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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第三章 帝国編
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閑話 執行者の意志を継ぐ者

閑話です!

エルザの正体が明らかになるのでご注目を!

あれから、どれだけ経ったのだろうか?



私は、焼き払われた村を、1人で見つめていた。





あの時の記憶が、頭に蘇る。



『ゼロ! お前はこの中に避難してろっ!』


『嫌だよ父さん! 私も......私も戦うんだっ!』


『ゼロ.........はっ!? 奴らが来たわっ! ゼロ! あなただけでも早く隠れなさいっ!』


『か、母さん!?』


『くっ、ゆ、許せよゼロ!』




そうして、私の記憶は途絶えた。


恐らくはあの時、父さんは私を殴って気絶させたのだろう。そして、床下の倉庫へと隠した。





───そして、私が目を覚ますと、みんな死んでいた。





父も、母も、弟も。


友人も、幼なじみも、近所のおじさんも。



みんな、みんな、




───死んでいた。






私の中で、いろんな感情が入り混じる。




私達の村を壊滅させた、盗賊への怒り───復讐心。


独りぼっちの、孤独感。


親しい者の死への、悲しみ───後悔や、絶望感。


そして何より、自分だけ生き延びたことへの、苛立ち。




「くっ......な、なんで私だけッ......!!」



無駄だとわかっていても、その怒り、苛立ちは収まらなかった。



力一杯握った拳で、地面を思い切り叩く。



何度も、何度も、何度も、何度も。






そして、私の感情は爆発した。




「なんでっ.........なんでっ、なんでッ!? 私たちが一体何をしたって言うのよッッ!!!」



私の慟哭が、誰もいない村に響く。




「私たち.......森の中で暮らしていただけじゃないっ......!」




そんな言葉が誰かに届くことはなく、




私の中には絶望が広がって行った。






バキリッ、と、




───何かがひび割れる音がした。






☆☆☆






私はあれから、村の中を歩いて回った。



そこらには知り合いの死体が転がっており、男は無残に殺され、女は衣服を剥ぎ取られ、辱められた後に自害していた。




バキリッ




ふと、自分の家が目に入る。


そして、その家の前に転がる、二つの死体。



───父と母だ。



弟は、その時、丁度友達の家に遊びに行っていたから生死は分からないが......恐らくは死んでいるのだろう。


その友人宅を訪ねても、死体が幾つも並んでいるだけだったし。





バキリッ






「生きる気力は無いのに......お腹は減るんだね」


誰に伝えるでもなく、私はそう言って街中から食料や使えそうな物を調達した。



そうして集まったのは、黒パンが十二個に干し肉が五個。二振りの短剣に、一振りの長剣、それに一つの盾と黒い外套だった。お酒は飲めないから、瓶の中身を全て捨てて、井戸から水を汲んだ。


───今は何をどうするかは決めていないけど、それでもこれは、今を生きる上で必要な事だろう。




何もせずに死ぬという選択肢は、私には無かった。




「生きる気力は無い.........」




けれど、








「私たちをこんなにしたアイツらを.........許してなんかおけない」






バキリッ




私の中から、とめどない復讐心が湧いてくる。



───たぶん、これが無ければ私はもう、自殺でも図っていたのだろう。










「今日から私が生きるのは、奴らに復讐する為だ」






バキィッ!







何かが、壊れるような、そんな音がした。









☆☆☆







それから私は、ここ一帯の地図を村長の家から探し出した。



アイツらに復讐するためにも、私は強くならなきゃいけない。


強くなるためにはこの村を出て、冒険者になるんだ。


お金を稼いで、学校に行って魔法を学んで、防具や武器を整えて、レベルを上げて.........仲間は......もう、失いたくないから、要らないかな。







───そして、いつかはアイツらを皆殺しに......








───そんなことを思った時だった。





「うぅっぅー.........あぁぁぁっ......」



「───ッッ!? だ、誰か生きてるのっ!?」



どこかで聞いたことのあるような声が、私の耳に届いた。


───あぁ、今のは友達のハルちゃんの声だ。




私はそう結論に至ると、私は走って、ハルちゃんを探し始めた。




「ハルちゃん! どこにいるのっ!? ハルちゃん!」


「うぅぅー、あぁぁぁ......」



その声は、小さくて、か細かったが、それでも私はここだよ、と私に告げているかのようにも聞こえた。








───そして、









「......ハル......ちゃん?」








目の前には、かつて親友だった、ゾンビ(・・・)が居た。




───あぁ、そう言えば、死体って放置すればゾンビになるんだっけ......?




そんな常識を今になって思い出す自分に呆れ果てる。




気付けば、周囲はぐるっと、かつて村人だったゾンビに囲まれていた。その中には、父や母、ハルちゃんの姿も見える。




「は、ははっ、ゾンビは......Eランクだよね?」




私も近所のおじさんに習って狩りをした事があったし、おじさんは「お前は天才だ」と言ってくれたが......それでも私はLv.5だ。



───この数のゾンビに、勝てるはずもない。





「ごめんね......敵討ち、できそうにないや」




私は、今も私を食べようと迫ってくる父と母に向かって、そう口にする。




「ふふっ、お母さん達に食べられるくらいなら......いっそ自分で......」






最期に、皆の動いている姿が見れて、良かったかも。









そんな、少し外れた事を考えながら、私は.........、















「おい坊主、手伝ってやろうか?」






───黒ずくめのお兄さんと出会った。






☆☆☆






「いやぁ、たまたまトイレを探してたらこんな場面に出くわすなんてなぁ.........運が良かったな、坊主」



あの後、お兄さんは、一瞬でゾンビのみ(・・)を焼き払った。


───私も触ったけど怪我や火傷はなかった。......一体何だったのだろうか? あの銀色の炎は。



「お兄さん.........誰?」



私はまず、お兄さんの素性を聞いてみることにした。


命の恩人───目の前で父や母を焼却されたのは恨んでいない。むしろ感謝している───であるこの人にそんなことを聞くのも躊躇われたが、私はこんなところで死ぬわけにはいかないのだ。だって今の私のすべき事は、




「盗賊に復讐すること......か?」


「────ッッ!?」



こ、心を......読まれた!?


しかも何故この村が盗賊に襲われたことを知っている......?




「ま、まさかっ!? 盗賊の一員......!?」


「......僕が盗賊に見えるんだったら病院紹介しようか?」



もう一度お兄さんの体を見渡す。




黒い髪───迷い人、というやつだろうか?


口から覗く八重歯に、黒い上着。


黒いズボンに同じく黒いブーツ。


そして、首元のマフラーとその瞳だけが赤かった。




第一印象としては、細い、弱そう。



そして、きちんと見てみると、明らかに敵に回してはいけない、と本能の奥の方が告げている。



───それこそ、盗賊なんかとは、まるで格が違う。







結果としては、





あぁ、きっとお兄さんは、噂のEXランク(・・・・・)冒険者なのだろう。




と、そういう結論に至った。





数百年前に活躍したEXランク冒険者のパーティ『時の歯車』





構成員は七名だったと言われている。




世界を放浪中のリーシャさん。


王都の魔法学園で学園長をしているグレイスさん。


行方不明のエルザ(・・・)さん。


現神様の迷い人カネクラさん。


現魔王のルナさん。


現獣王のレックスさん。


ドワーフの里の長、ドナルドさん。



あまりの驚異的な強さ───それこそ、一人で世界を滅ぼしかねない程の天才の集まり。それこそが異例のEXランクを授かった、時の歯車。




そう、村長から聞いたことがある。





このお兄さんは迷い人.........なんだと思うから、きっと『カネクラ』って人なのだろう。たぶん。




「お兄さんは......カネクラって名前だったりする?」



私は半ば確信を持ってそう聞いてみる。


この人がそうでなかったとしたら、それこそ本物はとんでもない人なのではなかろうか?





だが、私の考えは外れていたようだ。





「カネクラ.......鐘倉? もしかして僕の()の名前か? なんかそんな気がするな。恭香もそこから僕の名前を付けたのかもしれないし.........。まぁ、だけど多分、僕とその『カネクラ』って人は違う人だと思うよ。もしかしたらその人の子孫なのかもしれないけどさ」



どうやら本人ではなく、その子孫の人だったらしい。



少し驚いた私だったが、それでも安堵の方が勝ってしまった。




───何だか、すごい人に助けられちゃったな......これなら案外、簡単に街にたどり着けるかも.........




そう、安堵で口の端がにへらと上がってしまった。







───だけど、






「.........もしかして今、僕に助けてもらえる、って思ってないか?」




...............えっ?



その笑顔が一瞬にして凍りつく。




「も、もしかして.........助けてくれないんですか?」




再び、私の中を絶望が支配し始める。



この惨状を見て、助けないなんて......この人は()なんだろうか? 少なくとも同情くらいは.........




お兄さんはそんな感情を見透かしたように、私の思考に言葉を被せた。



「なんだ? 可哀想なんだから助けてよ、ってアピールか? まぁ、確かに家族と仲間を全員皆殺しにされたらキツイだろうし、同情もするさ」





「な、ならっ!」





「だけどな、僕なんて叔父さんに家族を皆殺しにされたんだぜ? その上、僕まで殺されかけた。その上で助けてくれる奴なんて、一人も居なかったぞ?」






その言葉に、思わずゾッとする。



もし、父さんが、母さんと弟を殺し、私まで殺そうとしたら?


そう考えただけで身が凍るような気分になった。




「『お前より不幸な人はいるんだから我慢しろ』なんてことは言わないさ、僕だってそんな無責任な事を言う奴がいたらぶん殴ってる」




だからさ、と。





「だから、僕はお前にこう言おう」






そうして、お兄さんは言った。








「僕はお前を、これ以上(・・・・)助けない。なんの見返りも無しに人に助けなんて求めるな。見返りも無しに人を助ける奴なんざ、頭のトチ狂った正義の味方か、それとも下心しかない奴、そうでなければただの気まぐれだ」





あっ!



私の頭の中にさっき助けてもらった(・・・・・・・)映像が流れる。



───何を言ってるんだ、私は.........さっき助けてもらったばかりじゃないかっ!






同時に、こうも思った。






先程の行為は間違いなく、ただの気まぐれだったのだろう、と。





「それでも僕に協力して欲しかったら対価を払え。今回は機嫌がいいからな、期限無し、利子無しの、ある時払いで百万G(・・・)。それで手を打ってやる」



「ひゃ、百万っ!?」



わ、私の今の全財産でも......五百Gだ。到底払いきれる額ではない。



だから、私は断ろうと.........






「その代わり、たった百万で僕が持つ神の防具(・・・・)を一つ、最高神の神器(・・・・・・)のレプリカを一振り。それに加えて最寄りの街までの案内とそこまでの食料付きだ。ついでに盗賊から逃げおおせた、生存者(・・・)の所まで連れて行ってやる」





............えっ?









結局私は、お兄さんに協力をお願いした。







「坊主.........子供の頃から借金とは、あまり褒められたことじゃないぞ?」


「その張本人が何言ってるんですか? それに私は女の子ですし、ちゃんとゼロっていう名前があります」


「.........えっ、お前、女の子だったの?」







☆☆☆







私は今日の事を、忘れはしないだろう。




弟と友人一人(・・・・・・)を除いて、村が破滅した日。



死の恐怖を味わった日。



復讐を誓った日。



────そして、名も知らぬ人(お兄さん)の背中に、憧れた日。






「さぁ、行こうか、アイク、マイちゃん」


「「うんっ!」」






こうして、私は大きなコートを着て、一振りの大鎌を背負って、最寄りの街ビントスへと歩き出した。



すぐ後ろには弟と、その友人の姿。




頭の中には、目的地へと続く矢印が描かれていた。








───私がベラミさんと出会って、盗賊団の壊滅、そしてお兄さんの名前を知るのは、もう少し後のこと。








☆☆☆







彼女達を見送った僕は、一人、考え込む。




「今回は......僕もうかうかしてられないんじゃないか?」




僕は、あの白髪の少女(ゼロ)のステータスを思い出す。





───あの、心が壊れかけていた、少女の種族と称号を。








天魔族(・・・)の、神童(・・).........ねぇ? くっくっくっ、面白くなりそうだ」









───僕は、新たな化け物を目覚めさせたのかもしれない。





と、そんなことを思った。

お忘れの方も居りましょうが、前に恭香が言っていた"その上"とはEXランクの事です。

そのうちゼロの閑話も挟むつもりですが、まだ彼女の将来は未定、ということになってます。


※天魔族

圧倒的な身体能力と魔力を備え持つ、全種族の中で神族に次ぐ最強種族。

吸血鬼族のような回復能力は無いが、その代わり弱点と呼べるようなものはなく、深夜でさえ吸血鬼族と互角という、俗に言うチート種族。


※少々初期と比べて改訂致しました。申し訳ないです。

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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