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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第三章 帝国編
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第116話

やっと無双です!

コツコツと、石の廊下に足音が響く。



辺りには、誰も居ない。


もう既に全員が会場入りを果たしているのだろう。


───恐らく、僕が最後の一人。




「やっとここまで辿り着いた、ってわけか」




知らず知らずのうちに、興奮と緊張で歩く速度が上がってしまったらしい。


足を止め、ふぅ、すぅと深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。





「さて、執行者って二つ名もいいけど、せっかくならルビの入ったカッコイイ二つ名がいいよな?」



そう言って仮面の下でニヤリと笑うと、僕は再び歩き出す。




目の前には、光が溢れる門が見えていた。



その向こうには大歓声。










「さぁ、楽しい愉しい、見世物(ショー)の始まりだ!」





僕はそう言うと、ステージへと足を踏み入れたのだった。






☆☆☆





『さぁ、まもなく三回戦が開幕です! エルグリット様、今回の注目の選手はおりますか?』


『今回か.........あっ、.........クックックッ、今回は最大級に面白くなりそうだ、とだけ言っておこうか』


『おおっと! どういうことだァっ!? またもや従魔が紛れ込んでいるのかぁっ!?』



流石にエルグリットも、今回ばかりはノーコメントらしい。まぁ、そうでなければ確実に僕の怒りを買うことになるし、当たり前だろうがな。


───それに、最高に面白くなるのも確実だろうな。




僕は今現在、闘技場のステージのど真ん中に堂々と立っていた。


そして周囲には明らかに僕に対して敵意の見える男達が勢揃いして僕を囲んでいる。


───傍から見れば中心にポッカリと穴が空いており、その中に僕だけがポツンとたっているようにも見えるだろう。


集団リンチ直前の図である。




これには流石の司会さんも、



『こ、これはどういうことでしょうか!? 参加者全員が中心に立つ仮面の選手に敵意を持っているように見えますがっ!?』


『あの野郎は登録時と入場時に目立ってたからな。調子に乗っていると思われたんだろう。何よりも不気味過ぎる』


『た、確かに不気味ですが......エルグリット様はあの仮面の選手に関してどうお思いですか?』


『もう二度と戦いたくない相手だな。本戦で当たったとしても即棄権したい程危険な相手だ』


『なぁっ!? と、と、いうことは二人は知り合いということでよろしいですか!?』


『あぁ、今回ばかりは俺も集団リンチに賛成だな。とっととくたばっちまえ』




司会者が何を言ってんだよこの馬鹿が。


おかげさまで全員の意思が固まっちまったじゃねぇか。




「おい、ひとまず休戦だぞ」


「ええ、エルグリット様は元SSSランク冒険者。その方が危険視する相手.........まず全員で潰さないといけないわね」


「あぁ、それまでは休戦だ」


「それにしても何なんだアイツ.........」



最早完全にリンチするムードが完成してしまった。




チラリと客席の方を見ると、観客もほぼ全員が驚いたような、それでいて心配そうな表情を浮かべている。


更に視線を横へとずらすと、顔を真っ青にした勇者達と、ニヤニヤ笑っている従魔たち───あっ! 今スカート捲りやがったなあの野郎! 鷹の目発動しときゃよかった!!



そんなことを考えているとはつゆ知らぬ観客やほかの参加者は、黙っている僕が恐れて声も出ない、というように見えたのかもしれない。



観客からは

「集団リンチとかつまらねぇ真似よせよ!」

「キャー、あの人可哀想よっ! 誰か助けてあげなさいよっ!」

「あんな格好してる方が悪いだろうが!」


と。



周囲からは

「おいガキンチョ! 怖いならさっさと棄権しな!」

「ぐへへっ! こいつ怖くて声も出ない様子だぜ!?」

「チョーウけるんですけどっ!!」

「......坊主、プライドよりも命の方が大切だぞ? もう一度よく考えろ」



との声が上がる。



───なーにが『よく考えろ』だよ、こっちは何もしてねぇのにリンチしようとしてるやつはどこのどいつだよ馬鹿どもが。





少しいらっときたので僕は大声でこう言ってやった、









「クハハハハハハッ!!! 我輩のようなか弱い道化師をよってたかって囲んでしか倒すことの出来ない臆病で小心者の弱者共よッ!! ちゃんと手加減はしてさし上げますのでどうぞお好きに我輩の手によって散ってゆくがよかろう! クハハハハハハッ!!!」








音が、消えた。







『ハッハッハ!! あの野郎! 本気で馬鹿なんじゃねぇのっ!? ハッハッハ!!!』



というエルグリットの笑い声が谺響する。





───そして、







「上等だァァァッッッ!!! ぶっ殺してやるッ!!」


「まずはコイツを集団リンチだッッ!!!」


「「「「超賛成ッッ!!!」」」」


「ちょっ!? あの手品師何言ってんの!?!?」


「.........死んだわね」


「シルさん!! 何やってるんですかっ!?」


「クハハハハハハッ! あそこで我の笑い方を使うとはわかっているではないかッ!!」


「ちゃんと見てくれましたかーーっ!?」






そこには、観客の大爆笑と不安。それに選手達の怒りしか存在しなくなった。





───さぁ、舞台は整った。





『そ、それでは試合開始ですっ!!』







悪いがお前達には僕の引き立て役になってもらうぞ?








「さぁ、愉しい舞台の開演だっ!!」







☆☆☆






まずは肩慣らし、魔法なしブースト無しでの接近戦だ。




こちらへと殴りかかってきた相手へとカウンターで右ストレートをプレゼント。


その隙をついて後から剣を振りかぶってきた相手へは鳩尾への蹴りをプレゼント。


今のを見て今度は周囲をぐるっと囲み、一斉に攻めてくる彼ら彼女らには奇術をプレゼント。



僕は右手に持った漆黒色のステッキをまるで抜刀術のように腰で構え、


「魔法のステッキよ!」


僕のその言葉とともに魔力を注入されたステッキは、一瞬にして長さをみるみると伸ばし.........、




道化の法(サタンコード)、第一条! 伸びるステッキ!」




抜刀術の要領で発射された全長十メートルのステッキは、僕が一回転すると同時に僕の周囲の敵をぐるりと一掃した。




そのあまりの光景に目を丸くし、足を止める道化(選手)達。


同じくすぐにやられると思っていた僕が逆に余裕綽々な様子に目を見開いている観客たち。




『だから言ったろ? あんな何をしでかすか分からねぇような奴なんざ、最初に沈めとかねぇと.........』




エルグリットの声が終わる前に、僕はステッキを元に戻して駆け出した。




───さぁ、今度はこっちの番だぜ?





『それこそ、今回は本戦出場者が一人になるかもしれねぇぞ?』







☆☆☆





『おおっと! シル=ブラッド選手! 止まらない止まらないっ!! 一体彼は何者なんだァぁぁっ!?!?』


『思いっきり手加減してこれなんだから笑えてくるよな』


『ほ、本当ですかっ!?』



そんな司会たちの声が聞こえるが、観客は皆声を失い、闘技場の中には参加者たちの悲鳴だけが谺響していた。




「ぎゃぁぁぁぁっっ!! 助けてく......ぶふぇっ!?」


「い、いやぁぁっ!? こ、来な......ぐふぁぁ!?」


「な、何なんだよアイツ!? こんなの聞いて......はべらっ!?」


「助けてよママぁぁぁぁッッッ!!! ....ぐべらっ!?」




惨憺たる有様、阿鼻叫喚、地獄絵図───と言うか地獄そのもの?



───まぁ、とにかく酷かった。




鼻水やら涙やら血やら小便やらの液体にまみれた床に、更に血なまぐさい臭いが充満し、その上、彼ら彼女らの悲鳴が絶え間なく、一つ、一つと絶えてゆく。


逆にこちらの服は一切血に濡れてはおらず、唯一血にまみれているのがその、笑いの張り付いた白いお面。




───その姿。正に悪魔(サタン)




クックックッ、次は誰を恐怖のドン底に沈めてやろうか?







───そんなことを思った時だった。








「うわぁぁぁぁっっ!! こ、降参だァァっっ!!」


「わ、私も降参よっっ!!」


「「「「「「俺(私)もっ!」」」」」」




「.........へっ?」





残っていた全員が一斉に手を挙げ、降参を宣言したのだ。





おいおい嘘だろ......?





『し、勝者! シル=ブラッドォォォッッ!! なんと獣王武闘会始まって以来の一人勝ちだァァァァっっ!!!』






あまりの事態に驚愕し、目を見開いている僕に向かって、今日一番の大歓声が降り注いだ。








───あれを見せつけられて歓声を上げる獣人の感性に、少しと言うか、正直かなり引いた。





まぁ、それをやった本人が言うのもなんだけどな。

ギンはとっても生き生きしてましたね。

───試合があっけなく終わったことはご愛嬌ということで。


次回! 第四回戦......? きっと面白くなるはずです!

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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