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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第三章 帝国編
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閑話 傲慢な天才と完全無欠の邂逅

これ一応恋愛系ですし、そろそろそういう雰囲気も匂わせておいた方がいいのでは?

ということで、シリアスのないちょっとした恋愛系です。


まぁ、そろそろ本編での恋愛も出てくるとは思いますが......。

これは、まだ僕が高校生だった頃のお話。



まだ辛うじて両親も健在だったし、叔父さんも叔母さんもまだまだ元気で、狂った様子も見られなかった頃、


それこそ、久瀬や穂花にはまだ出会ってないし、さらに言うならば勇者召喚された誰とも、未だ出会っていない頃のお話。





───否、





これは、出会いの物語だ。







僕と、あの『完全無欠(エクストラ)』の、出会いの物語。






☆☆☆





「ううっ、寒くなってきたな......雪虫も飛んできたし.....、今年はもうチャリは潮時かな?」



僕は黒いマフラーを首に巻き、今年の春に入学した高校へと自転車を漕いでいた。


冷たい風が肌を撫で、更に風に乗って雪虫が飛んでくる───いや、自転車に乗っているわけだし、この場合は自分から突っ込んで行ってるのか?


───まぁ、どっちにしろ厄介な事に変わりはない。




よし、明日からはバス登校にしよう。




そんなことを思って、僕は自転車を漕ぎ続ける。





───この先、学校であんなことになるとはつゆ知らず。





☆☆☆





キーンコーン、と朝のホームルームのチャイムが鳴り、それとほぼ同時に担任の.........名前は忘れたが、担任が入ってきた。



「おーい、お前らー、席につけー!」



そんな担任の声とともにガヤガヤと騒いでいたクラスメイトたちも次々と自分の席へと戻ってゆく。


───ちなみに僕は一番後の窓側から二列目の席に独りで座っていた。


そこ、ぼっちとか言わないように。僕はぼっちじゃない。ただのクールな一匹狼だ。



そんなクールな僕も、今日は珍しく考え事をしていた。




───こんな席......、あったっけな?




ふと窓側を見れば、そこには昨日まで存在しなかった空席が存在していたのだ。


担任のいつもより少しだけ真面目ぶった様子に、生徒達の妙にそわそわした感じ───特に男子。そして僕の隣の、見覚えのない空席。



雰囲気だけは学園ミステリーっぽくしてみたが、それらの条件を満たす事象というのは恐らく、一つしか存在しないだろう。



「あぁ、転校生か」



どうせ僕の話など誰も聞いていないだろうと、一人呟く。


まさか僕が今の今まで気づけなかった幻のシックスマンがいるわけでもなし、どうせ転校生かなんかが転校して来たのだろう。それも恐らくはJK。




僕の中にとあるビジョンが浮かび上がる。




僕の左隣に座るは、顔にモザイクのかかった女子高生───ちなみに想像出来ないからモザイクなのであって、見せられないよ、のモザイクではない。



『ね、ねぇ? 君、名前なんていうの?』



モザイク女、略してモザ女は、恐らくはそんなふうに話しかけてくるのだろう、隣の席だし。


そしてそんなふうに話しかけられたら、僕は十中八九、こう返すだろう。



「銀だ」



以上である。


するとどうなる?



『へ、へぇー......銀君かぁ、ちなみに銀っていうのは名字なのかな? それとも名前...』


「.........さぁ?」


『そ、そうなんだぁ......』




以上、完全論破である。



まぁ、論破っていうか、論破して破壊してしまったのは彼女の好感度なのだろうが。




そもそも、幼稚園、小学校、中学校とボッチを極め続けてきたこの僕が、今更友達を作ろうとも思わないし、作りたくもない。



───僕は、ただ煩いのが嫌いだ。



教室を見渡すと虫唾が走る。


大して面白くもないのに馬鹿やって騒ぎ立てる茶髪の男。


それを空気を読んで笑っているその取り巻き。


ゲップやオナラでみんなの気を引こうとする汚い奴。


自分たちさえ笑えれば他の奴らなんていくら犠牲になっても構わないとばかりの自己中心的なな馬鹿共。


そして何より、群れないと何も出来ない無能共。



───僕は人間は好きだが、こういう奴らが大嫌いだった。


まるで一人、動物園の猿小屋の中に閉じ込められたような、そんな馬鹿馬鹿しくて、やってられない気分になる。



まぁ、少し傲慢な考え方かもしれないが、



『僕は傲慢だからね』



そう割り切ってしまえば苦もない事だろう。



どうせ今回の転校生もそんな奴なんだろう。話すだけ無駄だし、話したくも無い。


人を完全に否定するのは良くないとは思うが、それでもそれは、僕が今まで生きてきた中で辿り着いた、一つの結論だった。





はぁ......、早く帰って本が読みたいな。




そんなことを思いながら、僕は窓の外を眺めていた。








───と、その時だった。






視界の端に、キラリと光るものが映った気がした。




「ん? 気のせ...」




───気のせいだったか。




その言葉を、僕は最後まで口にすることは出来なかった。






何故なら。







ドゴォォォォォンッッッ!!






目の前の窓ガラスが壁ごと爆発したのだ。






だが、僕の目は捉えていた。





───その爆発の直前、何か(・・)が猛スピードでこちらへ突っ込んできたのを。



この爆発にも似た何かは、ただの衝突事故だということを。



その上、あのスピードでは到底壁一枚では止まりきれない。





それはつまり、まぁ、そういう事だ。








「ぐべぁらぁっ!?」





僕はその何かに、思いっきり衝突された。



ボキゴキグキッ、と全身の骨が折れる音がすると同時に、身体中に今までに味わったことのない鈍い激痛が走る。




そして、






「いたた.......、まさか初日から遅刻し、交通事故まで起こしてまうとは............ふむ? まさか誰か巻き込まれたか?」





僕は意識が途切れる直前に、その元凶の顔をしっかりと目に焼き写した。




────絶対に訴えてやるッ!!




そんな思考を最後に、僕の意識は闇へと沈んでゆくのだった。






☆☆☆






「.........僕、生きてるのか?」



目が覚めると同時に、病院特有の刺激臭にも似た臭いが鼻の奥へとツンと通ってくる。




───あぁ、生きてるって素晴らしい。




そう、感傷に浸っているのもつかの間、次の瞬間には一転して、最悪の気分になっていた。





「.........何故お前がここにいる、殺人鬼」


「ふむ、その殺人鬼とは私の事か?」



───だって、目の前にその元凶が座っていたのだから。



よく見ると何やら一枚のプリントにノートを手に持ち、何やら必死に鉛筆を動かしているようだった。人と話す時は人の方を向けと親に教えられなかったのかね?


身体を起こそうとするが、ズキンッ、と身体中に痛みが走り、次の瞬間にはベッドの上を転げ回ることとなった。



ぐふぅっ.........、痛みに強い体質でよかったぜ......。



そんなことを思っていると、殺人鬼が話しかけてきた。



「自分で話しかけておきながら無視とはいい度胸だな? 私はお前のこと嫌いになりそうだぞ」



人の事殺しかけておいて「嫌い」などとよく言えたものだ。



「はぁ、はぁ......、ふぅ、勝手に嫌いになりたきゃ、なればいいさ。ククッ、嫌われるのと、孤独には......、慣れてるもんでね」


あまりの激痛に、流石の僕でも言葉が途切れ途切れになってしまう。

まぁそれでも、それが少しでもコイツに嫌われるような要素になってくれれば不幸中の幸い、というものだ。




───だがしかし、運命神は僕を裏切った。




「ほぅ! お前も孤独か! 私もだっ!」



.........あんなこと言うんじゃなかったと心の中で涙する僕だった。



「それに安心しろ、お前の治療費と慰謝料、学校への特欠届けは既に済んである。流石に私も悪いと思ったのでな、ヴァルハラに入院させた」


「へぇー、お前って金持ちだったりす.........へっ?」





.........ヴァルハラ、だって?





治療費や慰謝料何かよりも、僕はそっちの単語が気になってしまった。



ヴァルハラって確か、神の居城かなんかじゃなかったか? 城ではなかったと思うが、住処か何かだったはずだ。




殺人鬼は僕の疑問に気づいたのか、



「ヴァルハラとは『美人ナースと腕利きの医者の多い信用のできる天国のような病院』という意味だ」


「.........分かるかよ、そんなもん」



本当にわけがわからなかった。


なに? その歳してヴァルハラとか中二病でも患ってるんじゃないのか?




そんな失礼なことを考えていると、どうやら顔に出てしまったようだ。




「失礼な、私はピチピチの十四歳(・・・)、早生まれだが、現役の中学二年生と同じ年齢だぞ?」




「.........はっ?」




どうやらコイツ曰く『数度飛び級したが、折角の学生生活を楽しもうと思ってな、色々悪い噂の広まっていた前の学校を出てこちらへと転校してきたわけだ』との事。


確かにそう言われれば年下にしか見えない。特に胸あたりが。



───だけどまぁ、転校する学校、そしてクラス、更には席を間違えていて欲しかったものだ。






そう思ったところで、自分を殺しかけた相手と何故か打ち解けている現状に違和感を覚えた。


そもそもコイツと仲良くなってはいけない気がする。


そう思い、さっさと話を変えようかと思ったその時、僕の瞳に一枚のプリントとノートが映った。





「........あっ」





それは、かの有名なミレニアム懸賞問題。





───数ヶ月前に授業中の暇つぶしで(・・・・・)解いてしまい、本当に懸賞金を貰えてしまった問題であった。

因みにそのせいで有名になりかけたが、なんとかメディアに名前が乗ることだけは死守した。



それを解けたのは偶然(・・)たまたま(・・・・)だったとは言え、解いた張本人である僕がその問題を忘れるわけがなかった。





───だが、それがまずかった。





「ふむ? これはとあるミレニアム懸賞問題でな、私が挑戦中にどこかの誰かがさらっと解いて横取りして言った問題だ。あの時は怒り狂うかと思ったが............なんだその顔は?」



とっさに顔を背ける。



「......さぁ?」


「.........おい、まさかとは思うが......お前か?」


「おいおい、僕がそんなに頭が良さそうに見えるかい? 僕が頭の回るような男に見えるのならばいい医者を紹介するぜ? と言うかここがいい医者のいる病院だったか! はっはっはー、これは一本、取られ...」


「一つ聞いておく。傷は痛まないのか?」


「.........痛たたたたッッ!? しぬぅ! 死んじゃうぅぅぅっっ!!」


「.........なるほど、前言撤回だ。私はお前に興味が出てきたぞ、こよし男(・・・・)よ」





───何故か僕には、そのネーミングセンスの欠片もない、不名誉な『こよし男』とやらの意味がわかってしまった。









「ふははっ! 私は君が気に入ったっ! さぁ、私と『仲良しこよし』になろうじゃないか!」



「絶ッッッ体に嫌だねッッ!!!」








こうして、僕と彼女は最悪な出会いを果たした。







今になって思う。





───何だかんだで、僕の最高の友人はコイツなのかもしれないな、と。





そう、僕の対面でコーヒーを飲んでいる少女を眺める。









「ん? やっと私に惚れてくれたか?」



「んなわけねぇだろ、殺人鬼(・・・)



「ふふっ、懐かしいあだ名だな? こよし男(・・・・)





彼女はそう言って、とても嬉しそうに笑うのだった。

浦町了とギンの出会いの物語でした。

それからどういう経緯を経て現在に至るのか、というのは想像におまかせします。

今のところは書くつもりはないので。


次回、お待ちかねのシル=ブラッド、参戦です!

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
― 新着の感想 ―
[一言] ちなみに個人的なキャラ順位は 1位ギン 2位浦町 3位桃野 だったりする
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