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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第三章 帝国編
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第118話

今回は第四回戦直前のちょっとした絡みです。

「許しちゃってよかったの?」


「謝ってきたのに『許さねぇよ、ばぁぁぁカッww』とか『ごめんで済めば警察なんて要らねぇよっ!』なんて話の通じない子供みたいなことしたいと思うか?」


「......ご最もです」



僕はアーマー君達と別れた直後、いざ(僕がブチ切れた)という時に備えて本に戻っていた恭香を人化させ、二人でお昼を食べていた。



───ちなみにアーマー君達は既に闘技場へと向かったようだ。彼はこの大会には気合を入れていたからな。




「それにしてもすごかったね.........」





恭香のその言葉で、先程のアーマー君の言葉を思い出す。








『この大会に出場したのは、君に謝るためと、もう一度、君と勝負して、今度こそは勝つ為だ』







僕に勝つ。


それ自体は不可能だろうし、彼自身も分かっているはず。



───それでも尚、僕に正面切ってそんなことを豪語できるようになったのだ。それは成長と見るか、愚行と見るか.........それとも、








「何か奥の手があるか、だね?」



ご名答、その通りだ。



彼は僕に敗北した。それも圧倒的な実力差で。


あれから彼もかなり(・・・)成長していたみたいだが、それは僕も同じこと。それも彼は分かっているはず。


その上で『勝つ』などとほざけるものならそれは何か、奥の手───ユニークスキルや加護の類を入手したのだろう。



何てったって、今の彼は大分まとも(・・・・・)だからな。





「ククッ、あれだけ自信満々に啖呵をきったんだ。本戦出場は当たり前だろう?」



完膚なきまでに叩き潰して返り討ちにしてやるから、僕の元までたどり着いてみろ。




「やっぱり許してないじゃん......」



恭香の呆れた声が聞こえたが、気のせいだろう。





───僕は遠く離れた家の影から青いツインテールと七三分けがはみ出ていたのを見逃さなかった。




はぁ.........、こっちも気のせいであって欲しいのだが。






☆☆☆






「やっと見つけたわっ!!」


「ふふふっ! お久しぶりです銀君!!」



何故か満面の笑みを浮かべてこちらへと駆け出してくる青髪ツインテールと七三分けメガネ。




────怖かったので『エアロック』




瞬間、二人の動きが空中で止まる。




「な、何よこれっ!?」


「くっ!? ぬ、抜け出せません!」



それもそうだろう。

今回のエアロックは脇下から腰の周辺の空気を完全にロックしたのだ。せいぜいがCランク~Aランク下位程度の実力しかない今の勇者たちには到底抜け出せるものではない。



僕はいつの間にか本に戻っていた恭香を腰へと装着すると、会計を済ませて席を立つ。



「ま、待ちなさいッ!! いや、待ってください銀さん!!」


「まさか僕たちを忘れたわけでは無いでしょう!?」



バタバタと暴れ出す二人。


しかしエアロックは全く解ける様子はなく、





「ふむ? 人違いではありませんか?」




僕はそう言って去っていくのだった。





「ちょっとーーっ!? せめてこれ解放してから行ってくれないかしらっ!?」


「ま、待ってください銀君!! 君とは語り合いたいことがっっ!!」




そんな叫び声も聞こえた気がしたが、僕は気のせいだと決め込むことにした。




───安心しろ、十分後には解けるようにしてあるさ。






「次は真面目に僕の居場所を考えることだな」





そんなことを言って、僕はそそくさと退散してゆく。





はぁ......、妙に頭の回る奴はこれだから面倒なんだ。







☆☆☆






僕がシルに変装して客席に座っていると、肩を落とした鮫島さんが帰ってきた。どうやら御厨はそのままステージへと向かったようだ。



「おやおや鮫島美月嬢、アーマー殿を尾行してギン殿と接触したが、手も足も出ず御厨殿と返り討ち───というか相手にもされなかった鮫島美月嬢。何か嫌なことでもあったのですかな?」


「全部知ってるじゃないっ!!」



───やっぱり僕は、人の神経を逆なでする才能があるらしい。


(褒められた才能じゃないけどね)


.........だけどまぁ、だからといって役に立たないわけでもないから困りものだよ。



「っていうか美月ちゃん! 銀と会ったって本当なのっ!?」


「ず、ずるいですわっ! 言ってくれれば私もご一緒したのにっ!」


「こ、こうなったら僕たちも尾行なりなんなりするしか......」




どうやらまた不正を働こうとしている奴らがいるようだ。




「あ、今のは全てギン殿に伝えておきますので。『桜町と鳳凰院が不正を働いた。軽蔑してよし』っと......」


「さぁ今日も張り切って探すぞーっ!」


「そうですわねっ! 頑張りましょうっ!」



扱いやすい事この上ないな。



(馬鹿)ばっかり」


「よく分かりませんが、何だか馬鹿にされている気がしますわね?」



正にその通りです。



「やっぱりアイツ、街の方にも出没すんのかぁ.........、それで? 銀はどんな感じだった?」


「はぁ、至って普通だったわよ? 変わったとしたら瞳が赤くなってた事くらいかしら?」


「おお、主人公っぽいじゃねぇかッ!」



───おい本物の主人公。お前がそんなこと言ってどうするんだよ?


たしかに黒い装備だし、覚醒もどきも起きたし、現に強いのは僕だが、第一条件として刀使ってる時点でお前の方がよっぽど主人公っぽいぞ?


どこに最初の装備が短剣の主人公がいるんだよ、ダンジョンに出会いでも求めてんのか?



───まぁ、確かにダンジョンには出会いがあったけどな?





そんなことを考えていると、ふと、刀について思い至った事があった。





「......ふむ、そう言えば刀使いはもう一人居たようですな?」




───そう、刀を主装備にしているのは久瀬だけではないのだ。



僕は視線をステージの中へと移す。




順々に、



前の鎧のように見掛け倒しではなく、明らかに高性能であろう鎧を纏い、腰に長剣を差したアーマー君。



黒いローブに身を包み、赤い宝石の付いた長杖を携えた七三メガネこと、御厨友樹。



めちゃくちゃ短いズボンに胸だけを隠す防具というかなり露出度の高い服装に身を包んだ、猫又妙。



紺色の装束に身を包み、いかにも身軽そうな───と言うか忍者のような服装をした、鳳凰院のイジリ役こと倉持愛華。

───そう言えば藍月と名前が被ってるが......まぁ、大丈夫だろう、きっと。



なぜか一人だけ白衣という名の防具を着用し、両手に拳銃、腰にはもう一丁の予備の銃と長剣という、かなり浮きまくった服装のお馬鹿さん(天才)、浦町了。



白いローブに身を包み、長杖を両手で抱えてぶるぶるガクガクとしている少女───正確には少年か。女の中の男こと、男の娘、桃野和彦。




そして、最後の一人。



長い黒髪をポニーテールに纏め、紺色の袴に革鎧、右の腰には刀、左の腰には短刀という、いかにも『剣道少女』というナリをした、小鳥遊優香。



明らかに勇者の中でもトップクラスの実力を秘めた、剣刀術の天才である。


───その代わり脳筋らしいが。





「時に久瀬殿、黒髪の時代でギン殿を抜いた中で一番強いのは何方なのですか?」


我輩やギン殿は、個人的に久瀬殿を応援しているのですが、と付け加えると、久瀬は少し言いづらそうにしながら、



「......まぁ、何でもありの勝負なら、俺か桜町、それか浦町だろうな」





───だけど、





と、悔しそうな顔をしながら、久瀬は続けた。










「純粋な接近戦なら、一番強いのは小鳥遊だ」






☆☆☆






『さぁやってきました第四回戦! 昼休憩を挟んで尚、先程の第三回戦の印象が冷めやらぬままの会場ですが、エルグリッド様、次の試合はどうお考えですか?』


『今回のバトルロワイヤルは執行者パーティが一人も参加してないっぽいからな。今日初めてのまともな試合展開になるんじゃないか?』


『おおっ! どうやら今回は執行者パーティは未参加ということになりますね! ならば今回注目は執行者、ギン=クラッシュベルの同郷から召喚された"黒髪の時代"の面々になるのでしょうかっ!?』


『ククッ、もしかしたら番狂わせがあるかもしれないぞ?』



少し経って、司会さんと、皆の前だけあって少し口調の大人しいエルグリッドの声が流れてきた。


───どうやらそろそろ第四回戦が開始されるらしい。



それと時を同じくして、ステージの中でも剣やら杖やら盾を構え、戦闘態勢へと移行する参加者たち。




僕としては今回の注目は、御厨に浦町、小鳥遊に、もちろんアーマー君だ。




さてさて、番狂わせはあるのかな?





『さぁ、ギンたちが参加しないのなら恐らくは今日最後の試合だ! 気合い入れて勝ち残れよっ!』



エルグリッドの声にステージ内で大きな雄叫びが上がる。


僕らのような"ジョーカー"の存在しない純粋なバトルロワイヤル。それこそ誰にでも勝ち残る可能性があるのだ。




───さぁ、楽しませてくれよ?







『それではっ! 試合開始ですっ!!』





こうして彼らの生き残りをかけた戦いが始まった。





───この試合があれ程までに混迷を極める戦いになるとは、この時の僕は未だ知らなかった。




それは、幸か不幸か。






まぁ、それでも恐らくは、前者だったのだろうと、後の僕は考える。

次回! 第四回戦開幕!

果たしてどんな結果になるのでしょうか?

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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