでは間違いなくエルグリッドの勝利だ。




相手ははるか格上。


こちらは満身創痍、相手はまだ、少し余裕がある。


───だがその余裕は、大したものではない。



魔法、スキル、能力、ステータス、性格、癖。



ありとあらゆるものを思い出し、考えつくし、作戦を練って、堂々と、正々堂々と罠に嵌めろ。




それが僕たち、経験も実力も、多くの面で劣っている弱者に残された、唯一の方法だ。




そんな僕の思いが伝わったわけでもないだろうが、花田たちがアイコンタクトを交わした。



「.........さて、ここからですね」



気付けば会場中からは音が消え失せ、誰もが固唾を飲んで、ステージへと視線を向けている。



───彼らもなんとなく、分かってしまったのだろう。



この先、一瞬でも目を離せば、その瞬間に勝負が決まってしまう、と。





そんな沈黙と緊張が漂う中、最初に動き出したのは花田だった。




「町田さん! 古里さん! 宜しくお願いします!!」


「「了解」です!」




返事を聞くと同時に花田はエルグリッドへと駆け出す。


大盾を前に構えて隙間から相手を見すえ、そのまま盾ごと突進する───シールドバッシュだ。




だが、それでは隙が多すぎる上に、後衛の守りが散漫になってしまう。



───今まで守りだけに専念してきたお陰で保たれてきた均衡が、今崩れ去った。




「どういう作戦かは知らねぇが、そう来るなら俺は先に後衛を沈めさせてもらうぜ?」



そう言うとエルグリッドは花田には目もくれずに後衛へと向かって走り出す。


それはある意味当然の行動で、エルグリッドはそれが罠だったとしても十分に対処できるだけの実力を持っていた。





───だが、エルグリッドは少しだけ、油断をした。





「今だっ!! 『無敵の要塞(キャッスルオブキング)』ッッ!!」




油断というよりは、予想外だったろうか?


まぁ、簡単に言えば、彼らのユニークスキルの厄介さを甘く見ていたという事だ。




花田がそのスキルを口にした途端、エルグリッドの動きがピタリと止まる。


......どういう事だ? と少し疑問に思っていると、浦町が解説してくれた。




「花田のユニークスキルは『無敵の要塞』。その能力は全ての攻撃を自分ひとりへと集結させ、一定時間だけ無敵状態を維持する、っていうある意味最強の防御魔法」




......これまた厄介な能力を厄介な奴が覚えたものだ。



あれでも神童であるエルグリッドは今の状況を一瞬で把握し、一瞬で方向転換、逆に花田を仕留めようと駆け出す。






───だが、相手は花田だけでは無い。






「さぁ行くわよッ! 闇よ、矢となりて敵を撃てッ!『ダークアロー』ッッ!!」



瞬間、町田さんの周囲を数十本の矢が埋め尽くす。


だが、どうやらここからが彼女の真骨頂らしい。




「『魔法操作』発動!」




瞬間、数十本の闇の矢は一点を中心として集結し、


───そして、そこには全長五メートルはあるだろう、超巨大な矢が産み出された。



おそらく彼女の『魔法操作』とは、ありとあらゆる魔法を支配する能力なのだろう。

それこそ、極めれば相手の魔法すらも消失させてしまうような、そんな能力。


───ならば、魔法の合成なんて朝飯前だろう。



「さぁ! 受けてご覧なさいっ!!」



ヒュン、と音を立ててエルグリッドへと猛速度で飛んでゆく巨大な闇の矢。


それは既に発射されており、今からエルグリッドが躱すことは、物理的に不可能に近い。




───ならばどうするか。




「クソがっ! 『アイスウォール』ッッ!!」




エルグリッドと闇の矢の間に、分厚い氷の壁が生み出される。



それは、エルグリッドが今回初めて使った魔法。





───それが仇となった。





「今よっ! 古里さん!」


「り、了解です! 『魔法の図書館(マジックライブラリー)』っ!!」




次の瞬間、エルグリッドの目の前に生み出された氷の壁が、光の欠片となって砕け散る。




───そして、







「ま、まじ......?」





そんなエルグリッドの呟きと共に闇の矢が着弾、爆発したのだった。








────今夜はエルグリッド爆死記念祭だな。





そんなことを考えてウキウキする僕だった。

《魔法の図書館》

ありとあらゆる魔法を記憶、吸収、保存、放出することが出来る。(レベルによる制限あり)


めちゃくちゃチートですね。ちなみに桜町と水井を除いた勇者たちはチートを二つ持っています。

もともと持っていたスキルと、成長した事で目覚めたスキルの二つですね。


......最近、小里さんがチートすぎて困ってます

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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